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笹竜胆之影武者〜影の勇弟(ゆうてい) "源義門"〜(真 転生源氏英雄伝)  作者: 綴 K氏郎
序章 大蔵合戦、それは保元へのいばら道
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下総、千葉の博識爺、相馬という家

気になることや感想など気軽にコメントしていただけるとモチベーションに繋がるので暇な方は是非に!


言葉の意味の差異や誤字脱字の御指摘も大変助かるので見つけた方はどんどんよろしくお願いします。

「どうにか、着いたみたいだな。」


要らぬ諍いをもってこの疲労感のまま千葉の待ち受ける領地に到着した。


「これはこれは!大変な目に会われましたな。ゆっくり休んでから出立すると致しましょう。」


出てきたのは白みがかった長い髭を蓄えた直垂の老人。


「助かるよ、常胤殿。」


千葉常胤。下総国に勢力を張る坂東平氏の一族で特に勢いのある大勢力に発展した領主だ。


(義朝と対立してたけどまぁ、よくもここまで忠実になったもんだな。)


実はこの千葉はかなり最近まで義朝と対立していた。例のアレである。


「遠慮なく常胤とお呼びくだされ。長かったのう。義朝様ともかつては色々あったがここまで良くしてくれた恩はこの馳水海(現在の東京湾)よりも深い!今思えば義朝の介入は天が授けた加護だったのかもしれぬ。」


勿論若き日の義朝が関東で基盤を築くためにあちこちで争いに介入してかなり迷惑をかけまくったアレである。


(千葉は単純だな。義朝が手のひら返したのも知らずに、、、)


朱若の憐れみを露とも知らず常胤は感涙したまま話し続ける。


「まさかあの憎き藤原親通の孫の親政があろうことか源氏の御曹子を傷つけなかろうとは許せんことよ。この千葉常胤、身命を賭して朱若様をお守り申す。」


「よろしく頼むぞ!千葉の爺!」


「もったいなきお言葉ッ!」


常胤は号泣してしまった。


(涙脆いのは歳のせいだろうな。俺とて仮にも源氏の血筋。そいつに爺なんて呼ばれたら感激ぐらいするわな。)


自身の身の上と複雑な心境をあらわには出来ないが千葉のためにもここは言わないことにした。


「おお、そうだ。季邦!」


「はい〜〜〜!」


走って傍に畏まる。


「いや、そこまで焦んなくていいから、、、それよりさっき貰ったあれを。」


「ああ!分かりました。アレですね?」


大きな箱を携えて季邦が戻ってくる。


「千葉の爺には世話になるからな。貰ってくれ!」


「はてはて?これはっ!」


千葉が空けた箱の中身は魚だった。


「おおっ!とても脂が乗ってて美味しそうですなぁ!鰯ですか?」


「ああ、九十九里浜の漁師たちの好意で頂いた。千葉は美味い魚を食べなれているかと思うが是非とも食べて欲しい。」


「そんな、私が魚に目がきくとは恐れ多い。是非美味しく食べさせていただきます。ところで、この長櫃の魚の周りに満たされた冷たいものは雪にございますか?」


常胤は長櫃に満たされた雪に目がいった。


「いい所に気づいたな。そうだ、これは雪だ。」


「しかし、魚を冷やして運ぶほどの距離にございますか?」


「確かに、魚は水揚げして直ぐに食べると間違いなく美味い!これは揺るぎない事実だ。しかし、どうしても内陸の人々や海がない国の者達が食べる時には腐ってしまう。」


「はい、だからこその干物や、堅魚(後の鰹節)などにして運ぶのでございましょう。」


(へぇ〜、武士なのになかなか博識だな。これなら史実でも頼朝が千葉の知恵を借りるわけだ。)


「そうだ。どうしても乾物にしないといけない。ならもし、信濃国(しなののくに)(現在の長野県)の者がこの下総国(しもうさのくに)(現在の千葉県)の生物を食べたいと言ったら?」


千葉もさすがに顔が歪む。


「さすがにそれは無理があります。腐ってしまいます。」


朱若の口が三日月を描く。


「その通りだ。だが考えてみろ。あるだろう?一つだけ手が。」


千葉が長櫃と朱若の顔を行き来する。


「ま、まさか!この雪を使っていたのは、、、」


「わかったか。そうだ。雪のように冷たいもので中身を冷たさに満たしたものに生物を入れると大体のものは数日ほど腐敗を遅らせることができる。」


「それがし、あまりよく聞いたことが御座いませぬ。」


どうやら博識な千葉も現代の日常生活の知恵には敵わない。


「あまり聞かぬのもしょうがない。都では氷室(ひむろ)という冬場に採った雪や氷を専用の倉庫のような部屋に満たして夏場に備えるものがある。暑い時にそこから氷や雪を出して涼んだり、食べ物を冷やしたり、保存したりなどな。」


「まさか、都にはそのようなものがあるとは。我らが坂東平氏は始祖の平忠常(たいらのただつね)公が乱を起こして以降都とは積極的な縁はございませんでしたが、、、」


氷室、今で言う冷蔵庫みたいな役割だったものは確かに存在した。伝承だけなら古事記の仁徳天皇(にんとくてんのう)辺りにもある。


「出回らぬ話なのもしょうがない。氷室は朝廷が直接管理するような代物だ。当然外に適当に落ちているような噂話では決して聞くことはないだろう。」


(まあ、源氏物語にも語られてるから、一応それなりに氷室の存在は認知されているはずだが、それを読んでいないあたり武士っぽい感じもするがな。)


「ともかくだ、千葉の爺も三崎(現在の銚子あたり)の叔父殿に話されては如何かな?魚を運んだり保存するのに良きものだと。」


「朱若殿は三崎の叔父上を知っておるのか!?」


常胤は予想もしない角度から話が放り込まれたことに驚きを隠せない。


(無理もない、俺は奇縁から鎌倉時代に関わる武士たちはほとんど知っている。もちろん三崎にいるのは千葉常胤の叔父の海上常衡(うながみつねひら)だということもな。)


「三崎は魚がよくとれる。それにこの房総半島は魚が船に乗って行き交う。その上、この保存方法があれば遠くの内陸の国で高値で生の海魚を売りさばけるぞ?ならばこそ、保存、、、欲しかろう?」


(朱若殿、悪い顔になってますぞ!)


季邦は横から耳打ちしてくる。


「構わん、元からこんな顔だ気にするな。それはさておき、千葉の爺。どうする?」


常胤も熟考していたが、どうやら決まったらしい。


「確かに、取り入れるのにそんはありませぬが、、、雪をどこから仕入れれば良いか、、、」


(これを待っていた!)


「千葉の爺、ならこれはどうだ?俺の鎌倉の所領に雪が冬になるとよくとれる場所がある。特に今とかな。俺が雪を融通する代わりに千葉の爺達は源氏の要請に対して兵や食料を提供したり、この房総半島やその周辺を行き来する際の行動に便宜を図る、これでどうだ?」


「そうですなぁ〜、、、しかし、」


常胤は慣れない策に対して踏み切れていない。


(もう一押しで落とせる!)


「なら、利益が出るまでの間は雪は制約無しで提供しよう。ゆくゆく利益が出てきたらその二割を俺にでどうだ?」


「、、、そうですか。そこまで申されるならこの千葉も乗るしかありませぬ!万事お任せくだされ。」


老人がとうとう重い腰をあげた。


(今回も骨が折れたな。魚とこの千葉一族の立地を考えてさっき思いついた雪の運用法だがなかなか上手くいったな。)


最後に常胤には気になることがあった。


「千葉の爺は亡き常兼殿に父がした仕打ちを恨んではおらぬのか?引いては先祖の平忠常の反乱を鎮圧したのは我が先祖の源頼信(みなもとのよりのぶ)だ。」


常胤も目を瞑って黙り込む。そしてゆっくり話し出した。


「確かに、恨みがないと言えば嘘になります。私とて最初は千葉の領地の権利を奪われた時は許せませんでした。義朝様も所詮は侵略者にすぎなかった。しかし、そのようなわだかまりを私に自ら会い釈明なさった。源氏の棟梁がその身で来てくださったのだ。さすがに頭が上がりませぬ、、、。それに忠常公は頼信公を尊敬しており戦をせずに降伏致しました。忠常公の決断に私ごときが口を出せませぬ。」


(ふーん、そんなことが。あの義朝(ちち)がねぇ?意外と藤原親通が手のひら返しで平氏に近づいたから勢いで決別して焦ったから千葉に謝って引き込んだと思ったけど、、、)



平安京、源氏館。



「ふええックションッッ!!!」


「父上?風邪にございますか?しっかり身体を温めてください。」


朝長が義朝に毛皮を被せる。


「すまぬな、朝長。いや、しかし誰かわしの噂をしているような気がしてな?」


「ひょっとすると、また浮気なさったので?そろそろやめたらどうです?義母上(ははうえ)(由良)が可哀想です。」


「うちの息子がわしよりもたくましく見えるッ!?」







下総国、千葉常胤の屋敷。


「今日は祝宴のようには致さず、静かにお召し上がれるように致しましたがどうでしょうか?」


胤正(たねまさ)殿、ご気遣い痛み入る。俺も逃げてきてその夜に祝宴とかたまったもんじゃないからな!」


朱若に隣から話しかけたのは千葉常胤の嫡男の千葉胤正。義平と同い年程の若武者だ。


「朱若様も飲め飲め!ガハハ〜!」


「あ、兄上、朱若様はまだ六つにござる。まだでございます。」


隣の男は髭をはやして威厳ある感じだ。


「兄上も落ち着かれよ。そろそろ相馬殿の跡を継がれるのですから、、、」


「ん?そうま?今相馬と言ったか?胤正殿。」


朱若の食いつきように胤正も小首を傾げながらの同意で返す。


「あなたが、師胤(もろたね)殿にござるか。」


「我が名をお知りとは恐縮にございます。」


千葉師胤。それが彼の今の名である。


(後の相馬師常(そうまもろつね)。戦国時代では覇を称え奥州に君臨した名族相馬氏の始祖か!)


「して、相馬殿とはどのようなお方なのだ?」


「え!?」


突如周りが気まずそうな雰囲気に包まれる。師胤もやや難しそうな顔だ。すると、胤正が朱若に近づいてきた。


「朱若殿、少し耳を拝借しても宜しいか?」


「?構わんが、、、」


朱若も胤正に耳を寄せる。


(実は、その相馬殿は信太師国(しだのもろくに)と申します。)


(ん?それのどこがまずいんだ?)


(我々が、なぜかの方を相馬殿と呼ぶのかと言うと、、、相馬殿の一族には代々、相馬小次郎(そうまこじろう)という通称を得ているからです。)


(別にここの千葉の相馬御厨(そうまみくりや)に縁があるものなら特に不思議でもないだろうに。)


胤正はとうとう困った顔をして、意を決した表情になった。


(少々説明不足でした。はっきりと申し上げます。その者の先祖には『坂東の虎』という異名がございます。)


(へ?じ、冗談じゃ、、、ないよな?もっかい言ってくれ。)


(『坂東(ばんどう)(とら)』にございます。)


「ええええええええええええッー!?!?!?」


(おい!?それはまさか、、、そいつの先祖って、、、)


胤正は朱若を見て静かに頷く。


(た、平将門(たいらのまさかど)の子孫!?)



実は東京に六回行ったことのある作者はまだ将門の首塚に行ったことがありません!

行ったことがある人いたらどんな感じかコメント欄で教えて欲しいです!なんか怪談話で有名だから気になる、、、

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― 新着の感想 ―
[一言] 私も行ったこと無いんですが、大手町の将門塚は昨年完成した改修により、以前の雰囲気ある感じから明るくバリアフリーになったらしいですね。まあ古くは神田明神がこの場所にあって(家康の江戸城建築の際…
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