魔王を倒した勇者御一行様はその後何をしているのだろうか?
誰でも知ってるファンタジーの続き。
知ってるようで知らない物語のその後。
そもそも論で勇者って何なの?
感動のエンディングからのストーリー。
もしかしたら知らない方がいいかもしれない。
夢が壊れるかもしれない。
人の心の闇を描いちゃってるかもしれない。
ファンタジーに夢と希望をお持ちの方どうかご遠慮ください。
これはそういうお話ではありません。
実はこんなことがあったファンタジーの歴史の裏側です。
聖人君子などそうそういないのです。
知らないことを知っていい、その覚悟がおありなら、
その先にお進みください。
ようこそ、禁断のファンタジーへ。
がっかりなさいませぬよう、お祈り致しております。
僕は魔王倒すために選ばれし勇者。
俺は魔王倒すために立ち上がった戦士。
私は飽くなき魔道を研究する魔法使い。
拙僧は仏門に帰依する格闘家
我は神に仕える神官
俺は強さを求め旅する剣士。
拙者は主君を求めし侍
某、雇い主のために暗躍する忍者
私は神にお仕えする巫女
第一話 旅立ちの朝
僕は勇者アレン。
僕が・・・勇者?・・
「・・・アレン! 朝よ!アレン!」
「あれ・・・?母さん・・ここは・・?」
「何言ってるの。ウチよ。我が家。」
「なんでここに・・?」
「何言ってんの!昨日帰って来たんでしょ。」
「そっか・・・それで何の用?」
「アレンにお客さんよ。」
「僕に?」
「そう。玄関に来てるわよ」
「行かなきゃ、で、誰?」
「知らないわよ。王宮からの使いだって。」
「そっか、後で使いの人が来るって言ってたっけ。」
僕はアレン。
自分のことを勇者だなんて思ったことはない。
でもどういう訳か勇者ってことになった。
そのおかげか・・・
王様じきじきに勲章?かな、
授与してくれるから王宮に行くことになってる。
それで迎えに来てくれたんだろう。
「おはようございます。って、ギルバートさん?」
「おはよう。アレン。」
「ギルバートさん。迎えに来てくれたんですか?」
「迎え?いや、違うぞ。」
「え?じゃどうしたんですか?」
「王宮の伝言を伝えに来た。」
「伝言ですか?」
「そうだ。伝言だ。」
「伝言だけですか?」
「伝言だけだ。」
「そうですか・・・」
てっきり迎えかと思ったのに・・・。
おかしいと思った。
ギルバートさんは戦士だ。
普段は王宮にいるから伝言に来たんだ。
ここしばらく行動を共にしてたから、
僕の顔も知ってるし。
「伝言の内容を伝えるぞ?」
「はい・・」
「明後日の午後に王宮に謁見の間に。」
「謁見の間に?」
「正装で来るようにとのことだ。」
「正装ですか?」
「正装だ。」
「・・・なぜ呼ばれたのかとかは・・・」
「・・・一応聞いてるぞ。」
「!・・・教えていただけますか?」
「聞きたいか?」
「ハイ」
「アレン。」
「はい。」
「なぜだと思う?」
「・・・それが聞きたいんです。」
「まあ、察しの通りだ。」
「と言いますと?」
「今回の戦の功績を評価してくださるそうだ。」
「そうですよね・・」
「嬉しくないのか?」
「嬉しいですよ。嬉しいですけど・・」
「嬉しいけど、なんだ?」
「戦死者も大勢出ました。」
「そうだな。」
「喜んでいいものか・・・」
「だからこそだ。」
「そんな簡単に割り切れません。」
「ならば調べるか?」
「何をですか?」
「この戦の理由だよ。」
「理由?」
「そう。理由だ。」
「説明されてますよ?」
「どういう風に?」
「魔王軍が攻めてきたから。」
「そう、魔王軍が攻めてきたからだ。
ではなぜ魔王軍は攻めてきた?」
「え?」
「魔王軍が攻めてきた理由だ。」
「知りませんよ。そんなこと。」
「そう。そんなことだ。」
「理由なんかないんじゃないですか?」
「なぜそう思う?」
「だって相手は魔王軍ですよ?」
「魔王軍だから?」
「近いところに攻めてきたんじゃないですか?」
「ならば隣のルグタス国でもよかったはずだ。」
「まあ、そうですけど・・」
「さらに魔王の城からは山向こうのサルヒガ国がもっと近い。」
「確かに・・・」
「ならばなぜ魔王軍はわがエルドラ国に攻めてきた。」
「なぜなんでしょう・・?」
「少なくとも魔王軍は適当に攻めてきたのではない。」
「じゃあ、」
「そうだ。魔王軍は何か理由があってせめてきたのだ。」
そんなこと・・・
考えてもみなかった。
僕の国は戦をしていた。
理由がないはずがない。
「でも一体何の理由があって?」
「調べてみないか?」
「はい?」
「その理由ってやつを。」
「ぼくがですか?」
「ぼくたちが!だ」
「なんでぼくがそんなことしなきゃいけないんですか?」
「もう一回言うが君一人じゃないよ。」
「だからなんで僕が入ってるんですか?」
「たぶん・・・」
「たぶん?なんですか?」
「君は無関係じゃない。」
「?どういうことですか?」
「ここから先は後にしよう。」
「別にやるってわけじゃ・・・」
「朝食がすんだら私の部屋に来てくれ、他のメンバー来ることになってる。」
「だからやるなんて一言も・・」
「じゃ、後で。」
・・・行ってしまった。
人の話を聞かない人だな。
そもそもなんで僕に関係あるんだ。
勇者だから?
そんなはずない。
だいたい勇者なんて言われたの昨日が初めてだ。
それまで僕はこの国の一兵卒だったんだ。
って今もそうか。
・・・二か月ほどからこの国は魔王軍との戦になった。
そしてつい二日ほど前、魔王軍に総攻撃をかけた。
そして、多大な犠牲を出しながらもわがエルドラ軍が勝利した。
多くの戦死者が出る戦だったが僕は生き残った。
たまたまだ。
運がよかったんだ。
それだけのことだ。
魔王軍が攻めてきた理由にどう僕が係わるんだ?
ありえない。
「アレ-ン!朝ごはんできたわよ-」
母が呼んでいる
「いま行く!」
僕に関係あるはずがない。
そうに決まってる。
朝食を食べているとふいに気になった
「ねえ、母さん」
「なあに?」
「父さんでどんな人だったの?」
「どうしたの急に?」
「知りたくなったんだ。」
当たり前だが僕には父がいた。
「お父さんは、軍人だったわ。」
「そこは知ってるよ。」
「そうね。」
「出世したの?」
「出世はあまりしなかったわ。」
「いい軍人じゃなかったの?」
「どうかしらね。」
「でも出世しなかったんでしょう?」
「そうよ。でも武勲は一杯立てたわ。」
「どういうこと?」
「上官に逆らってばかりの人だったといわれたわ。」
「素行が悪かったの?」
「そうじゃないわ。」
「上官と仲悪かったの?」
「そうね、悪かったといえば悪かったわ。」
「それでどうやって武勲を立てたの?」
「・・・当時の軍は勝つことを最優先に考えていたわ。」
「いまだってそうだけとね。」
「だから、多少の犠牲は仕方ないと考えていたの。」
「軍人は戦うのが仕事だから多少の犠牲はしょうがないよ」
そうだ。軍人は民間人を守るのが仕事だ。
その為の犠牲は無駄じゃない。
その尊い犠牲によって多くの人が守られた。
僕たちはこの国の人々を守るために戦ったんだ。
「違うのよ。」
「なにが?」
「当時、勝つことを優先した軍の行動が問題だったの。」
「どうして?勝たなきゃいけないんだから勝つための行動でしょ?」
何がいけないんだ?
軍が勝つためにすることに何の問題があるっていうんだ?
じゃ、負けてもいいっていうのか?
負けたらそれこそ意味がない。
負けたら何も守れない。
戦死した兵士はうかばれない。
「国民を守らなかったのよ。」
「・・・え?」
「当時の指揮官は勝つことを優先して国民を守ることをおろそかにしたの。」
「どういうこと?」
「敵がこの町に攻めてくることがわかってたのに全軍で出撃したの。」
「なんてことを・・」
「そ、何てことよ。」
「でも勝ったんでしょ?」
「もちろん勝ったわよ。」
「どうやって勝ったの?」
「どうして勝てたと思う?」
当たり前だけど軍が不在で勝てるわけない。
「町の人たちが戦ったの?」
「武器もないし、そんなことしても勝てないわよ。」
「敵の数が少なかったんじゃないの?」
「少なかったけど、それが理由じゃないわ。」
「敵が攻めてこなかった!」
「そんなわけないでしょ。」
「んじゃどうしてさ-。」
「軍は敵の奇襲の情報を掴んでた。」
「それで?」
「一部の人が全軍の出撃に反対したの。」
「じゃ、まさか・・・」
「そう、町に一部の兵士が残ったの。内緒でね。」
「内緒って、それ命令違反じゃ・・」
「そうよ、司令部の考えじゃ総攻撃の勝利の後に戻ってくれば間に合うつもりだったらしいわ。」
「え?でも間に合わないかもしれないのに?」
「町の人に多少の犠牲が出てもいいと思ってたみたいよ。」
「そんな・・・」
「だから残った人がいたのよ。」
「まさかその残った人って・・・?」
「当時中隊長をしていた父さんとその部隊よ。」
「中隊って一個中隊?」
「そうよ。」
「でも命令違反でしょ?中隊の人が全員残ったの?」
「わからないわ。」
「どうして?町を救ったんでしょ?」
「中隊と言っても父さんの意見に賛同した人が残っただけで正規の中隊じゃなかったそうよ。」
「でもその後処罰とかあったでしょ命令違反で。」
「誰も処罰されなかっわ。」
「!寛大な司令官。功績の方が大きかったのか。」
「違うのよ。」
「町の人が反対したの?町を救った英雄を処罰するなって。」
「そう言いたかったけどね。」
「言わなかったの?」
「言えなかったのよ。」
「どうして?言えばよかったのに。」
「いう人がいなくなったのよ。」
「・・・じゃ?」
「全員戦死、それか行方不明になったわ。」
「それじゃ父さんも?」
「行方不明になったわ。」
「そんなことが・・・」
「でもいいこともあるわ。」
「いいこと・・?」
「父さんのしたことは公式に軍の命令に従ったことになってるわ。」
「公式に?」
「そうよ命令違反じゃなく、別動隊の指揮をしたことになってる。」
「でも、それって・・」
「当事者がいないからね。」
「誰の功績なの?」
「軍の功績に決まってるじゃない。」
「おかしいよ、そんなの。」
「それでも母さんはよかったと思ってる。」
「どうしてさ?」
「仮に戦死でも命令違反は重罪よ。」
「知ってるよ。」
「違反者はどうなるのかしら?」
「戦死でも処罰の対象さ。処罰・・・」
「わかった?町を救った英雄と、命令違反者じゃ、その後の待遇は天と地よ。」
「じゃ僕のために・・」
「あなたと、父さんのためよ。」
「でも、軍は父さんの手柄を横取りしたんだ。」
「そうかもしれないわね。」
「かもじゃない!そうだよ」
「でも軍のお偉いさんも馬鹿じゃないわ。」
「どういうこと?」
「父さんに勲章を授与するって、言ってきたの。」
「受けたんだね。」
「多額の報奨金も受け取ったわ。」
「・・・」
「受けなかったら父さんは処罰されたかもしれなかった。」
「でも事実じゃない。」
「父さんが町を守ったのは事実よ。」
「だったら・・」
「確かに、すべてではなくても父さんの功績は認められたわ。」
「それは軍が町を守らなかったことを隠ぺいするためじゃないか。」
「父さんは名誉勲章を受勲した。それは間違ってないと思ってるわ。」
「それはそうだけど・・・」
「軍は全てを公表しなかったのは確かよ。」
「・・・」
「でも母さんはそれを求めないわ。」
「なんでさ?」
「父さん達が命懸けでこの町を守ったことをみんな知ってるわ。」
「・・・」
「それで充分よ。あとはアレン。」
「?」
「あなたがやりなさい。」
「え?どういうこと?」
「さっきギルバート君が来てたでしょ?」
「来てたね。って、君?母さん知ってるの?」
「ギルバート君のこと?」
「そう!」
「ええ。知ってるわよ。」
「なんで?」
「あとは本人に聞きなさい。」
「どういうこと?」
「行くんでしょ?」
「どこに?」
「ギルバート君のとこ?」
「行くなんて一言も言ってないけど?」
「行かなきゃ疑問は解けないわ。」
「別にいいよ。」
「母さんがよくないのよ。」
「どうして?」
「アレンが本当のことを知らないままでいてほしくないの。」
「本当のこと?」
「ギルバート君のとこに行けば分かるハズよ。」
「そうなの?」
「行けば分かるわ。」
「何がわかるのさ?」
「真実か、それに近い事よ。」
「なんでギルバートさんが知ってるのさ?」
「だから本人に聞きなさい。」
「行かなきゃダメなの?」
「だって行くって答えちゃったもの。」
「誰が?」
「母さんがよ!」
「いつ?」
「昨日。」
「なんで?」
「聞かれたから。」
「誰に?」
「ギルバート君によ。」
「なんでそうなったんだよ。」
「あなたが寝てたから。」
「・・・初耳なんだけど。」
「今初めて話してるわ。」
「初めて聞いたよ。びっくりだ。」
「そうでしょ。だから!」
「だから?」
「母さんを嘘つきにしないで頂戴、アレン。」
「僕に関係ある話なの?」
「大ありよ!さ、いってらっしゃい。」
そうやって母に言われるがまま?に僕はギルバートさんのとこに向かった
僕はそもそもギルバートさんの事に詳しいわけじゃない
先輩?上官?もう10年以上軍人をしている。
僕が入隊したときはもう古株だから基本的に大先輩だ。
だいたいなんで母さんは面識があるんだ?
母さんからギルバートさんの話なんて聞いたことないぞ。
ギルバートさんも母さんのことなんで知ってるんだ?
一度もそんな話したことない。
ギルバートさんと初めて話したのは一年二か月前。
僕が入隊した時だ。
それから一年間の訓練、そして配属。
分かっているのはすごく強い軍人ってこと位だ。
他の先輩や上官とあまり変わらない
強いていうならこの前作戦で一緒になった。くらいだ。
考えてみたら謎だらけだ。
僕は言われるがままに戦に参加していた。
本当にこれでよかったのかどうかなんて考えてなかった。
着いた、ギルバートさんの家だ。
時間あるときにコツコツ書いてます
いつ更新できるか分かりませんが、
一応全体の話は決まってます
気長に読んでみてください
初めての投稿だったのですけど
大変なので連載形式に投稿しなおしました
頑張って連載したいと思いますので
連載の方を読んで頂ければ幸いです。
こちらが第一話になります