悪役令嬢に転生したけどバッドエンドをぶっ壊しましたわ!!
おかしい。私は悪役令嬢モノのラノベを見ながら歩いていて、トラックに轢かれたはず。
周りを見れば、そのラノベの挿絵にあったシーンが目の前で繰り広げられていた。
そう、私は気づいたら、ラノベの世界に転生していた。しかも悪役令嬢。
よりによって、婚約破棄イベント五秒前。
ねえ、神様? どうしてこうなったの? 転生ガチャ、絶対外れ引いたでしょ?
「もううんざりだ!セリス嬢、君との婚約を破棄する!」
はい出ましたぁ! お約束の名台詞ランキング殿堂入りのセリフぅ!
――が、問題はそこじゃない。殿下、なぜ公衆の面前で言っちゃうのよ!
こっちは着たこともないドレスの裾で転ばないよう必死なのに、破滅フラグだけは全力で投げてくるじゃない。
「セリス様、なんてことを……!」
出た出た、ヒロインの涙。
キラキラ輝いてて、背景に花まで飛んでる。ずるい。こっちは目の下にクマよ? 寝不足で。
今だけはこれを書いたやつを恨むわ……!
でもね、私はもう知ってる。このあと私は「嫉妬に狂った悪女」として処刑されるの。
はい、内容通り。ラノベだとここでバッドエンド直行。
――だがしかし。私はもう決めたのだ。
バッドエンドなんてごめんだ。今日から私は、お約束を破る女になる!
「殿下。婚約破棄、結構ですわ!」
「な、なんだと!?」
狼狽えている姿、見事に滑稽ですの!!
あ……心まで悪役令嬢に。
「ええ、むしろ願ったり叶ったりですの! 私、あなたの名前、三日で忘れられる自信がありますもの!」
ざわ……。
おや? 周囲がざわめいておりますね? 悪役令嬢、想定外の発言をした模様。
「で、ですが……セリス嬢、貴族令嬢としての立場が――」
「立場より自由ですわ! それに私、商才のステータスがカンストしてますの! 自分で稼ぎますわ!」
ええ、今思いつきました。
でも勢い大事。ラノベの運命なんて、勢いで殴れる。多分。知らんけど。
殿下が口をパクパクしてる。ああ、魚みたい。かわいくないけど。
ヒロインも涙目でこっち見てる。ごめんね、あなたのルート、私がぶっ壊したわ。
「セリス嬢、もう二度と私の前に現れるな!」
「安心してくださいまし! あなたの顔、もう記憶から削除済みですわ!」
――そして私は颯爽と退場した。ドレスの裾を翻して。
……裾、踏みましたけどね。思いっきり。
―――――
それから一年後。私は「悪役令嬢アルファセリス」改め、「伝説の商人セリス社長」になっていた。
ヒロインが涙で世界を救うタイプなら、私は請求書で国を動かすタイプよ!
「社長! 王国から新しい契約書が届きました!」
「また殿下かしら? “婚約を結び直したい”とか書いてたら、金利十割つけて返して差し上げて」
私、もう悪役じゃない。
でも“悪辣な商人”としては大成功中。
――結局、悪役職は天職だったのかもしれない。
……ねえ神様。
今度転生するときは、帳簿と計算機付きでお願いしますわ。




