第三話:能天気、追跡。
「おぉ。やっぱりあれは手品なんかじゃなかったな」
身体が再生したあれ。
今の飛び降りを見てそう思う。
幸いクラスの全員がいきなり叫んだ女の子に注目していたので、この飛び降りに気づいたものは俺を除いて他には居なかった。
「……? 見間違いだったのかなぁ?」
その女の子も例外ではなく、まさか飛び降りたなんて結論には至らずすぐに出て行った。
「不謹慎かもしれないが……」
よく分からないけど傷がすぐに元に戻る葛城といった彼女。
そしてそれを追う赤黒のローブを着た女の子。
彼女はあの女の子に追われているっていうことだろう。
「面白くなってきやがった」
天草はすぐに行動を開始した。
天草がした行動は極めて簡単だった。
誰も見ていない隙を見計らって葛城と同じように窓から飛び降りた。
ただ葛城のようにただ飛び降りるのではなく、壁に取り付いていたパイプを使って登り棒を降りるように降りた。
「学校サボるのもそれはそれで面白そうだな」
そして、葛城を追いかけた。
意外と葛城の足は速かったようで、一度見失ったが見つけることが出来た。
「はぁ、はぁ、速いな」
「はぁ、はぁ、どうして私を、追いかけてきたの!?」
二人とも息切れしていた。
「いや、ちょっと面白くなってきそうで」
「あ、アンタ……。本当頭おかしいんじゃないの……。私の再生を見てもあんまり驚いてないし……」
葛城の言うことももっともであった。
「再生……、葛城はそう呼んでいるのか。なぁ、色々聞きたいことがあるんだよ。あの女の子と葛城の関係とか、アンタのその再生とか」
「……。聞いたら、もう普通の世界には戻れないわよ」
葛城は鋭い目をする。
まるで幾つもの死線をくぐり抜けてきたかのような。
「別に良いさ。正直、こんな普通の人生飽き飽きしてた所だ」
だからこそ、あんなことしてたんだけどな。
「普通がどれだけ大切か……、分かっていないようね」
葛城の顔には怒りが込められていた。
「普通が大切なぁ。俺はもうすでに普通じゃないんだが。いいさ。全部俺が責任を持つ。だから、教えてはくれないか?」
どうしても教えて欲しかった。
何が起きているのか。
俺は何を知らないのか。
「……。そこまで言うなら、教えてあげる。でも、誰にもこのことを話さないこと。いい?」
「構わないぜ」
どうやら葛城は心が折れたらしく、教えてくれた。
「まず最初に言わせてもらうと、私の身体は不老不死なのよ」