人恋ひそめしはじめなり
「はぁ・・・。」
「ねぇ、内親王様、また溜息を。」
「も、もももしかして・・・気のある殿方とか!」
「「「「「キャーーーッ!」」」」」
侍従を含め宮中の女性は色恋沙汰が大好きだ。
それは恐らく数百年前から変わらない。
あまり外へ自由に出ていけない女性の暇つぶしには最高の話題なのかもしれない。
「え、ちょっ、そんなこと・・・」
私の中で押し倒された時のことが蘇った。
「ないわよ・・・。」
「「「「キャーーーーーーーッ!!!」」」」
「その殿方のお名前は!?」
顔の色を変えて食い気味だった。
皇族の恋は高貴さ故の憧れもあってか何かと噂が多い。
それだけ好まれるということだ。
「い、居ないわよ!だってアイツは・・・」
「『アイツ』とは!?もしやその殿方なのでございますね!?」
「筒井筒のような可愛らしい恋ですね!」
もはや私が反応を示すほどに彼女たちは色めきたってしまう。私たちは幼なじみじゃないから『筒井筒』では無いと思うが・・・。いや彼女達にはそう見えるからいいらしい。
実際はそういうことは分からない。だけど彼の話をしたり考える時は弱冠心がポカポカするような気がする。確かにそれは今までにない感覚だ。
だが、私はそれをまだ『恋』と名付けるにはまだ早すぎる気がした。
(あれ、でも・・・私、彼のこと四六時中考えてる・・・エエッ!?)
途端最高潮に熱くなる。
よくよく考えたら彼との逢瀬や『伊勢物語』のような禁断の恋で逢い引きして駆け落ちしようとする場面を私と彼に置き換えて妄想したりと・・・。
(待って待って!えぇ・・・、ありえないッ、そんなことッ!あぁもう!ダメだ・・・私・・・)
その時気づいた。私はこの気持ちを知らなかっただけで自分でよくよく行動や考えを振り返ってみるとまさに侍従たちの言っているようなことになっていた。
「好きになっちゃってる・・・」
パタン・・・
「な、お、おまッ・・・!?」
「ええ!?お、お父様!?」
気づいたら酷く動転した表情で父の雅仁親王が立っていた。
「式子、まさか好きな男ができたのか!?」
「い、いや!そんな!?」
「ぐおぉぉぉぉ!!!許さん!どこの男だァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」
お父様が酷くお怒りだった。
「皇位などには興味は無い!だが、お前をどこの男にもくれてやるか!そのためなら帝にも大天狗にもなってくれよう!討伐してくれるわ!!!」
「お、お父様!?落ち着いて!?」
この後肩を落として背景に藍色でも醸し出しているような悲しい表情をして戻って行った。
(結局、誤魔化しきれなかったじゃない・・・。)
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「ふぇっくしょんッ!!!あれ?冬でも風邪を引かなかったのにどうしたんだろう・・・。」
朱若は知らず知らずに後の大天狗を生み出したことを死ぬまで後悔することになるのだった・・・。




