第6話:もろい絆…
許す事ができない事も
いつのまにか忘れるときがたまにある。
でも、
それは心のどこかで許していたと言う事なのだろう。
「天見?」
教室を飛び出してしばらくすると渚音とばったり会った。
「…あの子は?」
「あの子?」
「多賀谷って子!」
渚音は唯愛を軽く睨んだ。
「志乃がどうした?」
秋華は確かに言った。
「浅木君と付き合ってる子…
金持ちの大学生と付き合ってるらしいよ?
でも、最近別れ話が出てるらしくて…。
浅木君と一緒にいれば相手が妬いてよりをもどせるかもって…。
ここからは私の想像。
金持ちの彼氏を手放す訳がないし。」
「どうして渚音なの…?」
「分からないよ。
でも、浅木君と何かあるのかもね?」
「浅木は利用されてるんだよ!!」
「はぁ?志乃が俺を利用してるって?」
渚音はあきれたように笑った。
「あの子には他に彼氏がいるんだよ?」
「ふざけた事言うなよ。」
「違う!私はただ本当の事言ってるだけだよ!」
「黙れよ!お前は何がしたいんだよ。
志乃を侮辱して…。
最低だな。
これ以上志乃を侮辱してみろ。
許さねぇからな。」
渚音は強く唯愛を睨み怒鳴りつけた。
「あの子の事好きなの…?」
「…当たり前だろ。」
渚音は立ち去った。
「嘘…私が悪いの…?」
唯愛はその場にうずくまった。
「嫌だよ!」
大声で泣き叫び
周りの人を気にせず泣き続けた。
私はただ渚音のために言っただけなのに…。
そう言う事じゃなくて
あの子を好きだと言うのを信じたくなかった。
ただ、私よりあの子のほうが早く
好きだと言っただけだと思ってた。
思っていたかった。
だけど、思い知らされて。
渚音に嫌われて。
最低と言われて。
そんなにすぐに崩れる絆だったというのが哀しくて。
「嫌だよ…!!」
悔しくて。
すぐに泣いてしまう自分が情けなくて。
「天見!何してる!」
先生の声にハッとし、唯愛は涙を拭き立ち上がった。
「何があった?こんな所で大泣きして、
迷惑をかけているとは考えないのか?」
頭ごなしに怒鳴る先生を横目に唯愛は走り去った。
今はただ哀しくて泣き叫んだ。
だけど、すごく恥ずかしいことで…
「ほんと情けない…」
気持ちがすぐに行動に出てしまう、幼児のようだ。
あまりにも、恥ずかしい。
悔しくて
ショックで
哀しくて
どうしようもない。
甘えていてもしょうがない。
あの子が好きなら必死に自分のものにして。
泣いて「ごめん」なんて言っても許さない。
渚音が傷つくところは見たくない。
でも、最低と言った貴方をそう簡単に許す事はできない。
私が悪いなんて思わない。
私は私なりに渚音を守ったつもりだったから。
すぐに最低だなんて言えるほどの
私たちの絆。
負ける訳にはいかない。
何て言われても私は渚音の
涙をみたくないから
渚音を助けたいの…