(4)月初の大祭(その2)
あまりの緊張のためよく覚えていないパーティーは、よく覚えていないうちに終了してしまい、成功したのか失敗したのかさえ解らずに終わった。
まあパーティーの後に、何も言われていないので大きな失敗はしていないと思うが・・・・。
日付が変わる時間を挟んだ前後1時間、この時間帯に行われるのが、それぞれの月を守護している神様が交代する事を宣言する神事『月神神事』が開かれる時間である。
基本的に、(その町や村に生活もしくは滞在している)神官以上の聖位を持つ者全員の参加が義務付けられているため、それ以外の者たちは参加する事はないが、神殿内の礼拝堂で行われるため、神事を見学する事は可能である。見学するためには、神殿からもらえる修道服に着替える必要はあるが・・・・。
もちろん見学と言えど、要所要所において席を立ちあがり、神官と共に心臓に向かって恭しく礼をしたりする事もある。宗教的な儀式なので、そういうモノだと参加するのが見学者の礼儀?である。
ちなみに、各月を守護する神は次の10柱となる。
1月を守護する神・・・・太陽神(光の神)『アマテラス』
2月を守護する神・・・・月光神(闇の神)『ツクヨミ』
3月を守護する神・・・・天空母神(風の神)『シルフィール』
4月を守護する神・・・・雷の神『エレキメス』
5月を守護する神・・・・生命母神(水の神)『ウンディーネ』
6月を守護する神・・・・氷の神『へカテリーナ』
7月を守護する神・・・・鍛冶母神(火の神)『サラマンダー』
8月を守護する神・・・・大地母神(地の神)『エルザノーム』
9月を守護する神・・・・樹の神『アイアタル』
10月を守護する神・・・・無明母神(無の神)『パラケルスス』
翌日・・・・・というか、すでに日を跨いでいるので早朝と言った方がいい時間帯。
各神殿における聖位の最高位(上位聖位もしくは神託聖位の中での最高位)に就いている者が、日の出の時刻を挟んだ20分間の間、禊の泉に浸かって聖句を唱える神事がこの『太陽神の復活祈祷』である。つまり、今回の神事の参加者は、マナミちゃん、マコトテレサちゃんの3人の聖女様のみである。
神事の内容は、その月の平和と安寧を願って、太陽神アマテラスに祈りを捧げ祈願する神事で、神殿内の禊の間で行われているため、どんな神事なのかは(マナミちゃんっ体から)後聞きで聞いたのみ。その内容は、聖水に浸かりながら、専用の祝詞を昇りゆく太陽に向かって詠みあげていただけらしい。
なお、真夜中に行われる月神神事と、日の出前後に行われるこの太陽神の復活祈祷のため、俺っ体は全員神殿内にある『聖女宮殿』と呼ばれている建物で今日のみ寝起きしている。この建物、『〇〇教会』と呼ばれている聖教施設には存在していないが、『〇〇神殿』とか、『〇〇大聖堂』とか呼ばれている聖教施設には必ず存在しており、聖女様(神々の神勅による聖女を含め、聖教側で便宜上交渉している聖女も含める)と家族も含めたその従者が寝泊まりする施設である。ちなみに聖人様の方は隣にある教皇神殿での寝泊まりだ。
なお、聖女様とその従者がこの建物を使用する際は、基本的に無料で寝泊まりする事ができる。理由としては、在家・出家問わず集落の中にいれば、必ず朝と晩と、そして日付が変わる時間に行われる神事に参加する義務が生じているから。さらに言えば、夜の神事はともかく、朝の神事が日の出の時刻が開始時刻となるため、何処かの宿に泊まっていたりすれば、間に合わない可能性もあるからだ。
しかしこの規則も、今回行われている月初の大祭以外の参加は、(在家聖女や在家聖人のみ)任意参加になるという何とも緩い規約もある。つまり『聖女様(聖人様)=神の化身であり御使い』であるため、この人たちの意向を無視する事は出来ないとされているんだよ。
只人が聖女様(聖人様)にあれこれ命令する事は、すなわち神々に向かって命令する事と同義とされているからね。なお、バティスティア聖教以外の宗教団体では、そうでない場合もあるが、・・・・・そのあたりの事情は割愛する。
なお、ここテラフォーリアにおいては、約6割がバティスティア聖教を信仰しており、残り4割の内の7割が多神教の宗教を信仰している。その残りが、一神教の宗教となっている。
ちなみに、昨晩行われた月終の謝肉祭という名の大パーティーは、この聖女宮殿内にあるホールで行われていた。
さて、聖女様の聖装のまま町を練り歩く『聖浄行列』は、その名の通り町中を練り歩く事にその意味を持っている。
それは、先月1カ月間に及び町中に堕ちた穢れを祓うため、決められたルートを神官全員で行進し、決められた場所で、決められた浄化の儀式を執り行う神事だからだ。町の大きさに左右されるが、2~10時間ほどかかる神事であり、ここペンタストの広さなら3時間程度らしい。
まず神殿を出た神官御一行様は、一路北上して町の北端にある楼門に登る。この楼門の中に、町の北を護っている玄武神の祠があるのだ。なお、町を練り歩く順番は、神殿(中央にあるため麒麟を祀っている)から北上して玄武神を祀る玄武門へ。神殿に戻り、青龍神を祀る青龍門という風に、順に時計回りで各4つの城門を回っていくのだ。
ここテラフォーリアでは、東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武と、五行説に照らし合わせて中央に麒麟を置いてる。また、東西南北に1つずつある城門をそれぞれ青龍門(東門)・朱雀門(南門)・白虎門(西門)・玄武門(北門)と呼称されている。当然風水の考え方も取り入れられており、町や村の北側には山(玄武)、東側に大河(青龍)、南側に平原(朱雀)、西側に街道(白虎)があるところが多い。
なお、町や村がある場所柄、どうしても風水通りにに設置できない場合、東西を反転させる、もしくは南北を反転させて、辻褄を合わせている場所も存在している。
この辺りの考え方は、中国の神話などが強く影響しているため、(四神について研究していたであろう)『異界からの来訪者』たちが広めたんだろうと推測する。
何か、地球にある神話や伝承が、数多く国家や町の在り方に取り入れられているところは、そういった事が大好きな日本人が(異界からの来訪者に)多かったのか。
そのあたりの事情は、詳しく調べてみないので解らないが、北欧神話等が少ない当たり、日本人だけとは言わないが、きっと地球において東洋人と呼ばれている人たちが多く存在していたのだろう。
神様の名前については、いろいろと混ざっているけどね・・・・・。
「今は乾季だから大丈夫だけど、雨期だったらこの神事だけはやりたくないよね~~~~。」
何気にマコトが呟いたこの言葉。
聖浄行列を終えて、一服している神官たちも聞いていたのか、皆しきりに頷いている。中には・・・・・。
「特に土砂降りの日と重なると、とても大変ですな。なんせ、傘も雨具も使用してはいけない故、皆土砂降りの中での行進ですから。」
「なぜ、雨具の使用すら禁止されているんですか?」
お茶を飲みながらの雑談の中、自身にも降りかかる可能性のある事柄故、真剣に話を聞く聖女様たち。
「理由は知りませんが、何でも自然に触れて歩く事で、町中に堕ちた穢れを祓うためには必要なんだとか。ほら、今日だってさんさんと降り注ぐ太陽の下、日傘も差さずに歩いたでしょ?日差しが雨に変わっただけ・・・・・という事みたいですよ。」
確かに、雲1つ無い晴天の中を、日傘も差さずに町中を歩いたよね。もちろん、日差しや雨などを遮る魔法なども使用してはいけないとされていたので、・・・・・何も使っていないし、・・・・化粧すらしていない。
これに関して言えば、『そういうモノだ』と諦めるしかないのかもしれない。
閑話休題。
”ゴ~~~~~ン、ゴ~~~~~ン、ゴ~~~~~ン、ゴ~~~~~ン、ゴ~~~~~ン、ゴ~~~~~ン”
日没を知らせる鐘の音が鳴り響いた後、神々を祀る礼拝堂では、町の名から近隣の村々で暮らす、満年齢が1歳・3歳・5歳・7歳の子供たちとその両親が全員集合していた。
マナミちゃんたちを先頭に、花道を歩いて入城してくる神官たち。神官と言っても全員ではなく、司教以上の聖位を持つモノと、進行補助として付き従う修道女のみだ。
花道を歩きながら、左右に並ぶ長椅子に取り付けられている燭台に、火を燈していく修道女たち。蝋燭に火が燈されていくたびに、幻想的な雰囲気になっていく礼拝堂の中。
マナミちゃんたちが祭壇上に登ると、一斉に立ち上がる神事の参加者と見学者(俺たちを含める)たちは、中心として取り仕切っているマナミちゃんの礼に続いて、一斉に同じ動きを行っていく。
その後は、その場で膝立ちになって両手を胸の前で組んで軽くお辞儀をする参加者と、立ったまま成長祈願を神々に祈る祝詞を、その澄んだ声音で言霊に載せて詠みあげていくマナミちゃん。
その後、祭壇の中央にマナミちゃん、1段下がった場所にテレサちゃん、マコトの順に祭壇の前に並び、祝福を受ける1歳・3歳・5歳・7歳の子供が年齢順に並ぶ。
まずはマコトに横にいる修道女から、三方に積まれた真っ白な陶器でできた聖杯を受け取る。その聖杯の中に、提子を持つ魔術神の聖女マコトと、水氷の女神の聖女・テレサちゃんから直接、提子の中に入れられている聖水を注いでもらい、その場で飲み干していく。
その後、聖杯をテレサちゃんの先で待つ修道女の持つ三方に置き、その先で待つ治癒の女神の聖女・マナミちゃんの元へと向かう。
なお、生命母神(水の神)『ウンディーネ』と氷の神『へカテリーナ』の2柱の聖女であるテレサちゃんの事を、『水氷の女神の聖女』と、短くして呼ぶ事になっているみたいだ。何でも正式に読むと、とても長くなるためどうしようかと悩んでいたら、本人から「それじゃあ、2柱の神の権能を取って『水氷の女神の聖女』としましょう」という提案があったそうな。聖女の言葉は、それすなわち神の言葉だという事で、テレサちゃんの事はこう呼ばれる事に決定したらしい。
聖水を飲み干した子供たちは、自力でできる3歳以上の年齢の者は、マナミちゃんの前で跪いて両手を胸の前で組む。1歳児は、腕に抱いた親が代行する事になる。
祭壇の中央で待つマナミちゃんは、子供たちの頭に左手を乗せて、右手で何かの印を斬りながら言霊に載せた聖句を唱えていく。すると、子どもたちの足元に魔法陣が描かれて、マナミちゃんの左手から出る淡い光に包まれる子供たち。その光が魔法陣に仕込まれて消えれば、次の子供へと移る。
これを、子供の数だけ繰り返していって、成長祈願の勅杯が終了する。
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コロラド王国、王都ロンドリアの中心部にある大噴水広場を取り囲む北西の1ブロックにある『セント・メシアピエトロ大聖堂』を総本山とするバティスティア聖教。こここそが、世界最大の宗教国家であり、世界最小の国家でもあるバティスティア聖国の国土である。
地球における、キリスト教カトリック派の総本山・ヴァチカン市国のような存在だと思ってもらえば差支えはない。
ただし、1つ異なっている部分を言うならば、名目上各地に建てられている神殿や教会は、バティスティア聖教の施設であると同時に、(拡大解釈すれば)バティスティア聖国の国土という事になっている。そのため、世界中に散らばるすべての神殿や教会の敷地を総合計した場合、世界最小国家の称号は別の国家に渡される事になる。
この国の説明は、時間がないので割愛するが、この国の意思決定機関である法皇庁では、現在難しい問題で頭を抱えていた。その問題とは・・・・・。
「聖女様が同時に6人も誕生なされたことは喜ばしいが、何故『セント・メシアピエトロ大聖堂』内で誕生しずに、遠く離れた辺境の地でご誕生なされたのだ?
せめて、コロラド王国の王都ロンドリアかその周辺部で誕生していれば、7月期の月初の大祭と合わせて、大々的に聖女就任式を執り行う事ができたのに。」
そうなのだ。
6人の聖女はそれぞれ、コロラド王国内にあるムハマルド辺境伯領・サクラピアスと、カスタード辺境伯領・ペンタストという町で3人ずつ誕生した。どちらもそれぞれの領都ではなく、遠く離れたさらなる辺境の地での出来事である。
どちらにおいても、すぐさま総本山の招聘に応じてくれても、通常ルートでは2カ月以上かかってしまう場所である。まあ、招聘に応じてくれるかどうかは、聖女様たちの御心次第であるが・・・・・。
「それもあるが、聖女様6人を指名した10柱の神々も問題であろう。そのうち6柱は、(記録に残っている中では)今回が有史以来最初の指名だ。」
2人の聖女はそれぞれ、『6大神の白巫女』と『6大神の黒巫女』であり、聖女の中で『巫女』ととくに故障されているこの世界を創った神々である、次元神『ディメンシア』・創造神『クインメシア』・破壊神『ダークメシア』・空間神『スぺーリシア』・時間神『タイムリア』・重力神『グランヴィア』が、共同で認定したという報告が上がっている。
それ以外にも、太陽神(光の神)『アマテラス』の聖女、生命母神(水の神)『ウンディーネ』と氷の神『へカテリーナ』の2柱の聖女、魔術神『イシスアマト』の聖女が誕生している。
「本当に・・・・・・、どうしたらいいモノか。」
頭を抱えて、会議を推し進めていく面々の表情は暗い。強制的に招聘できない事が、さらに頭を抱える問題へと発展しているのだ。




