最終話:皆々主役。
さて、これで最終話ですっ!
今日は少し昔話を。
どうして私が久遠君を好きになったのか。
それは入学試験のときだった。
シャー芯が全滅……、そんな馬鹿な……。
そう、大事件、シャーペンの芯が何故かすべて折れてしまったのだ。
そして答案用紙に何も書けなくなったしまった。
どうしよう……。
そのとき、不意にシャーペンの芯の箱が隣の人から落ちた。
すぐに試験官が拾いに来た。
それを拾った試験官はその隣の人に渡したが、首を振って向こう、つまり私のほうを指差した。
試験官はシャーペンの芯の箱が落ちた瞬間を見ていなかったようで、私のほうにそれを渡してきた。
え……、と思っていると、その人はウインクをしてきた。
そのとき、この人がシャー芯を渡してくれたのだと分かった。
その人が久遠君だった。
別にこれがきっかけで好きになったわけじゃないけど、このことが出会いのきっかけではあった。
他の人から見たらどうでもいいことなのかもね。
私にとっては凄い思い出だけど。
流石に久遠君は覚えてないだろうな。
さて、なんで私がこんな昔話を思いだしているのかというと、
今日は久遠君の誕生日。そして久遠君の家の前の大きな門の前に立っていたからで。
招待状を見せると、すぐに警備の人が門を開けてくれた。
そしてあのときの応接間へ。
「く、久遠君……。誕生日おめでとう!!」
「お、おう。ありがとう」
しーん。
駄目だこの空気。
執事の卯月さんは気を使ってくれたのかもしれないけど、こんな広い部屋に二人きりは空気が持たないよ!
「き、今日は、いい天気、だね!」
「ま、まったくだ!!」
こんな空気で告白なんて出来るわけないじゃない!
こ、こういうときはつかみが大切なのよね。
頑張らなきゃ!
「久遠君、私と久遠君が最初に会ったのって覚えてるかな?」
「……、入学試験のときのことか?」
覚えててくれたんだ……。
いけない、ここでもう涙が出そう。
我慢しないと。
「いやいや流石に覚えてないわけ無いだろ。あんなに困ってたら、そりゃ俺だって手を貸さないわけにいかないだろ」
「そんなこと、覚えててくれたんだね……」
こんな小さいこと。
こんな久遠君だから私は好きになったのかもね。
「他にもいろいろあっただろ、遠足のときとか、夏休みとか、運動会とかな」
「ハハッ、流石に運動会のときは大変だったよね!」
どうやら久遠君は全部覚えていてくれたようだ。
今なら言える気がする。
私の気持ち。
飛び切りの笑顔で。
私は言った。
「好きです。ずっとずっと好きでした。お金持ちだからとかそんなのどうでもいい。久遠君が、好き」
……。
ど、どうなったんだろう。
「ふう。通りで爺やが仕込むわけだ。てっきり俺のためかと思ってたが、咲乃ちゃんのためでもあったわけか……」
「え……」
「告白されるのがこんなに暖かくさせられるものだとは思わなかったな。する予定だったが、されてみるのも悪くない、ということか」
「ど、どういう……」
「本当はこういうのは男から言うもんなんだがな。俺も好きだ。好きだよ」
「う、嘘……、本当に……」
ここで泣き出してしまった。
嬉し涙だけど。
結局。
執事さんの言っていたあの人とは私のことだったらしく。
――――――青春なんだから、当たってみてはいかがですか?
あの執事さんは全部知ってたってことなのかな。
どうして文化祭のとき車を呼ぶなんて真似をしたのかというと、私がどんな反応を示すのか試していたらしい。
試すなんて人聞きが悪いから弁解するけど、久遠君は私がお金持ちなんて肩書きに釣られるんじゃないかと思っていたそうだ。
うちの家族のような反応を見せたらアウトだったということなんだろう。
二年と半年後。
高校卒業後の春休みだ。
「初々しかったわね、あの頃は」
「熟年夫婦みたいなこと言い出した! もうすぐ結婚式なんだよ!?」
ここは久遠邸。
高校を卒業した私たちは、結局、
結婚することになったわけで。
ちなみにこの久遠邸から別邸をいただいてこの結婚式が終わったら同居する予定。
「ところで、どう、この私のウエディングドレス?」
「お前性格変わったよな……、最初の頃と。火音の影響か?」
「で、どうなのよ?」
「そう、だな……、■■■■」
「もっと大きな声で言ってよ」
すると久遠は顔を赤くしながら、
「綺麗だ……」
「ありがとーうっ!!」
「ちょ、おまっ!」
私は気がついたら久遠の首元に抱きついていたわけだけど。
正確には気がついたらとかじゃないけどね。
「大好きよ、零次!!」
~咲乃と久遠~ <END>
どうでしたか?
次は天草と葛城編になると思います。
一週間くらいで出したいですー。
ではではー。