ひよこクエスト〜文化祭でたまごを投げ合ったらうっかり魔王を引き当てました〜
『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品です。
グシャリ。敵陣にたまごが当たった。
光が放たれ『ヒュドラ』が出てきた。巨大な胴体に九つの首。吐きかける毒が敵を薙ぎ倒す。
「やった! いいのに当たったぞ!」
俺たちの高校では文化祭の出し物で『たまご合戦』を行う。
2つのチームに分かれてたまごを投げ合う。
たまごは全て同じ形状をしている。物に当たると割れて中から怪物が出てくる。何が出るかはわからないので通称『たまごガチャ』と呼ばれている。
『生まれたて』なのでそれ程の威力はない。高校生でも何とか防ぐことができる。
敵陣は瞬時に回復魔法唱えた。うまく攻撃を躱された。
敵にたまごを投げられる。中からドラゴンが現れて炎に焼かれる。水の壁でなんとか凌いだ。酸素を遮断して消火する。
たまごは交互に投げ合い3分経っても投げられないと相手のターンになる。
ユニコーンの角に突かれ、スフィンクスの足に踏まれ、夢魔にMPを吸い取られた。
狼男が敵陣に噛みつき、ケンタウロスが敵を引きずり投げ、ネフィリムが棍棒で敵を殴り倒す。
両者、互角。手持ちのたまごはそれぞれあと3個。
「いいの出ろよ……」
俺は渾身の力で敵陣にたまごを投げた。たまごが割れて光が放たれる。
ピヨピヨピヨ!
ホワホワした産毛の黄色くってちっちゃい鳥が現れた。
ヒヨコじゃん!
敵に向かって「ピヨピヨピヨ! ピヨピヨピヨ!」とさえずる。
負けた〜!
攻撃力0だ。次のターンでドワーフの一撃でも喰らえば、俺らのHPは『0』になる。
ところが。
敵が一斉に崩れ落ちた。地面に腹這いになってヒクヒクしだした。
「あのヒヨコ。敵陣のHPを全て吸い取りました! 防御も剥がれた。相手はまる裸です!」
仲間のメガネが叫んだ。
3分たっても敵は立ち上がれず、俺らのターンになる。
投げたたまごは智天使で、敵を一発でくだしたのだった。
「すげぇ!」「あれ何!?」
メガネが魔法辞典をめくる。
「あった! あのヒヨコは『魔王』の幼体ですね。出る確率は一兆分の一!」
「「「…………は?」」」
「え? じゃああのヒヨコ大きくなったら……」
「魔王になります!」
「生まれたばっかであのパワーなのに大きくなったら……」
「世界を滅ぼしますね!」
うっわーーー!!!
ヒヨコ! どこ行った! 早く捕まえてなんとかしないと!
勝ちどきを挙げている間にヒヨコは行方不明になっていた。
敵も味方もない。その場で『ひよこクエスト』が結成された。なんとしてでもアレを魔王にしてはならない。
俺たちの冒険が始まった。
お読みいただきありがとうございました!
気に入っていただけましたら、評価ボタン(★★★★★)ポチッと押していただけると嬉しいです!
☆☆日間1位☆☆週間6位☆☆月間34位☆☆四半期80☆☆感謝☆☆
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
ヤッター!!応援ありがとうございます!!