ヒロインに転生したけど、悪役令嬢が推しすぎる
ブルーグレーの瞳、銀色の髪を細く長い指に形の良い爪で軽く梳いておられる。
上品とは言えない仕草だが、いつも見せる隙のない姿とは違いこれはまた、大御馳走だ。
「ちょっと、アンタ、わかってんの?」
外野からなんか聞こえるが、放っておく。今はこの公爵令嬢フィオナ様鑑賞タイムだ。
この下から見上げる体勢だと足が長ぁぁーいのが良く分かるのよね。
出る所だけ奇跡的に出たしなやかな細い肢体は、日ごろのカロリーコントロールと適度な運動からくるものだろうけど、足の長さだけは遺伝的なモンだろうなぁ。
それにしてもこのゆらりと纏わる細かい光を帯びた銀髪の美しいこと。
「アマーリア!」
名前を呼ばれて、はっとする。マズイ。
「王太子殿下。」
鈴を転がす声。ああ、フィオナ様の美しいカーテシーが横から見れた。眼福、眼福。
「オマエ、また!」
「あ、アレク。」
出てきたのは王太子アレクセイ殿下、羨ましくも妬ましくもフィオナ様の許嫁だ。茹で蛸のように耳が赤いのは、わかる。わかる。フィオナ様のあの美しカーテシーに見惚れたのよね。
「アレクセイ殿下。」いつも無言のフィオナ様の美しいお声、この声で、ワタクシの名前を呼んで下されば、死んでもいいほどの光栄だわ。
「な、なんだ!そしてこれはなんだ!!」
これは、ですね。私がアンタに馴れ馴れしいからとフィオナ様の取り巻きに水を掛けれれている所です。まぁ、ただの水ですから冷房のないこの異世界の夏にしては、涼しくなるのと、午後の授業がサボれることでたいしたことじゃあーりゃせん。大したことと言えば、なんとフィオナ様がそれを見つけられここに居られる奇跡ですがな。
あ、申し遅れましたが、ワタクシ転生者です。この乙女ゲームででてくる王太子アレクセイ殿下と婚約者フィオナ様の超絶美形カップルにほれ込みまして、前世課金しまくりました。
で、どうやらこの世界に転生したのですが立ち位置はフィオナ様の取り巻きに虐められる主人公。
お陰でフィオナ様のお姿が垣間見れれて幸せそのもの。ついでに王太子も見れて幸せ。
「殿下。アマーリア様がお苦しみになるのは私の不徳の致すところ。」
え、天国なんですが。イジメ、ってたってシナリオ知っているからエグイのは回避できるし、こうしてお姿がみれるだけで天国なんですが。
不徳だなんて、とかナントカ モブ煩い。
「臣伏してお願いいたします。ワタクシとの婚約を破棄してくださいませ。」
尊い。スチルにはなかったがこの姿尊い。
ここで、殿下は断罪なさらず反省を促すんだよね。
「フィオナ、我が婚約者の不徳は我が不徳だ。改めよ。」
うん。アレクセイ殿下。グッジョブ!思わずこっそり親指を上げると、殿下もこっそりと困ったような笑いを返した。そう。なんたってこの殿下も転生者で超フィオナ様推し。どうやら主人公転生したらしい私と殿下は最初からフィオナ様推し談議で常に盛り上がってきた。それを取り巻きが勝手に誤解してイヤガラセしてくれるからフィオナ様と絡みができて幸せ。
「改めます。」ああ尊い。
「ですが、」
デスガ、もう私に絡むなと、言われるのかな、悲しい。
「ですが、もう婚約は破棄してくださいませ。」違う話だ、ヨカッタと思う間に目に入る。逆光で尊い銀髪が揺れる。もう語彙がないほどフィオナ様が美しい。
「殿下はアマーリア様を愛しておられる。」
え?推し談議に萌えてただけですが。
あれ?殿下。なにを気まずそうに、、、、。
主人公補正って凄すぎる。
私はあれから、殿下から無心にフィオナの話をして気の合う私に親愛の情が湧いた話を聞かされ、フィオナ様からは私と殿下が、小さな合図で心を通わす様に最初は心を痛めたが応援する気持ちになったことを聞かされた。
フィオナ様の気高い決心に心揺さぶられた王家と侯爵家の理解で、婚約は解消され、
「いやー実はフィオナはちょっと気高すぎて、無理だわ。」と言う王太子とそれを理解した私は明日結婚する。
これでゲームは目出度し、めでたし。
ちなみに、奇跡のような話だが、フィオナ様は実は年上好みで、なんと寡だった王様の後妻になることになった。
私と王太子がフィオナ様がお子を産まれたら全力で推そうと決めたのは言うまでもないことだ。