4.ある意味、あっという間の一回戦。
「な、なんで私がリーダーなんですか!?」
「いいじゃない、記念よ。記念」
「うぅ、記念って……」
登録後のこと。
私は二人にそう抗議をした。
すると彼らは笑いながら、こう説明する。
「今回のイベントで好成績を収めると、リーダーには特別な装備が与えられるんだ。非売品で、とても強力なやつがね」
「せっかくだし、マキナちゃんにそれを貰ってほしいって思ったのよ」――と。
◆
「それでも、荷が重すぎますってぇ!!」
私は広場の特設ステージに上がってもなお、そう悲鳴を上げていた。
特別な装備というのは嬉しいけれど、こうやって人前に出ること自体得意ではない。そんな私が開幕試合のチーム、そのリーダーだなんて……。
『えっと、それじゃ。リーダーのマキナに、話を聞いてみようか!』
「――――――」
そうこうしているうちに、なにやら妖精さんがマイク片手にやってきた。
え、なに? そんなのあるの……?
「…………」
会場が静寂に包まれる。
その中でマイクを手にした私は、頭の中が真っ白になった。
しかし、何か言わないといけない。そう考えた結果、出てきたのは――。
「が、がんばりまひゅ」
震えた、そんな声だった。
「ん、噛んだ?」
「噛んだね」
「でもあの子、可愛いね」
会場がざわつき、最前列からはそんなやり取りが聞こえてくる。
顔から火が出るようだった。
「ふ、ふわぁ……」
頭がふわふわした。
そうなって、どうなったかというと――。
「あ、倒れたぞ!?」
「大丈夫なのか!?」
そこから、一回戦の記憶はない。
◆
「あはは、まさか気絶するとはね?」
「うぅ、恥ずかしい……!」
「大丈夫かい? ごめんね。こっちも少し、調子に乗りすぎたよ」
「だ、大丈夫です。あの場が特殊だっただけなので……」
目が覚めたのは、試合が終了した時だった。
結果は二対三の戦いながらも、ダリスさんたちの圧勝。私たちのパーティーは、二回戦へと駒を進めることになっていた。自分でも気絶したことはビックリだけど、このあがり症は昔からなので、二人を責める気にはならない。
とにもかくにも、ある意味で足を引っ張らなくて良かった。
「ところで、二回戦はいつなんですか?」
気持ちを切り替えよう。
そう思って、私はダリスさんに訊ねた。
「あぁ、それなら三時間後だよ」
「えっと、いまが朝の八時だから十一時から、ってことですね」
それなら、と。
私はひそかに楽しみにしていたことを提案した。
「あ、あの! お買い物、行っても大丈夫ですか?」――と。




