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追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく  作者: seisei


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第36話 豚輩(ぶたはい)先生と桜

第36話 豚輩先生と桜


「やあ、おはよう」


 アッシュは伸びをしながら言う。


 昨夜は小人族のポクルの家に泊まらせてもらったのだ。


「おはようございます。聖人様」


「またまた、俺はそんな良いものじゃないけど大聖女マリア様なら良くしっているよ」


 アッシュが答えた。


「ああ、都に桜の花を降らせた」


「そうそう。凄いよね」


「凄い美人だとか」


 ポクルの目尻が下がる。


「普通です」


 レディが否定する。


 アッシュは一瞬何か言おうとして直ぐに黙る。


「そうそう。お礼にお掃除をしていくよ」


 アッシュが言う。


 それを全力否定しようとした時、アッシュの膝から


 ミイ


 鳴き声がする。


「お、可愛らしい猫ですな」


 ポクルが言う。


「うん。ミイちゃんだよ」


 アッシュが猫の頭を撫でながら言う。


「ほう。わたしも撫でさせてください」


 ポクルが手を出しながら言った。


 ところがその手をミイはまるで人のように軽くあしらった。


 ポクルは偶然かともう一度手を出す。


 するとミイは今度は強く手を払いのけた。それだけでなく、プイと反対側を向く。その動作の全てが妙に人間っぽい。


 さすがに完全な否定に、ポクルは涙目になる。それをアッシュとレディが笑う。



☆★☆



「アッシュ様。綺麗になりましたね」


 レディがお掃除後の村の様子を眺め回して言った。


「このお掃除と言うのはとても気持ちいいものですね」


 一緒にお掃除をしていたポクルが笑顔をいっぱいにして言った。


「そうだね。今日はこの辺で終わろう。じゃあ最後に……」


 アッシュはそう言うと、村の入り口に置いてある岩に何か掘り込み始めた。


 興味深々に覗き込むレディ、ポクル、村人達。


 アッシュが刻むのは、豚輩先生のマーク、そしてその横に桜の花びらのマークが刻まれていた。


「レディ。これは浄化のマークだよ」


 アッシュがレディに言う。


「了解しました」


 レディは頷く。


 アッシュは立ち上がると村人達に向かって


「じゃあ、お掃除は終わったから俺たちは行くよ。泊めてくれてありがと。ポクル、村のみんな、お世話になったね」


 挨拶するアッシュ。


「もう行かれるのですか。では、またお会いしましょう、お気をつけて」


 ポクルが少し残念そうに挨拶を言う。


 アッシュと一緒に村のお掃除をした良い子達もアッシュに大声で挨拶する。


 アッシュとレディの姿が次第に小さくなった。


 村人達は、アッシュ達の姿が見えなくなるまでずっと手を振っていた。


 爽やかな春の風が村に入ってくる。


 ……その時……


 ボム! と音がしたのでアッシュを見送るために集まっていた小人族達は、そちらを見た。


 そこには、猫耳の少女が立っていた。


「あたしはミイ。アッシュ様の忠実な信徒である」


 少女とは思えないような凛々しい声が響く。


「ミィ? え?」


 ポクルが驚きの声をあげる。


「村長、知っているのか?」


 別の村人が尋ねる。


「知っているもなにも、今朝、アッシュさんの膝に乗っていた子猫がそんな名前だった」


「おんなじ名前?」


「ああ、それに見た目も猫耳だし、面影がある」


「お前たちの様子を見ていて私は甚だ不愉快だ」


 ミイと名乗った獣人は叫んだ。


「おい、何が不満なんだ?」


 村人の一人が尋ねる。


「お前たちのアッシュ様に対する態度だ。あれでは、ただの人間に対する態度だ。そんなことが許されると思っているのか?」


 ミイが叫ぶ。


「いやあ。やはりダメだったか、土下座しときゃよかったか?」


 ポクルが狼狽えて言う。


「そうだ。あのお方はただの人では無い。見よ!」


 ミイが指さすのは村だ。


 人々は、ミイが指さす村を振り返って見、初めて村に異変が起こっていることに気付いた。


 今の今まで、アッシュの去る後ろ姿を見送り、猫耳娘ミイを見て村を見ていなかったからだ。


 そのほとんど一瞬と言っていい時間の間に、村は大きく変化していた。


 まず、村全体が美しく輝いている。光で照らされているようだ。


 強い日差しも無い元々陰鬱な雰囲気の村だったのが嘘のようだ。


 しかし、それよりも明らかな違いがある。


 それはたくさんの桜の木が満開の桜を咲かせていたのだ。


 それは絵にも表せられないほどの美しさ、神秘的な美しさだ。


 この世界に桜は存在しない。


 村人達は初めて満開の桜の木々を見たのだ。


「な、なんだ」

「村がピンクで覆われているぞ」

「なんて美しいんだ」

「うわー」

「凄い」


 村人は口々に感嘆の言葉をあげて大きく口を開けてその光景に見入っていた。


「我が神、アッシュ様が奇跡を顕現してくださったぞ。

 村は祝福された。

 盛大に絶賛せよ。

 神がご降臨され、村を清め神木と花を咲かせてくださったのだ。

 ひざまずけ!

 拝跪はいきせよ!

 感謝の祈りをあげよ!」


 ミイが荘厳な声を張り上げると、村人達は次々に地面に両手をついて土下座し始めた。


「神だ!」

「我が村に神が降臨された!」


 アッシュの知らぬ間に何かが起きようとしている。


 それがこの世界をどう変化させるのか誰にも想像できなかった。

もし面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

次回もアッシュ達の騒動をお楽しみに。

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