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雨宮高校の不思議な話。  作者: 敷儀式四季
特別編:<バレンタイン・デイズ>
15/37

第特話:琴浦の努力。

今回はバレンタインデー特別編です。


意外と文字数が大目の約3200文字となっております。

【委員長、明日の予定を空けなさい。なんとしても両親を追い出して】

「随分とずうずうしいお願いだね!?」

 いきなり彼女、琴浦真理亜さんは開口一番そう言ってきた。

 今日は2月10日、明日に建国記念日を控えていた。

【ほら、あなたしか頼れる人はいないんだから】

「本当久しぶりに話かけてくれたなとか思ったのに!! 一体なんでそんなこと言い出したの?」

【ほら……、明日はバレンタインデーじゃない……。だから……】

「あー、木賊君にチョコを作りたいと」

【言わないでよ】

 なるほどなるほど。

 幽霊である琴浦さんには家が無いしもちろんキッチンも無い。

 だから作りたいと。

 あーもう可愛いなー。


 あれ?

「でも琴浦さん、どうやってチョコを作るの?」

 琴浦さんは幽霊だ。

 だったら物に触れることが出来ないんじゃ?

【何言ってんの? 自縛霊……、今は浮遊霊だけど、30年もやってればある程度不思議なこともできるようになるし、物に触れようと思えば出来るのよ。ポルターガイストの要領で】

「へぇ。そうなの」

 それは知らなかった。

【だから委員長にはキッチンを貸してもらうのと味見を頼みたいの】

「味見?」

 自分ですれば…………、ああそうか。


「流石に物を食べることは出来ないのね?」

【お供え物としてなら食べられるけど、自分で作ったものは無理ね】

「……、わかったわ。丁度私も明日作る予定だったし。両親は何とかして追い出すから、ここに来なさい」

 私は裏紙をかばんから取り出して、簡単な地図を書いた。


【明日はよろしくね。委員長】


 そして2月11日。建国記念日で祝日。

【よろしくね。委員長】

 10時くらいに琴浦さんは来た。

 その琴浦さんの格好はいつもと同じ制服だった。

【着替えがあるとでも思ったの?】

 そりゃ着替えられないよね、幽霊なんだから。

 こういうところは可哀想。


「じゃ、あがってあがって」

【お邪魔しまーす】

 琴浦さんが靴を脱いであがってきた。

 スーッと。

 そしてキッチンへ。


「そういえば琴浦さん、チョコ作ったことは?」

【チョコ作ったことなんて無いわよ。私が現役の頃は本命以外のチョコなんて無かったもの】

「そうか……、30年前だものね」

 友チョコとか逆チョコももちろん、義理チョコですらない時代なんじゃ無かったかしら。


【でも、ちゃんと勉強はしてきたのよ】

「へぇ。どこで勉強したの?」

【浮遊霊になったから、本屋で立ち読み】

「随分と普通ね……」

 そして随分と安っぽい気も。

 でも練習なんか出来ないものね。


【さぁ、やるわよ!!】

「テンション高いのね」

【初めてだもの、こういうイベント】

 そうか。

 今までで初めてか。

 これは私も頑張らないといけないわね。

 

 そう私が決意していると、琴浦さんがキッチンのテーブルをみて言った。

【ところで、材料が多いように見えるけど。そんなに私の料理の腕をなめているのかしら】

「あー、これは私も作るからね。あーちゃんに」

【あーちゃん?】

 そうかそうか、琴浦さんは知らないよね。

「私の幼馴染よ。別に気にしないで」

【ふーん(ニヨニヨ)】

「何よその笑顔」

【いやー、委員長にもそういう人もいたんだー、と思ってね】

「黙りなさい」

 言うんじゃなかった。




【「出来たー!!」】

 まあ滞りなくチョコの完成。

 琴浦さんは元々頭が良いのか、本の内容を覚えていたようでスムーズに進んだ。

 手先も器用だったし。

 私のは正方形の形。

 琴浦さんは綺麗なハート型。

 なんか琴浦さんらしくないかも。

 デレ?

 ツンデレのデレ?


【なんか失礼なことを思われている気がするわ】

「気のせい気のせい!!」

 勘が鋭いところは変わらないけれど。

 それでも木賊君と付き合いだしてから柔らかくなった気がする。


 そして来る日、2月14日。

 聖戦。


「さて、あーちゃんにはもう渡したし」

 流石はあーちゃんと言うべきか。

 渡そうと呼び出す前に考えがわかるかのようにこっちに来てくれたからね。

 いや、実際分かってるのか。

 さぁ、向こうはどうなったのかしら。


【常世、ちょっと来て】

「ん、なんだよ」

 そうして琴浦さんは木賊君を屋上に連れて行った。


 side<木賊>


【常世、ちょっと来て】

 どうしたのだろう。

「ん、なんだよ」

 そうして結構強引に俺を屋上へ連れて行った。


「んで、人目につかないところまで来た訳だけれど、俺に何のよう?」

【……察しなさいよ】

「何を?」

 いやいや何を察せって言うんですか。

 俺が聞いてるんだけど。

【だからあなたは……、もういいわ。……、はいこれ!】

 琴浦が途中からやけになったように早口でまくし立てられ、何かを押し付けられた。

 それは丁寧にラッピングをされた小包だった。


「なんだこれ。開けて良いのか?」

【……うん】

 消え入りそうな声で言う琴浦。なんか珍しいな。


 とりあえず凄く気になったのでそれを開けて見る。


 そこにはハート型のチョコと手紙が。

 あ、これって。

「……そういや今日はバレンタインデーだったな。」

 本気で忘れていた。

 まさか真理亜ちゃんが作ってくれるとは思ってなかったしね。


【……】

「これ、手紙今読んで良いか?」

【……(こくり)】

 可愛らしいうなずき方だなおい。

 大抵の男子が落ちるぞ。


「じゃ読ませてもらうぜっと」

 こうして手紙の字に意識を落とす。


 常世へ。

 えと。バレンタインデーなので、普段言えないこととかを手紙にしようと思って書きました。

 これ書くの意外と大変なんだから。ポルターガイストの応用なんだけどね。

 ……、普段言えないことは書くのも恥ずかしいわね。

 これを読んでいる時私は目の前にいるのかしら。いる気がするわね。

 常世なら今読んでいいかとか言いそう。

 さて、普段言えない事ね。

 まぁ、私を選んでくれてありがとうとかは当たり前なんだけれど。

 告白してくれた時は本当に嬉しかったし。

 普段言えないことは、そうね、私の気持ちとかかしら。

 あなたは気づいていないかもしれないけど、多分常世は普通に女子に人気があると思うわ。

 優しいし、人のことはよく見て助けてくれるし。

 私もあなたのそういうところが好きなわけだし。

 どうやら常世は最近自分に自信が無いとか思ってるそうね。

 委員長が言ってたわ。

 ちなみに委員長はこのチョコを作るときに手伝ってくれたんだけど。

 さて、ちょっと話がそれたけど。

 常世はもうちょっと自信持って良いと思うわよ。

 今だって私のことを忘れてないし、これからもきっと常世は私を忘れないでしょう?


 それになんてったって私が、その、惚れた人だしね。




 別に私は他の人に心移りなんてしないわ。大好きよ、いつまでも。

 真理亜より。



「はっ……」

 感動するじゃねぇか。

 本気でな。

 確かに最近自分に自信がなかったのは本当さ。

 真理亜ちゃんに自分がつりあってるのかとか考えてたし。


 自分らしくないか。


【べ、別にそこまで心配してるわけじゃないわよ】

 ここにきてそのセリフは反則だと気づいているのだろうか。

 昔の人だし、ツンデレとか知らないんじゃないだろうか。


「ありがとう。本当に、ありがとう」

 心から。

 そう思った。


 ここまで言われて、返さなきゃ男じゃねぇよな。


「真理亜ちゃん、ちょっと目つぶって」

【目? いいけど】

 そう言って素直に目をつぶる。

  

 その状況からぎゅっと抱きしめる。

【!?】

 びっくりするよね。

 でも身体がビクッとなってこわばったのは最初だけで、すぐに力を抜いてくれた。

 というか触れるんだ。

「これ、触ってるのかな?」

【……30年もやってると、ある程度の身体の自由は利くものよ】

 顔を赤らめながら、恥ずかし紛れに説明してくれた。


「じゃあ、奪わせてもらうね」

【へっ?】

 真理亜ちゃんが素っ頓狂な声を上げて目を開けた気がするけどもう気にしない。


 俺は目をつぶって。

 その淡い唇に。


【……!!??】

 おもっきりびくっとなったけれど、やっぱり落ち着くと力を抜いてくれた。


 これが二人のファーストキスとなった。

このシリーズも意外といけそうですね。


これ割り込み投稿でも良かったんですが、まあこっちでも良いですよね。

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