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ノベル2巻&コミカライズ1巻発売記念番外編/リチャードの秘密

発情聖女、コミカライズとノベル2巻発売です!!!

 ベルクトリアス帝国で過ごすようになって。


「リチャードって愛されてるわよねぇ……」


 心からしみじみと感じるようになった。

 国民からもそうだし、貴族からもそうだし、使用人の一人一人から子供達に至るまで、「皇弟殿下」はみんなから愛されている。コッフェ王国のメダイコナー王太子殿下ってこんな感じだったっけ? 全然違うわ……


 今日はベルクトリアス帝国海辺の街で港のリニューアル記念式典に参加することになり、私はリチャードと騎士団の皆さんと一緒にうみねこの鳴く港までやってきていた。

 式典は無事に大盛況に終わり、港のテープカットを務めたリチャードに惜しみない老若男女の声援が送られていた。港湾工事の偉い人たちが気分を害しないのかしら? と思っても、そこに並ぶ錚々たるおじさまがたも、リチャードを見てニッコニコだ。大人気。


「どうしてここまで人気なのかしら、リチャード」


 式典ののち、ビアガーデン会場と化した港にて、騎士団の皆さんとテーブルを囲みながら呟く。

 私の言葉にその場にいた人々が「待ってました!」とばかりにくらいついた。


「殿下の話ですか!? 俺いくらでもできますよ!」

「殿下が燃え盛る城に取り残された少女を身ひとつで助けに行った話しましょうか!?」

「魔物に襲われて食料が壊滅した時、全員のために次々と獲物を仕留めた殿下の話ですか!?」

「僕の領地で社会不安から魔女狩りが行われそうになった時、いきなりやってきて殿下の魅力で全てを有耶無耶にしてみんなをハッピーにした件ですか!?」

「顔が最高って件ですか!?」

「バカ、そりゃ見たらすぐわかるだろ。それより殿下の腕っぷしの強さの方が」

「そもそも、前線でずっとご一緒だったモニカ様に語るのは釈迦に説法ってやつだぜ」

「俺らしか知らない殿下の最高な話!? 着替えがめっちゃ早いこととか!?」

「おっいいね! それはモニカ様は知らないことだ!」

「……し、知ってたらどうする……?」

「ハッ」

「そうだな」

「モニカ様と殿下の……仲、だしな!?」

「どうする、誰が聞いてみる!?」

「俺聞きにくいよー」

「俺も聞きにくい」

「じゃんけんで決めようぜ」


「あはは、話がズレてるわ……」

「モニカさん、彼らはどうしたの?」

「ああリチャード」


 じゃんけんを始めた彼らに苦笑いをしていると、リチャードがバナナを両手にやってきた。すでに切り分けられて、上から溶かしたチョコと砂糖がかけてある。可愛い。


「美味しそうね」

「モニカさん、バナナの叩き売りから貰ってきたよ」

「貰ってきたの?」

「モニカさんが喜ぶだろうって、たくさんくれたんだ」

「なんだと思われてるの私は」

「最初は棒のままだったんだけど、食べにくいでしょ?」

「なんだと思われてるの私は(2回目)」


 わかってるけど。わかってるけど!

 発情聖女だから……チョコバナナとか! 好きそうとか! 思われたってこと! ーーお嫁に行けない。実際発情聖女で婚約破棄されたし。あはは。

 でも甘いものはちょうど食べたかった。

 私はピックでバナナを刺して食べながら、隣に座ったリチャードに答える。


「リチャードのどんなところがみんなの心を掴んでるのかと思って、ちょっと呟いたらこんな事態になっちゃった」

「なるほどね。……僕が人気だと気になる?」

「そ、そんなじっと見ないでよ、恥ずかしい」

「嬉しいなあ、僕がいないところでもモニカさんが僕の話題をしてくれてるなんて」

「うう」


 リチャードがにっこにこでこちらを見ている。

 

「で、人気の秘密はわかった?」

「顔がいい」

「あはははは」

「それだけじゃなくて……リチャードは、きっとみんなに分け隔てなく『リチャード』でいるから好かれるのね、って思ったわ」


 私の言葉に、リチャードが片眉をあげる。

 騎士団の皆様が「僕の考える殿下の一番かっこいいところ」を叫びながら半裸になる姿を眺めながら(本当なんで半裸?)私は言葉を続けた。


「えとね、うまく言えないけれど。……誰の話を聞いていてもリチャードはリチャードなの。騎士の一人一人を良く見ているリチャードも、豪快に成果を上げるリチャードも、期待される以上の結果を見せるリチャードも、いつだって明るくて頼もしいリチャードも。……全部、あなただなって。赤毛さんって呼んでた頃と変わらないあなたが、過去にも、私のしらない場所にもいたんだなって」


 みんなの語るリチャードは、どれも光景を容易に想像できるほど彼らしい。

 リチャードは誰にとっても、強くてかっこよくて頼もしい『苛烈の皇弟殿下』なのだ。

 ゆがみない、芯が真っ直ぐに通ったリチャードらしくて、ますますかっこいいなあ、と思う。


 リチャードはその焔色の瞳でじっと私を覗き込む。


「……違う一面、あった方がモニカさんは好き?」

「なによそれ。ふふ……リチャードはリチャードよ」


 少しからかうような声音で尋ねられ、私は笑って首を横に振る。


「でもちょっと、騎士団のみんなが羨ましいな」

「そうなの?」

「うん。男同士として出会って、リチャードと一緒にたくさん危ないこと、対等にやってみたかったな」

「でもモニカさんにしか、僕の弱いところは見せられないけど」


 私は目を瞬かせた。


「弱いところ? あるの?」

「あるよ。いっぱい。知りたい?」

「……ちょっと知りたいかも」


 リチャードは私に微笑むと、コソっと耳打ちする。


「脇腹。くすぐられると弱い」

「ふふっ、なにそれ」

「あとは怪談話。どこが面白いのかわかんなくて、反応困るんだ」

「それって弱いところに入るの!?」

「あはは。あと、煽られるのも弱いかな。……僕、負けるの嫌いだから」

「……あなたを煽るような度胸がある人っているの?」

「モニカさんはいつでも()()()()()()♡」

「もう」


 その時。騎士団のみんなが集まってる方がざわつき始めた。


「どうしたのかしら?」


 騎士の一人が、リチャードの元に興奮気味にやってきた。


「殿下! 大変です! なんと……港湾工事の最中に、入江の奥に地元民も未踏の洞穴がありました!!」

「なんだって」


 リチャードが立ち上がる。

 みんなも興奮している。


「……前人未到の洞穴……か……!」

「どうも入江には魔物がうようよしているようで、地元民もなかなか近寄れないようです」

「それは……探け……もとい……魔物退治をする必要があるな……」


 リチャードの声に興奮が混じっている。

 その横顔からは、キラキラとした好奇心欲が隠せていない。

 私はあ、と思う。


ーーもしかして、前人未到の探検に煽られてる???


 他の騎士団の皆さんも、同じように少年のワクワク顔でリチャードを見ている。


「殿下、どうしましょう」

「殿下、たまたま我々の装備は万全です」

「殿下、地元の有力者たちの許可はすでにとってきました。スポンサーも名乗りを上げています」

「殿下ご決断を」

「どうしましょう殿下」


 リチャードが顎を撫で、興奮まじりに呟く。


「……行くしか、ないな」

「行くしかないんだ……」


 リチャード、こういうロマンに弱い……のね?


「あ」


 呟いた私に、リチャードがハッとした顔をする。


「モニカさんは興味なかったら付いてこなくていいからね」

「うん。私まで怪我したらいけないから、こっちで待ってるわ……」

「ふふふ、ありがとう」


 はしゃいだのが恥ずかしかったのか、少し照れ笑いを浮かべるリチャード。

 正式な討伐ならともかく、騎士団の皆さんのワクワク探検に着いて行って私まで怪我するわけにはいかない。リチャードも私を守りながらだと、楽しく探検できないだろうし。


「よし、準備が整ったら同行者はここに集合するように!」

「ハッ!」


 彼らは魔物討伐と同じくらいのスピードで、テキパキと入江探検の準備をするために散っていった。

 

ーーもしかして、リチャードが各地で功績を上げてるのも、こういう探検からの功績も結構あるのでは?

ーーこういうところが、騎士団の皆さんに好かれているのでは?

ーーまあ、よく考えたらこういう人じゃなきゃ、コッフェの魔物の森に単身で乗り込んだりしないわよね……


「怪我しないでね、リチャード……」

「うん。夕方までには帰るよ」


 リチャードは楽しそうに笑って応える。

 公務でも討伐でもなんでもない、楽しい探検を楽しんでくれるのなら何よりだ。私はそう思いながら、わくわくが隠せないリチャードに呆れつつ、微笑んでみせた。


 その後。

 洞穴で繊維だけ溶けるスライムの猛攻を受けながら、ドロドロのマッパ(金物の装備は無事)でゾロゾロと帰還した彼らを出迎える羽目になるとはーーこの時の私は、まだ想像だにしていなかった。

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