第五話:家御招待。
よく人生をマラソンに例える人って居るじゃないですか。
でも良く考えて見てください。
夢が叶ったからって、それがゴールですか?
好きな人と結ばれたからって、それがゴールですか?
小説の中ならともかく、普通の生活には目標はあってもゴールは無いように思います。
車で10分程度。
意外と早くその家は見えた。
これなら別に車に乗る必要は無かったんじゃ? と思うほど。
「でっかーい!!」
「ちょ、火音ちゃん声でかいって!」
その家はとにかく大きいという印象しかなかった。
さしずめス○夫の家を外から見たときの感じを思い出してくれたら分かりやすい。
どうしてこんな家に気づかなかったのだろうか。
玄関には門。
そして一本道が向こうに続いている。
執事の卯月さんが前に出て、門を開ける。
「ではお嬢様方、お入りください」
恭しく礼をする卯月さん。
なんかむず痒い。
「べ、別に私たちにまでそんな風に礼をしなくても良いんじゃないですか?」
すこし耐え切れなくなって卯月さんに話す。
すると卯月さんは、あなた方は零次ぼっちゃんのお客人ですから。といって結局止めなかった。
歩いて数分で家の玄関に着いた。
流石金持ち。
そして扉を開けるのは執事の卯月さん。
久遠君が開けようとしてもそれをさせなかった。
流石執事さん。
そして応接間らしき大きな部屋に通された。
ここに来るまでの廊下も広くて長かった。
ちょっとこじゃれた学校の廊下くらいの広さだった。
応接間は一つの家が学校の二クラス分くらいの広さ。
とにかく広くて逆に落ち着けない。
「まあ、ゆっくりしてってよ」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうわねーっと」
東雲はもうなじんでいる。
こういうところも凄いと思う。
そうしてふと気がつくと久遠君が私のほうばっか見ているような気がした。
「ん、久遠君、私に何か用かな……」
そんなに見つめられたら恥ずかしい。
顔赤くなってないかな!?
「あ、いや!? 別になんでもないけど!?」
久遠君の声は何故か裏返っているようだった。
その様子を見た東雲がニヤニヤしていた。
いやむしろニヨニヨしていた。
「何よ」
「べっつにー、青春してるなーと」
柳に風と受け流す東雲。
そしてある程度雑談をした後、もう暗くなってきたので帰ることになった。
帰りは執事の卯月さんが家まで送ってくれるそうだ。
最近は通り魔がこの辺に出てるらしいし。
そして東雲を送った後。
卯月さんが急に話しかけてきた。
その内容は色々と驚くものだった…。
その考えで行くと、みんな人生の最後に向かって走ってるんですよねー。
死ぬために生きている、とはよく言ったもので。
結論。
死ぬためになんか走りたくないー。
マラソンしたくないー。