【05-13】攻略の合間に(その2)
15階層のボス部屋で手に入れたのは、何かの古文書の山だった。
何処から古文書の山が、ダンジョン内にある宝箱に納まったのか、とっても不思議である。あとでガイストさんに聞いたところ、時たまそのような事が起こるらしく、なぜこういったモノがダンジョン内にあるのかも専門家でもわからないとの事。
ちなみにダンジョンに入った際の外の日付は、『NMDC23667年9月26日』となっていたが、今日の日付は、『NMDC23667年9月30日』なので、ダンジョン内に入ってから4日間ほどしか経っていない。ちなみに現在は真夜中で、あと30分ほどで日付が変わる時間である。なおダンジョン内で暮らした正味時間は、『150:41.15』なので、約6日間と6時間となる。
こうなる事が分かっているため、ダンジョン村に出来た宿屋は24時間営業で、チェックイン自体はいつでも可能になっている。もちろん食事も、24時間何時でも提供されており、基本朝食や夕食と言った区分けは行われていない。なお基本的に宿屋以外は、日の出から日没が営業時間である。
また、この村にあるお店のすべては、ここに連れてきた奴隷たちが営んでいるが、お店の売り上げでその身分を買い戻していたりする。つまり、お店が儲かれば儲かるほど、奴隷からの解放が早まる仕組みであり、奴隷たちのやる気を引き出させているのだ。ちなみに、奴隷たちの主は、この村の村長さんである砦の隊長である。
とりあえず15階層なのでいったん外に出た私たちは、そのまま外に出来上がりつつあるダンジョン村にある宿屋の部屋を取る。今気づいた事だが、すでに十数組の冒険者が来ており、とっかえひっかえダンジョンアタックを行っておるそうだ。
すでに雪が降り積もり、仕事も少なくなってきているこの辺りにおいて、ちょうど言い稼ぎ口ができたという事だろう。
宿屋において、夕食だか夜食だか解らない食事を堪能し、(私たちにとっては)6日ぶりとなるお風呂に突入する。ダンジョン内では生活魔術にある【清浄】と【乾燥】を使って清潔にはしていたが、やっぱりお風呂に入るのとは違うんだね。この『骨身に染みる~~~~』のような感想は出ないからかな?
ちなみに生活魔術とは、【火種】・【水出し】・【湯出し】・【清浄】・【乾燥】・【光源】の6つの魔術の事を言い、魔力さえあればだれにでも使用可能な魔術である。そのため、私たちにおいても、脳筋である前衛3人組に対しても、しっかりと使用できるように指導してある。
お風呂を堪能後、各自の部屋に入り、安眠液化薬を飲んで今日のところは寝る事にする。全員が聖女様とか神官なので、日の出と共にお祈りがあるのだ・・・・ダンジョンの外では。そのため、短時間でぐっすりと眠る事ができる安眠液化薬は、どんな時でも宗教関係者にとっては必需品である。
朝、雪が降る中、日の出方向に向けていつものお祈りを済ませ、朝食を食べる私たち一行。
雪が降り続く中、できたばかりの村の中を冷やかしながら砦へと歩いていく。昨日は真夜中という事で、宿屋以外は閉まっていたため、今日が村の中を探検する初日でもある。
しかし、4日でここまで出来上がるとは、すさまじい建築速度である。聞いたところによれば、魔術でもって建物外装を造っていき、店を担当する者(今回は奴隷だが)が内装を造っていく方法だったらしい。なので、3日もあればこの位の集落は、楽々出来上がってしまうのがこの世界のいいところなのかな?
それはともかく、ダンジョン攻略に欠かせないお店はすでに出来上がっており、ここのダンジョンを攻略する冒険者たちですでに賑わっている。
村歩きを楽しみながら、本日の目的地であるこの村の砦兼村長宅?へと向かう。
ちなみに、探索隊の隊長だった人が、この村の村長さんになったのは知っている。だって、奴隷を運んできた際に、ムハマルド辺境伯領領主様の名前で発酵された委任状を持参(ちなみに、一緒に来た文官さんから頼まれて渡した)してきたので。
なお私が、(6大神の白巫女としての立場で)その時の領主様の名代となっている。
私以上に、適任者はいないとの事である。
私はやる気はないが、6大神の白巫女を利用すれば、大国の王の首すらもすり替える事が可能になるんだからね。
閑話休題。
通りに面したお店を冷やかしていると、一際冒険者がたくさん出入りしているお店が、ダンジョンの近くにある。鍛冶屋や防具屋と並んで、一番稼いでいるだろうそのお店は、・・・・・お薬屋さんである。
まあ、もっとも、1つ1つの単価自体は先の述べた3つのお店の中で一番安いのだが、その分大量消費するため、実は一番忙しかったりする商売なのだ。特にこの村には、回復魔術が使える神官さん・・・・・はっきり言えば修道士と修道女がいないからね。そもそも、教会を建てる用地は確保し、建物自体もすでにあるのだが、肝心の運営できる人がいないため現状は無人なのだ。
砦の隣にある冒険者ギルドですら、奴隷が職員となって働いているのだ。
なにせ、砦や詰めている人以外は、村人全員が奴隷である。もう少し掘り下げると、ピタゴラ=スガハド山脈に連なる各山脈の谷筋を源流とした大河・トーマヘーヤ川の河口域に広がる、大三角地帯に乱立している国家群から来た戦争奴隷たちである。この一帯は、それぞれの三角州ごとに小規模な国家が乱立しており、国家間の戦争の絶えない土地柄である。
私が連れてきた奴隷は、その戦争によって滅んでしまった国家に存在した、何処かの町の住民たちである。本来ならば敗戦国となった(滅んでしまった)国が買い戻す事になるのだが、国自体が滅んでしまってはそうも言ってられない。
結局、奴隷身分のままコロラド王国など周辺国家に売られてしまい、そのままここまで連れてこられたわけだ。なお、戦争奴隷には、神殿関係者も奴隷になってしまうが、回復魔術が使える修道士と修道女は真っ先に戦勝国の軍が購入してしまっている。回復魔術が使用できる人材は貴重なので、そうなってしまうのは致し方ないとは思うが・・・・。
そのため現在、バティスティア聖国に派遣依頼を出しているが、こんな辺境の山奥へと来てくれる人材はいないらしい。
そこで活躍するのがお薬屋さんであり、現在このダンジョン村の中で最も忙しいお店でもあるのだ。
「いらっしゃいませ!あっ!ヒカリちゃんたち、お久しぶり?」
「4日ぶりだけどね、元気してた?アイナ?」
「うん、元気にしてたよ。この村に来てからは充実しているし?・・・・身分は奴隷だけどね。
それにしても相変わらず、ヒカリちゃんたちはメイド服なの?」
「戦争によって奴隷にされたんだから仕方ないよ。それに、頑張れば頑張った分、この村で奴隷から解放されるからね。ここは生活するにはちょっと不便だけど、ダンジョンがあるから魔物大暴走の心配はしなくてもいいしね。まあ、ダンジョンから溢れてきた時はそうではないけど、冒険者も入りだしたから、当分の間は大丈夫じゃない?
あと・・・・・・、私たち。あと神官の仕事以外は、メイド服に慣れちゃったから。普段着ですら、すでにこれ以外ほとんど持っていないしね。」
人が途切れたところで店に入り、普通のお友達のように駄弁る私たち。ちなみに彼女たち、現在の名前をアイナ・アズサと呼ぶが、本名はそれぞれ水門藍那と廣崎梓といい、元鷺宮学園2年1組の生徒・・・・・、つまり私とコトリの元クラスメイトである。
そして、私達『ご主人様とメイドさん』の女性陣は、全員そろってメイド服を着用。今は雪が降っているので防寒着をその上に羽織ってはいる。その防寒着は、私たちの義母的存在であるミツハさんの趣味なのか何なのかは知らないが、デザイン的には鷺宮学園の制服だったセーラー服みたいな感じのコートになっている。男2人は、普通の防寒着であるコートなんだけどね。
「ところで、アズサの方はどうしているの?」
「アズサは、義父さんたちと一緒に裏でお薬作っているよ。私はお薬作る才能がなかったから、昔からこうして売り子をしているけど、アズサの方は、お薬づくりの才能があったからね。今ではこの店にはなくてはならない人材だよ。」
ちなみに、この2人を引き取った薬屋の夫婦には、子供だ出来なかったみたいで、2人を保護して引き取る際に義親子関係を結んだんだそうだ。血のつながらない義親子ではあるが、今では本当の親子として生活。戦争奴隷として売られた際も、4人纏めて売られる事を望んだらしい。
なお、戦争奴隷になってしまった場合、こういった要望は極力かなえられる傾向にある。それは、買い取った奴隷商人側の取り決めらしく、自己責任で奴隷になったわけではないので、極力家族単位で売られていくんだそうだ。一部、特出した能力を持っている場合は、そうではない場合もあるらしいが・・・・・。
「ところで、お薬の生産量は大丈夫?」
「ん~~~~。何とか材料である薬草関連は、村長さんから優遇してもらっているから、そこそこの在庫はあるけどね。でもこれ以上、冒険者が増えると、・・・・ちょっと厳しいかな?
そういえば、村長さんから聞いたんだけど、ヒカリちゃんって、大量にお薬を持っているんだよね?
足りなくなったらヒカリちゃんを頼れと、村長さんからも言われているんだけど、本当に売るほどお薬を持っているの?」
そういえば、ここの村長さんである砦の隊長さんにも、オークドの町の町長になったリキュードさんにも、薬屋に関しては優遇してやってくれと言われていたのを思い出す。他のお店はそうではないが、薬屋だけは、現状ダンジョン探索においての要的存在だからだ。
まあ、優遇といっても、適正価格の1割で売り買いする事にはなっているが・・・・・。
「製品としてのお薬もあるし、材料の薬草もたっぷりあるよ?どれが欲しい?」
「ん~~~~~。そうだね~~~~~。」
実は、アイナはこの薬屋の仕入れも担当しており、独断で何でも仕入れをする事も可能なんだとか。つまり、お薬を作る事は出来ないが、物の売買に関しては、家族で一番才能を持っていたりする。そのため、この薬屋の収支計算や切り盛りなどは、すべてアイナに任せられているみたいだ。
で、4種類の液化薬(安眠液化薬・生命力回復液化薬・毒付与状態回復液化薬・魔力回復液化薬)を、樽で3樽ずつ注文を受けてしまいました。
結構な金額だけど、大丈夫らしいです。10日もあれば、元金を回収できるらしい。
あっ、そうそう。
食料はともかく薬草関連は、この村の中で地産地消できる環境ができないかと、相談を受けていたのを忘れていた。この際だから、作ってしまおう。
「ここの村長さんにも、オークドの町の町長さんにも頼まれていた事なんだけど、このお店の裏庭に薬草園、作ってみない?」
「薬草園?この気候でできるの?薬草の中には、温暖な気候じゃないと育たないモノもあるよね?」
「薬草園って言っても、亜空間の中に作るからね。気候の設定も思いのままだよ。今だったら、格安で創ってあげるけど・・・・・どうする?」
ハクトたちが暮らしているあの空間を、何処かの扉の先に作るだけなので(私に対して言えば)結構簡単なお仕事だったりする。実は、お薬を大量生産している私は、ハクトや亜空間の中で暮らしている魔物たちにお願いして、お薬の材料を育てて貰っている。そういった事が得意な植物系の魔物が、私が持つ亜空間の中にたくさん暮らしているからね。
お薬づくりに必要な聖水は、私自身が簡単に作る事ができるからね。そして格安と言っても、将来的にはこの村の財産みたいになるので、差額に関しては村の予算に請求できると言っていた。それでも、安くしてくれるとありがたいとは、村長さんの言だが・・・・。
実際この作業に関しては、現状ほんの一握りの人材しか出来ない事なので、私の言い値という部分が多々存在している。今回は、材料もたっぷりとあるので、実はただ同然で制作可能だったりする。
「ん~~~~。そうだね~~~~~。今後の事もあるし、私たちの家族はたぶん、この村に骨を埋める覚悟もあるしね。奴隷から解放されても、いた町に戻る気は更々ないし?
自前で素材を入手できるんだったら、おスリの価格も安くできるから一石二鳥になるしね。という事でヒカリちゃん。その話、お願いしてもいいかな?」
「はい!承りました。では早速、創っちゃいましょう。」
という事で、薬屋の裏庭へと行き、アイナの指定した納屋の扉の先に亜空間を創る私。
創った亜空間の使用方法を説明し、(ただ同然だけど)製作費として100万テラ(言い値で設定した金額の1割程度)を貰ってから砦に向かい、村長さんに面会をする。もちろん面談の際に、薬屋に薬草園と敷いての亜空間を創った事を話し、残りの代金をもらい受ける。なお、この亜空間自体は、薬草園だけではなく、食料品生産場としての役割もあるため、アイリの暮らすお薬屋さんは、今後八百屋としての機能も併せ持つようになる。
こうして地上に出てから3日後の午後、諸々の雑事を終えた私たちは16階層に足を踏み入れた。




