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第2話:桜の咲く日の想い…

青く晴れた日に2人は出会った。

中学1年の春。

新しい街に引越し、どこにでもある市立校に入学した。

周りは小学校からの知り合いなのだろう、仲よさそうに

会話しているのを唯愛はよく覚えていた。

緊張と不安が渦を巻き俯いてただ椅子に座って大人しくしていた。


そのとき、ガタンと座っていた椅子が揺れ唯愛は勢いよく椅子から落ちた。

驚いたときには倒れていた。

「やべ!」

まだ声も変わっていない幼い声が上から聞こえた。

「痛い…!」

ひねったのか足が痛く起き上がろうとしても足が思うように動かなかった。

「おい!大丈夫か!?」

涙をためた目で上を見ると、小柄な男の子が唯愛の顔を覗いていた。

「何してんだよ、渚音しょおん!」

騒がしかった教室も唯愛がこけた事でしんと静まりかえった。

「分かってるよ!ごめん。立てる?」


渚音と呼ばれた男の子は手を差し出してきた。

男の子に連れられて保健室に行った。

先生に入学式に何してるの。と男の子は散々に怒鳴られていた。

「あの…さ。ごめん。」

唯愛の不安が一気に溢れ出し、静かに泣いた。

「…!そんなに痛い?ごめん。」

唯愛は首を振った。

泣くほど痛い訳じゃない。ただ不安で。怖くて。

この子に嫌われると思った。

嫌われるのが怖い。

だから、ずっと良い子でいて。


「大丈夫?」


唯愛が顔を上げると男の子が優しく笑っていた。


「うん…」


唯愛が頷くと男の子は唯愛の頭を撫でた。

「お前、妹に似てるわぁ。」

「なにそれ。」

2人はお互いに笑い合った。

入学式に出ていない事で2人の両親が保健室に来ると、男の子は更に怒られていた。


「ごめんね…?」

「俺が悪いんじゃん。」

優しい顔をすると男の子はニコリと笑った。

浅木渚音(あさきしょおん)。宜しく。」

天見唯愛(あまみゆいあ)です。」


桜が咲き乱れる中で2人は笑い合った。

子犬のようによく笑い、ふわふわした髪の渚音。

大人しく、妹に似ている唯愛。

それが2人の印象だった。



「まぁたお前と同じクラスかよ。」

渚音はわざとらしく深くため息をついた。

「それは私のセリフ!バカ渚音にの面倒見たくないわ。」

唯愛もわざとらしく深くため息をついた。

「面倒!?お前に面倒見てもらった覚えはねぇな。」

「あら。そうかしら?ノート見せたり?バカな事をしたのを

先生に上手く言ってあげたり?感謝する事あるんじゃないの?」

唯愛が意地悪そうに笑うと渚音は苦笑いを浮かべた。


「3年間同じクラスってどんだけだよ。なぁ、天見。」

仲がよかったが渚音はいつしか苗字で唯愛を呼ぶようになっていた。

「だよね。ここまで来ると怖いね。しかも渚音と、って…」

唯愛はふざけて言った。

「なんだよそれ!てかさ。いい加減苗字で呼べよ。

からかわれるの分かってんだろ。」

「はいはい。」

唯愛は子供をなだめるように返事をした。


家に帰ると自分の部屋に駆け上がりベッドに飛び込んだ。

本当はずっと同じクラスで嬉しかった。

渚音とずっと呼びたい。

苗字じゃなくて唯愛って昔みたいに呼んでほしい。

唯愛は寝ころびながら天井を見た。


「私はずっと渚音が好きなんだ…」


手で顔をおさえた。

ずっと渚音は友達だった。

いつからだろう。

こんなに好きなのになんで今まできづかなかったのだろう。


ねぇ。

渚音。

伝えたい事がいっぱいあるよ…


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