領地譲与、長櫃の雪
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鎌倉、亀ヶ谷館付近の館
時に、「内政」というのはどういうものであろう。
農業生産、工業振興、文化継承、公正裁判、人事任命、様々あると思う。
(ここから何に取り組み始めたらいいだろうか。)
悩む男、いや、幼児が一人。
名乗るまでもないだろう。
このように悩んでいる理由は数日前に遡る。
数日前、鎌倉、亀ヶ谷館
「朱若!領地を任せよう!」
「は?」
突拍子も無く困ったことを言うのはもちろん義平である。
「最近、初陣の件も含めて頑張ってるな〜って思ってな!みなもそうだろう?」
誰一人として首を横に振らない。
みんな笑顔で快諾といったところである。
「そんないきなり言われても、俺は鎌倉党との合流を近々控えてるのだが、、、」
「まあ、細かいところは気にするな。ここの豪族達も皆是非にと言っているしな!」
(どうやら豪族達の顔を見ても義平に脅された、なんてことも無さそうだ。ここんとこ忙し過ぎたからちょっとだけでもぐうたらしたかったのに、、、彼は俺を今世も社畜にしたいのだろうか?)
今更武士達に二言とやらは成立しない。仕方なく受け取るしか無いことに悔しさすら感じる。
「はいはい、お受けしますよ。(働きたくないし、面倒臭いけど)」
朱若は源氏の未来を知っている故にその悲惨な結末を避ける方法を考えることだけに心血を注ぎたかった。いざと言う時やいい考えが思いついて行動する時に備えてこの稼働時間が短い身体を上手く使いたいのでここでしっかり休息をしておきたかった、、、
(正直、自分の目的以外で働いたら負けだと思うんだよね〜。俺としては源氏の未来をよくできたら畑耕してその日暮らしの百姓としてのんびり暮らせればそれでいいし、、、)
というのは嘘である。
やはり、面倒臭かっただけである。
しかし、このままでは埒が明かないので受けることにしたという顛末である。
「ヘックシッ!」
もう新暦で言うところ十二月ぐらいの寒い季節であった。
「しかし、亀ヶ谷から近くて良かったな。」
領地の譲与の件を了承した後で義平からの話には続きがあった。
「兄者、ところで俺に渡す領地というのはどこですか?」
「おお、忘れておった。それは、、、ここだ!」
「こっ、ここはッ!?」
思い出したように義平が指を指した地図は鶴岡八幡宮の裏手に位置していた。
(まあ、俺もいつかの鎌倉旅行でここ一帯の地名を知った時には驚いたもんだ。)
恐らく鎌倉に住んでいる人以外には地名と言うよりは別の意味で知っている人は多い名前だ。
「それはさておき、まずは単純明快に基本方針を示した方が百姓達も安心するだろう。」
「いかがするので?」
「まずは、俺は郎党が少ない。食い扶持もあまり要らないから各土地ごとの収穫量の二割ほどでいい。」
「それだけでよろしいので?もっと貰っても良いのでは?」
「百姓達が古来改新の詔の班田収授の時より偽籍や口分田からの逃亡をしたのは重税に耐えかねたからだ。米の差し出しする量を偽るのは必要以上に米を強引に回収し、領主に対しての信頼が失墜しているからだ。なら、重税を課さず、必要以上にとらず、常に百姓達と直接会話を交わして彼らの信頼を勝ち取ることが肝要だ。信頼関係があると偽りを辞めて誠実に耕作してくれるだろう。」
「なるほど、信頼にございますか。この二郎、しっかり心に留めおき精進致したいと思います。」
義平は領地譲与に際して史実でも源氏に縁のある郎党を一人朱若につけさせた。
「して、回収量は土地の収穫量の二割でよろしゅうございますな?」
「ああ。その差配は二郎と景義に任せる。あと、明日には俺が百姓達と直接話を交わしたい。それを聞いてみてやる優先順位を決めていきたいと思っている。家々の配置を確認しておけ。二郎、頼めるか?」
「ハハッ!この土肥二郎実平。しっかり承りました。」
実平と景義が部屋から出ていった。
「おっと!大事なことを忘れていた。おーい!小太郎!いるか?」
「ここに、」
傍に小太郎が現れた。この頃は外に出ている海喜翁達修行仲間や弟子たちである子ども達から構成される風魔党の組織形成に心血を注いでいる。
(忙しくてその辺直接手はつけていないけど、ますます忍びって感じになってきたな、、、別に構わんが。)
「朝に言ったもの、用意できてるか?」
「はい、御覧になりますか?」
「じゃあ、頼む!」
「あれをこちらへ。」
そこに運び込まれたのは大きな長櫃に詰め込まれた雪だった。
「あの〜う、もし良かったらで構わぬのですが、これは何にお使いになるのでしょうか?」
太一が我慢できなくなったのか聞いてきた。
「これは暑い夏に備えて食べ物の保存とか涼むために使おうと考えている。」
「とっても、涼しそうですね!」
太一はまだ来ぬ夏を待ちきれなさそうである。
「ところで、この辺りの土地の名前は知っているか?」
「恐らくは決まった名前は無いと存じます。」
「そうか、なら俺が決めても問題ないな!」
「大丈夫だと思いますが、如何様な名になさるので?」
既に朱若の中で土地の名前は決まっていた。
現代にも残り、本当は頼朝が少し後に名付けたが今ここでつけようと問題は無いだろう。
「『雪ノ下』だ。ここの土地の名はこれから雪ノ下だ!」
ちなみに長櫃の雪も頼朝が雪ノ下という地名を名付ける由来にもなったそうです。
雪ノ下が土地名として資料に出てくるのは江戸時代の雪ノ下村で、雪ノ下一帯の場所を指す言葉は吾妻鏡にも記載があります。
ていうか雪ノ下ってあのラノベのヒロインしか頭に入ってこない〜。面白かったな、マジで。




