【06-03】国境までの道中で
スノウウルフの群れを討伐した場所から3日後の朝、最初の中継地点である開拓村『アーノルド村』に到着する。
雪に閉ざされて陸の孤島と化していたこの村に、雪が降り積もってから始めてきた集団である私たち一行。さらに、街道を整備しながらやってきた軍団である。
初めは少し警戒されたが、私たちがムハマルド辺境伯領からの依頼で街道整備を行っている事。そしてその整備の過程で、各村々を回って生活必需品を持ってきたことを伝えると、村人総出で大歓迎されてしまう。
そろそろ冬越しの準備をしないといけない頃合いだったらしく、しかし、例年にない大雪で身動きが取れなかったらしい。その上、近くに盗賊が出没するという情報も飛び交っているため、うかつに村を離れる事もできなかったんだとか。
盗賊さんですか~~~~。
ちなみに、ミオによる索敵をかけてもらったところ、この村から東に5㎞ほど行った場所に、50人ほどの人間の群れがあるみたいだ。結構、大きな集団さんである。
そしてなんと、この村に徐々に近づいてきているらしい。
この感じだと、明日の明け方近くにこの村に到達するだろう。そうなれば、防衛手段のないこの村は、盗賊さんたちに蹂躙されるのがおちだ。
普通ならば。
しかし私たち一行は、明日のお昼ごろまでこの村に逗留する予定である。そうなると、村を乗っ取りに来た盗賊さんと、偶然に遭遇する事になるね。
そんな事を考えながら、護衛している冒険者さんたちに、盗賊さんたちの行動予測を伝えて、明日に供えての準備運動をこれからもする事になる。
ちなみに、私が除雪魔導具を設置するのは街道部分(そうはいってもほとんどの家が街道沿いに建てられているが)のみであり、後ろに控えている商人さんたちの商売が終了した時点で、この村を去る事もしっかりと話している。
村の端っこまでの街道部分に、除雪魔導具を設置し終えて再び中心地点まで戻ってくると、すでに商人さんたちがお店を広げて商売を開始していた。
ちなみに、村の中心にある広場の部分は、除雪魔導具の設置個所となっているため、この広場には雪は全くない状態である。しかし、雪解け水で水浸しになっているため、直接商品を地面に並べる事(筵などは敷いているが)はしていなく、馬車の荷台を少し改造したような屋台で商品の売り買いが行われているのだ。
ちなみに現在、ここアーノルド村を取り囲む城壁は意味をなしていない。
村人総出で必死になって、城壁沿いの雪かきを行っているのだが、降り積もる雪の方が圧倒的に多いため、城壁の上辺部の高さまで、雪が積もってしまったためだ。話によると、今年は特に降り積もる雪の量が多いらしく、その量は去年の同じ時期と比較して3割増しだそうだ。
ちなみに、暇を弄んでいる冒険者たちは、この時間を利用して村から除雪依頼を受諾し、現在村の中や外で一生懸命除雪を行っている。我ら『ご主人様とメイドさん』の前衛脳筋軍団も、その除雪作業を行っている。一応村の外壁に沿って約10~50mの区間、地面が見えるまで帰ってくるなとは言づけてあるが。
今もあれだ。
外壁に沿って、雪の塊が遠くに投げ飛ばされているのが見える。時折何か動物のようなモノも投げ飛ばしているので、周囲に展開していた魔物か何かを討伐しているのだろう。
ちなみに、いつものヨシナリとマキも雪かき作業を行っており、今は村の中の何処かにいる。
「これはあれだね~~~~。村の安全を確保するには、村の周囲にも魔導具を設置した方がいいけど・・・・。」
「・・・・・設置費用が問題だよね。」
「そうなんだよね~~~~。この村には、魔導具の設置費用を捻出できるかどうか、ちょっと解らないからね~~~~。」
私の呟きに、隣にいるハルナがこう返してくる。ちなみに私とハルナは、除雪を頑張っている冒険者たちのために、温かい食事を作っている最中だ。そろそろお昼だからね。
魔導具の設置自体はおカネさえあれば、どれだけでも設置する気はある。ちなみにアサルト村では、村の予算から設置費用を捻出し、周囲100mの範囲で魔導具を設置している。
まあ、アサルト村は、金の生る木があるので、いくらでもおカネを出す事が可能だが、この村はそうはいかない事は見ていれば解る。
領主様との取り決めで、温情だけでタダで設置するわけにはいかないのだ。何でも無料で施せば、人とはそれに甘えてしまう生き物だからね。
「結局は、村人が決める事だから。村からのアクションがない限り、私は動かないよ。」
そういう事に決定し、村側から何らかのアクションがあるまで、この問題については考える事を放棄した私であった。
こうしてお昼になり、暖かくて、とってもおいしい食事を堪能した冒険者たち。ここまでの道中での野営では、ほとんどの食事を私が作っていたので冒険者たちには好評である。なお、野営時は一緒に食べていた商人さんたちは、付き合い上村人たちと食べているため、とっても悔しそうな顔をしていた。
私は、明日の午前中に行われる予定の『盗賊さん、いらっしゃ~~~~い!』というイベントに向けて、午後から、この先の街道整備をする事にした。
明日は、楽しみたいからね。こんな事をしている暇はないのですよ。
脳筋軍団とヨシナリとマキは、そのまま外壁周囲や村の中の雪かき作業を続行してもらい、私とハルナの2人で街道を整備していく。
まずは、街道上に積もっている雪をどかしていくのだが、そもそも街道が何処を走っているのかが解らない。(周囲にある木々の様子を見て)一応ある程度の予測は付いているのだが、そこが正解というわけではないのが怖いところ。
「【竜巻旋風】×5」
なのでここは、さくっと魔術で解決してしまおう。小さな竜巻を5つ魔術で作って、広範囲に時間差で前方に飛ばしていく。
「【竜巻旋風】×5」
その直後に、ハルナもまた私と同じように竜巻を5つ作って、前方に飛ばしていった。都合10個の竜巻により、周囲に積もった雪が吹き飛ばされていく。一応吹き飛ばした雪の方向にも気を使っており、基本的には両サイドに50mくらい離れた場所に着地するようにしている。
こうして雪を吹き飛ばし、剥き出しになった地面を地属性魔術を使用して石畳に加工する。その上で石畳の両側に、溶けた水を流すための側溝を設け、そのまま近くの川に垂れ流しにする。
そして、石畳をゴーレム化して完成だ。
基本は、ゴーレム化する石畳の長さ(全幅10m全長50m、厚さ1m)の範囲ごとに同じ作業を繰り返していく私とハルナ。途中に襲ってきた魔物っ体は、サクッと魔術で葬っていく。
こうして夕方ごろまで作業を続けた結果、アーノルド村から10㎞程先まで魔導具敷設を進める事ができた。なお、ここから先は、ちょっとした峠道になっていたので、今日のところは諦めた次第だ。
翌日。
朝食を食べ終わったころ、予定通り盗賊さんが襲撃してきた。
私たち冒険者御一行は、盗賊団が来る方向にある壁の上に陣取って、今か今かと待ち構えていたら、茎の崖の上に50人くらいの盗賊さんが現れたのだ。
盗賊さんたちは、10m以上降り積もって崖とかした雪原の上におり、目の前に村が見えているのに、襲撃できないもどかしさにイラついているようだ。
あの雪でできた崖は、昨日の内にコトリたちが一生懸命作ってくれたモノだ。
盗賊さんたちの予定では、村の城壁まで降り積もっている雪のおかげで、簡単に村に侵入できると踏んでいたのだろう。しかし、いざ村に襲撃をかけてみれば、目の前には崖があり、村までは地肌の見えた大地が50m以上続いているのだ。
なお昨日の晩は、珍しく雪が降っておらず、村周辺の積雪が増える事はなかった。
「おい!盗賊ども!さっさと下に落ちてこんか!運動不足の俺たちの、サンドバックになってくれや!」
冒険者の誰かが、盗賊さんたちを煽っている。
それに便乗してか、盗賊さんたちを煽るがごとく、様々なヤジや暴言が冒険者たちから飛び出し、盗賊さんたちは降りれないもどかしさでイライラが限界に達してきているようだ。
「ああ!じれったいな~~~~。ヒカリちゃん。あいつらが降りるのを手伝ってやってくれないか?」
「それは構いませんが、方法は私に任せてくださいね?」
「ああ、どんな方法でもいいから、あいつらを地面の上に来させてくれ。手足の1本や2本は、別になくなっても構わないし、何なら半分くらい殺してしまっても構やせんぞ。」
一応、今回の盗賊さん殲滅リーダーであるとある冒険者の言葉を貰い、私は彼らの足元に向けてとある魔法をうった。
「【瞬間沸騰】」
水属性のこの魔術によって、盗賊さんたちの足元の雪が一瞬で水の塊となってさらにその水すらも一瞬で水蒸気とかす。
モクモクと真っ白な煙になった高温の水蒸気により、盗賊さんたちは落下しながら蒸されるという状態になった。
「おおうっ!なんともまあ、えげつない事をするね~~~~。一瞬で足元を焼失させたうえ、蒸し焼きにするとはなあ。さらに、あの高さからの落下だろ?いったいどれだけ、盗賊どもが助かっているのやら。」
「いいじゃないですか。盗賊さんは魔物と同じですよ?ギルドの依頼だって『生死問わず』なんですから。あれで死ぬか、私たちに殺されるか。どっちにしろ彼らの運命は、この村を襲撃した時点で決まっているんですから。」
盗賊さんたちの運命は、何をどうしたところで死あるのみだ。どうせ生きていたところで、アジトの位置を吐かされた後に誰かの手によって命が刈り取られるのだ。
それならば、一思いにさっきのアレで死んでしまった方が、余程人間らしい死に方ができるだろうと思う。
そんな事をつらつらと話していると、目の前から白煙が消えて盗賊さんたちの現状があらわになった。
「結構生き残っていますね~~~~。」
「そうだな。しかし戦闘できる者と限定すると、生き残り全体の8割くらいか?」
「たぶん、その位でしょう。」
「よし!てめえら!動けない奴は放っておいて、動ける奴をかたずけろ!」
『おうっ!』
こうして30分ほどで、生き残りのうち戦闘できる者たちの殲滅が完了した。で、生き残りの内動けないほどの怪我を負っていた盗賊さん6人は、一カ所に集められて大尋問大会の被害者と化す。
「聞かれる内容は、言わなくても解っているよな?」
喋れればどうなっていても構わないという理屈から、必要最低限の治療さえ施してもらえない盗賊団の生き残り6人。どうせ尋問後は殺される運命なのだが、皆一様にガタガタと震えているのは、寒さだけのせいではない気がする。
「盗賊団のアジトは、この村から東へ10㎞ほど行った山奥の洞窟。そこはつい最近、3カ月ほど前に盗賊がダンジョン化に成功した。」
「・・・・ああ、だからここ3カ月ほど、魔物の襲撃がなかったんだ。納得しました。」
私たちの報告内容に、最近魔物の襲撃が途端に亡くなった事を、不思議がっていた村人が納得顔をする。それ以前は大小の差はあれ、月に2~3回ほど魔物からの襲撃が頻繁に起こっていたそうだ。
「で、盗賊団のアジトは、そのダンジョン内に築かれており、そのダンジョンの収穫物を増やす目的で、この村を襲ったっと。なお、現在そのアジトには、留守番役の盗賊が数人いる。その数人の中には、盗賊団のボスもいると。
・・・・・これはれだね。俺たちの手に負えない案件だ。」
「そうなりますね~~~~。」
という事で、オークドカレッジ(最近オークドの町から改名した)にいるお役人さんに、この案件を丸投げする事にした。
「とりあえず、そのダンジョンとやらを覗きに行くか。」
というわけで、お役人さんを呼びに行っている間、私たちは生き残りの案内で、そのダンジョンとやらまで遠征する事になった。たぶん、お役人さんがこの村に到着するのは、10日前後先だと思う。
「まあ、道なき道を行くのもなんですし、私が道を作りましょう。今後は村の財産になると思うので、ここはしっかりとしたモノを作りましょうか。」
盗賊さんたちの死体を1カ所に纏めて火を放ち、死霊かしないように処置を施す。ついでにしっかりと成仏してもらうように、鎮魂歌も歌って魂魄を輪廻に還す。
その後、取りあえずダンジョンまでの道を開くため、そこまでの道を一気に魔術で作っていく私。なお、その道をゴーレム化する事はやめておくが、石畳にしておく事だけはしておく。こうして2時間足らずでダンジョンの入り口まで行き、中にいた盗賊の生き残りをすべて殲滅。ため込んでいたお宝を、盗賊と闘った冒険者の皆で山分けする。ここまでは、盗賊団殲滅作戦の一環であり、ここから先はお役人さんたちの担当になる。
取りあえず、この先の街道整備を続けること8日、オークドカレッジからお役人さんがやってきた。
この間街道の魔導具設置作業は順調に進み、峠を越えた先にある開拓村『アパレット村』まで進める事ができた。あとは、アパレット村から国境の町『メニューザイ』まで残すのみである。
なお、アパレット村までの街道が開通したので、商人さんたち御一行は、雪のない街道をアパレット村まで進むべく、3日ほど前に旅立っている。




