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追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく  作者: seisei


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第15話 不平を叫ぶ大臣にはふさわしい“ざまあ”退場が待っていた ――文明は爆発だ!

「王にこのような汚いところに座れと言うのか」


 大臣が叫んだ。



「そうだ。武王様は会場の中心に座られるべき」


「そうだぞ、そんな当たり前のことも考えておらんのか」


 大臣、騎士団長、他の重臣達が揃って不満を表して怒声をあげる。


 それぞれの王子、王女に率いられて入場した王、女王達とその家臣達は、その幻想的なまでに美しい桜の大木に息を飲み、しばし我を忘れて案内されてきた。


 そして見た、桜の下にはムシロが広げられていたのだ。


 それを見た重臣たちの騒ぎだった。


 その時……


 ぷー


 間の抜けた音が会場全体に鳴り響いた。


 奈落ぷーだ。


 そして騒ぎ立てていた大臣達が会場から消えた。


 消えた大臣達を見て武王が聞く。


「アテナ。大臣が……」


「お父様。大丈夫ですわ。大臣達は門外に飛ばされただけですから」


「あの間の抜けた音は何だ?」


「あれは学園では有名な『奈落ぷー』、不合格の合図です。大臣は楽しくなかったのでしょうね」


 アテナの説明に武王は黙る。


「怒ると負けのようじゃな」


 王はポツリと言った。


 ニッコリと笑った姫騎士が「はい」と返事をする。



【一方ハイエルフと精霊王達は……】


 ぷー、ぷー、、


 間の抜けた音が連続して響く。


 ハイエルフの部隊長が消える。


「女王陛下。彼らは、争いの種を蒔こうとしたので退場させられたのです」


 シア王女が説明した。


 サヤ女王の目が吊り上がる。


「お母様。退場させられますよ」


 シア王女が注意した。


 ハッとするサヤ女王。


「なるほど、これは面白い」




【一方、魔導王陣営では……】


 ぷぷぷー


 奈落ぷーが遊んでいるかのような音を鳴り響かせる。


 魔導王の息子バインドが消えた重臣を見て笑い出した。


「ぷぷぷ……無粋、無粋、はははは」


 息子の愉快そうな笑いに魔導王は憮然とした顔を見せる。


「親父殿。怒るな怒るな。ぷぷぷ……ははは」


 バインドは高笑いの声を高めた。


 魔導王ゴードはバインドに案内されてとある一角に家臣団と共に座る。



【一方ヤクザ達……】


 ヤクザ達はアッシュが案内して既に座っている庶民達の一角が気に入った様子だ。


「どけ庶民どもが……」


 ヤクザの幹部の1人が庶民の集団を追い払おうとした。


 ぺー


 もうぷーですらない。


 間の抜けた音に思わず総長と若頭が渋顔になる。


「ここは我々には不利です」


 若頭が呟いた。


「仕方ない。みなさん、我々はこの隅の方で静かに様子を見ましょうか」


 総長が弱りきった表情で言った。


 そこにアッシュが腰の曲がった爺さんとやってくる。


「やあ、隣の屋敷の爺さんもきてくれたんだね。

 ありがとう。

 楽しんでいってね」


 総長は、アッシュを笑顔で見る。


「よくもまぁ、これだけ集めたね。少年」


 総長は周りを見渡して言った。


「自由が人を集めるのかな?」


 アッシュも不思議なのかそう言って首をひねった。


「そうかもな。強制参加だと、絶対に出てこない奴がいるもんだよ」


 総長は何かに納得したように頷いた。


「総長さんもそんなに楽しく無きゃ帰って良いんだよ。

 なんか悪かったかな。

 誰でも参加可能って言ったけどこんなに大事になるとは……ノリで催しだけのただの学園祭なのに……」


 アッシュは頭をかきながら言った。


「そうそう。そうやって素直に謝られると悪くない気がしてきたよ。どれ花見とやらを楽しむとするか。

 酒と肴を出しな」


 総長は部下に命じた。


 彼らは料理を持参していたのだ。


「いいね。総長さん。一つ頂くよ」


 アッシュはそう言うとヤクザの幹部が差し出した串揚げを二つ取って一つを背後の腰を曲げた老人に渡し、もう一つを自分が食べ始めた。


 誰かが唄い始めた。


 商人の息子エディだ。


 彼にそんな才能があったのか、なかなかうまい。


「やあ、花見の始まりだ!」


 アッシュが叫ぶ。


 アッシュは庶民代表の老人を助けて座らせるとその隣に陣取った。


 老人にエディの自慢をしている。


 催しの最初は商人の息子のエディ。アッシュらしい配置。


 総長はエディについての自慢話を聞いて密かに頷いた。


「若頭。あいつには身分や私達の脅しなど意味が無いらしい」


 総長が呟いた。


 学生達が拍手喝采し、庶民やヤクザ達は声援を送った。


 音楽の音量が上がり、エディが楽しげに歌う。


 武王は、周りを見回しながらアテナに言う。


「これは本当に美しい木だな」


 アテナが頷く。


「でもこの綺麗な花はすぐに散ってしまうのです。1年の中で僅か、二週間程度の光景だそうです」


「なんと、それは惜しいな」


 武王が残念そうに言った。


「いえ。アッシュによるとそれが風流なんだそうですよ」


 アテナは笑う。


「二週間限定の美しさ、それが風流か……」


 武王の言葉は隣の区画に陣取る魔導王に届く。


「武骨なジジイには風流は似合わないな」


 魔導王の言葉が耳に入った武王の眉間に青筋が浮かびあがる。


「お父様。ぷーですよ」


 アテナが注意する。


 そうこうするうちにも、あちらこちらでぷー、ぷーと音を立てて消えて行く重臣達やヤクザたち。


 その様を眉を顰めて見つめる武王、魔導王、女王、精霊王。ヤクザの総長。


「無粋、無粋」


 揶揄うのは風流男のバインド。


「さあ、これから演芸会を始めるよ」


 アッシュが宣言。


「まず俺がブレイクダンスを披露するよ」


「ブレイクダンス?」


 聞いたのは商人の息子のエディ、どうやらサクラ役はエディだったようだ。


「そう。見て、そして感じて」


 アッシュが叫ぶ。


 アッシュが合図をするとバインドが派手な音楽を鳴らし始める。誰も聞いたことのないリズミカルな音楽だ。


 アッシュは周りに手拍子を要求。エディ、剣鬼がアッシュの両脇で手拍子を大きく披露。


 会場に手拍子が広がる。


 アッシュが中央のお立ち台に飛び乗る。桜を背景に派手なローブが宙に舞って鮮やかに広がる。


「アッシュが歌い始める」


 争う人々に

 君の言葉を伝えよう

 彼らは気づくはずさ

 ……

 僕らは一つ

 僕らは兄弟

 僕らは明るい未来を見る

 分かち合おう


 それは去りし世界の歌


 見たことのない、人離れした動き


 聞いたこともない旋律


 それは、殴られたような感覚を皆に与えた。


 王、女王、重臣、ヤクザ、民衆、人も精霊も、女も男も、皆が体を硬直させてアッシュのブレイクダンスに見入った。


 花とブレイクダンス


 それは現代日本の文化さえも覆すような取り合わせ。


 人々は、狂ったように踊るアッシュに我を忘れて見入る。


 そして静寂が訪れる。


 全員が肩で息をするアッシュを見つめる。


 あまりの衝撃に拍手、喝采すら無く会場はどよめいている。異様な熱気が会場を覆い尽くしていた。


「やあ、ありがとう」


 アッシュの言葉


 次の瞬間、宴会場が爆発するような歓声と拍手で埋め尽くされた。


「凄いぞ!」

「小僧、いいぞ」


 大人たちも、学生たちも一緒になって拍手喝采を送った。


 アッシュは笑いながら手を振って応える。


「次はバインド頼むよ」


 手を振りながらアッシュが次を紹介する。


 バインドはアッシュに負けず劣らずの派手な衣装でお立ち台に飛び乗る。


 両手を広げ、色鮮やかなさまざまな魔物を召喚する。それはスライムだ。


 色鮮やかなスライムと一緒に踊り出す。


 派手な音楽を鳴らす。


 それは前世の音楽。アッシュに教えられた音楽だ。


 派手に踊り狂う魔物とバインド。


 アッシュと一緒にアレンジした踊りだ。



☆★☆


 アッシュ、バインド、剣鬼、商人の息子エディの四人で企画された催しが進む。


 人々は初めて見る催しと美味しい料理、それに桜の背景に酔いしれた。


 そして、ついに全ての催しが終わる。


 音楽が止み、会場は静寂に包まれた。


 音もなく桜の花が舞い落ちる。幻想的な桜の美しさ。


 とっくに日が沈み、あたりは闇に閉ざされる時間だ。


 桜の巨木だけは魔法の灯りに照らされて、夜桜の美しさを際立たせていた。


「みなさん。よくここまで残られました。

 ここに残られたみなさんは、みな平等に勝者です。さぁ、自分たちに拍手、喝采だ!」


 アッシュの口上と共に学園生たちが拍手喝采をあげる。


 アッシュは両手を振ってそれに答える。


「では、みなさん。最初に公表していたご褒美を、ついに披露します。

 それは、我ら一年Sクラスの美女四人と水晶の化身の五人による舞踏です。

 その可愛さ、愛らしさに魂を揺さぶられてください。

 まさに命にも等しいご褒美です」


 一瞬、会場に何それみたいな反応が湧きそうになる。


 しかし、美女たちの出自を知る家臣団が盛大に拍手喝采をする。学園生たちも彼女たちの踊りを見たいのでノリノリで大興奮し、場が再び盛り上がる。


 どんな仕掛けなのかお立ち台が左右に分かれると下から美女たち五人が勢揃いして地面からゆっくりと上がってくるではないか。


 次第にお立ち台よりも高い台になる。


 美女たちが合唱し始める。


 さくら さくら

 やよいの空は 見わたすかぎり

 かすみか 雲か

 においぞ いずる

 いざや いざや

 見にゆかん


 美女達の歌と踊りは完成されたものではない。しかしその淑やかで恥ずかしそうな姿は、清々しい雰囲気を伴い、見ている皆を魅了した。


 学園の生徒達の盛り上がりは凄まじく、大声援が巻き起こっていた。


 王達は、その圧倒的な盛り上がりと真ん中ではにかんだように拍手喝采に手を振って応えている美女達の様子を唖然と眺めていた。


「ワシは何を見せられているのか……」


 武王がポツリと呟いた。


「妾は何を見ている?」


 サヤ女王が呟く。


「予は何を見ておる?」


 魔導王も同じ言葉を漏らす。


 精霊王は黙して語らず。ただ目だけが大きく見開かれていた。


 王達の呟きに答える者は無く、ただ静かに花びらだけが舞い、夜桜が夜空に幻想的な美しさを広げていた。

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