第3話:もう隣にいない貴方へ…
「唯愛!同じクラスだね!!」
中学も同じだった秋華は当時から仲がよかった。
「うん。宜しくね!」
「てかさ。また浅木君と同じクラスじゃん。
好きなんでしょ?最近人気あるんだから早く告白しちゃいなよ!」
秋華はあきれたように渚音を指さした。
入学当初と比べるとずっと背も高くなり、
人気があるのも分かるような気がした。
唯愛にとってずっと見てきたはずの渚音もいつしか変わっていた。
ただ、時々みせるはにかんだ笑顔などは何ひとつ変わってはいない。
そう、思いたかった。
自分だけが知っている渚音で居て欲しかった。
「わがままだよね…」
「え?」
「あ、ごめん。何でもないの!そういえば、なんで渚音が好きって
しってるわけ〜!!」
「見てたら分かるわよ。」
秋華はニヤリと笑い唯愛の頬っぺたをつついた。
「あの…!浅木先輩居ますか?」
昼休み教室でお弁当を開いていると
2年生くらいだろうか。
小柄な女の子が真っ赤な顔をして唯愛に訪ねてきた。
「うん、居るよ。」
秋華は唯愛を押しのけて返事をした。
「浅木くーん!お客さんだよ!!」
秋華の声に面倒そうに渚音は女の子と一緒に
教室を出て行った。
「告白かなぁ?」
「私に聞かないでよ。」
告白に決まってる。
私には分かる。
だからあの子の質問にも答えられなかった。
意地悪だって分かってる。
でも、私から渚音を取らないで…
渚音は昼休みが終わる頃に帰ってきた。
「浅木!何の話だったの?」
勢いに任せて唯愛は渚音に訪ねた。
「秘密?」
「ふざけないで…」
「何怒ってんの?ただの告白だよ。」
唯愛は目を見開いた。
やっぱり。
だから嫌だったの。
「怒ってないよ…それでどうしたの?」
「もちろん付き合うに決まってんじゃん。断る理由ないだろ?」
「全然知らない子じゃん!」
渚音はため息をついた。
「俺が誰と付き合おうがお前には関係ないだろ。」
渚音…
私を見てほしいの。
もう、私を見てくれないの?
私はひどい女であの子なんていなくなれって
ずっと思っちゃうの。
渚音…嫌だよ…
「トイレ行って来る。」
静かに立ち上がり教室を出た。
「唯愛!大丈夫?」
唯愛は秋華に背を向けながら泣いた。
震えが止まらずに足ががくがくと揺れ、
立っているのがやっとだった。
「私、渚音が好きだよ…。でも、あの子と付き合うって事は
私の事好きじゃないって事でしょ?」
秋華は唯愛を抱きしめた。
「私汚いの…渚音が私の傍に居てほしいって…
私だけを見てほしいって…
もう、やだよ。」
「汚くないよ。好きなら普通だよ…」
唯愛は抱きしめる秋華を押しのけた。
「私おかしいよ!
あの子なんて…って思っちゃうし
渚音だって私の事可笑しいって思うよ!」
涙でぐしゃぐしゃになった顔が更にゆがんだ。
「そんな事じゃなくて…
悔しいの…なんで私じゃないの?
こんなに好きなのに…
嫌だよ!!」
素直になりたい。
でも、なれなくて。
伝えたいのに、言葉にできなくて。
私は今も手を伸ばしていたいの…