【06-02】除雪魔導具の設置作業
NMDC23667年9月37日の早朝。
(神官としての職務である)朝のお祈りを済ませた私たち『ご主人様とメイドさん』一行8人は、ダンジョンのいる口付近に集合していた。
これから、アサルト村のメインストリートに除雪魔導具・・・・・というか、石畳を特殊ゴーレム化したモノを敷設していくのだ。
除雪魔導具の敷設作業は、前半戦と後半戦に別れている。前半の敷設作業は、オークドの町からアサルト村を経由して最北の町メニューザイまで。後半の敷設作業は、オークドの町から私達『ご主人様とメイドさん』8人のホームタウンであるサクラピアスまでとなっている。
それ以外の街道についても、誰がこの除雪魔導具の敷設作業を行うのかは知らないが、依頼があれば私たちが行うのも吝かではない。
さて、まずはアサルト村のメインストリートを除雪して、剥き出しになった地面を地属性魔術を使用して石畳に加工する。その上で石畳の両側に、溶けた水を流すための側溝を設け、行政側が指定した場所にため池を造ってそこに繋がるように設置していく。これは集落内の話で、街道に設置する際は、そのまま近くの川に垂れ流しにする。
そして、『自身の上に雪が積もったり、または氷が着氷した場合、自身を温めて雪や氷を解かす』という”1つ目の命令”を吹き込んだゴーレムの核を石畳に植えこんで、石畳をゴーレム化する。いつものごとく空気中を漂っている魔素を取り込んでいるため、ゴーレムは半永久的に動き続ける事ができる。
なお、石畳にしたゴーレムは、全幅10m全長50m、厚さ1mだ。この倍は大きくできるのだが、いろいろと実験した結果、この大きさが一番都合がいいのだ。
ちなみに、このゴーレム化した石畳は、『設置された場所から取り外された場合、取り外したモノを攻撃し排除できる』という”2つ目の命令”により、盗み出そうと何かした場合、窃盗者に対しては容赦のない攻撃が与えられる事になる。この命令については、設置を依頼したムハマルド辺境伯領の領主様から追加で設定するように言付かっている事である。
ちなみにこのゴーレム化の技術は、屋根の雪下ろしにも利用できるが、無償で施すつもりはない。つまり有償ならば、依頼された物件に設置する事は吝かではないのだ。
なお、このゴーレム化の技術については、後ほど詳しく仕様書を書いて特許として登録する予定である。そうしないと、私だけの秘匿技術になってしまい、方々から依頼が殺到して身動きが取れなくなるからである。
さらに、そこまでやったら、低ランク冒険者たちの冬場の仕事を奪う事になるからね。
冬場のムハマルド辺境伯領は雪に閉ざされてしまって、町の外で行う討伐依頼や採集・採掘依頼が、1割以下に減ってしまうんだよね。そして山奥に行くほど、その傾向が躊躇になっていく。
そんなこんなで朝から始まった作業は、夕方前に村の入り口に当たる街道のと合流部まで進める事ができた。今日はここまでとし、とりあえずのベースキャンプ地にしているアサルト村の宿屋に戻ってくる。
翌日からは、街道部分に除雪魔導具を敷設していく。
いったんオークドの町まで戻り、川に架けた橋をスタート地点として、魔導具の敷設作業に移る。もちろん、橋も魔導具化する事も忘れない。
「まずは、除雪からだね。」
『おう!!!!』
そんな事を言いながら、スコップ片手に雪かきを始める前衛4人組は、体を動かす事が趣味だと言わんがばかりに元気に雪を掘り進めていく。
「そろそろいいかな~~~~~。」
石畳ゴーレムの大きさが、全幅10m全長50m、厚さ1mなので、幅約15m全長約60mくらい地面が見えた段階で魔術でもって土の地面を石畳に変えてゴーレム化していく私。
こうして除雪をしながら除雪魔導具を設置する事2日、夕方に差し迫る頃にアサルト村への分岐路まで魔導具を敷設する事ができた。
ここから先の街道は、一応除雪はされている。しかし、馬車が通行できるほどには、除雪されてはいない。
いや、できないといった方がいいのかな?
だって、既に2m以上雪が降り積もっており、現在進行形で積雪量が増えて行っているのだから。
しかし、除雪魔導具が設置されているオークドの町や、アサルト村方面の街道は、両端に設置されている側溝より内側には、全く雪が降り積もっておらず、溶けた水が側溝へと流れているだけだ。それ以外の場所は、2m以上雪が積もっているので、少し不思議な感じである。
NMDC23667年10月1日、今年もあと1ヶ月となった今日。
外は今日もドカ雪が降っており、周囲の積雪はとってもやばい展開になってきています。そんな中、除雪魔導具という名のゴーレムちゃんが敷設された街道は、全くと言っていいほど雪が積もっておりません。
創った私も、この光景にはびっくりの展開です。
そんな雪の全くない街道を、元気にアサルト村へと進んでいく冒険者と商人さんたち。
「馬車でご登場とは、商売魂たくましい事で。」
雪がないからと、石畳の上を馬車でご登場とは、本当に商人さんたちの行動力は半端ないね~~~~。この先、国境方面も敷設が完了したら、真冬であってもすごい交通量になりそうな予感がしています。
ただし、国境の砦前までですけどね。
「今日も運動頑張るぞ~~~~~!」
「冬場の運動は、雪かきに限るね!」
コトリの運動宣言に、激しく同意を示すぺニア。ちなみに2人ともメイド服。そんな私もメイド服・・・・というか、女の子全員メイド服。ただし、ハルナだけは何故か修道服である。その理由を問えば。
「メイド服よりも、修道服の方がなんだか落ち着く。」
という答えが返ってきた。なんだか、いろいろと考える事があって、結局のところカミングアウトしてしまったらしい。
私たちの中で、神官さんを地でやっているのは、ハルナだけであるこの事実。ちなみにハルナの修道服は、聖女様仕様の白色と空色を基本色とした修道服だ。
なお、この服装によって、知らない人からは、ハルナのみが聖女様であって、私とコトリ、ぺニアが聖女様である事は、一部の人以外知らない既成事実となっている。
えっちらほっちら、地面が見えるまで雪かきを運動がてらやっているコトリ・ミオ・ぺニア・ナオミチの4人。ちなみに、ナオミチ君も最近吹っ切れたらしく、私たち5人の攻略に勤しんでいる模様。
例のスキルによる強化を目的にしているが、恋愛事情の方は複雑怪奇である。5人全員がナオミチ君の事を意識しているが、攻略されるには時間がかかりそうである。誰が一番最初に落ちるかな~~~~~。
そんなナオミチ君は、一番最初にだいたいいつも一緒にいるコトリから攻略を開始した模様だ。
「しかし、人の手だけで、よくもまあこんな雪の壁を作れるよね。」
「そうだよね。立山のアルペンルートは、重機で作っているからね。」
そんな会話を繰り広げながら、4人の雪かき作業を見守る私とハルナ。
スキル様様な感じだけど、重機並みの仕事をたったの4人で推し進めている現実には、少し戦慄が走りますね。なお、魔術でやれば、雪かきなど一緒んで終わらせる事は出来るが、先にも言っている通り運動がてら4人に雪かきをやらせている。
どうも、運動不足で体が鈍るのは、4人とも嫌らしい。
ヨシナリとマキは何しているかって?
もちろん、最後尾でイチャイチャしながら、周囲を警戒しておりますよ?
警戒しているかどうかは、本当のところ定かではありませんが・・・・・・。そんなヨシナリとマキの後ろからは、この先にある村々や国境の町へと荷物を運ぶ商隊が、何故か連なってついてきております。なお、護衛の冒険者はいない・・・・・というか、事前調整で商人さんたちの最後尾をついてきてもらって言います。
これは、護衛依頼としてしっかりとギルドを通してもらっているためで、事前に調整してこういう配置となっているのだ。誰が好き好んで、事後承諾のただ働きをしますか。
それはそうと、まだまだ開通するのは先だというのに、本当に商人さんたちの行動力は半端ないね~~~~。なお、前方で行われている雪かきは、そんな商人さんたちのささやかな見世物と化しているみたいだ。
なお、この護衛配置なのは、理由がちゃんとあったりします。
雪のない時期なら前後左右を警戒しないといけないが、左右を雪の壁に囲まれている現状では、横からの攻撃は襲撃者にとっても危険が伴うのでないと思っている。
その理由の1つとして言えるのは、雪かきしている4人が、雪を捨てているのは左右の雪壁の向こう側となっているから。そして、1回あたりの雪の量が、スコップ1本で救い上げているとは思えない量だからだ。そんな雪の塊が、襲撃に備えて待機しているだろう頭上に落ちてくるのだ。
私が襲撃側だったら、そんな危険地帯は避けて前後から挟み撃ちするね。もしくは、どちらかに戦力を集中させる。
「おっ!真っ白なオオカミさん発見!」
そんな折、前方からうれしそうな声でミオが魔物を発見した事を叫んだ。その言葉に、即座に戦闘態勢を取る私たち。
鑑定結果は、スノウウルフ。
真っ白な毛皮が特徴で、冬場は雪上生活を、雪がない季節は灰色の毛皮になるオオカミの魔物である。単体ならDランク中位、集団ならばCランク上位の魔物だ。なお、20匹以上の集団になると、上位種であるグレイトウルフがいる場合が多く、この場合は討伐難易度がBランク下位に上がる事になる。
当然、冬場に狩った方がいろいろとおいしい魔物である。
「ヨシナリとマキは、後ろの人たちの護衛に専念して。」
「おう!了解!」
「わかったわ!予定通りこっちに専念するよ!」
2人からの返事を聞き届け、私は前方に見えるスノウウルフの集団をその目に捉える。なお、事前に決めていた事として、魔物に襲われた場合は、ヨシナリとマキは専属護衛として商人さんたちを守る事になっている。
改めて、スノウウルフの数を確認する私。1、2、3・・・・・38、39、40。40匹という事は、確実にグレイトウルフがいるね。
「コトリ!40匹いるからグレイトウルフに注意ね。」
「はいよ!」
「あと、こいつらの毛皮は高く売れるから、なるべく傷をつけないように素手で討伐ね。ああ、親分はそんなこと考えないでいいから、普通に倒してもいいけど、なるべく毛皮を傷つけないようにね。」
『・・・・了解!』
「それじゃあ、楽しい運動の始まりだ!」
グレイトウルフが指揮をする、スノウウルフ40匹の討伐が始まったのだった。武器を一切使わない素手での討伐である。もちろん、北斗や南斗と言った暗殺拳法も禁止である。
そんなある意味究極的な縛り状態で始まった討伐だが・・・・・・。
「えいっ!」
”ゴキッ!!”
ぺニアは、その自慢の怪力を使用して、スノウウルフの首元に左腕を当てがい、右手で口を閉じるように固定すると、梃子の原理でボキッと首をへし折っていく。私とコトリとハルナは、今津流格闘総合武術で培った中国拳法の奥義の1つと使って、スノウウルフの体内を破壊して命を刈り取っていく。
ナオミチとミオは、このオオカミちゃんたちのボスであるグレイトウルフを担当するみたいだ。
基本こいつは、その真っ白な毛皮と魔石、あとは血液くらいしか必要素材はなく、その肉は何をやってもおいしくならないので基本破棄処分となっている。もちろんその骨も使い道のないゴミである。
なので基本的に毛皮に傷が付いていなければ、どんな倒し方をしても問題はないのだ。
4人でもって、40匹を相手取っている傍らで始まったグレイトウルフの討伐は、・・・・・たったの2人。
その討伐者であるナオミチとミオは、徒手空拳に対してはあまり得意ではない。現在私やコトリを師としてその腕を磨いているが、まだまだひよっこに毛が生えている程度だ。そのため、今回のような縛り討伐には参加できない事は、本人たちもよく知っている。そのため、普通に倒してもいい(ただしあまり毛皮を傷つけないように)とお墨付きをもらっているボス討伐に行く事にしたんだとさ。
・・・・・後から聞いた話では。
その、真っ黒な毛皮を持つグレイトウルフ。保護色とは何ぞやという自然摂理に対し、真っ向から喧嘩を売っているその風貌は、ある意味ボスの風格に漂っている。
「4足歩行の動物ってさ、首をちょん切るか、後ろ足をどうにかすれば倒せたよね?」
「そうだな。機動力を奪ってから倒すなら、後ろ足をどうにかしてから首ちょんぱだな。」
グレイトウルフと対峙しながら、ナオミチとミオは、討伐方法を検討し始める。
水魔術か風魔術が使えれば、顔全体を水球で覆うか、安曽以外の期待で満たした空気球で覆って、窒息死するのを待っていればいいのだが、この2人は魔術が使えないのでこの方法は使用できない。
「私が撹乱しながらあいつの人体を切断するから、一君の剣で首ちょんぱ、よろしく!」
「それが一番手っ取り早いな。」
こうしてミオが、グレイトウルフの周囲を高速移動しながら4つの足の腱を切断。その後、動けなくなったグレイトウルフにゆっくりと近づいたナオミチの剣によって、グレイトウルフの首と胴体が泣き別れしたのは、私たち4人がスノウウルフ40匹を殲滅したのと同時だった。




