第20話 満開の桜さえ認める聖女の神聖な魔法は、王都の空を桜で埋め尽くすそうですーー俺は関係ねぇよ
雪のように桜が降っていた。
ひらひらとたくさんの花弁が舞っている。
今日は珍しい無風の昼下がり。
桜の舞い落ちる様は幻想的なまでに美しい。
聖女は、舞い落ちる桜の中で両手を広げる。
「?」
聖女がアッシュを見て首を傾げて見せた。
アッシュはニッコリと笑うと上を見上げた。
釣られて上を見上げる聖女。
更に桜の木を見上げる学園生たち。
その時、桜の大木が僅かに揺れる。
ザワ
誰も風を感じていない。
枝に咲き誇る全ての桜が枝から離れ、空中に舞い始める。
聖女の頭上に集まる桜の花たち。
桜の花びらは、次第に渦を巻き聖女の身体を覆うように飛び始める。
「奇跡」
「奇跡だ」
「神よ」
学園生たちがどよめく。
桜の花びらは聖女を取り巻いてぐるぐると回って飛んでいた。
驚きから我を取り戻した聖女が桜の花びらにそっと触れた瞬間。
花びらたちは、爆発したかのように周囲に四散し、青空に向けて飛び始める。
飛んで行くのは王都の空。
桜の花びらは、数をどんどん増やしながら王都の空を埋め尽くし、そして王都に桜の花びらが舞い落ち始めた。
学園生たちは唖然としてその様に見惚れた。
「おお、神よ」
誰かが呟き、その場に跪いた。
「聖女様」
そしてたくさんの生徒たちが続く。
「アッシュ君、この奇跡は聖女様の神聖魔法なの? それともアッシュ君が聖女服に仕込んだの?」
商人の息子のエディが尋ねた。
「自然現象だよ」
「「「なわけあるかい!」」」
周りの生徒から絶賛突っ込まれるアッシュだ。
そんな中
「桜、散っちゃったね」
魔眼のソフィアがアッシュに呟く。
「ああ、だから綺麗なんだよ」
アッシュが答える。
「そうなの? でもこの学園のシンボルが枯れたみたいで少し寂しいかな」
ソフィアが目を伏せて言った。
彼女は、楽しかった花見のイベントや聖女服の今回の出来事が頭に浮かんでいるのか。
「大丈夫。また来年咲くんだよ。桜は毎年、今の時期に花開くんだ」
その時、一枚の花びらがアッシュの目の前を飛んで行く。
アッシュがそれを目で追う。
桜の花びらはアッシュの目の前で止まる。
アッシュがニッコリと笑い頷くと桜は一度、礼をするようにストンと落ちてからススっと飛んで行くと聖女の肩に落ちた。
その瞬間、一陣のそよ風が春の香りを伴って吹いた。
聖女は長い髪の毛を手で押さえた。
聖女の肩に乗った桜の花びらは吹き飛ばされるのを堪えるかのように聖女の肩の上でいつまでも揺れていた。




