【06-04】人工ダンジョン
オークドカレッジから来たお役人様と、アーノルド村の村長さん。あとはぺニアとコトリと私で、改めて盗賊さんが創り上げた人工ダンジョンへと向かう。
アーノルド村から東へ10㎞ほど行った山奥の洞窟。ここが盗賊さんたちがダンジョン化に成功した場所である。
そんな洞窟に入り、とりあえずはダンジョンコアを探す私たち。
「結構、綺麗に整備されていますね。全体的に植物関連の素材が豊富そうですが・・・・・・。」
「・・・・・そうですね。これを創った盗賊たちは頭がいいのかな?肉はそこら辺にいる動物や魔物を狩れば手に入りますが、野菜や果物は、ここいらあたりの植生を見る限り手に入りませんからね。」
「・・・・・そういえば、村に襲ってきた時も、野菜の種とか、小麦の種とかを優先的に盗んでいったな。」
そんな会話をしながら、奥へ奥へと進んでいく。階層の確認もせずに問答無用で全滅したため、このダンジョンがどうなっているのかは誰にもわからないのだ。
巨大な原っぱのようなダンジョンなため、何処に何があるのかも見渡せば理解できる。なんせ第1階層は、見渡す限りの小麦畑が広がっているのだから。
さて、そんなダンジョンの中にある何やら怪しい建物が立ち並ぶ区画に来た。どう見ても農家のような建物群ですべて木造だが、その中心に石造りの建物がある。
「あの石造りの建物、非常に怪しいですよね?」
「・・・・そうだな。案外あの建物の中に、下に降りる階段があったりして。」
そんなバカなと思いながらも、建物の扉を開けると、そこには下へと降りる間断だ鎮座していた。皆で苦笑しながらも、第2階層へと降りていく。
第2階層は、いろいろな野菜が育てられている畑が広がる階層だった。
この光景を見て私は呟く。
「盗賊稼業ではなく、もっと違った道を選んでいれば、全滅なんて憂き目いあわなくて済んだのかもしれませんね。」
またもや、農家のような木造家屋が広がる中、その中心に石造りの建物がある。もちろん扉を開けて中の階段を降りれば、そこはきれいに植樹された木々が並ぶ第3階層だ。そしてどうも、各階層にある村々は、近い位置で結ばれているみたいだ。
その証拠に、この階層も、上からの階段の近くに石造りの建物があり、そこを降りると神殿みたいな建物があった。
その中心に鎮座していたモノがダンジョンコアだ。
「そういえばオークドカレッジに作られる人工ダンジョンも、ここみたいな感じになるんですか?」
「ああ、全体像は多少異なるが、ここみたいな感じに、各階層ごとに別れていろいろな物を生産する予定だな。人工ダンジョンがあれば、食糧問題が一気に解決するのが、これにある。」
私の問いかけに、オークドカレッジから来たお役人さんが、淀みなく答えてくれた。
「という事は、アーノルド村も、このダンジョンが手に入れば、食糧問題は一気に解決するんですね?」
「ああ、そういう事になる。だから村長。」
「は、はい!何でしょうか?」
いきなり呼ばれた村長さんが、硬直して声を引きずらせている。ちょっと面白いが、笑うのをこらえるので必死になる私。まだ、噛んでいないだけいいと思う。
「まずは、そこにあるダンジョンコアに、お前の魔力を流し込んでダンジョンマスターになれ。前のマスターだった(はずの)盗賊団のボスよりも多く魔力を注ぎ込めば、自然にお前がダンジョンマスターになるよう上書きされる。まあ今回は、前のダンジョンマスターがすでに死んでいるからな。登録も一瞬だろうが・・・・。」
そうこうしているうちに、10分ほど魔力を注ぎ、無事ダンジョンマスターに村長さんが就任する。
「うまく登録できたな。じゃあ次だ。ダンジョンマスターの権限を使って、このダンジョンをそっくりそのままダンジョンコアに取り込んでみろ。簡単にできるはずだ。」
初めての経験なので結構時間がかかったが、無事ダンジョンコアにこのダンジョンを取り込む事ができた。その結果、中にいた私たちは、ダンジョンの外に追い出される結果になる。追い出された先は、ダンジョンがあった洞窟の前だ。
「それじゃあ村に戻るか。」
そして私たちは、ダンジョンがあった洞窟前から、村へと戻った。ちなみに村から洞窟まで敷いた石畳は、戻る途中ですべて土の地面に還してある。
村に戻った私たちは、村の測量倉庫の中に入って、その中にダンジョンコアを設置する。
「これでこのダンジョンは、この村の財産になった。今後は、村長職を引き継いでいく際に、ダンジョンマスターも一緒に引き継いでいくように。」
こうしてアーノルド村の村長さんに、ダンジョンコアの使い方をレクチャーしていくお役人さん。ちなみに、私は彼の名前は知らないが、オークドカレッジまでの転移を頼まれた私は、翌日の朝に彼をオークドカレッジまで送り届けてこの村を後にする。
その後、コトリとぺニアの3人で、先行している面々を追いかけるため、アパレット村まで転移する。すでに到着しているかと思いきや、実はまだ到着していなかったというオチが待っていた。
まあ、その事はどうでもいいとして、それならそれでこの先の街道にも除雪魔導具の設置作業を前倒しで進めていこうという話になった。
そんなこんなでアパレット村を先に旅立ち、先行してゆっくりと街道整備をしていると、3日後の午後に他の面々が後ろから合流を果たした。
合流した場所は、あと一山超えれば国境の町『メニューザイ』へと入るための山道に差し掛かる場所だ。
皆と合流したところで、小休止と相成った。
「おつかれ~~~~。そっちはどうだった?」
「こっちは無事にここまでこれたぞ。・・・・いや、道中に2回魔物と遭遇して戦闘になったか。しかし驚いたぞ。アパレット村に到着したら、その先に整備された街道が伸びているんだからな。」
ここまでの道中の護衛を労うため、ナオミチに声をかける。
ちなみにナオミチは、例のスキル『一夫多妻強化』を効率よく運用するため、ハーレムメンバー予定である、私・コトリ・ハルナ・ミオ・ぺニアに対し、満遍なく攻略を行っている最中である。全員が全員、簡単に落とされる気はないけど、ハーレム大歓迎なので、誰が先に落ちるのかをかけていたりもする。
そういった女の子側の事情も解っているため、ナオミチは1人を集中的に攻略するよりも、全員を満遍なく攻略していった方が得策と判断しているようだ。
「しかしね。問題はここからだよ?」
「なんでだ?」
「あの穴、何の穴だか知ってる?」
私は、雪の壁に数カ所空いている、直径1mほどの穴を指さす。私たち以外の冒険者も、その穴を見て何かを悟ったような顔つきになった。
「あの穴って、スノウワームの通り道か?それも穴の数的に、複数存在しているようだが?」
1人の冒険者が、該当する魔物名を口に出した。
「その通りです。あの穴は、スノウワームが通った後です。先ほど雪山を切り崩した時に、偶然発見しました。普段は、万年雪のある山奥にしかいない魔物ですが、このドカ雪によってここまで出てきたんだと推測します。それも、単体ではなく複数匹も。」
「スノウワームがいるとなると、お先に雪山を切り崩す工程が少し遅れる事になるな。」
「ええ、何時ひょっこり顔を出すか解りませんしね。そうなった場合、突発的に戦闘が始まってしまいます。また、前方だけ注意を払っていればいいという問題でもなくなります。」
「・・・・・そうだな。真横からいきなり現れる事もあるのか・・・・・。」
スノウワームは、その名の通り雪の中に棲む直径0.5~1m、長さ5~10mほどの真っ白な肉食ミミズだ。
雪の中でしか生息できないため、普段は万年雪が積もる山奥にしか生息していないが、今回のようなドカ雪が降ると、麓まで下りてくる厄介な魔物である。スノウウルフなどの雪の上で生活する動物や魔物を餌とするが、当然人間も餌として襲う事がある。
なお、雪国で暮らす人々にとっては、食用として冬場の蛋白源でもあり、何処かの都市伝説ヨロシク、お味は牛肉に近いらしい。
スノウワーム対策のため、フォーメーションを変更してこの先の山越えを行う私たち一行。ここで合流できたのは対策を取るには都合がよかったと言える。5台ある荷馬車の左右に2人ずつ冒険者を付け、2前後にも3人ずつの対応となる。
先頭にいるのは、私とコトリ、そしてぺニアだ。この先は、サンドワーム対策のため、雪かき作業はお休みして、魔術でもって雪を吹き飛ばしていく。
「【竜巻旋風】×5」
小さな竜巻を5つ魔術で作って、広範囲に時間差で前方に飛ばしていく。竜巻によって雪山を切り崩していき、出てきた街道を石畳に変えてゴーレム化していく私。その過程で、雪の壁には無数のスノウワームの通った後が現れる。
そして、これだけ穴だらけになると、雪崩にも警戒が必要になってくる。
こうして警戒しながら行く事約1時間、ついに奴らが現れた。いきなり前方の何もなかった雪の壁に穴が開き、スノウワーム5匹が襲い掛かってきたのだ。
そのうち2匹は、たまたま近くにあった【竜巻旋風】が、何処か特へと吹き飛ばしていった。しかし、残り3匹はこの魔術の範囲外。そのため、戦闘が開始される。
私はまず、遠くへ吹き飛ばされていった2匹のスノウワームを対処する。再び雪の中に潜って襲い掛かってきたらたまらない。そのため空中にいる間に、細かく切り刻んでやった。その後、切り刻まれたスノウワームの破片が、広範囲に雪原にばらまかれる。なお、キラッと光った魔石だけは、引き寄せて回収しておく。
さて、石畳の上でのたうち回っている3匹のスノウワーム。
「石畳の上にいる間に討伐するぞ!雪の中に入られた波厄介だからな」
冒険者の一人が叫ぶと、全員で寄ってたかって袋叩きにしていく私たち。まな板の上のコイではないが、討伐するなら今の内だというのは賛成である。雪の中に潜られたら、スノウワームのフィールドになるからね。潜られる前に、さっさと叩いてしまった方がいいに決まっている。
そんな感じで、雪の中に潜られる前に袋叩きにして、スノウワーム3匹を見事討伐した私たちであった。
その後、3匹のスノウワームを解体して荷馬車に分乗させて積み込み、再び警戒しながらメニューザイを目指す。
なお、私たち3人だけは、先行して街道整備に取り掛かっていく。ただ後ろをついて歩いていくだけとは違い、こっちの作業は時間がかかるのだ。その事が解っている面々なため、私たちの事は放っておかれている。
そんなこんなで、NMDC23667年10月20日の昼過ぎ。
(雪が積もっていない)通常よりも10日ほど余分に時間がかかったが、除雪魔導具を設置しながら、国境の町『メニューザイ』に到着した。
そう、コロラド王国においては最北の町であり、最も辺境にある町である。
そんな最北にある国境の町は、山肌に築かれた九十九折の街道沿いに家々が建ち並ぶ、関東屈指の温泉街のような街並みが広がってる。
そんな街へと入る城門は大きく開かれてはいるが、並んでいる旅人も、町から出ていこうとする旅人も皆無ではないがまばらである。そして、何やら警戒されている感じである。
これはアレだね。いきなり目の前絵の雪山がブレもなく吹き飛ばされていくのを見て、魔物か何かだと警戒されているね。
道中の村々でもそういった対応だったため、ここであれこれ言うつもりはありません。先ぶれもなしな状態で突き進んでいるので、こういった対応は致し方ない部分があるしね。
ここで警戒しなかったら、「お前ら、いったい何に対してなら警戒するんだ?」と、小一時間位説教したくなるしね。
そのため、そんな警戒感マックスな門番をサクッと無視して、私は魔導具を設置していく。そうして、城門の目の前まで除雪魔導具を設置し終えた後に、「ふ~~~~」っと書いてもいない汗をぬぐう仕草をしてから門番と対峙する私。
「私たちは、ムハマルド辺境伯領の領主様からの依頼で、街道整備を行っているパーティ『ご主人様とメイドさん』です。こちらがその依頼書となります。」
こう言いながら私は、指名依頼と書かれた依頼書を門番に提示する。その上で、この町の代表者に取り次いでもらうように依頼し、ムハマルド辺境伯の紋章が押された書状を手渡した。
「ご苦労様。この依頼所を見る限り、街中を通る街道も、国境の門まで除雪魔導具を設置する事になっているが、それは本当か?」
「はい。国境までは整備する事になっていますね。その先については何も覗っていませんので、整備するつもりはありませんが。」
「それはそうだな。この依頼は国からの依頼ではなくわが領からの依頼だ。国境の門までは領内だから整備する必要はあるが、その先については向こうの国がどうこうする問題だわな。」
どうせ、誰もこの門を通行しないからと、他の面々が到着するまで立ち話をする私と門番さん。
「で、この後はどうするつもりだ?さすがにここから先は人通りがあるから、そんな作業を行えば通行の邪魔になるからな。」
「そうですね。とりあえずは、今晩の宿を確保してきます。街中の街道整備については、代表者の決定に従いましょう。」
「そうしてくれるとありがたい。そうそう、君体が泊まる宿だが、『氷の女王アルサの息吹』という宿がいいぞ。少々料金は高いがセキュリティがしっかりしているからな。安心して泊まる事ができる。」
「ありがとうございます。ではその宿に部屋が余っていたら、そこに泊まる事にします。」
何かの連絡がやってくるんだろうから、言われた宿に泊まる事に決定する私。もちろん独断ではあるが、パーティリーダーは私なので問題はないだろう。
そんな事を話しているうちに、荷馬車を護衛した団体さんが門までやってきた。




