リオ
「ごめんね、ここであんたを止めるように言われてるからさ」
そう言うと小さな体躯を活かして俊敏に俺に近づき、鉄パイプを上から下に振り抜いた。
俺は両手をクロスさせてその攻撃を防ごうとしたが、思った以上の力に弾き飛ばされる。
なりふり構ってられない。
俺は影から黒蛇を召喚すると、童女はを襲わせるように操作する。
俺の蛇の能力は気づいたら身についていたものだ。
普通特殊能力は複数発現しない。
しかし、とあるタイミングで自分の影に違和感を感じて、操作してみたら蛇が現れる事を発見した。
蛇は漆黒というのがピッタリな体色をし、赤色の目玉を持っている。
頭から出てくる蛇は決して尾を見せないのだが、体に限りはないのかいくらでも伸びて遠くの敵にも有効打を持つ。
超身体能力を持つらしい童女でもさすがに俺自身の攻撃と黒蛇の攻撃は避けきれず、少し傷を負わせることができた。
しかし、あくまでも血が垂れる程度の傷だ。
俺が追撃しようとすると童女は遠くへ跳んで離れた。
童女は痛々しくその傷を見ていたが、あり得ないことにその傷は瞬時に塞がった。
回復能力か…面倒だな。
その隙を狙ってヒビキは童女の背後に回ると真っ直ぐ拳を突き出す。
童女はなんとか対処したがその勢いは完全には殺せずに床に転がる。
その時付いたかすり傷も瞬時に塞がってしまった。
「クソッ時間がかかりそうだな
俺がこいつは対処する!
お前は奥に進め!」
ヒビキが俺に向かって吠えてくる。
仕方がない、それが最善策だろう。
俺は後ろから聞こえる戦闘音から逃げるように研究所の奥へと進む。
長い廊下を抜けて開けたところは大きな部屋だった。
そこには白衣を着た1人の女性と、その前のベットに横たわったプレミア、そしてプレミアを誘拐した少女、先程の童女がプリムと呼んでいた者だろう、の3者がいた。
「はあ、チーに止めるように言ったってのに何をしているんでしょうね。」
白衣の女性はそう言うと、こちらをキッと睨んだ。
厚いメガネのレンズ越しにも彼女が俺を恨んでいることが分かるようだった。
「なぜ貴方の、よりによって貴方のところにプレミアは逃げていったのでしょうね
記憶は存在しないはずなのに…」
「どう言う意味だ?」
「いえ、別にこちらの話です」
そう言うと白衣の女性は悲しそうな目をしてベッドの上で眠っているらしいプレミアに目を向けた。
「私はリオと申します。プレミアのボディ及びそちらにいるプリムの製作者であり、チーの上司です。」
リオと名乗った女性はプレミアのベットから離れると部屋の端で目を閉じて座っていたプリムと呼ばれる少女に触れる。
いや、制作者という以上プリムもまたサイボーグなのだろうか?