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雨宮高校の不思議な話。  作者: 敷儀式四季
第三部:<天草と葛城>
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第二話:雪月花、発見。

「見たわね」

 彼女は俺を睨みながらそういった。


 もう彼女の腹部に刺し傷は無い。

 何も無かったかのような気分にさせられる。


「戦争を――――――」

「おーい、お前ら大丈夫か!」

 彼女が何か言いかけたところで、向こうから男女二人組が走ってきた。


「なあお前ら、ここに怪しいやつとか来なかったか? って、ん?」

「どうしたの、あーちゃん」

「いや、俺が“視た”のは彼女なんだが、別段何も無いようだな……」

 そこにいたのは委員長と……、現川とかいうやつか。


「どうしたんだよ、委員長」

 いきなりここに現れた二人に少し驚く。

「何も無いなら別に良いんだ。済まなかったな」

 現川が天草の質問にあいまいに答えると、手を振ると二人は去って行った。


「あの二人なんだったんだろうな」

「今はそんなことどうでも良いわ」

 彼女はまたこっちを睨んで来た。

「今起こったことを忘れなさい。じゃないと、ろくな事にならないわよ」

「今起こったって……、委員長と後一人が来たってことか?」

「それじゃないわよ!! 今さっきアンタは見たでしょうが!! 私の戻ってる所(・ ・ ・ ・ ・)を!!」

 彼女はすごいツッコミ口調で返してくれた。

 あ、なんか面白いな。

「あれは手品だったの。そう、手品よ」

「へー、そーなのかー」

「絶対信じてないでしょうが!!」


「とにかく、忘れること。良いわね!!」

 そう叫ぶと彼女は足早にその場を去って行った。



 10月23日(火)


 よし。

 あの娘を探そう。


 昨日出会った彼女の忠告などまるで無視し、天草は彼女を探すことにした。

 彼女が着ていた服は間之崎の制服。

 ということはこの学校内に居る確立は大だ。


 そして、意外と早く見つかった。

 彼女は1年4組の端の席に静かに佇んでいた。


「よっ」

「あのね、私あなたに忘れろって言ったわよね。言ったはずよ」

 彼女はプルプルと震えながら答えた。

「いやいや、あんな超衝撃的な出会いしたのにまだ自己紹介してなかっただろ? 俺は天草伊織。1年1組だ」

「あなたふざけてるの? ねえ、そうなの?」

「別にふざけてなんかいないさ。で、あなたの名前はなんですか?」

「……。馬鹿にしているのね。そうなのね!!」

「別に馬鹿になんかしてないさ。で、あなたの名前はなんですか?」

「言ってることがテープレコーダー化してるわよ……。もう……。私は葛城志野。はい、これでいい?」

「なんかつまんないね。まぁ良いけどさ」


「見ぃつけた♪」

 天草と葛城の漫才のような会話を遮るように、幼い女の子の声が聞こえた。

 その女の子は教室の扉の辺りに居て、赤に少し黒を足したような神官的な人が着るような凄く長いローブを着ていた。

 背は小さく、まるでそのローブに着られているような感覚を受ける女の子だった。


「あの化物女、もうここを突き止めたって言うの!?」

 その女の子を見て、あきらかに焦燥した表情になる葛城。


「化物女?」

 まったく化物に見えないんだが。

 天草は葛城の言っている意味が分からなかった。


 クラスの誰かの妹でも紛れ込んだのだろうか。

 そう考えていた。


さん、倒させてもらいますっ! って、あれ? さっきまでここに居たのに……」

 その女の子は首をかしげている。


 葛城はその女の子を見た瞬間から移動していた。


 葛城はすばやく窓を開けると、飛び降りた。


「って、え!?」

 天草が下を見ると、それでも元気そうに校門へ走っていく葛城。

 どうやらまったく怪我をしていないようだった。

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