【01-05】VRMMO『リアルメーカー』というゲーム
地球という惑星が存在する世界において、それは異質な力として認識されていた。
しかしその力は、地球に住まう代表的な生命体・・・・人類にとっては、太古の昔より畏怖されてきた力である。
その力を持つ者たちは、太古の昔その力を政治に利用して、万民を従えてきた時代もあった。知己には、その力を戦争に利用し、世界征服をたくらんだ独裁者もいたほどだ。
しかし、時代を追う事にその力を持つ者たちは、表向きには政治の世界より遠ざかっていく。
現在においては、その力を持つ者は圧倒的に少なくはなったが、裏の世界を牛耳っているのは、その力を持つ者たちである。
2000年代も折り返した頃、人類は|仮想空間内(VR)で時間を加速させる事に成功する。
人類は仮想空間内で様々な訓練をする事になるが、『精神的』には鍛えられても、『肉体的』には鍛える事が出来なかった。
そのため、開発当初は軍事技術だったVRも、早々と民間に払い下げられる事になる。民間に払い下げられたVRは、様々な分野に進出・発展をしていく事になる。
そんな時代の節目に登場したのが、VRMMO『リアルメーカー』という、フルダイブ型のゲームだ。
日本という名の極東の島国にその根を下ろす複合企業体『今宮グループ』に属する、とあるコンピュータソフト制作会社が発表したVR技術を使用した、フルダイブ型のVRMMORPGゲームである。
開発に10年の歳月を有したこのゲームは、当初はとある目的のために作られたものである。開発に成功したのは民間会社だったが、スポンサーとなっていたのは、世界のすべてを裏で牛耳っている組織と、一部国家の政府たちだった。
そして、『特異体質』の者たちのために、その特異体質を訓練するための空間として開発されたのが、この『リアルメーカー』というゲームだった。
この『リアルメーカー』では、『このゲームで現有共有したスキルは、地球の大地上でも使用する事が可能』であり、それ故に特異体質の者たちの修行場として開発された通信型のゲームったのだ。
つまり、稼働当初はそのプレーヤーのすべてが、何らかの特異体質持ちだったという事。特異体質といっても千差万別だったため、それぞれの体質に合わせた環境がゲーム内には整えられていたが・・・・・。
そして、開発されてから半年くらい経った頃、何処かの文屋がこの事をすっぱ抜いて大騒ぎになった。
『特異体質持ちを優遇。各国政府も介入?』
当時、そんな見出しが各紙面を踊っていたが、この記事には(見出しには)大きな誤りがある。
確かに、一部特定国家の政府が資金を出し合って、民間企業でしかない会社の立ち上げた通信ゲームであるVRMMOの『リアルメーカー』を支援していた。
その事実は、間違いはない。
しかしそれは、自国にいる特異体質持ちの修業環境の支援という名目があり、いて言えば自国の国力の強化であり、しいて言えば自国の国力の強化という事になり、結果的には支援した国家が有利な立場になっていくのだ。実際、特異体質持ちは、年齢・性別・家庭環境、それこそ学力すら関係なく、国家公務員の資格を持っていた。
まあ日本の場合は、一部海外からも特異体質者を全国各地から集めていた。
閑話休題。
そんな記事が出た頃にはすでに、特異体質者たちの(ゲーム内での)基礎訓練は終了しており、(地球上での)実践による応用訓練へとシフトしていた頃。つまり、ゲーム内で身につけた能力を、実際の体になじませるための実地研修を行う段階に来ていた。
戦闘関連の特異体質者たちは、世界各地の紛争地帯へ行って、戦闘訓練の代わりに戦争に参加していた。なお、戦争に参加する場合は、(資金提供国が主体となった)特異体質者だけの傭兵軍団が作られ、時には両陣営へ、時には片方の陣営に雇われる形での参加だ。そして、特異体質者たちが参加した途端、戦闘がいきなりファンタジーな感じに様変わりするのだ。核攻撃すら、無力化してしまった事もあった。
また、そうでない者たちは、それぞれの特異体質に合った職場(わざわざ立ち上げたモノもある)に就職して、その腕を如何なく発揮したりしていた。こちらの場合は、世界各地で、一時期いきなり生産能力が向上したり、全く新しい発明品や工業製品が世に乱立したりして話題になった。
つまるところ、VRMMORPG『リアルメーカー』の事をすっぱ抜いた時には、すでに当初の目的はほぼ達成できていたため、すでに次の段階へと話は進んでいたという事実がある。
『特異体質持ちではない者たちにも、このゲームを行えば似たような能力を扱えるようになるのか?』
そして当然、各国政府も、ゲーム開発者も、もちろん特異体質持ちだった者達にも、この疑問は開発当初から議論されてきたのだ。そして、特異体質者たちの(ゲーム内での)基礎訓練は終了しており、(地球上での)実践による応用訓練に移った段階で、この疑問を解決すべく新たな実験が立ちあげられた。
その実験こそが、『このゲームを世に送り出すため』という口実の下、特異体質持ちではない一般人をベータテスターとして参加させた『一般人でも、ゲーム内のスキルを現実世界でも使えるのか?』という『ベータテスト』という名の『実験』だった。
つまり、文屋がすっぱ抜いたのは、この実験に参加させるための人選をするために、関係者各位がわざとリークした内容であり、もともとそうする予定だったのだ。
さて、そうして始まった『ベータテスト』という名のこの『実験』。
ちなみにベータテスターは、世界各地に散らばっており総数は約10万人ほど。その人選には、政治介入はなかったが、ゲーム会社の意向が多分に反映されている人選だった。
事実、ベータテスターとして選ばれた者たちの国籍を見れば明らかであり、そのすべてが資金提供国家だったからだ。
そして、データテスターの約6割が、病院のベッドの上で一生を過ごすしかないような人たちの中で、特に40歳以下の前途ある若者や、所謂脂ののっている年代の者たちが選ばれ、残りの4割が特異体質者の推薦枠となっていた。これについてもまた、病気や怪我などの治療実験であり、うまくいけば二度と歩けなかった者が、再度歩けるようになる・・・・かもしれないからだ。事実、そういった希望的観測の下、参加希望者が殺到し、予定人数よりも多くの参加者を集める結果になった。
ベータテスト開始時に、資金提供国ではなかった国家の国民から結構な非難・中傷があってネット内が大炎上。中には、ゲーム何に侵入して悪さをしようとする者や組織も現れてたが、そういった個人や組織に対しては、そっち方面に特化していた特異体質者によって、根こそぎ排除されていった。それは徹底的であり、組織に在籍していたスタッフ全員と各個人は、軒並み『生きた人形』と化して精神が崩壊してしまう。その上で組織を運営していた国家や団体が世に晒され、国家や組織の権力が地に堕ちる結果になった。そこらあたりは自業自得として、一切の反論は無視される結果になった。
なお、この中には国連・・・・国際連合も含まれており、反論した国家による強行議決も100本を超えている。しかし、それらが裏目に出てしまい、結局国連の組織はその下部組織ごと、すべて解体される憂き目を見ている。
そのため、当初はオンラインゲームでありながらも、非公開の会員制ゲームだったこのVRMMORPG『リアルメーカー』。
その会員登録規則は徹底しており、スポンサーとなった裏の組織の人員ですら、力がない者には、たとえ、トップに君臨していても会員登録ができないほどであった。太古より存在する異質な力の持ち主でないと、会員に登録する事が出来なかった故、喉から手が出るほどほしがった各国の軍事関係者ですら会員になる事が出来なかった。
しかし、ゲーム内に搭載されたとある特殊技術に起因するゲーム内スキルが話題を呼び、様々な場所からの嘆願を持って、運用開始から2年後に一般公開される事になる。
こうしてこのゲームは、こういった紆余曲折を得て一般公開されたのだ。
さて、このゲームの特色であり、とある特殊技術こそ、『獲得スキルリアル化』という技術だである。
この特殊技術は、『現空共有』と『身体能力共有』という、ゲーム内に存在する2つの特殊スキルを初期習得していれば発現する。この2つの特殊スキルは、キャラクター作成時において自動的に習得するスキルだが、アクティベート化するには少々乱雑な手続きが必要であるが、ここでは説明は割愛する。
なお、現実世界にゲーム内のスキルを共有させるには、それぞれのスキル毎に設定されたクエストを、設定された条件でクリアーしないといけない仕組みになっている。
この工程を経て現実世界にスキルを引き継ぐ行為を、このゲームでは特殊スキルの名称と同じ『現空共有』と呼称している。また、現実世界のリアルスキルを、ゲーム内スキルに変換する行為を同じく『身体能力共有』と呼称している。
このクエストの内容が、それぞれのスキル単体において、現実での習得難易度に応じて異なっている。
つまり、現実世界で習得が容易なものは、それに応じてクエスト内容の簡単になっている。しかし、現実世界において習得が困難なものは、クエスト自体もクリアーに時間がかかる困難なものになっている。また、魔術などの現在では失われた、或いは概念的なスキルに関しては、クリアー条件が鬼畜設定されている。
なお、このクエストをクリアーしない限り、ゲーム内に存在するあらゆるスキルを、現実世界で使用する事が出来ない。また、現実世界にゲーム内スキルを引き継げたとしても、それだけでリアルスキルとして体現できるわけではない。
現実世界に引き継がれた(ゲーム内)スキルを使用する場合は、それ相応の身体能や現実知識(理工学や言語学などの知識的能力や、体力や器用さといった肉体的能力)が必要になってくる。
ゲーム内においては、スキル毎に専用の各種アシストが存在しているため、スキルを使用する事に関してあまり考えなくてもいい。しかし現実世界では、それらの身体能力や現実知識を持っていないと、スキル自体は使用できても、思い通りの動作や考えた通りの作品の制作などが出来なくなる。
こういったステータス的な能力についても、関連クエストをクリアーする事で、ゲーム内のステータスや、それこそ各種アシストすらも引き継ぐ事が可能になる。ただし、そういった事を現実世界でも実行したい場合は、鬼畜設定のクエストをクリアーしないといけないのは当たり前の事実である。
なおこのゲームでは、こういった基本的情報すらも公開されてなく、ゲーム内で調べていかないといけない仕様だった。知識がほしければ、各町々(場合によっては、ゲーム内のすべての町を回る必要がある)に存在する図書館に籠って関連する書籍を読み漁ったり、各地に点在する遺跡やダンジョンなどで入手する必要がある。
こういった情報の公開がされていなかったため、一般公開時はすぐさま現実世界でも使用できると思い込んでいた、一部の(おバカな)プレイヤーたちによる暴動等が起きたりもした。また、リアルで習得困難なものほど、関連クエストが鬼畜仕様になっていく事にも、そういったおバカなプレイヤーたちによる苦情の声になっている。
しかし、良識あるプレイヤーたちの見解が、公式見解となってからは急速に収束していく。
『どんなスキルにおいても、それを使用するには当然関連する技術や知識が必要になってくる。この事実は、現実世界でも仮想世界でも同じであり、普遍のルールであり理でもある。
そして、どんなゲームにおいても、スキルに応じてアシストが働いている。このことは事実だが、そのアシストを突き詰めていけば、何らかの技術や知識を基にしているからだ。
現実世界のリアルスキルにおいても、底辺には基本的な技術と知識が存在しており、それらを疎かにしている者は、当然ながらスキルのレベルも上がらず、またスキルを習得する事もない。
リアルで習得困難なものほど、関連クエストが鬼畜仕様になっていく事についても、モノによっては現実世界の理を大きく覆す事になるため、鬼畜仕様になるのは当たり前である。
また、当然ながらそういったスキルは、犯罪目的でも利用可能だ。
それらを考えていくと、そういった事を抑制していくためにも、鬼畜仕様になるのは当然の結果といえるだろう。』
この良識あるプレイヤーの言葉が、このゲームにおいての普遍的なルールであり理になるのに、そう時間はかからなかった。




