Cafe Shelly 先生はつらいよ
「もうダメ、限界。こんどこそ辞める」
「はいはい、わかったわかった。で、光太郎、今度は子どもか? それとも親か?」
何度こんな会話を繰り返しただろう。居酒屋で派手に酔いながら愚痴をこぼす。その愚痴を仕事仲間の金田に聞いてもらう。
金田は僕の一つ上の先輩になるが、実は中学時代の同級生である。僕が大学を一浪したせいで一年遅れたのだが。偶然にも今の職場で一緒になって以来、こうやってよくつるんで飲みに出る。
「で、辞めたら子どもと奥さんはどうなるんだ?」
うっ、それを言われるとつらい。
僕には妻と小学一年になる娘がいる。金田は独身だから気楽でいいだろうが、僕はそうはいかない。今仕事を辞めるわけにはいかないという現実がある。
「しっかし、因果な商売だよな、教員ってのも」
金田は焼き鳥を口にくちゃくちゃ言わせながら、ポツリとそう言う。
そう、僕たちは教員。小学校の先生である。
先生になりたての頃は、これから子どもたちをどのように教育していくのか、期待でいっぱいだった。昔ドラマで見た熱血先生にあこがれてこの世界に入ってきた。
が、待っていたのはとんでもない現実。子どもは言う事を聞かない、親は文句ばかり。ほとほと疲れた。
「おまけに、校長ときたら無理難題ばかり押し付けるんだからよぉ。教育委員会にいい顔しようと思って、なんとか運動とかあったらすぐにわが校でもやりましょうなんていいやがって。現場の負担がどんどん増えるだけだっちゅーの」
僕はビールをぐいっと飲み干す。
「そうそう、この前は環境なんとかってやつだったよな。うちの校長は打ち上げ花火式なんだよ。こういうのは継続が必要だってのに、その週間だけやってあとは元通り。意味ねーよなぁ」
金田も僕と同じように愚痴をこぼしてビールを飲み干す。
「おねぇちゃん、ジョッキ二つよろしく」
これで何杯目だろう。数えるのも面倒になってきた。
ともかく、こうやって金田と学校の愚痴を言い合って気持ちを慰める。今はこれしか楽しみがない、と言っても過言ではない。結局この日もベロンベロンに酔っ払ってしまい、帰宅は午前様。どこをどうやって帰ったのかすら覚えていない。
幸いにして翌日は土曜日。学校が休みだからいいものの、また妻に怒られるんだよなぁ。
「あなた、そろそろ起きてちょうだい」
ほらきた。妻はなんでもテキパキやるタイプで、毎朝の掃除はかかさない。今も僕が寝ているから邪魔でしょうがないらしい。
「いい加減に起きて、美保を遊びに連れて行ってちょうだい」
ったく、どうしてこんな性格が反対の妻と結婚したんだろうなぁ。僕はどちらかというとズボラで、掃除なんかめったにしない方。まぁそのおかげで我が家はキレイに保てているんだから文句は言えない。
しかし、妻の潔癖主義も困ったもんだ。掃除だけじゃなく子育ても完璧に、なぁんて感じだからなぁ。
どこで知恵をつけたんだか、子育ては父親も積極的に参加するべきだということで、こうやって休みの日は娘の美保と半ば強制的に遊びに連れて行かされる。でも、先生の中にはスポーツ少年団とかの指導を積極的にやっている人もいるんだよな。そういう先生の家庭は、子育てが犠牲になっていると聴いている。
僕より年上の中富先生は野球が大好きで、少年野球の監督をやっている。根っからの体育会系で、子どもウケはいい。が、親からは「野球の話しかしない先生」ということで非難を浴びている。
本人は知ってか知らずか、そんなこと気にせずに学校の行事そっちのけで野球に打ち込んでいるが。だから校長先生からも睨まれている存在だ。僕はそうはなりたくないな。
「さてと。美保、公園にでも遊びに行くか」
「はーい」
そんな感じで、判を押したような週末が流れていく。が、今日は違った。いよいよ公園に着こうとしたとき、携帯電話がけたたましく鳴った。この着信音は教頭だ。
「はい、神城です」
「神城くんか、今スーパーから連絡があって。君のクラスの子が万引きをしたそうだ」
えぇっ。まさか、という気持ちが湧いてきた。だが、瞬間的に一人の生徒の顔が頭に浮かんだ。クラスでも問題児とされ、その扱いに困っている麗子である。
僕は今、五年生のクラスを受け持っているのだが、この麗子の家庭がまた複雑で。父親はやたらと厳格。母親は実は実の母親ではなく、父親とは十歳以上離れた若い人。さらに、昨年赤ちゃんも出来ている。そのせいで、両親ともあかちゃんべったりになり麗子になかなか目を向けていない状況である。
麗子は四年生の頃から素行が徐々におかしくなってきた。決めつけてはいけないが、万引きをするというのはその子くらいしか思いつかない。
「わかりました。じゃぁ今からそのスーパーに向かいます。ところで、万引きしたのは…」
「これが一人じゃないんだよ。君のクラスの田丸麗子と、もう一人井上里美の二人だ」
まさか、里美が? 私は教頭の言葉を疑ってしまった。
里美は麗子とは対照的に、クラスでも成績優秀で模範的な生徒だ。おとなしい子だが、友達付き合いは問題ない。家庭も和気あいあいとして、お父さん、お母さんともよく僕に話しかけてくれる。まるで絵に書いたような理想的な子どもであり家庭である。
そんな里美がどうして? ひょっとしたら麗子にそそのかされたのか?
ともかく万引きを起こしたスーパーに急いで行くことにした。妻に事情を話すと、あからさまに嫌な顔をされたが。それに反論している時間はない。
あぁ、こうやって僕のストレスも溜まるんだなぁ。なんだか微妙に胃のあたりがキリキリしてきた。
スーパーに着くと、事務室に二人の生徒がしょんぼりした顔で座っていた。
「先生ですか」
スーパーの責任者らしき人が、メガネを光らせ仁王立ちで私を迎えてくれた。
「はい、この子たちの担任です」
「ほら、先生が迎えに来たよ。今回は万引きが未遂だったから、警察は呼びませんでしたが。けれど、頑として自宅の連絡先を言わないんですよ。ようやく学校名と名前を聞き出せたので、学校に連絡させてもらいましたけど。先生のほうからご家庭に連絡してください。そうしないと、うちの方も二人を帰すわけにはいきませんから」
「わかりました。二人の家庭には私から連絡します」
ふぅ、困ったな。とりあえず店の廊下に出てまずは里美の家に電話。しかし何度コールしても出ない。出かけているのか?
確か奥さんの携帯電話の番号は登録していたはずだ。そっちにかけてみる。が、出ない。
仕方ないので麗子の家の方に電話をしてみる。すると出たのはお父さん。一瞬にして緊張感が走った。
「あ、担任の神城ですが…」
落ち着いてひと通りのことを説明する。すると意外にも冷静な声で「わかりました、すぐに伺います」との返事。ちょっとビックリだ。
すると入れ替わりに里美の母親から電話が。
「あ、神城先生、何かご用でしょうか?」
「井上さん、実はですね…」
普段から話しやすいお母さんなので、こちらは緊張はしなかった。が、こちらも意外な反応が。
「うそでしょう!? ウチの里美がそんなことするはずがありません。何かの間違いでは? あ、麗子ちゃんにそそのかされたのか、それとも麗子ちゃんが万引きしようとしたところにたまたまいたのか。だいたい、麗子ちゃんと一緒にいることがおかしいです。今の時間、里美は塾に行っているはずなんですから」
自分の子どもがやったことが信じられないようだ。
「お母さん、落ち着いてください。ともかく大至急スーパーに来ていただけないでしょうか?」
これに対して里美のお母さんは意外な返事をした。
「すいません、今夫とどうしても抜けられない用事があってそちらに伺えないんです。先生、なんとかしていただけないでしょうか?」
抜けられない用事って、自分の娘とどっちが大事なんだよ。しばらく押し問答をしたが、里美のお母さんは絶対に譲らない。それどころか最後のセリフがこうだ。
「あ、もう時間なので先生よろしくお願いします」
そう言って一方的に電話を切られた。おいおい、我が子がどうなってもいいっていうのかよ。
しぶしぶスーパーの事務所に戻り状況を説明。
「ではこちらの子については連絡先を教えていただきますよ」
里美についてはそうするしかなかった。すると事務所の扉をノックする音が。
「失礼します」
そう言って入ってきたのは麗子の父親。明らかに怒った目をしている。そして麗子の前に立つなり、パチンっ! いきなり麗子にビンタを食らわせた。
「お前は何をやっているんだっ!」
麗子は黙って下を向いている。すると麗子のお父さん、今度はスーパーの店員の方を向いてきちっとした姿勢で頭を下げた。
「この度はうちの麗子がご迷惑をおかけして申し訳ありません」
その態度は凛としたもので、スーパーの責任者も圧倒されていた。
「こ、今後は十分注意していただくということで。次は警察に通報しますので」
「はい、ぜひそうしてください」
このお父さんの厳しさはホンモノだ。さらにお父さんは私の方を向いて頭を下げてこんなことを言ってくれた。
「先生、この度は大変御迷惑をおかけしました。普段から麗子には厳しく言っているのですが。まだまだしつけが足りないようです」
「いえ、でもあまり厳しくしないでください。麗子も寂しいんだと思います。どうしても赤ちゃんのほうに目が向いてしまい、自分を見て欲しいという欲求がこのような行動を引き起こしたのではないかと」
僕は小声でお父さんにそう伝えた。とりあえず里美については僕が責任をもつということで、連絡先を伝えてその場は終わりとなった。
ふぅ、しかしどうしてこんなことに。麗子はお父さんにまかせ、僕は里美を家に連れて帰る事にした。帰りにコンビニに寄ってジュースを買って、公園のベンチに座る。
「なぁ里美、どうして万引きなんかしようとしたんだ?」
ジュースを飲みながら、何気に里美に聞いてみた。すると、里美の返事は意外なものであった。
「お父さんとお母さん、私のことなんかどうでもいいみたいだもん」
そんなはずはない。里美の両親とはよく会話をしているし、そこからはそんなことみじんも考えられない。けれど、今日のお母さんの電話はちょっとよそよそしかったな。
もう少し里美から話を聴いてみると、これも意外な事実が判明した。どうやら両親でネットワークビジネスにはまっているようだ。今日もそのセミナーに二人で行っているとか。
「そうか、でもそれで万引きはダメだぞ。先生からお父さん、お母さんにはしっかり言っておくから安心しなさい」
里美はにっこり笑って首を縦に振った。それにしても、どうして先生がここまで家庭の事情に入り込まないといけないんだ。おかげで我が家の家庭の事情は最悪になりつつあるというのに。
ともかく教頭に報告をしておこう。里美を家に送り、その足でそのまま学校に行き教頭に報告。すると、ここでお小言が始まった。
「ともかく、君のやり方が甘いんだよ。優しいだけの先生じゃダメだと言っているじゃないか」
そんなの初耳だ。いや、言っていたのかもしれないけれど頭になんか残っちゃいない。
ふぅ、毎日気が重いな。
さんざん教頭に叱られた後、とぼとぼと帰ろうとすると里美の母親から電話がかかってきた。
「先生、少しお時間ありますか?」
おそらく今日のことで話がしたいのだろう。いいですよ、と返事をして里美の家で待ち合わせることに。
「あ、どうぞ中へ」
父親がにこやかに私を出迎えてくれた。そして到着するや、私を待ち構えていたのは…
「えっ!?」
家のリビングには見知らぬ人が男性。そしてテーブルには洗剤や化粧品などが並んでいる。
「いやぁ、ようこそおいでいただきました。私はこういうものです」
その男性から渡された名刺、それはネットワークビジネスのもの。
「えっ、ちょっと、里美の件は…」
「先生、この商品すごくいいんですよ」
里美の母親は僕の言葉を無視して、目の前にある洗剤の説明を始めてしまった。その言葉を見知らぬ男性がフォローする。
おいおい、里美のことをほったらかしにして自分たちのビジネスの話かよ。正直、かなりムカついている。里美が万引きをしたくなる気持ちがよくわかった。
僕は話がいよいよビジネスのことに差しかかろうとしたときに席をたった。
「あの、失礼ですが里美の万引きの話ではないんですよね。であれば帰らせていただきます」
「あら、そんなこと言わないでくださいよ。万引きについてはちゃんと私たちから叱っておきましたし、スーパーにもお詫びにいきましたから。それより、先生も環境にやさしいこの洗剤をですね…」
ダメだ、何かに洗脳されている。さすがに嫌気がさして「すいませんが妻と約束があるので」という言い訳で強引にその場を引き上げた。ふぅ、教師を一体何だと思っているんだか。
そんなこんなでやたら疲れた週末であった。そして月曜日、また事件が起きた。
「光太郎、なんかヤバイこと起きたらしいな」
学校についてそうそう、金田がそう言って近寄ってきた。万引きの件がもう広がっているのか。そう思った矢先、金田からは意外な言葉が。
「お前、生徒の家に行って先方のお客さんを怒らせたらしいじゃないか」
「えっ!?」
まさか、里美の家のことか? するとすぐに校長から呼び出しが。校長室に行くと、そこに待っていたのは里美の母親だった。
「神城先生、一体どういうことなんですか?」
校長は顔を真赤にして僕に怒鳴ってきた。
「里美さんのお母さんの面目を潰したそうじゃないですか。お客様に紹介していただいたのに、それを無視して帰ったらしいですね」
「いや、それはですね…」
ダメだ、こうなったときの校長は聞く耳を持たない。ここは素直に叱られておこう。
それにしても、もう本気で嫌だ。どうしてこんな理不尽な思いをしなきゃいけないんだ。さすがに限界だ。もう先生なんか辞めてやる。
「光太郎も災難だな。お前が悪いわけじゃないのに。それにしても、なんちゅー親なんだ」
その日の夜、まだ週末ではないのに僕は金田と飲みに出た。もう飲まないとやってられない。ここで金田に一連のことを伝えたら、さすがに同情された。
「自分の子どもの万引きを置いといて、ネットワークビジネスにはまるなんて。むしろ麗子の父親のほうがさっぱりしているわ」
僕はビールを一気にあけてそう言った。
「そうそう、その麗子の父親なんだけどよ。面白い情報があるんだよ」
「えっ、どんな?」
金田がつかんだ情報とはなんなのだろうか?
「あの人の職業、知ってるか?」
「えっと、確か医者じゃなかったっけ?」
「どんな医者か知ってるか?」
「あ、そこまでは」
「これがな、意外に評判のいい精神科医なんだよ。うつ病とかの専門らしいぞ」
「えぇっ、あの人が?」
ちょっとびっくりだ。あの厳格な態度からはとうてい考えられなかった。
「でさ、思ったんだけど。光太郎、おまえうつの一歩手前じゃないかな。最近、無気力だろう?」
「あぁ、確かにストレスが溜まってやる気がねぇし」
「一度専門医に見てもらったらどうだ?」
金田の言うことも一理ある。でも、本当にうつなんだろうか? その日はそのことで頭がいっぱいになってしまった。
けれどある意味助かったかもしれない。校長に叱られたことや万引きのことなどを考える余裕がなくなったから。ちょっと気が楽になった。
それから数日間は病院に行くか行かないか悩んだ。金田は時々僕に病院行きを薦めるのだが。そんなとき、あの麗子のお父さんのほうから連絡があった。
「神城先生、一度ご相談にのっていただけないでしょうか?」
なんだろう? きっと麗子のことだろうとは思うのだが。で、土曜日の午後に会うことになった。
場所はとある喫茶店。聞いた住所を元に地図で探してそこへ向かう。
「えっと、確かこのあたりのはずだけど。小さなビルの二階だったよな…」
地図で示された通り、そこはちょっと別世界だった。パステル色のタイルで敷き詰められた道。その両脇にはレンガで作られた花壇。道幅は車一台が通るくらい。ちょっと異次元に入り込んだ感覚だ。
「ここかな?」
僕が見つけたのは、手書きでコーヒーメニューが書かれてある看板。そこにはこんな言葉が書かれてあった。
「上を向いても、下を向いても、明るい光はあなたを照らしてくれますよ」
なんだか意味深な言葉だな。どういう意味だろう? 頭をひねりながらその看板の置いてある階段から二階に上がった。
カラン、コロン、カラン
扉を開けると、心地良いカウベルの音。それとともに聞こえてくる「いらっしゃいませ」の声。
店を見回す。店内はそんなに大きくない。窓際に半円型のテーブル。店の真ん中に丸テーブル。そしてカウンター。十人も入れば満員じゃないか。
丸テーブル席が空いているので座ろうとすると、女性の店員が声をかけてきた。
「あ、すいません。そこは今日は予約席になっておりまして」
見ると、確かに予約席の文字が。
「あ、そうですか。今日ここで人と待ち合わせしているもので」
「もしかしたら田丸先生とお待ち合わせですか?」
田丸先生、と言われて一瞬ピンと来なかったが、そういえば麗子のお父さんは精神科医だったな。
「えぇ、そうです」
「あ、だったらこちらで結構ですよ。どうぞお座りください」
麗子のお父さん、わざわざ席を予約していたのか。すると、程なくして麗子のお父さんが登場。
「先生、お待たせしました」
「あ、こちらこそ」
私は席を立ち上がり一礼をする。
「マスター、マイさん、こちら長女の学校の担任の先生です」
「よろしくお願いします」
カウンターからマスターがおじぎをする。私もつられてまた一礼を。
「早速ですが神城先生、ご相談したいことがありまして。もうおわかりだと思いますが、麗子のことです」
席に座るなり、お父さんは話を切り出した。私は黙ってお父さんの話に耳を傾ける。
「麗子が学校でご迷惑をおかけしていることは十分承知です。先日も万引きの件では申し訳ありませんでした。私が麗子に対して厳しすぎることが原因だというのは十分わかっているのですが。私の性格上、どうしても言葉が厳しくなって」
とても真面目なお父さんなんだな。さらに言葉は続く。
「しかし、今回の万引きの件。あれは麗子のお友達から誘われたということを耳にしました。実はその子からいじめを受けているということを初めて麗子から告白されました」
「えっ、いじめですか!?」
それにはさすがに驚いた。
あのとき麗子と一緒に万引き事件を起こした里美は模範的な生徒。まさか、というのが正直な感想だ。
しばらく沈黙が続く。それだけ自分の頭の中が混乱しているのは確かだ。その混乱を破ったのはお父さんの言葉であった。
「神城先生、ここのオリジナルブレンドを飲んでみませんか? とても面白い味がするんですよ」
「あ、はい」
そういえばまだ注文をしていなかったな。
お父さんは「シェリー・ブレンド二つ」とマスターに向かって伝える。さらにお父さんは別の話を始めた。
「ご存知と思いますが、私は精神科医をやっていまして。うつの患者さんを毎日診ています。しかし、そんな人ばかりを相手にしていると、こちらもうつになってしまいそうになるんです。そんなときにはこのカフェ・シェリーに来るんですよ」
お父さんの気持ち、よくわかる。僕が毎週のように金田を相手に飲んで発散しているように、お父さんはここに来て発散しているのか。ここはなんかとても落ち着ける空間って感じがするし。
「麗子についても、ここのマスターやマイさんに結構相談していました。マスターとマイさんはカウンセラーの資格も持っていますから。さらにマスターは以前高校の先生をやっていて、スクールカウンセラーをやっていた方なんです。おかげでなんとか自分の気を保っている感じがしています」
「なるほど。でも今回はどうして僕に相談を?」
「実はマスターにアドバイスされたんです。いつまでも意地を張っていてはダメだって」
「意地?」
「えぇ。私は精神科医としてカウンセリングも行っています。なのに恥ずかしながら自分の家庭については思ったように出来ていない。それに対して意地を張って誰かに相談するなんてことをしなかったんです。というより、知られたくなかったんです。ここのマスターとマイさんを除いては。でも、先日の万引き事件でそんな場合じゃないと悟りました」
なるほど、お父さんはプライド高そうだもんなぁ。
「それと、今日神城先生にお会いしたかったのにはもう一つ理由があります」
「えっ、何か?」
「先生、今悩みが大きくなっていませんか?」
その言葉にはびっくりした。今の自分を見透かされている、そんな気がしたのだ。
「どうしてそれが…」
「すいません、職業柄おおよそ相手を見れば、今どの程度悩んでいるのかがわかるようになってしまいまして。先日スーパーでお会いしたときにちょっと気になっていたもので」
「そんなことまでわかっちゃうんですか。プロには嘘はつけませんね。確かにその通りです。ストレスが溜まっちゃって」
「だからこそ、ここのシェリー・ブレンドを飲んでいただきたいのです。ここのコーヒーは私の治療よりも効果があると思いますから」
プロにそう言わせるコーヒーってどんなものなのだろう? ちょうどその時、マイさんと呼ばれていた店員さんがコーヒーを運んできた。
「シェリー・ブレンドです。よかったら飲んだ感想を聞かせてくださいね」
コーヒーがストレスの治療になるなんて聞いたことがない。僕は期待を込めてそのコーヒー、シェリー・ブレンドを口にした。
「えっ、なんだこれ?」
びっくりしたのは、ホットコーヒーなのにスーっとする感じがしたこと。まるで清涼飲料水のようなさわやかさを感じる。間違いなく味はコーヒーなのに。
よほど僕は驚いた表情をしていたのだろう。
「先生、なんだか驚いていますね」
「いやいや、これってなんか妙な味がしますね。コーヒーの味がするのに、なんだかスーっとする感じがするんですよ。こんなコーヒー初めてだ」
「そうですか、神城先生にはスーっとする味だったんですね。マスター、これどう解釈すればいいでしょうか?」
お父さんはマスターにそう尋ねた。マスターはカウンターから出てきて私のそばに来た。そしてこんな質問をした。
「学校の先生でしたよね。ひょっとして今、親や子ども、校長や教頭などからのプレッシャーを受けていませんか?」
「えっ、どうしてそれがわかるんですか?」
「それと先生はご結婚は?」
「えぇ、していますが」
「だったら、奥さんからも何かしらのプレッシャーを感じているのでは?」
「はい、そのとおりです」
「そのプレッシャーからは逃れることはできない。だからそれをどこかで解消したい。違いますか?」
「はい、そのとおりです」
「けれど、その明確な方法を持っていない。もしくはお酒などに頼っている」
「まさにその通りだ。どうして僕のことがそんなにわかるんですか?」
マスターの言葉はすべて正解。彼は占い師なのか? さらに言葉は続く。
「現状を逃れたい。けれど今の職場を離れるほどの勇気はない。どうですか?」
「えぇ、確かにそのとおりですね。僕は先生しかできませんから。仕事をやめて他に移るなんてことはできませんし。それに、他の仕事に就いてもきっと同じ思いをするでしょうし」
「先生って意外につらい職業ですよね」
「はい、おっしゃるとおりです」
「つらいけれど、楽しいこともありますよね」
楽しいこと。今までそんなこと考えてもみなかった。今の僕の仕事の中で楽しいことって何があるのだろう? マスターの言葉で考え込んでしまった。
「先生ってつらい仕事でしたか?」
突然、麗子のお父さんがマスターにそう質問した。そっか、マスターも以前は高校の先生をやっていたんだったな。一体どんな形で仕事をしていたのだろう? 興味はある。
「えぇ、とてもつらくて辞めたいと何度も思ったことのある仕事でした」
あ、やっぱそうなのか。だから先生を辞めて喫茶店を始めたのかな。だがその予想は大きく裏切られた。
「でもそれはある時期まででした。実はうちの常連さんでもあるコーチングの先生と出会ってから大きく変わったんです。授業の中で生徒を楽しませること。ここに目覚めて、さらに前々からチャレンジしたかったカウンセラーの資格をとってスクールカウンセラーになってから毎日が充実しましたよ」
「へぇ、じゃぁマスターはそのコーチングの先生に自分の目標を引き出してもらったのですか?」
「結果的にはそうなりますね。ちゃんとしたコーチングを受けてたわけじゃなく、友人として雑談を繰り返していたら、知らず知らずにうちにコーチングを受けていたんですね。自分の目標ができてからは毎日が楽しかったですよ」
なんだかいいなぁ。マスターにはそんな人がいてくれて。
「神城先生はどうして先生になろうと思ったのですか?」
お父さんからそんな質問が飛び出した。ここであらためて思い出してみた。僕が先生になりたかった理由を。
「僕は、昔見たドラマの熱血先生に憧れていたんです。あんなふうに生徒たちと向きあっていければ、毎日充実するだろうなって。でも現実は厳しいですね。生徒と向き合う時間よりも、学校行事や職員会議なんかと向きあう時間の方が長いんじゃないかな。おかげで生徒一人ひとりに目を向けられない」
「本当にそうでしょうか?」
マスターが厳しい一言を僕に投げつけた。
「何かを通じて子どもたちと向き合っている先生っていないですか?」
何かってなんだろう? マスターは僕が黙っているのを見て、さらに話を続けた。
「私はスクールカウンセラーをやっていましたが、それと同時に武道もやっていました。その武道を通じて生徒たちと向き合い、そこを突破口にして多くの生徒達と触れ合ってきました。武道は入り口にしか過ぎません」
その言葉を聞いて思い出した。野球バカの中富先生だ。彼は親や学校の言葉よりも子どもの言葉を重視している。だから子どもウケはいい。
これは子どものご機嫌取りではない。まさに熱血先生だ。子どもと正面から向きあっている。だから厳しい時は厳しいもんなぁ。
「確かにいます、そんな先生が。今まで僕はその先生のことを冷ややかな目で見ていました。そんな自己犠牲までして何になるのかって。でも違うんですね。僕が目指していた熱血先生の姿がそこにありましたよ。どうして気づかなかったんだろう」
ここで僕は何気にシェリー・ブレンドに手を伸ばした。このとき、また不思議な感覚を覚えた。
さっきはスーっとした感覚だったのに。今度は覚めたコーヒーなのに熱く感じる。この熱さは心の内側から湧いてくる、まさに熱血という言葉にふさわしいものだ。
「うん、この熱い思いを仕事にしたいんだ」
口から先に言葉が出てきた。そうか、そうだったのか。
だが次の瞬間、こんな思いが襲ってきた。
「でも、僕は何で熱血をすればいいのだろう。スポーツが出来るわけでもないし、打ち込んでいるものがあるわけでもないし」
「だったら、シェリー・ブレンドをもう一度飲んでみてはいかがですか?」
僕の後ろから声がした。女性店員のマイさんの声だ。僕は言われたとおり、シェリー・ブレンドに再び口をつけてみた。
「えっ!?」
僕は自分の舌を疑った。なんだ、この味は?
泥臭い、苦々しい味だ。
泥、泥団子。ふとその連想が頭に浮かんだ。
そういえば、娘の美保に泥団子を作ってあげたことがあったな。泥団子、といってもただの泥団子じゃない。表面がピカピカに黒光りする、まるで宝石のように光るものだ。
これは大学生時代にちょっと流行ったのではまって作っていた時期があった。僕が新任の頃に子どもたちにつくって見せてあげたら、すごく尊敬されたことを思い出した。あのときは一度だけクラス全員でつくったことがあったんだ。みんな最初だったからなかなかうまくいかなかったけど。でも、おかげでクラスの団結力は強くなったな。
けれど、二年目からは忙しさでそんなことする余裕もなくなった。
「そうか、泥団子か」
僕がそう口にしたのを、マスターやマイさん、麗子のお父さんは不思議そうな目線で見る。
「泥団子ってなんですか?」
これはさすがに説明しないといけないだろう。
「実はですね…」
僕は光る泥団子のこと、昔のことを説明した。
「なるほど、それは使えそうですね」
「それ、ぜひ麗子にも教えてあげてください」
その声でやる気が出てきた。これは面白くなりそうだ。
その後、カフェ・シェリーでは僕の泥団子についての熱弁が繰り広げられた。後からマスターがこんな感想を言ってくれた。
「最初にお店に入ってきた時と比べると、全くの別人でしたよ。おかげでこちらも気持ちがはずんできました」
別人、それは自分でもそう思った。なるほど、自分が熱中できるものがあれば周りにそんな影響をあたえることができるんだ。
次の日の日曜日、僕は泥団子の制作にとりかかった。泥団子をつくるのにはとても時間がかかる。
最初の形を作るところまではいいのだが、ある程度形が整ったら出来上がった球体を休ませながら進めることになる。そしてさらにそれ手の平と柔らかい布でひたすら磨く。すると、表面がだんだんとピカピカに光りだす。
久しぶりなのでうまくいくか不安だったが、ここは昔取った杵柄。夕方には予想以上のものが完成した。最初は妻も「いい年をして、なに泥遊びしてるの」と僕をののしっていたのだが、完成したピカピカの泥団子を見て僕を見る目が変わったようだ。
「ね、これすごいね。触ってもいい?」
そう言って僕の作った泥団子を、まるで宝石でも扱うように触りだす。その日の夜のおかずが急遽一品増えたのはありがたかったな。
そして翌日、僕は子どもたちの前で光る泥団子を披露した。
「わぁ、すごい、先生、触ってもいい?」
「ねぇ、どうやってつくるの?」
「私もつくってみたーい」
そんな声がクラスの中でこだました。うん、手応えありだな。
「この泥団子の作り方を知りたい人」
そういうと、みんながこぞって手を上げてその作り方を求めてきた。しかし、そんな中で里美の反応がイマイチであった。僕の目からは「そんな子供だましにダマされないぞ」と冷ややかな目で見ているようにも思えた。
逆にいい反応をしたのは麗子だった。目を爛々と輝かせて、早く教えて欲しいと僕に懇願してくるほどである。とりあえずしばらくはこの二人の様子を見てみるか。
平日だと時間がかかるので、土曜日に希望者だけ集めて早速泥団子作り教室開始することに。もちろん麗子も参加だ。
幸い、校庭の隅にある花壇の土が泥団子作りに適していることがわかっていたので、学校に許可をとって使わせてもらうことにした。
「光太郎、なんか変なこと始めたな」
金田は僕がやろうとしていることを冷ややかな目で見る。なにしろ、毎週金曜日恒例となっている金田との居酒屋談義を断っての行動だから。そしていよいよ土曜日を迎えた。
「さぁ、今からつくるぞ」
集まった子どもたちは十名ほど。うちのクラスは三十三名だから、約三分の一が参加か。塾やスポーツ少年団などに参加している子どもはそっちの方が忙しいから仕方ないか。そう考えると出席率は高いな。
泥団子づくりは時間がかかる。今回は僕があらかじめ大まかな形をつくっておいたので、磨きの作業が中心となる。本当は泥まみれになりながらみんなで最初から作りたかったのだが。これについては金田からこんなアドバイスを受けていた。
「子どもたちを泥だらけにして服を汚してしまったら、親からクレームが入るぞ」
うぅん、確かにそうだなぁ。まぁ今回は初回だから、そこは妥協するか。
実は泥団子は一日磨くだけでは完成しない。我が家で作った泥団子も、その後何日かに分けて磨きをかけることで、さらにピカピカに光るものに仕上がった。その完成形を見て、子どもたちの意欲にも火がついたらしい。
みんな真剣に、そして丁寧に磨いていく。ここで麗子を見ていると、意外にも彼女は丁寧に作業をする。参加者の中では一番ピカピカに仕上げていくじゃないか。ひょっとしたら僕より上手いかもしれない。
その姿を見て、みんなの麗子を見る目が変わった。
「麗子ちゃん、どうやったらそうなるの?」
今まで麗子にあまり近づかなかった他の子どもが、麗子の作った泥団子を見てそう質問してきた。
「えっ、これはね、こんな感じで磨くといいの」
麗子も嬉しそうに磨き方を教える。うん、なんかいい感じだな。
今までなかなか仲間の輪に入れなかった麗子だったが、逆に周りから輪をつくりだした。そういえば麗子のお父さんがいじめにあっているという話をしたな。先日はその相談だったはずなのが、僕のことだけになってしまい申し訳なかった。
だが土曜日の夜、麗子のお父さんから喜びの電話がかかってきた。
「先生、ありがとうございます。麗子、家に帰ってくるなり目を輝かせて泥団子作りの話をしてくれました。私も妻もその話を聞いてとても嬉しかったんですよ。これも先生のおかげです。本当にありがとうございます」
そうか、僕と同じで熱中できるものをつくってあげれば子どもたちも気持ちが満足するんだな。
だが問題はもう一人の里美だ。あの家庭、ネットワークビジネスで少しずつ狂い始めているんじゃないかな。ひょっとしたら、両親のその姿で里美の素行が狂いだしたのではないだろうか。だが家庭のことにどこまで口を挟めるのか。
そうして月曜日を迎えた。クラスでは泥団子の話題でもちきりだ。中でも麗子の磨き上げた泥団子は注目を浴びている。
「麗子ちゃん、すごい。先生のよりピカピカじゃない」
確かに、僕が作ったのより数段光っている。麗子は一気にクラスで注目をあびることになった。
が、唯一里美だけが不機嫌そうな顔でそれを眺めている。さて、どうしたものか。
そんなとき、事件が起きた。
「えっ、どうして…」
体育の授業の後、教室の後ろの棚に置いていた泥団子がすべて壊されていたのだ。中でも麗子の泥団子は一番ぐちゃぐちゃにされていた。
犯人の見当はついている。里美だ。彼女は体育の時遅れて体育館に来た。そのときはあまり強くは叱らなかったが、どうやらこのせいなのだろう。
多くの生徒は誰がやったのか、ここまで仕上げたのにどうして、という声を出している。中には泣き出す子も。だが麗子だけが違った。
「またつくればいいじゃない。私ね、泥団子磨くの好きだから、またやりたかったの。今度はみんなでつくらない?」
その言葉にみんなが賛同。麗子はイマイチ乗り気でない里美の手を取りこう言った。
「里美ちゃん、一緒に泥団子つくろう」
麗子にはわかっていたのかもしれない。里美が泥団子を壊した犯人だということが。
里美からいじめられていたということだったらしいが、そんなことは微塵も見せずに里美を誘う姿。クラスの中では精神的に麗子が一番子どもだと思っていたが、今は一番大人だと感じる。
当の里美は、麗子と目を合わせない。自分がしたことを悔やんでいる。そんな印象を受けた。
さて、どうしたものか。ここでふと思い出した。シェリー・ブレンドだ。
「さぁ、みんな席について。今麗子から、今度はみんなでつくらないかという提案があったな。そういえばクラスレクレーションを何にするかをまだ決めていなかったが。よかったらみんなで泥団子作りをしてみないか?」
クラスレクレーションとは、年に一度保護者も交えて行うクラス独自の行事のことだ。土曜日に行われることが多く、この日はよほどの理由がない限りほとんどの生徒が参加する。僕の意見にみんなが賛成。さらにもう一つ提案した。
「この中でコーヒーが飲めない人、いるか?」
三人ほど手を上げたが、甘くしたコーヒー牛乳なら大丈夫とのこと。
「よし、今度先生がおもしろいコーヒーを持ってきてあげよう」
僕は早速クラスレクレーションとシェリー・ブレンドの手配に走った。そのおかげか、意外にも早くその時は来た。
三週間後の土曜日、急遽クラスレクレーションを開催。内容はもちろん泥団子作り。このとき、カフェ・シェリーのマスターにお願いをしてシェリー・ブレンドのカフェオレをたくさんつくってもらった。
子ども用に少し甘めに味付けをしたシェリー・ブレンド、一口味見をしたがその効果は衰えていない。よし、これにかけてみよう。
クラスレクレーションでは大人も十名ちょっと参加。その中に里美の両親もいる。こういう行事になると必ず出てくれることを見越していたが、思惑通りになりそうだ。
「では今から泥団子の作り方を説明します」
前回はあらかじめ泥団子の形をつくっておいたが、今回は一からつくる。親も一緒になって泥まみれになる。特に里美のお父さんは熱中して取り組んでいる。
そうして二時間ほど格闘したときに僕から提案。
「じゃぁ一旦休憩にしましょう。おいしいコーヒーをご用意しましたからお飲みください」
紙コップにシェリー・ブレンドのカフェオレが注がれる。そして子どもも親も次々にそれを口にする。
このとき、必ず一口目でみんながなにかしらの反応を示す。僕が注目したのは里美の一家だ。
「えっ、何、これ?」
里美の一家は目を丸くしている。
「どんな味がしました?」
僕はカフェ・シェリーのマスター気取りで聞いてみた。
「いやぁ、コーヒーなんだけどなんか別の温かみを感じて。なんだろう、これ」
「家族の味がする」
里美がボソリとつぶやいた。
「あ、そう言われればそんな感じの味ですね」
里美のお父さんがそう答える。そこで僕はこんなことを伝えた。
「このコーヒー、シェリー・ブレンドは今その人が望んでいるものの味がするそうです」
そう言うと、里美の両親は里美を見つめた。
「家族の味、か。そういえば最近、里美をほったらかしにすることが多かったからな。ごめんよ、里美」
父親のその言葉で里美もニッコリと笑っている。
「里美ちゃん、今度は磨きだから。いっしょにやろう」
麗子が元気よく里美に声をかける。里美も、何かふっきれたようで、麗子の言葉に大きく首を縦に振った。
このとき感じた。先生も大変だけど、まんざらでもないな。
後に僕は、泥団子先生とあだ名をつけられた。これは悪くはないと自分では思っている。
泥団子先生の泥団子、その一つがカフェ・シェリーに宝石のように飾られている。これからの僕の人生を象徴するように、キラキラと光る泥団子が。
<先生はつらいよ 完>