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追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく  作者: seisei


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第18話 聖女服、まかり受ける

「え? わたくしの服を?」


 聖女は、目を大きく見開いて聞いた。


「そうなの、アッシュ君がどうしても聖女様の服を改良したいんだって」


 ソフィアは、うんうん頷いて言った。


「何だか、お二人がわたくしの方を気にかけていると思っていましたが、それには理由があるのですよね」


 聖女は、ひとまずソフィアから説明を聞くつもりのようだ。


「聖職者の服は寄付するという慣わしがあるでしょ。

 アッシュ君はいつも世話になっている聖女様にお礼をしたいって言ってるのよ」


 ソフィアは、説明を続ける。


 しかし聖女の顔色は冴えない。


「アッシュ様にわたくしの服をお渡しするのは恥ずかしいです」


 それはそうだろうとソフィアも分かっている。


「もちろん、その服は私が責任を持って預かり、アッシュ君が作業している間、目を離さないから安心して」


 ソフィアが真剣な表情でそう説得する。


「わたくしのためにどうしてそんなにまで?」


 聖女が尋ねる。


「そもそも、あなたは崇高な聖女様の称号を持つ聖人じゃない。施しができるならと思っても不思議じゃないでしょ」


 ソフィアは懸命に説得する。


 しかし、聖女の顔色は晴れない。


「もし、聖女様が服を他の人に触られたくないんだったら、新しい服を作るってアッシュ君は言ってるけど、その方が良い?」


 ソフィアが上目遣いをして尋ねた。


 しかし、聖女は最後まで首を縦に振らなかった。



☆★☆



「何、服を?」


 半ば叫ぶようにギネスが聞き返した。


 驚きで目が飛び出してしまいそうだ。


「奴は、何を考えているんだ。マリアの服を貸せと?」


「いえ。話を持ってきたのはソフィアさんです。しかも服を貸すのが嫌なら新しい服を寄付させて欲しいと」


「聖職者の服を寄付する習慣は確かに聞いたことがある……」


 ギネスの顔も険しい。


「……しかし、奴は何を企んでいる」


 そんなギネスの様子を見た聖女は、心の中でこう囁いていた。


「決めました。

 わたくしはアッシュ様を信じます」



☆★☆



 同じ頃、アッシュとソフィアは聖女の服をどうすれば借りることができるかを相談していた。


「うーん。普段着を人に、しかも男の子に触られたくないよね。

 もし逆なら俺も恥ずかしいな」


 アッシュは半ば諦めモードだ。


「もし、新しい服を進呈しても聖女様は、教会に寄付してしまうわね」


 清貧なのも困ったものだ。


 悩むアッシュ。


 既に聖女が服を貸し出すつもりになっていることを知らない二人だ。


「諦める?」


 とソフィア。


「でも、汚れた聖女様を見たくないだろ」


「うっ、宝石を踏みつけるような気分」


「そう、彼女は宝石だよ。宝石を乗せるリングの架台も意匠を凝らしてこそ宝石は輝くんだよ」


「アッシュ君、そんなに反応しないでよ。なんだか聖女様に気があるように見えるわよ」


 ソフィアはアッシュをギロリと睨み付ける。


「絵は額次第でとても映えるんだよ。あのダブダブの聖女服で本当に良いって思ってるの?」


「え? 今度はデザインまでも?」


「聖女らしく、しかも聖女を引き立てる。そうでなくっちゃ、聖女服じゃないだろ」


「え? なんか方向がズレてない? 汚れを正すんじゃ?」


「もちろん、みんな同じことだよ」


「はい? 真面目に考えてる?」



☆★☆



 アッシュは渡された聖女服を不思議そうに見ていた。


「え? 嫌じゃなかったの?」


「恥ずかしいですが嫌ではありません。わたくしはアッシュ様を信じています」


 聖女はニッコリと笑いながら伝えた。


「ありがとう。精魂込めて良い物を作らせて貰うよ。気に入って貰えるといいんだけど」


 アッシュは聖女の服をしげしげと眺めながら言った。


「あの、やっぱり返してもらおうかしら……そんなに見られるとなんだか恥ずかしいし……」


 聖女が聖女服に手を伸ばそうとするのをアッシュが慌てて避けた。


「ダメだよ。もうどうするか考えているんだから」


 アッシュは鋭い目つきで聖女服を睨み付けている。


 聖女は手を出したり引いたりしている。



☆★☆


 アッシュは聖女服を穴が開くほど観察している。ソフィアはそんなアッシュを眉をしかめて見つめる。


「よく聖女が服を渡してくれたわね」


 アッシュは目を離すそぶりすらない。


「うーん、やっぱりこの服はかなり変だ」


 アッシュは首を左右に振りながら呟いた。


 ソフィアはアッシュの行動をじっと見ている。


「ここはどんな構造なの、どうやって着るかソフィアなら分かる?」


 アッシュは既に分析モードに突入しているようだ。


 ソフィアは少し眉間の皺を深くしてアッシュを黙って見ていた。



☆★☆



「ソフィア。実は頼みたいことがあるんだよね」


 真剣な面持ちでアッシュがいうとソフィアは二歩ほど退がる。


「え?」


 相当警戒しているようだ。


「ああ、ソフィアなら簡単なはずだよ。

 実は聖女の身体のサイズを測って欲しいんだよ」


 それは当然の要求なのだが。


 ソフィアはジト目になって口を尖らせた。


「アッシュ君、本当にやましい気持ちは一切ないと誓える?」


「え? そんなことよりも、彼女のサイズなんだけどこれを見て」


 アッシュはメモをソフィアに手渡した。


 それを見たソフィアは安堵のため息をついた。


 メモ書きにはびっしりと計測項目が羅列されていた。もちろんスリーサイズ。しかしそれはほんの序章に過ぎない。


「アッシュ君。肩甲骨って? 座骨って? そんなのが服を作るのにどうして必要なのよ」


 そしてアッシュの講義が始まる。


 しばらくしてソフィアは目の輝きを無くしていう。


「あんたを疑った私がばかだったわ」


 そんなソフィアに構わずアッシュはいう。


「ソフィア。真心で作られた物には魂が宿るんだよ。

 宝石は磨けば輝く。でもね本当に大切なのは輝かせる方法なんだよ」


 その言葉にソフィアが過剰反応する。


「え? 物に魂が?」


 ソフィアは身体を硬直させている。


「アッシュ君。それって禁忌の魔法か何か?」


「あははは、モノづくりの精神論だよ」


 アッシュは笑い飛ばした。


 訳が分からなくなったソフィアはただアッシュの笑い顔を見つめるしかなかった。


 アッシュが命ずると水晶の化身のレディが分裂し複数人になる。


 アッシュはあれやこれやとレディ達に向かって指示を飛ばす。


 作業が急ピッチで始まった。

 

ソフィア

 「困った人」

マリア

 「どうしようかしら……」

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