大学生活を能力開発に費やした俺が並行世界で世界の真理を知った件
俺、佐藤真琴は、この春晴れて大学生になった。
現役でT大合格……ではない。1年宅浪してK大だ。畜生。
でも、せめて大学生活だけは充実させたい。何にせよ、この5年間はずっと一人虚しく勉強しかしてこなかったからな。学校が始まった最初の週には女の1人や2人は連れて校内を歩きたい。高校の頃に夢見た学園ライフを……
「いやごめんなさい無理でしたもうだめだわ俺。」
1ヶ月もたったというのに友達といえば、入学式にたまたま隣の席に座っていた梶原堅太。特に面白みもないが、まあ俺の話にいつも付き合ってくれる優しい奴だ。いつも授業中にサンスクリット語を独学で勉強してる変人な面が伺えるが。そこは見逃してやってくれ。
サークルとかも、新歓の時期が終わってるし、てかこんな見るからにインキャの理工学部生、しかも男って。初日さえ勧誘され無かったわ。
とにかく居場所がないぞ。そして目標がない。長い間家にこもっていたせいか運動しようにも体も鈍ってるし階段登るだけでも体力が削られる。
じゃあ成績がいいかって?そんなわけなかろう。大学は目標なんだから、何で入学した後もコツコツ興味もないことを研究しなきゃいけないのさ。もう知らん。俺はふつーの大学生でいいんだ。エリートとか、別に、目指してないしっ。最初から興味、無かったし……!
そういうことで楽をしようと楽な道を選択し続けているうちに、大学はほぼ行かなくなった。まあそりゃそうだよな、進級さえできればいいんだ。
でもな、楽な道を通るにはある程度余裕を持っていなければならない。
だって、考えてみろ。学校についていくのに精一杯なやつって、課題を後回しにして、遊んで、でも結局最後はテスト前にゼエゼエ言いながら勉強するんだ。
「強制的に勉強するのなんてごめんだぜ。俺は天才になりたい。天才になりたい……!」
そうして始めたのが能力開発だ。まずは夢の中で無限に勉強できるように明晰夢を鍛える。そしたらついでに、好きな女を思い浮かべてあんなことやこんなこともできるしな……げへへ。
おおっと、遠回りなんじゃね?とか言うな!そんなん知ってるわ!わかってはいるけれども一回抱いた好奇心のままに進んじまうのが人間ってもんだろ?ほっとけ!
* * *
その日、俺は夢を見た。
広大な地平線の見えない、駅のプラットホームのようなコンクリート状の板が、浮かんで、いる……?のか?
足元を確認してもここが何なのかわからない。
「それよりこの浮かんでいる感覚は何だ?」
別に、足場がふわふわしているわけじゃない。いや逆に、驚くぐらい安定している。でもこの違和感は……?
周りを見回してみると地球が見えた。
「あ、何だ、地球じゃん。よかったぁ……。」
って。
え……。
………………え?
……………。
…………………………。は?
はあぁぁぁあああぁぁ?!?!!
「何で地球が見えるの?地球にいるんじゃないの…………?!」
てか、ここどこ?宇宙?え、宇宙だよね??
でもよくみるとここは。あ、教科書で見た並びじゃん。
太陽を中心として、内側から、水星(Mercury)、金星(Venus)、地球(Earth)、火星(Mars)、木星(Jupiter)、土星(Saturn)、天王星(Uranus)、海王星(Neptune)の順。
って。感心してる場合じゃないって。ここ、どこ。もしかして宇宙の「外」?
驚きを超えて恐怖心が芽生えてきたが、ここで少し自分を落ち着けてこの訳も分からない場所をしばらく探索することにした。
◆
20分ほど歩いたのだろうか?それとも、この、惑星(?)からみて1時間ほど?人間として当たり前に備わっているはずの時間感覚を奪われたような、とてもひ弱な存在に思える自分がいた。
…………………。
…………待って待って待って。
何ですかこのSF映画に出てきそうな、あるいは魔法系のフィクションのボス部屋にはいるときに出てきそうなでっかい扉は。
というか、そもそも扉なのか?宇宙のどこまでも吸い込まれていきそうな深い青色に包まれたその空間にうかぶ(?)無限にに長く続くコンクリートのプラットフォームの端っこ(?)にいきなりポツンと扉があるのだ。
そう、ここには天井も壁もない。あるのは、床のみ。
「うーん。でもこの空間。このドアを開けて入って見ないと一生抜け出せそうにないしなぁ…。」
そうやってドアの見えない(が、ここを押せば扉が開きそうだなと思った場所)に手をかざすと、そこには何もなかったかのように手がすり抜けて行った。
「ま、眩しい……!!」
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