第三話:作戦会議。
バッドエンドほど苦手なものは無いんですよね。
キャラをなかなか殺したりとか出来ない感じです。
そういえば不思議なところがある。
今まで久遠君は私に、いやクラスのみんなに自分がすごい金持ちだということを言ってはいなかったのに、どうして私を送るときだけはあんなリムジンを用意していかにも金持ちをアピールしたんだろう。
隠していたようにも見える秘密を、どうして彼はばらしたんだろう……。
10月23日(火)
「という訳で、作戦を考えたのよ!」
「作戦って何……?」
火音ちゃんがまた変な事を言い出した。
今までこのセリフを聞いたのは8回目。
そして成功した例は一つだけ。
言わずもがな、文化祭に誘うという案を出したのは東雲だ。
勝率は1割2分5厘。
このところ毎日こんなことを言っている。
「今度の作戦は、ちょっと過激かもしれないわよー!!」
「何だろう、もう嫌な予感しかしないわ……」
「もうすぐ久遠君の誕生日らしいじゃない」
そう、久遠君の誕生日は10月27日(日)なのである。
「そこで!! “プレゼントは私っ!?”大作戦を思いついたのよ!!」
「なんとなくネーミングで分かる作戦ね……」
こんなのよくある展開じゃない。
普通よ普通。
「この作戦は、誕生日に久遠君の家に押しかけておめでとうとか言って、」
「誕生日プレゼントはわ・た・しとかいうんでしょ?」
「どうして分かったの!?」
いや分かるでしょ。
よくあるじゃないラブコメとかで。
……まあ、実際にこんなのを計画する人は始めて見たけどね。
「そんなの普通じゃない」
「良いじゃない普通で。普通って言うのは素晴らしいことなんだよ」
「あなたは普通を知らないから……」
ちなみにこの東雲火音、いかにも馬鹿そうな会話を始めているが、彼女も久遠君ほどに普通ではない。
実はあの委員長と双対を成すほどの天才なのである。
委員長を秀才とするなら、東雲は天才。
IQ200はあるそうだ。
ま、馬鹿と天才は紙一重って言うし。
「なにか言った?」
「気のせい気のせい」
あ。
そういえば、重要なことを忘れていた。
「私、久遠君の家知らないんだけど」
家を知らないんだから誕生日に会いに行ける訳が無い。
まさしくこの作戦には穴があった、という訳だ。
「知らなかったの!?」
嘘っ! といった感じで驚かれた。
しかし、ここで諦めないのが東雲火音その人である。
IQ200は伊達じゃない。
「なら、尾行するわよ!」
天才の考えることは分からない……。
後味悪いエンドってのは性に合いませんね。
というわけでこの話には全くバッドエンドやら悲恋などは一切無いと断言しておきましょうー!