第56話 復活
「よくぞおいでくださいました」
アッシュの前にハイエルフの女王サヤ女王がひざまずいていた。
唖然とするアッシュ達。
それだけではない。精霊王その人までひざまずいていた。
「両陛下、どうされたのです?」
精霊王子が慌てて二人の前に膝を付いて尋ねた。
「王子よ。この方こそ世界の救世主様ではないか。
里を見よ」
精霊王はそう言うといつの間に現れたのか数えきれないハイエルフがひざまずいていた。
「レクイエムは神に聞きどけられ、ハイエルフの民は復活した」
そう、一人一人現れたハイエルフの民達は、生き残った民達ではなかったのだ。
黄泉の国から復活して帰還していた人だったのだ。
「王子殿下。妾は民達が復活する様を目の当たりにしました。そして彼らはその人に復活させてもらったと言っています」
サヤ女王がアッシュを見ながら言った。
「はい。アッシュ様は神です」
レディが自信満々に宣言する。
リン
リン!
いつの間にかアッシュ達の背後に集まって来ていた、亜人の信徒達が鈴を鳴らしながら一斉に一礼している。
バインド魔導王子が目を見開いてその混乱する周囲の状況を見回している。
商人の息子エディが魔眼のソフィアの耳元で囁く。
「ソフィア。こりゃ何が起こっているんだ?」
「またアッシュがやっちゃったんだよ。
あの墓標の人達を復活させたんだよね?」
ソフィアが仕方がないなぁみたいな顔で言った。
「そうなの?」
エディが聞き返す。
「そうみたい。魔眼には『蘇ったハイエルフ』って出てるよ」
ソフィアが答えた。
混乱する精霊王子がその声を聞いて目を丸くして周りを見る。
「確かに、ここの人達の人数と墓標の数からすると、ソフィアの言っていることが真実でなければ説明がつかない……」
驚愕の表情で精霊王子が呟いた。
「そうだ、王子よ。我が里人は復活した。
そして、その偉業をなしたのはそのお方だと復活した民が言う」
精霊王が息子に厳かに伝えた。
精霊王子が驚愕の表情でアッシュを返り見る。
当のアッシュは、なぜか別のことに興味があるのか、明後日の方向に視線を向けている。
「アッシュ様。皆様があのように」
堪りかねた聖女がアッシュに注意を促した。
クラスメイト達もアッシュに視線を向ける。
「え? 復活させたのは聖女だよ。俺じゃないよ」
あっけらかんとアッシュはそう答えた。
「え?」
何を言い出すとばかりに聖女が声を挟もうとする。
「いや、待って」と、アッシュが聖女の言葉を遮った。「いいかいマリア。俺は確かに魔法のきっかけを作ったが、復活の奇跡を実現したのはマリアの神聖魔法なんだよ。
だからこの里の人達を本当に復活させたのはマリアなんだよ」
アッシュが珍しく強い調子で説明した。
「確かに」
アッシュの言葉を肯定したのは魔眼のソフィアだった。
「復活の奇跡を成就したのはマリア・アイハーン。聖女様と魔眼に出ています」
そのソフィアの言葉にうんうんと頷くアッシュだ。
「そうだよ。精霊王様もハイエルフの女王様も聖女にひざまずいているんだと思っていたよ。
ひざまずくなら彼女だね。俺は補助をしただけだよ」
アッシュが伝える。
「納得はいきませんが、それは真実です。
偉大な王たるアッシュ様は、マリアさんの限界を突破させ、復活の奇跡を成就させたのは事実です。
つまり偉大なのはアッシュ様……」
レディがそこまで言った時、アッシュが割って入る。
「俺は補助だけね。だから手柄は聖女の物だからね」
念を押すようにアッシュは言った。
それは無理あるんじゃ? とばかりに皆はアッシュと聖女の顔を交互に見る。
「アッシュ様は、いつもそんな風に仰いますが、もし私の力が少しでもお役に立てたなら、嬉しく思います」
聖女はいつも変わらぬ謙虚の塊である。
「あれ?」
アッシュが突然声を上げて、空を指差した。
アッシュが照れてそんな奇行をしたのかと思った者もいたが、そうではなかった。
アッシュの指差す空に何かがあった。
「あれは何だ?」
剣鬼ライドが聞く。
人々の視線がそれを見つめる。
「おお!」
ハイエルフの女王が驚きの声を上げる。
「あ、あれは古龍」
物すごい速度で皆の方にやってくる。
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