第四話:尾行開始。
そんなこんなで放課後。
久遠君を尾行することに。
「本当にいいのかな……?」
「大丈夫大丈夫、この私が居るのよ?」
だから不安なの。
「そういえば久遠君ってさ、文化祭のとき車で帰ったって言ってたよね。車に乗ったらどうする?」
「それは諦めるしかないわね……」
あのときのように車を呼ばれたらアウトだ。
でも……。
「呼ばない気がする」
「へ?」
「何かよくわかんないけど、久遠君はそういうのを避けてる気がする」
そう。
彼はそういうアピールをしたくないように思える。
「じゃあ、何で文化祭のときは凛ちゃんを車で送った訳?」
「……そこは分からないけど……」
それだけは本当に謎なのだ。
「ふう……」
どうすれば良いんだろう。
尾行されてるんだけども、どう対応したもんか。
東雲と咲乃の尾行は、学校を出て5分くらいでばれていた。
別に無視してもかまわないけど…。咲乃さんもいるからな。
「ねえ、久遠君が電話始めたわよ」
「嘘!」
それは尾行を始めて15分くらいのときに起きた。
久遠がどこかに電話をかけているのだ。
「車を呼んでるんじゃない?」
「そう……」
「咲ちゃんの予想が外れたわね」
うう……。
やっぱり久遠君の気持ちはわかんないのかな…。
「ところで、何の予想が外れたのでございますか?」
「「きゃあぁぁ!!」」
いきなり後ろから声を掛けられた。
そこにいたのは、60歳くらいの老齢なおじいちゃんだった。
頭は白髪、というよりはロマンスグレーといった感じでそこは年齢を感じさせるが、立ち姿は直立で、背骨に一本棒が入っているように立っていた。
服はスーツのような黒い服。
腰まで、いやもっと裾は長く、腰の辺りで二つに分かれていた。
俗に言う燕尾服というやつだった。
ドンッと私は驚きすぎて尻餅をついてしまっていた。
「な、何なんですかあなた!」
東雲は後ろから現れたおじいさんに言い返していた。
「おやおやお嬢さん、驚かせてしまったようですね。申し訳ございません」
そういうと優しい手つきで私を起き上がらせてくれた。
「私は久遠坊ちゃんの執事、卯月と申します。坊ちゃんの命で、お嬢さん方に話しかけさせてもらいました」
そう名乗った卯月さんは私たちを連れて、久遠君のところまで行った。
「ばれてたってわけね……」
「やっぱり尾行なんて無茶だったのよ」
なんて言われるんだろう。
これじゃあ変な女子扱いされちゃうな……。
「咲乃さんに東雲さん、俺に何の用?」
久遠君は普通に接してきた。
「あのさ、尾行しようって誘ったのは私だから! 咲乃はそんなこと考えてなかったから!!」
火音ちゃんは私を庇ってくれようとしていた。
たまにこういうところがあるから憎めない。
「いやそのことはもう別にいいんだって。で、俺に何のようなの?」
そんなことは些細なことのように受け流す久遠君。
カッコいいよ久遠君!
「そうそう、あなたの家の場所を教えて欲しいのよ!!」
って。
随分ストレートに言うのね。
「なんだそんなことか。爺や、車を準備して。場所と言わずに、招待するよ」
ブウンと。
あのときの長い車が数分で横に止まった。
一体この車どこにとめて居るのかしら……。
来るの速すぎよ……。
そんなこんなで久遠君の家に行くことになった……。
尾行をばれずに出来る人っているんでしょうか。
いやそりゃ世界にはたくさん居るんでしょうけどー。
やっぱりそういうばれない方法もあるんでしょうかねー。