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ようこそ我が部署『復讐課』へ

「やあ、おかえりアスカ君」

 カイトとアスカが部屋に入ると、中でデスクに座っていた男が手を軽く掲げながら迎え入れる。

 男はカイトの姿を見つけると、アスカに紹介を促す。

「そちらの彼は?」

「はいカイト君、自己紹介」

 てっきりアスカがするものだと思っていたカイトは、その丸投げっぷりに一瞬驚愕する。

「えぇっ...............あ、ええと.........西道魁斗......です」

 男はデスクから立ち上がり、カイトの前に出る。

「カイトくんか。なんだかかっこいい名前だね。物語の主人公みたいな感じで。ああすまない、自分の名前を名乗らずに。僕は(ハマ) 一郎太(イチロウタ)。一応、この部署の1番偉い人って事になってる。よろしくね」

 一郎太はそう言って手を差し出す。

 なんか僕よりすごい名前が出てきた、そして何がよろしくなのか分からん、と内心思いながらカイトは差し出された手を握る。

 手を離した一郎太はカイトとアスカを見やって

「じゃ、これからこのメンバーで頑張っていこう!」

 何やら意気込んでいた。

 アスカとカイトは同時に手を挙げる。

「ん?何かな?」


「なんの話してるんですか?」←byカイト

「なんの説明もしてないです」←byアスカ


「Oh.........アスカくん」

 一郎太は絶句したのちアスカを呼ぶ。

「はい?」

 アスカは何故か満面の笑みで答える。

「僕、言ってなかったっけ?説明しといてって言ってなかったっけ⁉︎」

「さあ、なんのことでしょうねぇ」

 アスカはどこ吹く風で受け流す。笑いを堪えながら。

 あ、確信犯だ。

 何も知らないカイトでさえも察することが出来た。

 だが一郎太は察せてない様子で「あれぇ......でもなぁ......」と必死で記憶を混ぜ返す。しばらくしたのち、「まあいっか」と諦めた様子で説明を始める。

「えっと、じゃ改めてようこそ我が部署へ。ここは『悔恨呪怨正式成敗公務執行部』ていう長ったらしい名前の部署なんだ。みんなはここの事は、その仕事内容から『復讐課』と呼んでいる。復讐課の名前を聞いた事はあるかな?」

 カイトは首を横に振る。

「......来たばかりだから」

「そっか。ここは、ちょっと特殊な事を請け負う場所でね。君はここに来る前に、イエスと名乗るお爺さんに会ったかい?」

 今度はカイトは首を縦に振る。むしろ、あの爺さんのせいでここに来る羽目になったのだが、と内心で悪態を吐く。

「じゃあそのお爺さんに、β型の未練がどうのこうの、っていう話は聞いたかな?」

「......ちゃんとは聞いてない。......エレベーターで落とされる時に少し聞こえたくらい」

「りょーかい。じゃあそこからね。

 えっとね、この世界は3つの世界で構成されている。「第一世界」「第二世界」「第三世界」の3つ。僕達が以前いた現世を「第一世界」、僕達が天国・地獄と呼んでいた場所を「第二世界」、そして、今、僕達がいるこの世界を「第三世界」と呼ぶ。でも、世界が違うからって地理も変わって来る訳じゃない。第三世界の地形はそのまま日本。つまりここは、第一世界のコピーみたいな場所だ。ここまではいいかな?」

「.........うん、なんとか」

「よし。で、コピーって事だから、第一世界の方で何かあったらこっちも変わってしまう。災害なんかがあった時とかね。で、ここで暮らす人々の事だけど、彼らは必ず何かしらの未練を抱えているんだ。その未練は大体一致している。」


「自分がこの世界に送られる原因を作った『ナニカ』への恨み」


「殺された人や事故にあった人の様に、自然死ではなく、何らかの他意が関わって死に至った人達。ここは、そんな人達が送られてくる場所だ。もちろん例外もあるけどね。この世界についてはこんな感じかな。

 では、この部署についての説明。

 この部署はそんな人達の未練を少しでも晴らしてやろうって事で立ち上がったんだ。未練を晴らしてほしい人から相談を受けて、それを精査して、本当に晴らすべき未練なのかを見分けてから、第一世界に行ってその人の代わりに『復讐』する」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 カイトは思わず一郎太の説明を遮る。

「その......可能なんですか?......現世に戻る事が」

 一郎太は力強く頷く。

「もちろん。そうじゃないとこの課は成り立たない。あ、でも戻る方法は僕だけしか知らない。無意味に広めてこちら側の人が第一世界に殺到したら、マズイ事になるからね」

 カイトは少しガッカリする。やっぱり現世に戻りたい気持ちは拭いきれないからだ。

「さて、駆け足で説明したけども、何か質問等あるかな?」

 カイトが挙手して質問を告げる。

「......質問というか......それ、なんで僕がやる前提で話してるんです?」

「あれ、やらない?」

 カイトは返答に困った。

 この世界の事は少しは分かったつもり。そもそもアスカさんに導かれたからこそここにくる事になって濱さんから色々と説明を受ける事が出来た。もしアスカさんに導かれていなかったら僕はきっと............ッ!

 カイトは思わずその先を想像して身震いする。

 そんな逡巡するカイトを見て、一郎太は少しだけ悪い顔をして提案する。


「もしカイトくんさえよかったら、衣食住の全ては僕達が責任を持とう。もちろん給料だって人並みには出すし、休みが欲しいなら言ってくれれば配慮しよう。どうかな?」


 夢の様な提案にカイトの心はかなりぐらつく。

 甘言かもしれない。世の中そんなに上手くいく事は無いんだよ。

 昔、父が言っていたそんな考えもよぎるがすぐに搔き消える。

 子供の至らない頭で塾考した結果、


「......やります」


 一郎太とアスカはカイトのその言葉を聞くとハイタッチを交わす。一郎太はそのまま手をカイトの前に差し出す。

「ありがとう、本当にありがとうカイトくん!君は僕の2人目の仲間だ。歓迎するよ、ようこそ我が部署『復讐課』へ!」

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