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青い空に、手を伸ばした  作者: 七瀬ナナ
第1章 再開
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あの頃の僕ら


あたしは海のない、山と川ばかりのこの町に生まれた。



あたしが生まれたその日はとても暑い、夏真っ盛りだったらしい。



マンションの7階に家族3人で暮らしていたあたし達は、お隣に住む長谷川はせがわさんと仲が良かった。


そこの3人目の子ども。

それがみなとだった。


湊はあたしが産まれて数週間後に生まれた。

同い年だったこともあり、あたしと湊は物心つく前からずっと一緒だった。



そしてひとつ上の階に住むアカネと、5階に住むアキトとはマンションの前にある小さな公園で出会った。



そしてあたし達は小学生になっても、飽きずに毎日のように一緒に遊んだ。





「さーいしょはグー!じゃーんけーんポンっ!」



湊の声で一斉に手が出る。


グー。グー。チョキ。グー。



「じゃあオニはあーちゃんね!」



あーちゃんこと、倉橋茜くらはしあかねはうんっ!と笑って数を数え始めた。



「いーち、にーい、さーん、…___。」


小学生になって初めての夏休み。


雲ひとつない青空があたし達の頭の、ずっとずっと上に広がっていた。




「___…じゅう!いくよー!」



そう言って茜は勢いよく駆け出した。


かけっこではいつも1番。


この前、小学生になって初めての運動会でも1番だった。



「はいっ、タッチ!あっくんオニね!」



あっくんこと、瀬戸秋人せとあきとはあーあ、と声をもらした。


「あーちゃん、足はやすぎっ!」


そう言って秋人ははにかんだ。



「アキ、おんなに負けてやんのー!」


そう言って指差したのは湊で、すぐさま秋人は湊を追いかけた。



「ぜったいミナトつかまえる!」



「オニさんこちらー!」



そう言って湊はあっかんべー、っと舌をだした。



「まーた始まったね、2人のおいかけっこ。」


汗だくになった茜があたしの隣に並んだ。



「うん。どっちが勝つかなぁ。」



そう返したあたしに茜は、


「ミナトくんじゃない?足はやいもん。」


そう言った。




「んー、でもあっくんもはやいよー。」



あたしがそう言った時、公園の隅の方で湊が転んだ。


「「あっ!」」


あたしと茜の声が重なった。




「はい、タッチ!ミナト大丈夫?」



秋人は覗き込むようにしゃがんだ。



「いってぇー!」


そう言った湊の目は涙がこぼれそうになっていた。


それでもこぼすもんかと、一生懸命こらえていた。



「はい、タオル!水であらってこよ!」


あたしは湊にハンカチを差し出した。



立ち上がった湊のズボンについた砂を、秋人がポンポンっとはらった。





一緒に遊んで笑って、ときに喧嘩して涙して。

ケガした事さえもいい思い出で、ひとつひとつが大切だった。





公園にある水道の蛇口をひねった。



太陽の光が反射してキラキラと輝いていた。



水で擦りむけたひざを洗って、砂を落とした。



「まだ痛い?」


タオルで水を拭き取りながらあたしは湊に聞いた。


「ぜんぜん!」



すっかり痛みもなくなったようで、さっきより元気になっていた。




「ねーねー!誰か見てるよ!」



茜があたし達の住むマンションを指差した。


そちらを見れば3階のベランダからこちらを見る人影があった。


ベランダの手すりからやっと顔半分が出るくらいの、自分達より小さい子だった。



「男の子?」


「女の子じゃない?」


あたしの言葉に茜がそう返した。



「そんなことよりはやく鬼ごっこのつづきしよーぜ!」



男か女か、そんなことに興味はない、と言わんばかりに湊が口を開いた。




「足大丈夫なの?」


「こんなくらいなんともねーよ!はい、タッチ!マリがオニな!」


あたしの肩をバシッ!っと叩いた湊はそう言って走りだした。



「さっきアキにタッチされたから俺がオニだったんだよーだっ!」



湊が走りながら、顔だけこちらを向いて叫んだ。



「なにそれズルい!!!」



茜も秋人も走りだしている。



あたしもみんなのほうへ、駆け出した。






それから夏休み最初の1週間、毎日のように公園で遊んだ。


鬼ごっこにかくれんぼ、すべり台に砂遊び。


いろいろな遊びをした。



そんなあたし達を毎日毎日、飽きもせずじっとみていた子がいた。



それは夏休み初日、茜が指差した"あの子"だった。




「あの子またみてるねー。」


あたしの声に木の枝で地面に落書きしていた茜が顔を上げた。



「ほんとだー!」



「あいつ、俺らとあそびたいんじゃね?」



湊がそう言うと、よしっ!と秋人が立ち上がった。



「あの部屋行ってみよーぜ!」



「え?知らない子の部屋行くの!?」


茜がそう言った時にはすでに、湊は走りだしていた。



「だって、気になるじゃん!」


そう言ってどんどんマンションの方へ走って行く湊を、あたし達は慌てて追いかけた。










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