(1)滝の下と滝の上で・・・・・
バスが滝壺へと落ちていく様子を、茫然を見つめるしかない僕たち。とうとう、まだバスの中で生き残っていたであろう数人とも、僕たちは泣き別れをしてしまった。
滝壺をじっと見つめていると、中から5人が這い出てくるのが確認できた。どうもあの状況から、5人も生還できたみたいだ。しかし彼らは、その後すぐに熊に追いかけられてしまい、森の中へと消えていった。
何処に行ったのかは知らないが、生きていればいつかどこかで再会できるだろうと信じて、僕は今僕ができる事をやっていこうと思う。
「とりあえず全員集合!誰がいて、誰がいないのかを確認しようか。」
『は~~~~い!』
こうして、ここいいるメンバーの確認をする僕。下にいた者たちの確認は無理だが、現状ここにいる者は12人だった。ちなみにここにいる12人は、次のメンバーである。
まずは1人目、僕事横山道真。
2人目は、河合邦弘君。
3人目は、緋村香華さん。
4人目は、来栖早苗さん。
5人目は、井野神信哉君。
6人目は、安室浩二君。
7人目は、末樹義春君。
8人目は、加藤利喜子さん。
9人目は、十和田久美子さん。
10人目は、植松直人君。
11人目は、星野聖華さん。
そして最後12人目は、渡瀬信雄君。
閑話休題。
「で、次の議案だが、どうやってここから下へと降りるかだ。・・・・・・・と、その前に、先ほど水の中に入ったから、濡れてしまっているこの制服を乾かすところからだな。」
とりあえずはこの12人で、なんとかやって今かにといけない事だけを確認し、次の議案へと駒を進めていく僕。いくつか疑問点が湧き出てくるが、何よりも先にまずはここから下へと降りないといけない。
それよりも先に、濡れてしまった制服を乾かさないと、このままでは風邪をひいてしまう。
「それじゃあ、移動しがてら枯れ枝とかを集めていこう。ついでに、食べれそうな果物やキノコなども集めていこうか。」
こりあえずここから移動する事を提案し、その道中で枯れ枝などの燃えやすいモノと食べ物を集めていこうと提案する。移動する事については反対意見もあったら、現状ではこの場で救助を待つよりも、とにかく人里を目指した方が得だという意見が大半を占めていた。
確かにここは、周囲に何もないので、救助を待つにはベストな位置だ。しかし何もないという事は、これから起こるだろう様々な問題にも対処ができないという事だ。
濡れた制服を着たまま僕らは、枯れ枝を集めに森の中へと入って行く。入って行くといっても、岩場と森の境界付近を歩くだけだ。どう考えても、ジメジメしているだろう森の中では、枯れ枝など集める事は出来ないからね。
こうして日が沈むまで枯れ枝や食べ物を全員で集め、適当な洞窟があったのでそこを本日の寝床にする。
ちなみに僕たちが見つけた洞窟は、直径1mほどの入り口を潜ると、3mほどの上り坂があり、その先には8畳間ほどの広い空間がある洞窟だ。天井も結構高く、天窓のような切れ目もあるため空気が淀むといった事もない洞窟である。
上り坂があるので、何かの拍子で外が水浸しになっても、中に水が入り込む心配もない。唯一の心配は、天窓のように空いている切れ目から水が流れ落ちてくる事だが、これについては雨が降ってこないと解らない事である。まあ、そうなったらそうなったで、水の確保をか確保する目的で何かで受け止める事になるだろう。
そして、先住民的な動物もいなかったので、しばらくの間この洞窟をホームベースと定める事にした。
さて、まずは火を点けないといけないな。
道中でなんとか乾かしたポケットティッシュを火種に、メガネっ娘の来栖さんから眼鏡を借りて火を熾す僕。太陽とガラスと水、あとは火種になりそうな燃えやすいモノがあれば、簡単に火を熾す事ができるのだ。
こうして火を熾して、洞窟内と洞窟の外に組んだ焚き木に移す。洞窟内を女子に明け渡し、三世人は外の焚き木に制服を干していく。
制服の下に体操服を着ていて、今さらながらよかったと、つくづく感じた瞬間よ。こうして、生乾きだった制服やら何やらをすべて乾かし、同じ事をしていた洞窟内の女子と合流する。この時、洞窟の出入り口をそこら辺に転がっていた倒木で塞いでおく事も忘れない。夜中に何かが、洞窟内に入り込んでくるかもしれないからね。
そんなかんじで最低限の夜の回しを行った後、集めてきた食料を齧りながら今後の事を改めて話し合う僕たち。
「まず初めに、今現状持っている持ち物をすべて共有しよう。たぶん、現状のサバイバル生活で利用できるものとそうでないモノに大別できるからね。」
「利用できるモノって、さっき横山君がティッシュ使って火熾していていた時みたいな?」
「そう。あの火熾しは、僕が持っていたポケットティッシュと、来栖さんの眼鏡のがあったから簡単にできたんだからね。
元々の使用用途が違っていても、こうやって組み合わせる事によって便利に使える道具になる場合もある。でもそれをするにも、現状手元に何があるのかを知っていないとできないからね。だから、すべての持ち物を全員が共有して、このサバイバル生活を生き抜こうという提案。
もしも、『俺の持ち物は俺だけのものだ!』とか、『俺のモノは俺のモノ、皆のモノは俺のモノ』なんて言う考えを持っていたら、今すぐここから出て行ってもらうから。そして、二度と僕たちの前に姿を現してほしくないと思う。これが、僕の考え。」
僕は、少し脅す感じでこう宣言する。
ここが地球の何処かであろうが、・・・・・そうでなかろうが、サバイバル生活をするにあたってそんな自己中はいらないのだ。もっとも男連中は、先ほど夜空を見上げた際に、ここが地球ではない事をすでに知っている。見知った星座が、1つも存在していなかったからね。さらに言えば、月が5つも出ていた。実際は、もっとたくさんつきが存在するかもしれないが・・・・・。
まあ今は、そのあたりの事情は、どうでもいいだろうから考えない事にする。
「そうそう。男連中はすでに知っているけどね。ここは地球の大地上の何処かではなく、地球ではない何処かの星の大地の上だからね。嘘だと思うなら、今からでもいいので、夜空を見てくるといい。見知った星座が、1つも存在していないからね。だから、救助を待つなんて考え方は、きっぱりと捨てた方がいいよ。」
この僕の追加報告に、女子たちが一斉に洞窟の外に出ていく。そして数分後に、絶望した顔つきで戻ってくる。全員が、ここが異世界だと確認したところで、もう一度先ほどの事を確認する。
「それじゃあ、もう1度聞くね。皆で協力して、このサバイバルを生き抜くか、それとも、協力を拒んで1人でここから出ていくか。選択肢はこの2つのみだ。
どっちを選んでも、僕は恨まないし、恨んでほしくない。、また、選んだ方に属した者たちも、選ばなかった方を恨んではダメだ。すべては、自分自身で考えて行動した結果だ。その先に何があろうと、その結果を受け入れるしかない。」
そういいって僕は、ポケットの中にあったモノをすべてて地面に置いた。ちなみに僕だ持っていた元物のすべては、次の通りだ。
・スマートフォン
・生徒手帳
・3色ボールペン
・ハンカチ
・ポケットティッシュ
・財布
・現金(日本円で35779円)
・各種カード類
制服のポケットに入れれるだけのモノしか手元にないので、こんなもんだろうと諦める。そうしてしばらく待っていると、次々とポケットの中身を地面に置いていく面々。結局11人全員が僕の考えに同意した結果になり、12人でサバイバルを生き抜く事が決定する。
「それじゃあ、明日からの行動を確認するね。・・・・その前にみんなは、VRMMO『リアルメーカー』というゲームはやっていた?僕はやっていたよ。」
「そのゲームが一体何なんだ?今はゲームをやっていようがいまいが、あまり関係ないように思えるが?」
僕のとうとうな質問に、井野神君がこう答えた。僕だって、何も確信がなければ、こんな(サバイバル生活においてはどうでもいい)事は聞いたりしない。
「実は僕、このゲーム内では生産系では『錬金薬師』として、戦闘系では風属性と水属性を使う『魔術師』としてプレイしていたんだ。そして、さっき確認したらこんな事ができた。」
そう言って僕は、右手を突き出してとある言葉を発する。
「【水出し】」
すると、僕の掌からコップ1杯くらいの水が出てくる。この光景に、皆が唖然とする。
「これは、件のゲーム内で存在している生活魔術の1つである【水出し】だ。ここまで来る道中で何なしにやっていたら、【水出し】の魔術ができたんだよね。他の魔術は緒と怖いから実証していないけど、生活魔術6種はすべてできると思うよ。そして、風属性と水属性、とその派生属性の魔術が仕えると踏んでいる。」
ちなみに生活魔術と呼ばれている魔術は次の6種類。
【火種】
火種にする程度の小さな炎を指先に出す魔法。冒険者や行商人など、町と街を移動する者たちには、使えるととても重宝する魔法でもある。
注ぎ込む魔力量とイメージ次第では、当然ながら攻撃魔法に転用できる。そのため、護身用として覚えておくのにお薦めの魔法でもある。
【水出し】
大き目の盥に1杯程度の水を出す事ができる。注ぎ込む魔力量に応じて、出てくる水を調節できる。冒険者や行商人など、町と街を移動する者たちには、使えるととても重宝する魔法でもある。
【湯出し】
水出しのお湯バージョン。イメージ次第では、人肌程度から熱湯まで温度は自由自在。冒険者や行商人など、町と街を移動する者たちには、使えるととても重宝する魔法でもある。
【清浄】
体や防具、衣類などについた汚れや雑菌などを、きれいに洗い落とす魔法。油汚れなどにも対応しているため、主婦の味方の万能魔法でもある。また、冒険者や行商人など、町と街を移動する者たちには、使えるととても重宝する魔法でもある。
【乾燥】
清浄とセットの魔法。濡れたモノを乾燥させるための魔法。主婦の味方の万能魔法でもある。冒険者や行商人など、町と街を移動する者たちには、使えるととても重宝する魔法でもある。
攻撃魔法としても転用可能であり、注ぎ込む魔力量によっては、相手を干からびさせる事も可能になる。
【光源】
その名の通り明かりの魔法。注ぎ込む魔力とイメージで、様々な形状、継続時間が変化する。
生活魔法の中では、比較的使用魔力量が多いため、あまり多用するのはお薦めしない魔法でもある。
「だからみんなに聞いたんだ。『リアルメーカーというゲームはやっていた?』かとね。このゲームをやっていたのなら、それぞれがやっていたプレイスタイルは、この世界でも問題なくできると踏んでいるんだよ。・・・・・僕がさっきやったみたいにね。
で、どう?
皆はこのゲーム、やっていた?」
僕は改めて、皆にこう聞き返す。結果は、全員がこのゲームをプレイしており、全員が全員、そのプレイスタイルがすべてことなっていた。
「それじゃあ明日からは、それぞれができる事を確認していこうか。それまでは、この洞窟をベースキャンプにして、できる事をすべて把握してから、人里を目指そうか。」
ここにいつ全員がプレイしていた、VRMMO『リアルメーカー』というゲームを基にした習得スキル検証会。今この場でできるモノ、できないモノとに別れているが、できないモノについては自己申告としての地ほど検証する事で話が纏まる。
あと、ここが異世界だと断定した事で、もう1つ解決しておかないといけない事がある。
こうして今後の予定が、大まかに決定したのだった。
「もう1つ、みんなに提案なんだけどね。ここが異世界だという事を前提とするならば、当然ながら封建社会的な身分制度が存在していると思う。というか、存在していると断定して、今後の行動を起こした方が、僕たちの安全が守られる結果になると思っている。」
「それって、どういう事?」
僕の言葉に、緋村さんがこう質問をかぶせてくる。
「僕たちは、この世界において何の権力ない事は理解しているね?それを踏まえると、僕たちの身分って、どんな身分になる事が予測される?」
「まず王族はないよな。それにっ類する身分もね。あと貴族もだな。たとえ俺たちの誰かが、地球において王侯貴族の身分だったとしても、この世界においてそれは全く意味をなさないからな。」
僕の問いかけに、河合君がまずこう答える。消去法で行くのなら、まず真っ先に消えるのは王侯貴族だ。余程の運がない限り、王侯貴族だけは絶対にないだろう。
「後、希望的観測にすぎないけれど、奴隷もないと思うわよ。だって私たち、この世界では奴隷になるようなことしていないからね。もっとも、これから先奴隷狩りに遭遇したり、『異世界人は問答無用で奴隷』という事になっているのなら話は別だけど。」
こう答えたのは、十和田さん。本当に、希望的観測にすぎないけれど、こうなってしまう事も頭に置いておかないといけない。
『異世界人は問答無用で奴隷』の方は、僕たちだけでは防ぐ事ができないけれど、奴隷狩りの方は、気を付けて行動すれば防ぐ事ができる。
「で、残っているのは所謂平民と呼ばれている農民や町人だ。当然何の後ろ盾のない僕たちは、ここにカテゴライズされている身分のどれかに納まると思う。そうなった場合、苗字・・・・・、所謂家名は名乗る事ができないのがほとんどだ。中には奴隷以外は家名を持っている事もあるがね。
この世界ではとりあえず、平民は家名を名乗れない事を前提に、今後僕たちも家名ではなく下の中前で呼び合っていこうと思うが・・・・・。皆の意見を聞きたい。」
少しの間、意見の衝突もあったが、僕の提案以外にいい提案をする者がいなかったため、今後は下の名前で呼び合っていく事にした僕たちだった。




