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笹竜胆之影武者〜影の勇弟(ゆうてい) "源義門"〜(真 転生源氏英雄伝)  作者: 綴 K氏郎
序章 大蔵合戦、それは保元へのいばら道
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不解なる記憶の断片

久々に投稿です。

待たせてすみません!

「ところでお主、ここには用があってきたんじゃろう?」


蓮忍の促しでようやく朱若は用事の原点に立ち返った。


「ああ、あんまり驚かずに聞いて欲しいんだけど・・・」


正直シラフで言うには恥ずかしい。

なんて言うか稚拙な方向で。


「ここに天狗っている?」


「おらん。」


(そ、即答ですか・・・)


さすがに反応速度と若干の冷めた目には心を抉られるものがある。


「全く、押しかけてきたのが義朝の息子だと聞いてあげては見たが、まさか妖のことだとは・・・。ここを大江山などと勘違いしておらんか?」


「す、すみません・・・。あと申し訳ないのですが、無知な私めに大江山について教えていただけないでしょうかぁ?」


「なんだ、やけに下手に出た猫なで声かと思ったらそういう事か。そんなに恐れなくても良い。別に大江山のことを知らないものが京にいるのかと驚いてな。」


「何それ、そんなに有名なの?」


「過去に鬼が三度出現して倒された山じゃよ。」


「えぇ・・・」


自身より大概なことを言う蓮忍。


「あくまで伝承じゃ。そんな顔をするでない。それに三つの話のうちの一つはお主の先祖の筋の話じゃぞ?」


「先祖?」


「酒呑童子の件は知っておるな?」


「え?そりゃ知ってるけどさ・・・」


酒呑童子、かつて鬼達を束ね人間を害そうとした大酒飲みの逸話を持つ鬼の頭領である。


「酒呑童子を退治したのはお主の直系先祖の源頼信の兄、源頼光。「らいこう」と言われた朝廷の鎮守様じゃ。」


「いや、初耳だ・・・。酒呑童子ていう妖怪みたいやつがいたって話は聞いたことあるけど、それは知らなかった。」


しかし朱若の高祖父八幡太郎義家でさえ大叔父にあたる。


「にしたって、もう百年以上も前の話なんだろ?そんな話に信憑性を持たせるなんて仮定するなんてさぁ?」


できるだけ、信じられる出典に近づきたいと焦っていたのかもしれない。朱若の焦燥に気づいたのか蓮忍の顔は渋い。


「一体誰か死人でも引きづり出して来なくてはならん。所詮伝承とはそんなもんよ・・・。仮に大宅世継なる怪老でもいたら不思議でもないがな。」


「大宅世継?誰だそりゃ?」


途端蓮忍が渋顔が呆れ顔になった。


「武士の家ゆえか読んだことはあるまいか?、『大鏡』に出てくる語り部の役割を与えられた人間を超越した寿命を持つ架空の人物、とでも言えばよいか。まぁ、諦める気にはなったかのう?」


「・・・。」


朱若が膠着したまま動かない。


「ん?大丈夫か・・・」







「ソイツだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」







「は?」






いきなり朱若は立ち上がって蓮忍の方に両手をつく。


「その大宅世継ってやつはどこのどいつですかどのような奴かもっと詳しく教えてくれよ!」


「いや、待て、一旦落ち着け!儂は言った!その御人は架空であると!」


それもそのはずだ。大宅世継はあくまで歴史書『大鏡』の語り部として『作られた存在』。いるはずなんてない。


「いや、やっぱ架空で構わん!」


「どっちじゃよ!?」


さっきは伝承で渋った癖に架空の人物には過剰に反応を示したのにはさすがに蓮忍も朱若の情緒を疑わざるを得ない。


「色々そなたを説き伏せるのは難解のようだ。もう諦めがつくまで好きなだけやれい!ほれ、」


僧侶らしい少し髪が生え始めたおつむをかきながら蓮忍は朱若に少々分厚めの書を投げる。


「ん?これは?」


「『大鏡』の写しじゃ。」


「へッ!?」


そんな重要な歴史書を投げられたのかという事実も、目当ての本もあるという事実にも朱若は動転した。


「なに、たまたま祈祷の関係で貴族とやり取りでな。書の練習と言ってこの書写をくれた。儂は元々目を通していたから、新たに読む必要も無い。読むといい。一応儂が貴族から貰ったことになっているから呼んだら返せよ。まぁ、世継の情報は前半だけ読めばわかるからすぐにおわるがな。」


「すげー助かる!じゃあ、ここでさっと読むわ!」


その場にうつ伏せに寝転ぶ。


「えーっと、なになに?『先つころ、雲林院の菩提講に詣でて侍りしかば、・・・』。」


古文は高校時代得意だった。というのが朱若の前世・・・、ではあるんだが、何分以前歴史書を読んでいて驚くほどに読めたのが理由だ。しかもどうやら熱田大宮司を実家に持つ有力貴族出身の由良と話してみたが、この時代の人々とは訳解の感覚が違うらしい。朱若は現代人のように古典の助動詞の文法や古典単語からの意味を絞り出して訳するのに対して、由良を始め一般の教養を持つ貴族はもはや息をするように分かるらしい。


(強烈の時代錯誤を感じたんだよな・・・。俺は一苦労だが・・・。)


そんなことを考えながら、進んでいく。


「『「いくつといふこと、さらにおぼえ侍らず。

ただし、己は、故太政大臣貞信公、蔵人少将と申しし折の小舎人童、大犬丸ぞかし。

ぬしは、その御時の母后の宮の御方の召し使ひ、高名の大宅世継とぞ言ひ侍りしかしな。

されば、ぬしの御年は、己にはこよなくまさり給へらむかし。

自らが小童にてありし時、ぬしは二十五、六ばかりの男にてこそはいませしか。」


と言ふめれば、世継、


「しかしか、さ侍りしことなり。さてもぬしの御名はいかにぞや。」


と言ふめれば、


「太政大臣殿にて元服つかまつりし時、『きむぢが姓はなにぞ。』と仰せられしかば、『夏山となむ申す。』と申ししを、やがて、繁樹となむつけさせ給へりし。」』・・・。」


ーーーーーーーーーーー現代語訳ーーーーーーーーーー


「幾つということは、全く覚えておりません。

しかし、私は、藤原忠平が、蔵人の少将と申しあげた頃の小舎人童、大犬丸であるよ。

あなたは、その宇多天皇の御代の母后の宮の皇太后様の召し使いで、有名な大宅世継と言いましたなあ。

そうすると、あなたのお年は、私よりはこの上なく上でいらっしゃるでしょうよ。

私がまだほんの子どもであった時、あなたは二十五、六歳くらいの一人前の男でいらっしゃいました。」


と言うと、世継は、


「そうそう、そうでございました。

ところであなたのお名前はなんとおっしゃいましたか。」


と言うと、(繁樹は)


「太政大臣のお屋敷で元服いたしました時、(貞信公が)『おまえの姓はなんと言うか。』とおっしゃいましたので、『夏山と申します。』と申しあげたところ、そのまま、(夏山にちなんで)繁樹とおつけになられました。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(これじゃないか!?藤原忠平は今から約200年前の人物で藤原道長の曽祖父だ!だとすると推定160歳・・・。恐らく当時の宇多天皇の母親の秘書をしてたってことだから、やっぱり宮中に行くと分かるかもしれない。もしくは近くに住んでるとも考えられなくもない!)


「これありがとう!そんじゃ、俺行くよ!」


「ん?そうか。なかなか早かったな。その歳でようやるではないか。」


「まぁ、色々とな。」


扉を突き破るように鞍馬寺を走り抜ける。




「目指すは宮中だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」




この時、朱若は甘く見ていた。

宮中とは一筋縄では行かない場所であると・・・。

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