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笹竜胆之影武者〜影の勇弟(ゆうてい) "源義門"〜(真 転生源氏英雄伝)  作者: 綴 K氏郎
序章 大蔵合戦、それは保元へのいばら道
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新米女房 智のつれづれ日記ーーー2

「今日一日ようお働きになって。それでは明日のために身体を休めてくださいね。」





ーーーーー



「あ〜、今日も疲れたぁ〜。」


「ふふ、智ちゃんは外働きに慣れていないからしょうがないわよ。これからも力になるからどんどんお姉さんを頼りなさい!」


あまり歳が離れている訳でもないのに常盤さんはやっぱり頼もしい。


「ありがとう〜、常盤さん!早く仕事に馴染めるように頑張ります。」


「その意気よ。ああ、そう。これから私、義朝様にお呼ばれになっているから行ってくるわね。」


「はい!また明日!」


手を振って見送った常盤さんは凄くいい顔をしていた。


(凄いなぁ、常盤さん。あんなに働いたのにまだお世話だなんて・・・。時間外労働なんて私は実家でもゴメンだったのに。)


なんてことを考えながら屋敷の中にある使用人の宿舎へ続く廊下を渡っていると、見覚えのある後ろ姿が廊下の目立たない隅に立ち往生していた。


(ん?あれは・・・)


少し乗り出す形でその廊下をよく見てみる。


「げっ、沙羅さんだ・・・。それとあと一人いるような?」


思わず苦手意識で半ば乗り出した身体が引っ込むも気になるのでよく目を凝らした。


(あまりの目立たない格好のお武家様?)


気になると言ったら気になるがそもそも沙羅さんが、今まであのような武士と会っていた所を見たことがなかった。


(いつも無愛想な沙羅さんが・・・。も、ももッ!?もしかして逢い引きのお相手とか!?)


色恋なんて源氏物語とか落窪のすみれの君の話とかでよく見たのだがもちろん私もそんな恋に憧れないわけが無い。


(そして出会いも無い!のだけれども・・・。)


「やっぱり逢い引きって憧れちゃうな・・・。」


「何に憧れているんだい?」


「う、うわッ!?」


甘い囁きが耳を撫でるように馨しい。


「とととととと朝長様じゃないですか!いきなり驚いて申し訳ありません。」


「あはは、魔が差して君の後ろからちょっかいをかけた僕にも非があるしね。ここはお互い様だ。で、何に対して憧れているんだい?」


澄ました笑みでこちらを見上げてみせる。


(なな、なななななななななッ!?)


急速にお湯が湧くような熱さに襲われる。


「お、恐れながら朝長様?」


「なんだい?」


とても遠い目上の人なのでかしこまって言う。


「あの、か、、、からかってます?」


「何がだい?」


笑ってあくまでとぼけようとする。


(ぐぬぬ・・・。天然だと思って油断した・・・。)


「距離・・・。」


「ん?」


「きょッ、距離!顔の距離!近すぎませんか!?」


遠いはずの公達が今にも鼻がくっつきそうな距離まで顔が近づいてみせるのだ。


「ん〜。まあ、僕は自分が考えた距離で人と話したいからね。どうやら君は不思議なことに僕と相対すると顔を俯けたり、頭を垂れたりして視線を逸らそうとするからね。いや〜、やっぱり君は面白いね。」


(こ、この人はあああああああぁぁぁあッ!!!!!)


「じゃあ僕はそろそろ部屋に戻るよ。また明日ね、『智』。」


「は、はい・・・。」


また明日も仕事かと普通は項垂れて液状化しているこの頃だか、今日はどうにも違っているようだ。


(あ、熱い・・・。)


この熱さはなんだろう。鼓動も身体全体が波を打つように激しい。しかし、智は無知だ。そんな分からない答えを追いかける前に一つ言えることがあるとするならば、


「また明日のあとの、『不意打ち』は卑怯ですよ・・・。」


その日の空は黄昏時。橙でほのかに染まる紫雲が美しかった。


「う〜ん。でもなんか忘れてるような・・・?」


その時廊下には誰の影もなかった。

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