サイボーグ
「すまんな、アンリ
俺はここを離れる必要がある」
烏に降ろされて地面に着こうかという時、ガアは切り出した。
「待て、説明してくれ
レンって誰だ?ガアとリオはどんな関係なんだ?」
「…悪い、俺たちの約束でそれを説明するわけにはいかない」
ガアは俺に歩み寄り俺の頭の上に手を乗せて、「まあ、アンリは知らない方が幸せだ」と言いきった。
ガアは俺から離れると、風魔法を使い、自分の体を宙に浮かした。
「そうだ、こっちに来る前に村を調べてきたんだ。
この間話したよな?村をかぎまわってる奴がいるって。
ソイツの正体が割れた、細かくは言えないんだが…」
そこまで言っておいて歯切れ悪そうにガアは顔をしかめる。
「…ピエロには近づくな」
それだけ言ってガアは飛び去った。
こうして研究所を巡るいざこざは取り敢えず落ち着いたのである。
「私には人間の心臓が埋め込まれている。
それが『心プログラム』だよ」
家に帰るとプレミアはそう喋り出した。
俺が意外そうに見つめていると、「気になってたみたいだから」と続けた。
「そのプログラムがあるとどうなるんだ?」
「感情や意思のようなものが生まれる」
「そんな簡単な話なのか?感情ってのは」
「ありえない事だった、博士にも想定されていなかったこと」
「もしかして、プリムにはそれが搭載されてないのか?」
俺はプレミアによってバラバラにされた、プレミア以上に表情を変えない少女を思い浮かべながら尋ねる。
「そう、私の妹機にあたるプリムのパーツには人間の体は入ってない
私はサイボーグだけど、この子はアンドロイド」
何故か家まで持って帰ってきたプリムの残骸を見ながらプレミアは答える。
妹機ってことはプレミアより後に作られたんじゃないのか?話を聞いているとプリムの方がプレミアの劣化に見えるが、なぜリオは見た目がそっくりな劣化品を作ったんだ?
疑問は尽きなかったが、その夜はもう寝ることにした。
そう言えば、サイボーグも寝るんだなと今更思った。