(9)魔術と化学は表裏一体!?
「まず本格的に魔術を教える前に、テレサちゃんには、物理と化学の法則を覚えてもらう。」
こうして、突発的に始まった物理と化学の講義。
この世界にとっては、未だ解明されていない(過去の言いては改名されていたが、何らかの影響でその研究結果は失われてしまっている)法則らしく、テレサちゃんとアマルーダさん、そしてトムソンさんは、それぞれが行っている事をこなしつつ、マコトとマナミちゃんの講義に耳を傾ける。
「ではまずは、生活魔術6種である【火種】・【水出し】・【湯出し】・【清浄】・【乾燥】・【光源】の6つの魔術だけどね。一応『生活魔術』と呼ばれているだけで、実は注ぎ込む魔力と明確なイメージさえしっかりできていれば、当然攻撃魔術に転用する事は可能なんだ。そして、火属性に適用がないテレサちゃんでも、これを行う事によって簡易的にだけど、火属性魔術を使う事が可能なんだよ。」
「えっ!それは本当なのですか?マコト様?」
マコトの宣言に、火属性を持っていないテレサちゃんが食いついてくる。それに対しマコトは、理論建てを行いながら解説していく。が、まずは最低限知っておかないといけない事を先に聞くみたいだ。
「じゃあ逆にテレサちゃんに聞くけど、この生活魔術6種、属性で別けるとするならどのように別ける?」
「・・・・そうですね。
【火種】は確実に火属性の魔術ですよね。この魔術で出てくるものはそのまま”火”ですので。そして、同じ事が言えるのが、【水出し】と【光源】ですね。【水出し】は水属性、【光源】は光属性となりますので。」
そう言いながらテレサちゃんは、魔力球をクルクルと自身の周囲に展開させながら、【火種】・【水出し】・【光源】の3つの魔術を創り出す。本人は気づいていないようだが、今まさにとても器用な真似をしているのだが。マコトとマナミちゃんも、瞬間的に驚愕した顔になったが、テレサちゃんのしている事にあえてツッコミを入れていない。
「それじゃあテレサちゃん、【湯出し】・【清浄】・【乾燥】の3つの生活魔術は、いったいどんな属性を持っていると思う?」
マナミちゃんが、残り3つの生活魔術、【湯出し】・【清浄】・【乾燥】について、テレサちゃんに質問した。テレサちゃんは、少し考えてこう答える。
「【湯出し】については、水を出す部分は水属性でいいとして、温める部分は火属性でしょうか。・・・・つまり、この魔術は水属性と火属性の混合属性となります。」
「半分正解。だけど、【湯出し】の魔術は水属性の魔術であっているけど、属性で考えると水属性の【水出し】を、熱属性・・・・・風属性と火属性と無属性の混合属性で温めたモノになるね。何故かは知らないけど熱属性は風属性と火属性と無属性の混合属性なんだよね。この辺りの事情は、研究者でもない限り覚えていなくてもいいよ。じゃあ、残り2つは?」
テレサちゃんの回答に、マコトがこう解説を加えていく。こうして、生活魔術を使って、どんな属性を使っているのはを覚え込ませていくマコトとマナミちゃん。
「テレサちゃんに考えてもらった『生活魔術を属性で考えると~~~~』は、最初の話にでた『科学と物理の法則』が多いにかかわっている事なんだよ。
何故水を温めただけでお湯になるのか、何故熱風を当てただけで濡れているモノが乾燥するのか。
こういった自然界に存在する事柄を説明するためには、『科学と物理の法則』を知っていないと説明できないんだよ。で、自然界に存在する自然現象を、人工的に創りだした手段が『魔法』であって、その魔法を使用するために編み出された行為が『魔術』となる。
つまり、突き詰めて考えていけば、自然現象を体系的な知識に元図いて解説した『科学の法則』と、自然現象を数学的見地で開設した『物理の法則』を応用すれば、例えもっとも初歩的な生活魔術であっても、いっぱしの攻撃魔術に転用する事が可能になるんだよ。」
ぶっちゃけ、生活魔術を攻撃魔術に変換するのは、はっきり言って裏技もいいところらしい。科学や物理、時には生物学的な知識を組み込む事になるからとマコトとマナミちゃんは解説していた。
科学や物理といった理数系の話は、はっきり言って頭がこんがらがってきて、俺としては苦手な分野でもある。テレサちゃんにとっては、その言葉自体初めて聞く言葉らしく、しきりに2人を質問攻めにしていた。
「それじゃあ、テレサちゃん。生活魔術にあるこの【火種】を例にして、商才に掘り下げていこうか。」
そう言いながらマコトは、指の先に【火種】で燈した蠟燭の炎のような火を出現させる。
「見ての通り、【火種】で作られる火は、ゆらゆらと揺らめく蝋燭の炎のような火だ。では、この生活魔術で作った火を攻撃魔術にするには、どういったプロセスを踏んでいったらいいと思う?」
「ん~~~~、火属性の攻撃魔術だと【ファイアーボール】とか、【ファイアーランス】とかいったものだよね。ただの揺らめく炎を、あの形?に持っていくには・・・・・。」
俺たち地球組にとってみれば、この辺りは簡単に答えを導き出せる。しかし、テレサちゃんやアマルーダさん、トムソンさんには難しいようで、うんうんと唸りながら答えを考えている。
「まず何かが燃えるという自然現象は、科学的見地でいえば『燃焼』という化学反応になる。
『燃焼とは、可燃物が空気中または酸素中で光や熱の発生を伴いながら、比較的激しく酸素と反応する酸化反応の事である。』
たいての教科書や辞書だと、燃焼はこう定義づけていた『科学変化』だ。でも今回は、この燃焼の定義自体はどうでもいい。必要なのは、次に示す『燃焼に必要な要素』のほうだからね。
1つ、可燃性物質・・・・、言い換えれば燃料。この世に存在しているほとんどの物質は、可燃物だと言い換えてもいい。
1つ、酸素・・・・これは酸素のままでいいかな。ちなみに酸素という物質は、空気中に存在している部室で、生命体にとっては必要不可欠な存在でもある。ここでは、年商を手助けするための触媒とでも覚えておいて。
1つ、発火温度・・・・言い換えると火が付くために必要な温度帯。すべての可燃物には、それが発火するために必要な温度というモノがある。その温度に達した瞬間に、発火すると考えていてもいいよ。
この3つの要素に『燃焼の連鎖反応』を加えて、燃焼の4要素とする場合もあるけど、・・・・今は置いておこう。ここまではいい?」
細かい部分は端折ってしまっている感じだが、科学の「か」の字も知らなかった者たちに開設するには、この位のボリュームでも十分みたいだ。現に、半分ほどマコトの解説に首を傾げつつも、基本的な事くらいは理解できている様子のテレサちゃん。
「ではボクの指先に、先ほど【火種】を用いて着火した炎があります。
この炎は、他の可燃性物質に近づければ燃え移りますし、この炎自体熱を持っています。つまりこの炎は、『科学的に言えば燃焼している』という事になります。
ここまではいいですね?」
「なんとなくだけど、理解できた。」
皆を見渡しながら同意を求めた後、マコトは話の続きをしていく。実際は、テレサちゃん・アマルーダさん・トムソンさんに対しての確認だったが。
「ではこの炎は、いったい『何を燃料』としているのでしょうか?」
「魔力?」
「テレサちゃん、正解。正確に言えば、ボクの体内に存在している魔力だね。その辺の細かいところはどうでもいいとして、魔力自体は可燃性物質ではない不燃性の物質です。ボクは無意識のうちに、その不燃性物質を可燃性物質に変換して指先から放出し、酸素と結合させて着火。これまた無意識のうちに燃料を摘便投下しているため、この炎は”燃焼”し続けているというわけです。
では、魔術を放つために必要な要素は?」
「え~~~~っと、たしかイメージ・魔力・(発動するための)意識の3つだった気がします」
テレサちゃんは、この質問に簡潔にこう答える。魔術は一切なぶっていなくても、この辺りの知識は必須知識なんだろう。
「そう、イメージ・魔力・(発動するための)意識。この3つの要素が、魔術の発動するための大前提になります。この中で、今回は特にイメージについてのお話です。
現在ボクは無意識化で、この炎を『蝋燭に燈したような揺らめく炎』と、こう定義づけているんだと思います。その結果、そのようなイメージのもとに、この炎はここに存在しています。たぶん、他の人が発動する【火種】も、このような定義で発動していると思います。
では、この定義を、『ガスバーナーから出る青白い高温の炎』と定義づける・・・・・、つまりイメージした場合、この炎はどういった感じになるでしょうか?早速やってみましょう。」
そんな事を言いながらマコトは、先ほど話していた通りのイメージを指先にに灯す炎に加えていく。
すると、先ほどまで揺らめいていた炎が、”ボオ~~”と音を立てて垂直に燃える、まるで理科の実験室にあったガスバーナーから出ているような炎になる。そしてついに、”ゴ~~~~”という音と共に、マコトの指先から出ている炎が青白く変化する。
炎は、赤色から白色に近づくにつれてその温度が上昇していく。最終的には透明に近くなってその時の温度は1万度を優に終えるらしい。
その後マコトは、「ではこの炎に、細く尖った矢の形のイメージを加えてみると・・・・」などと話しながら、その青白い炎にさらにいろいろなイメージを加えて形を変化させていく。
そして最後には、遠くで俺たちを襲撃する機会を窺っていたトラの魔物に向かって、針のように細くした炎を無造作に投擲。見事、トラの魔物の眉間に命中させて、その命を狩りとってしまう。
「ブラックサーベルタイガーですか。これは、(ボクにとっては)いい臨時収入になりましたね。」
そんな事を言いながら、トラの魔物・・・・・、ブラックサーベルタイガーを転移で引き寄せてそのまま【アイテムボックス】に格納するマコト。昨日、ふらっと立ち寄った冒険者ギルドにおいて、依頼掲示板を流し呼んでいた事を思い出す。その中に、ブラックサーベルタイガーの討伐依頼か何かがあったのだろうと推測する。
そんな感じでマコトによる魔術講義の後、生活魔術6種の【火種】・【水出し】・【湯出し】・【清浄】・【乾燥】・【光源】を、いろいろなイメージを付け加えていって攻撃魔術に魔改造していくマコト。
それを見て、見よう見まねで同じ事を行うテレサちゃん。
初めの内はうまくいかなかったみたいだが、イメージのやり方や、物理や化学の法則や知識を摘便投入していく事によって、マコトと同じ事をやってのけたテレサちゃんだった。
その後、テレサちゃんの持っている属性魔術を、本格的に教えていくマコトとマナミちゃん。マコトからは攻撃魔術を、マナミちゃんからは治癒系統の魔術を教えてもらうテレサちゃん。
その結果・・・・・。
(アマルーダさん曰く)宮廷魔術師に手が届くところまで魔術の知識を吸収してしまい、教えていたマコトやマナミちゃんも、その習得速度には驚愕していた。
「ではお兄様、私の修業の結果を見ていてください。
【氷の弓矢】」
テレサちゃんは、はるか上空を飛ぶ何かを標準に設定して魔術を発動する。弓を引くような仕草をしたテレサちゃんの両手には、氷でできた身の丈ほどもある巨大な弓矢が顕現する。その弓矢を空飛ぶ何かに向けて構え、そして氷の弦を離した。たぶん、テレサちゃんのイメージでは、嫌をはこうであるべしとなっているんだろう。ちなみにマコトやマナミちゃん、はてやヒカリちゃんですら、アロー系の魔術の時は弓矢が顕現していた。
で、テレサちゃんの手から離れた氷の矢は、音速に近い速度で空飛ぶ何かを穿ち、その瞬間に氷漬けにしてしまう。それをマコトが転移で引き寄せて、しっかり命を刈り取っているのかを確認する。
ちなみに、テレサちゃんが狩った空飛ぶ何かは、ドラゴンの仲間で下位種族であるワイバーンだった。
この結果に、テレサちゃんの兄であるマルコネル様以下、お付きの面々たちは顎が外れるほどに驚愕し、数分間|息をする人形状態になった(フリーズしてしまった)。
テレサちゃんをこんな感じに仕上げてしまった俺たちですら、テレサちゃんの魔術の才能に驚愕しているのだ。これが数日前までは、魔術の『ま』の字も知らなかった女の子だったなんて、誰が信じるんだろうか?
「少し早いけど、テレサちゃんとアマルーダさん、トムソンさんに、ボクからプレゼントがあります。1日1人ずつしかできませんけど、【アイテムボックス】を3人に付与したいと思います。」
俺たち4人に対しての洗礼の神事をした際、マナミちゃんが治癒神『メディサリーヌ』の聖女に、マコトが魔術神『イシスアマト』の聖女に、テレサちゃんが生命母神(水の神)『ウンディーネ』と氷神『へカテリーナ』の2柱の聖女に就任した夜、マコトは3人に対し【アイテムボックス】を付与する事に決めたみたいだ。
そうして順に【アイテムボックス】を付与していくマコト。やっぱり1人1人魔法付与術するたびに双方が気を失うのがデフォルテらしい。
そうしてこうして4日後の朝、俺たち7人は長らく暮らしたコロラド王国カスタード辺境伯領ペンタストから、カスタード辺境伯領の領都・テアステリアへと向かう事になった。なお、テアステリアはとりあえずの目的地であって、テレサちゃんの両親との面談後は何処か知らない土地に放浪する予定である。




