【05-02】オークド村入城
「【集団一斉転移】」
私の転移魔術で、視界は一瞬で破壊された橋の向こう側で、魔物が溢れ返っている戦場の端っこに切り替わる。
先ほどの実験と同様に、転移した魔法陣の範囲内にいた魔物たちが一斉に、その発動した空間から追い出される。今回はいきなり出現したようなモノなので、真下にい賜物たちは逃げ場をなくして押し潰されていくといった光景も見受けられる。
「よし!第1段階クリアー!オークド村の城門に向けて、微速前進!」
隊列を組んだ馬車は、ガイストさんの指令のもとに、ゆっくりとオークド村の城門へ向けて進みだす。なお、街道の道筋関係なく、ひたすら直線距離を取っている。どうせ街道など関係なく、魔物たちによって破壊されているのだ。
何処を通っても同じである。
ゆっくりと、魔物の波を押し分けて突き進む馬車の隊列。
シールドの境界線では、無理やりシールドが押し進んでいくために、押し出された魔物たちが順次押し潰されてその命を刈り取られていく。とってもスプラッタな光景が、視界いっぱいに繰り広げられているのは、・・・・ちょっと吐きそうな光景である。まあ、戦場に行けば、こんな光景は日常茶飯事なのだが。
この影響なのか何なのか知らないが、ものすごい抵抗にあっているかのように、馬車が進む速度が落ちてきているようだ。
「・・・・このまま行くと、いずれは進軍速度が止まりそうですね。」
「・・・・そうだな。何か対策を打たないといけないな。とりあえずは・・・・、魔術部隊、一斉斉射!」
ガイストさんの号令で、周囲を固めている馬車から一斉に魔術攻撃が開始される。
「では私も。【広範囲絨毯爆撃】!」
前方200ⅿほどの扇形の範囲内に、各種属性の魔法弾が無数に乱射されていく。私が放った魔術により、60°・約200ⅿ先までの範囲が無慈悲に絨毯爆撃され、その範囲内にいたあらゆる魔物がにいた細切れになった肉片へと変わっていく。
「もういっちょいきます。【火災旋風】×5!」
続いて発動させたのは、大火災などでおなじみの火災旋風。それも法範囲を一気に焼き尽くせるようにするために、合計5つの火災旋風が発生し、オークド村を中心とした円運動を行い魔物たちを蹂躙していく。
ぶっちゃけ、目の前にある肉片を灰にするためにやった事だが、その副次的効果で取り囲んでいた魔物の約3割が灰燼に化した。
「いつ見ても、大雑把だな・・・・・、ヒカリちゃんは。」
少し苦笑気味に、ガイストさんが遠い目をして呟いた。
あたり前でしょ?
だって、私。・・・・・・どちらかと言えば脳筋だから。細かい事は、あまり得意じゃないんですよ?
・・・・・・これでも。
馬車の隊列は、魔物たちを蹂躙しながらゆっくりとオークド村へと近づいていく。
すでに戦闘を始めてから30分ほどが経過しているが、進んだ距離はわずかに200ⅿほどだ。私たちの進軍に呼応して、オークド村からも攻撃が来ているが寝耳に水状態で、あまり効果はないように見受けられる。
先ほど少し一掃した場所には、すぐさま魔物たちが押し寄せて再び黒山の人だかり状態になってしまっているが、いったい何処からこれほどの魔物が押し寄せてくるんだろうか?
少し疑問であるが、今はオークド村へと入る事を優先しよう。
「本当は、直線距離で1発、大きなモノをやりたいんですがね。それをすると、オークド村まで巻き込んでしまうので、少し考えモノです。」
そんな事を呟きながら私は、再び火災旋風を5発発動させて、を前方を一掃させてから、そのまま5方向に向けて進軍させていく。そして進路上には、一時の空白地帯が出現するが、すぐさま魔物に埋め尽くされてしまった。
「本当に、何処からくるのでしょうか?この魔物たちの軍団は・・・・・・。」
「・・・・・そうだなあ。ここまで来ると、魔素溜まりが発生しているかもしれんな。、・・・・それも、特大のやつがいくつか。それとも、未知のダンジョンが暴走を起こしているかだ。」
「魔素溜まりって何ですか?ダンジョンの暴走は、なんとなく理解できるのですが・・・・・。」
私は、魔物を排除しながらガイストさんに質問する。
すでに魔物たちに魔術を当てるのは、ルーチンワークと化している今日この頃だ。広範囲に、様々な属性の魔術を無造作にばらまきつつ、時たまどでかいモノを数カ所にお見舞いしてあげるという徹底された運用方法である。さらに言えば、全員で魔術を放ち、その過程で発生した様々な魔物たちの肉片や死骸を、火災旋風を使って、一気に灰燼に化していく作業も同時に行っている。
「魔素溜まりが発生するとな、通常ならばその魔素溜まりが結晶化して、その結果ダンジョンコアを創る。そして、その創られたダンジョンコアは、動物や魔物によって巣穴に運ばれた後、もしくは、洞窟内でダンジョンコアとなって洞窟がダンジョン化する。その後ダンジョンとなった巣穴は、周辺の穢れや淀み、発生した魔素溜まりを取り込みながら成長していく。
これが、洞窟型ダンジョンができる過程だ。他にもフィールド型や天空型など、確認されているだけでも10種類ほどのダンジョンの区分が存在するが、今は関係なので割愛するぞ。
だから、ダンジョンができた場所には、穢れや淀み、魔素溜まりが発生しなくくなって、結果的に浄化された綺麗な土地ができる。これが理由で、たいていの大きな町の近くや町の中には、必ずと言っていいほどダンジョンが存在している。」
「つまり、町の近くや町中にダンジョンを取り込む事によって、結果的に安全を買う事ができるといってもいいんですね?」
「ああ、そう思っていてくれても差し支えないな。そして、そのダンジョンを利用するという事は、ダンジョンに入って中で発生する魔物を討伐するという事になる。」
この話を聞くに、この世界での町・・・・・・・、すなわち安全な土地というのは、ダンジョンが近くにないといけない事になる。ダンジョンによって、周囲にある穢れや淀み、発生した魔素溜まり、当を取り込んでくれる事によって、結果的に人が済める土地が出来上がっていくのだから。
「ここからが本題だ。
ダンジョンは魔素溜まりからできる。それはすなわち、魔素溜まりから魔物が生まれるという事だ。で、ここで問題になるのが、ダンジョンにならなかった魔素溜まりだ。
ダンジョンコアになってしまった場合は、その場に放置されていても問題はない。それを中心にフィールドダンジョンに成長していくからな。しかし中には、ダンジョンコアにならなかった魔素溜まりが存在しているんだ。
こいつが厄介でな。
ダンジョンコアになってしまえば、穢れや淀み、発生した魔素溜まりを吸収してくれるありがたい存在となる。しかしダンジョンコアにならないと、今度は逆に周囲に穢れや淀み、魔素溜まりをどんどん吐き出していき、結果的に魔物が大発生してしまい、今回のように魔物大暴走が起こってしまう。」
「という事は、今回のこの魔物大暴走の原因は、次の3つだとガイストさんは考えているんですね?
1つ目・・・・。
ダンジョンコアになりそこねた魔素溜まりがオークド村の近くに存在している。その魔素溜まりから、大量の魔物が溢れ出している。
2つ目・・・・。
オークド村周辺にあるだろう未知のダンジョンから、中のキャパシティを超えた魔物が溢れ出している。
3つ目・・・・。
先に述べた事が複合的に発生し、結果的にこの状況になってしまっている。
そのため、(排除方法はいろいろと考えられるが)その原因を排除しない限り、何時まで経っても魔物大暴走は終息しない。」
「まあ、そういう事だな。しかしながら、何をするにしても、まずはオークド村まで行かない事には、今後の計画を立てる事は無理だな。」
「そうですね。とりあえずは、オークド村に入らないといけませんね。あと300ⅿくらいかな?やっと壁が見えてきています。」
「本当だな。やっと村を囲む壁が見えてきたな。・・・・・しかし、結構やられているな。しかしあの壁は、農地を囲んでいる第3城壁だからな。集落を囲んでいる第1城壁が崩されていない事を祈るしかないな。」
そんな会話をしながら魔物たちの殲滅作業をしていくうちに、村の壁まで残り300ⅿ付近まで近づいたようだ。ここまで600ⅿほど進むのに、さらにむの1時間ほど時間がかかっている。私たちの魔法部隊の約半数は、魔力切れを起こして順次魔術を放てなくなっているため、進軍速度もそれに比例して遅れ気味だ。
もちろん魔力回復液化薬によって魔力の回復をしているが、全く追いつかない状況なのだ。さらにいえば、魔力回復液化薬を含めた各種液化薬には、『1回服用後は30分間3以上開けて服用しないといけない』という使用制限がある。これを守らないと回復どころか液化薬中毒を起こしてしまい、命の危険にさらされる事になる。
そのため、連続服用する事ができないため、結果的に魔力枯渇状態になってしまうのだ。
魔物の山の間から見え隠れしている壁は、ところどころ崩されており何とかその体裁を保っている感じだ。しかし、崩されている場所から、村の中へと魔物が入り込んでいっているみたいだ。
なお、ガイストさんの話では、開拓村であるオークド村特有の事情故、城壁は3重になっているらしい。一番内側に、基礎となった砦の城壁があり、これが村の最終防衛ラインである第1城壁となる。その外側に集落が築かれ、その集落を取り囲んでいるのが第2城壁であり、その外側に農地や遊牧地が広がっている。そしてそれらを取り囲んでいるのが、今現在所々で崩れかけている第3防壁となるのだ。
なお、オークド村特有の事情とは、先ほどから話に出てきているダンジョンが、村の中もしくは周辺にない事だ。そのためこの村では、常に魔物の脅威と隣り合わせで生活している事になる。
今回のこの魔物大暴走が『未知のダンジョンから溢れた魔物が原因だった場合』は、そのダンジョンの場所によってはこの特有の事情がなくなる事になるわけだ。
「ここからが本番ですね。大きな魔術が使えないので、大量虐殺ができません。」
私は、困ったもんだと言った感じでこう呟く。
「大量虐殺って・・・・・・、ヒカリちゃん。確かに、確かにあっているんだが・・・・・。」
私の呟きを聞いたガイストさんが、なんだかいたたまれない感じでこう呟き返した。
「・・・・・大量虐殺は出来ませんが、なるべく目の前の魔物を排除しましょう。あとは、ついでに壁の補修と補強もしてしまいましょうか。【メイキングゴーレム】!」
そう言いながら私は、いつか倒したか忘れた、ロックスライムの核を加工して作った、ゴーレムの核をいくつか取り出して、それを地面にばらまいて魔術を唱える。
バラまかれたゴーレムの核を中心に、魔術の発動によって周囲の地面が盛り上がっていき、全長5ⅿほどのロックゴーレムが核の数だけ生み出された。
「ゴーレムちゃんたち。魔物を踏み潰しながら崩れた壁に取り付き、壁と一体化しなさい。その後は周囲の地面を使って壁を補修・補強しなさい!」
私の命令に従い、ロックゴーレムが壁際に散らばりながら魔物を踏み潰していく。そして壁の崩れた場所に辿り着いたロックゴーレムは、そのまま壁に取り付いて一体化してしまう。それが、崩れかけていた壁に順次行われていき、私達一行が城門に辿り着いた頃には元通りの壁がそこに復元された。
その後は、魔物が壁を切り崩すたびに、瞬時に壁が修復されていく光景が、あちらこちらで見受けられるようになる。さらに、壁から5ⅿ5ほどのロックゴーレムが時折出現しては、壁に取り付く魔物を一掃して歩いていくのだ。
「ヒカリちゃん。いくらなんでも、自動攻撃・自動修復を同時に行うのは、やりすぎだと思うんだ・・・・・。あたし。」
その光景を見ていたコトリから、こんなお叱りの言葉を頂いてしまった私。
「でもね、コトリ。ああしておかないと、ゆっくりとお話もできないでしょ?ちなみに、あのロックゴーレムの動力は、すでに私の魔量ではなくて、この周囲に溢れている魔素を自動的に魔力に変えて行っているからね。半永久的にこの防御システムは作動しているよ。」
私の追加報告に、周囲にいた人すべてから、呆れた感じのため息が聞こえてきた。
「そんな事よりも、壁の外はこの壁と融合したゴーレムちゃんに任せて、壁の中の魔物の殲滅をしていこうか。みなのもの!しゅつげきであ~~~~る!」
私はそう言って、脳筋野郎どもに仕事場を与えたのだった。




