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異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【第1章】トンネルを抜けたら異世界でした
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【01-03】異世界を楽しもう!

「いろいろと考える事はあるけど、とりあえず私たちが異世界に来てしまった理由付けは、きっと私の実家が経営している会社のグループ内にある、とある特殊な調査機関が行っているだろうからね。

巻き込まれた?私たちが、考える事ではないと思うし、考えるだけ無駄だと思う。

考えてみたところで、現状が好転して元の世界に戻れる保証は、これっぽっちもないからね。」


そう言って私は、右手の親指と人差し指で、指の隙間が1センチほどの『C』の形を作って目の前に掲げる。それに対し、寿李は、少しおかしかったのはフ、フ、フと笑みをこぼし、私のそれにつられて笑みをこぼす。

それはさておき、どの世界にもたいていは、何かの名称ないしシリアルナンバーないしが付いているものだ。当然、地球のあるアノ世界にも、そういったモノが付いているはずである。


ただ、私たちには認識されていないだけで・・・・・。


閑話休題。


「そんな事考えるよりは、せっかく異世界に来たんだ。理由はともかくとして、この世界を楽しまないと損だよね。一体どんな事があたしたちにできるのかも、まだわかっていないけど。」

「・・・・・っそうだよね。異世界を楽しまないと、もったいないよね。地球に戻れるのかどうかは、関係なしに・・・・ね!」


寿李が、少し暗くなった空気を変える感じでこう切り出してくる。いつまでもウジウジしたくない私も、寿李の提案に素直に乗っかる事にする。

寿李の言うとおり、そんなくだらない事は、何処かの専門業者に任せておけばいいのだ。私はそういった専門家ではない、ただの巻き込まれた異世界トリッパーの1人でしかないのだから。

・・・・・今のところ。

なので私も、考えを楽観的な方向に改めていく。


「・・・・・そうだよね。せっかくの異世界だもの、楽しまないともったいないよね。

できれば、この世界が、恥丘の中世程度の文明の発展度で、剣と魔法と魔物の世界だとなおいいんだけど。そのあたり、どう考える?寿李?」

「・・・・そうだね。・・・・・・まあ、魔法はともかく、剣と魔物の世界なのは確定だよね。下にいるあの犬もどきを見れば。」

「たしかに。あの犬もどきは、剣と魔物の世界じゃないと、絶対にいない類の動物だ。あんなのがいるとなると、ありえない大きさの巨大生物とか、トカゲの親分とか、ぎゃうになんでも溶かす軟体生物とかは、確実にいるだろうね・・・・・、この世界。」

「あとは、ケモミミ・尻尾の生えているモフモフな獣人様とか、耳の長いエルフ様とかいそうだよね~~~~。」


そんなどうでもいい会話を繰り広げながら、時間を食いつぶしていく私たち。現実逃避ともいう、どうでもいい時間つぶしだ。


「それはいいとして、寿李。使える・使えないはともかくとして、現状ある所持品を確認しておこうか。」

「そうだね。今のところ何が出来て、何ができないのかを確認するのは、とっても大事だね。

では、まずは服装から・・・・・。と言っても、今着ているのが学校の制服であるセーラー服だね。」


寿李の確認の声に、着用しているセーラー服を眺める私。

現在の私たちの服装は、鷺宮学園の女子用制服であるセーラー服。

セーラー服は全体が白色の生地でできており、そこに黒色のセーラー襟とカフス。両方とも3本の白線入り。スカーフの色は学年で異なり、私たち2年生は赤色のスカーフを襟に通している。

セーラー服の下には、学校指定のハイネックタイプの黒いインナーを着込んでおり、その下には下着とっしてキャミソールとブラを着用している。

ちなみに夏服は、同じく白色生地の半袖セーラー服、春と秋の少し肌寒い季節に着るのは、生地の薄い長袖セーラー服になるが、今は冬なので持っていない。ちなみにデザインはすべて同じである。

下は、膝丈サイズの冬用スカートを履き、黒色の防寒タイツを履いている。冬以外の季節は、学校指定のロングニーハイとなるが、雪山に行くという事で持ってきてはいない。

これに、歩きやすい踵の低い黒革のローファーが、鷺宮学園の女子用制服である。なお、例えお金持ちであろうとなかろうと、学校指定のメーカー生地(というか、制服事態学校にある購買でしか販売されていないが)でないといけない。

まあ、いろいろとあるが、一番の目的はイジメ対策だ。私は別にこんな些細な事は気にしないが、お金持ち(特に成金組)には気にする者が多いらしく、ブランド物のオーダーメイドだと自慢するバカさんもいるのだ。


まあ、そんな事はどうでもいいとして、現在この白いセーラー服は真っ白ではなく、先ほど落下した事であちらこちらが少し敗れており、またちょっと汚れも目立ってきている。


「・・・・このセーラー服の汚れ具合や破れ具合からするに、このセーラー服にはゲーム的な『自動修復』とか、『汚れ防止』みたいなモノは付与されていないね。つまり、破れたら修復しない限り破れたまま、汚れたら選択しない限り汚れたままという事だ。

こうなると、早急に何か着る物を調達しないと、『盗賊さん、いらっしゃ~~~い』みたいな格好になってしまうね。」

「それだけは避けたいよね~~~~~。でも、今あたしたちがいる場所的に、服どころか、モノを買える雰囲気ではないよね。」


私が、着用しているセーラー服の状態を、確認した限りの事でこう推察すれば、コトリも周囲の状況から、こう推察を返してくる。

私たちは今、何処かの森の中、・・・・・それも結構深奥あたりに生えている大木の枝の上にいるのだ。50m近くあるある枝の上から地面を見渡しても、人里どころか街道1つ発見する事ができない。

つまり、人っ子1人いない何処かの森の中で、絶賛迷子中なのだ。・・・・・私と寿李は。


まあ、いいや。


「では次に、持ち物検査だね、寿李。

私の今の持ち物は、神を纏めているこのチェックのリボンと、髪留めのゴム。あとはヘアピン数本。

セーラー服のポッケには、現状はメモ帳代わりでしかない生徒手帳と、筆記用具としての3色ボールペン。そしてスマートフォンと、腕に填めているソーラー発電機能付き腕時計。スカートのポッケには、ハンカチとポケットティッシュ。あとは、使う事の出来ない現金とカード各種の入った財布。

あとは、首にかけているチェーンには、十得ナイフと小型のサバイバルキットがあるね。

これだけだね。寿李はどんな感じ?」

「あたしも、光莉ちゃんとおんなじかな。

そして2人して、十得ナイフと小型のサバイバルキットはあるのに、飴玉1つポッケに入っていない事実。これはいかに?」


セーラー服に限らず、女子の服装はとにかくポケットが少ない。中には、ポケットのない服すらあるのだ。ドレスに限らず、普段着として着用する服にすらね。なお十得ナイフは、普段待持ち歩く事なんてしていないし、ポッケに入れた記憶すらない。つまり、私が知らないうちに、実家の誰かがセーラー服のポッケに忍ばせておいたモノだと推察する。


そんな女子の服装の内、現在着用しているセーラー服には2つ(胸にある小さいポケットと、内ポケット)、スカートにはポケットが1つあるのみ。どのポケットも小さいので、あまりモノが入らないのが悩みの種である。

そんな数少ないポケットに入っていたのは、2人とも同じでこれだけだ。


ちなみに財布の中身は、(今の現状では)金属素材としての価値しかない100円玉や10円玉といった硬貨類が、合わせて数十枚、各種カード類や日本円のお札。なお、お金持ちである私と寿李は、あまり現金を持ち合わせてはいない。現状持っている厳禁も、ちょこちょことした(買い食いなどの)買い物に使用する程度であり、たいていのモノはカードで購入してしまう。

そんなこんなで実際問題、硬貨以外はこの世界にいる限り、何も役に立つ事はないだろう。硬貨に関しても、その利用価値は素材としてであり、貨幣価値は微塵も存在していない・・・・と思われる。

千円札やカード類は、まだ金属素材の価値がある硬貨以上に、糞の蓋にもならない、まさしく紙くずだ。まだお札の方は、尻拭き紙くらいにはなりそうなので、価値があるといえばありそうだが・・・・・。


そして最後に、まったくではないが、今のところ価値を見出せないスマートフォン。

もちろん現状では、電波がないのでほとんどの機能が使用不能だ。一途の望みをかけて開いてみた地図アプリも、地球の地図が表示されていたので使い物にならない。もちろん、アプリ購入画面も、電話やメール機能も使用不能である。

唯一使用可能だったのは、オンラインではないゲームで、すでにスマホにインスール氏てあるゲームと、写真や動画くらいしか使う事ができない。また、充電する事は腕時計があるので何とかなるが、現状では写真や動画を使用して何かをするくらいしか使い道がない。


そして最大の問題が、2人して食べ物を持ち歩いていなかった事。そのため・・・・。


「これは早急に、何か食べ物を調達しないと、早々と餓死確定だね。」

「そうだね、寝床よりも先に、食べ物を何とかしないとね。・・・・・ところで、今あたしたちがいるこの木には、果実が生っているのが確認できるのだけど・・・・・。あれって、食べれるのかな?」

「あの謎果物?」

「そう、あの謎果物。」


食べ物の確保の話をしていると、寿李が、枝の先にある果実を指さして、こう質問してくる。

指さした先にあった果実は、メロン大の大きさのボール状の果実を、ブドウのように房なりに生っているこの大木の果実・・・・というか、果物だ。

とりあえず、枝をよいしょよいしょと跨いだ状態で移動しながら、謎果物のところまで行く私。木登り行為は、寿李よりも私の方が得意なので、こういった場合は私が先陣を切るのが、2人の暗黙の同意でもある。

とりあえず謎果物を、一房一番熟していると思われる物をもぎ取って、再び元の場所に戻ってくる。と言っても、メロン大の粒が50個ほど房になっており、一房当たりの重量も20㎏以上ありそうだ。


このまま房をもいでも、たぶん重量を支えきれずに下へ落してしまいそうだ。房だけを落とすならともかく、私事枝から落下すれば、怪我どころでは済まないだろう。

そんな事を考えた末、セーラー服からスカーフを抜いて、謎果物の房と枝を固定し、十得ナイフで切り落とす。今の状況下ではこの十得ナイフが一番重宝している事実。あと小型とはいえ、サバイバルキットもね。

やっぱし、サバイバル生活を始めるには、現代の便利器具(電子機器を含む)よりも、こういったマニアックなアナログ製品の方が使う事ができるんだよね。


なお、この謎果物をもぎ取る際、予想していた通り成っていた枝が反動で揺れて、近辺に成っていた房が10個ほど(一つの枝に20個ほど房成していた)落下していったのだから。その反動で、私が乗っている枝も結構揺れてしまったが、何とかしがみついて事なきを得ている。

そして、地面に落下した謎果物は、木の幹回りを徘徊していた6本足の犬だか狼だかのお腹に納まった。あの謎動物が食べているのだから、最低限即効性の毒などは入っていない模様。

さて、両手が塞がるのは何かと不便なので、小型のサバイバルキットの中にあるワイヤーを使って背中に謎果物を固定。そのまま再び枝をよいしょよいしょと跨いだ状態で、寿李のもとまで移動する。


寿李のもとまで移動すると、寿李の持っている十得ナイフと小型のサバイバルキットも利用して、もいできた房を木の幹に固定。房になっている粒の1つを十得ナイフで切り落とす。

まずは、味見・・・・ではなく、毒見として、いろいろと検証をする。房から粒を1つ取り、十得ナイフで切り落とし、分厚い皮をむいていく。

向いた感じ、メロンやパイナップルのように固い皮なのにその中身は、ミカンやグレープフルーツのように薄皮で包まれているという、なんともな果物そのままの形状である。

そして、そんな謎果物の中身の色は・・・・・、とりあえず毒々しい感じの色合いではなく、スイカのような鮮やかな朱色。匂いはリンゴの大様王林のように香ばしく爽やかだ。

そんな謎果物のお味はというと、桃と梨とメロンを絶妙な感じでブレンドした、この世のものとは思えないような香ばしい味で、1房でお腹いっぱいになるという不思議な果物だった。もちろん、枯渇していた水分も1房で補給完了するほどたっぷりとあった。


あとで知った事だが、この謎果物の正体は、『神々の至高の果物ゴッディーズフルーツ』という、この世界では最高級に分類されている果物の王様だった。お値段はなんと、1粒で一般家庭4人が1ヶ月間(この世界での1ヶ月である40日間)暮らしていけるほどの高額だったのだ。

そんな果物を私と寿李は、この森で暮らしていた間、主食として食べていたのだった。

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