第42話 会釈は笑顔をもたらすか?
姫騎士アテナは、ふと視線を向けると、そこには見慣れた風景があった。
───桜?
アテナは、馬を走らせながら背後を振り返った。
「姫様、いかがなさいました?」
騎士が聞く。
「いや、気のせいだろう」
アテナはしっかり前を見て騎馬を走らせた。
向かうのは戦場。
☆★☆
「もう大丈夫です。気を確かに持って頑張ってください」
聖女マリアは傷病兵の手を持って励ます。
彼女の全身から癒しのオーラが溢れ出し傷病兵を包み込んだ。
みるみる傷病兵の傷が癒えていく。
「ありがとうございます。聖女様」
傷病兵が涙を流して礼を言う。
マリアは魔力を使い切りめまいに眉をしかめながら、無理に笑いかける。
「マリア。無理をするな」
ギネスがマリアを気遣って言う。
「大丈夫です」
マリアはそう言うが、立つのも辛そうだ。
ギネスは心配そうに眉をしかめて見守っている。
「どうして、わたくしはこの程度しか……」
彼女の頭の中には、アッシュの魔法がある。
ロンベール王国の王都全域に桜吹雪を舞わせ、数えられない人々を癒した奇跡は、確かに存在した。
ここにいない人を思うのは無理もない。
彼女には、アッシュこそが自分に奇跡を起こさせた人なのだ。
☆★☆
精霊王子は、背後に強力なデバフの魔法を放つ。
攻撃魔法の不得意な彼にできる最上級の支援だ。
オークの大群は彼の術に巻き込まれて、その場に塊になって右往左往し始めた。
「王子殿下、すぐにここを……」
ハイエルフの戦士が叫ぶ。
「ああ」
精霊王子は、暗い表情で頷いた。
ハイエルフのサヤ女王が精霊王子の様子を心配して見つめている。
「サヤ殿。そやつの心配など不要。それよりもサヤ殿は少し眠られよ。
王子の魔法で少し時間が稼げるだろう」
精霊王が慰めるように言う。
「大丈夫です。娘はもう諦めました」
ハイエルフの王女は既に王女のことを念頭に置いていないと明言した。
オークに里を滅ぼされ、大勢の同胞が亡くなった今、自分だけが落ち込んでいる訳にいかないのだ。
ふと、目を上げると、遥かな丘をオークの大群が覆い尽くすように走ってくるところが見えた。
先頭の巨大なオークの叫び声がここまで聞こえる。
「人間を蹂躙せよ!」
その化け物は確かにそう叫んでいる。
「女王陛下、行きましょう。そろそろ魔導国の国境です」
ハイエルフの戦士が女王を促す。
☆★☆
【とある村にて】
「聞け! 私はアッシュ様の僕のミイである。
お前たちに、会釈と言う儀式を伝える。
これは、共和と安全の……」
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