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異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【第3章】異世界に来てから最初の町です
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【閑話】或る日の鷺宮学園(その3)

12月26日。


今日は終業式だったのだが、我ら鷺宮学園高等部1学年の生徒にとっては、記念すべき大切な日でもある。それは今晩、デビュタントボールが開催されるからだ。


デビュタントとは、フランス語で『初心者、初舞台の人、年若い、若々しい』の意味であるが、西欧諸国、アメリカ大陸諸国、オーストラリア、フィリピンなどのキリスト教国で、18~20歳の上流階級や貴族の娘で、初めて正式に社交界にデビューした者を指す言葉でもある。

しかしわが日本では、この時期はこの年代の者たちは受験などで忙しいため、わざと時期をずらして高校1年の16歳の冬に行われる事になっている。

なお、本来のデビュタントとは、女子は18歳になると一人前のレディと認められ、恋愛結婚の対象になった事を意味するからだ。それが、長い年月をかけて、現代のデビュタントボール(デビュタントの初舞台となる舞踏会)では、チャリティーイベントとして行われている事が多くなった。

男性は黒の燕尾服に白の手袋、女性は白のイブニングドレスに白のオペラ・グローブ(肘上まである長い手袋)着用が義務で各自が服装を用意するが、女性のティアラは運営者側から事前に贈られ美容院で落ちないようにセットされる。また、母親はダーク(黒で避ける)な装いの正式なイブニングドレスを着用し、主役である娘より目立たないようにする。


閑話休題。


本日の会場である日本武道館。


そんなデビュタントボールの控室では、日本中から集まった級友やセレブ令嬢たちの、華やかでドロドロ下親睦会?が開かれている。さすがに、何処かのパーティーのテンプレの如し、真っ白なドレスにわざとコーヒーやらソフトドリンクやらを吹っ掛けるこぼすといったイベントは起こらない。

それをするという事は、自分がされても文句を言ってはいけないのだから。

さらに今年のデビュタントボールでは、私をはじめとした特異体質を持っている者がわんさかかといるのだ。この人たちにその行為が見つかると、あとで何をされるのか解ったモノではない。


「こんばんわ~~~。彩子あやこ様。お久しぶりです。」

「久しぶり~~~、光莉ちゃん。元気してた?」


幼少期からの旧知の中である、現皇太子殿下の長女彩子様。将来は、私が仕えるべき君主様でもあるわけだが、本人たちにはそんな事は一切関係のない大親友である。その後、かる~~~く近況報告などを行ってから、私のお友達を紹介する。中には平民勢(お金持ち軍団ではない者たちを差すので、身分上の言葉ではない事をここで注釈しておく)も多く、普通ならば話す事など一生ないだろう者たちに対し、気がねなしに話しかけてくる彩子様。最初過緊張していた面々だけど、時間が経つにつれて仲良しこよしになっていき、最終的にはそれぞれの取り巻く男連中の愚痴大会へと発展していく。

その後は話も180°変わり、どこそこの店の〇〇がおいしかったとか、あそこのお店で売っていた服を、明日以降に買いに行くだのとか、3日間ほどある自由時間についてのお話で盛り上がっていく面々。そんな街歩きに、彩子様も同伴する流れになったのは、・・・・・当然の結果の必然であろう。


ああ~~~~~、何処にいても、女子トークはこんなものだよね~~~~。

あと、彩子様のSP。・・・・・・2日後は地獄を見るね。たぶん一緒に街歩きする私に、さり気なく接近して警護のお手伝いを頼みに来るのは、・・・・まあいつもの事なので諦めているが。


日本中から集められた8万本の花で作られたフラワーアレンジメントが飾られ、午後10時に控室でダンスシューズに履き替えた私達デビュタントたちのフォーメーションダンスが始まる。なお今年のデビュタントでは、私のような旧大名家の子息・令嬢の他、皇室からも姫様が参加しているため、とても華やかなデビュタントボールである。

そんな夢空間の中で、我ら鷺宮学園の平民勢はとっても緊張をしていたが、反面しっかりと練習してきたダンスを披露できるとあって、無駄に力んでいる姿も見られていたが、概ね大きなポカミスもせずに無事に踊りきっていた。


私達デビュタントたちによるフォーメーションダンス終わると、『美しく青きドナウ』が演奏される。そうすると、ボックス席でシャンパンを飲んでいた参列者も踊りの輪に加わる。その後は、いろいろな人たちとのダンスを楽しみ、天皇陛下や皇太子殿下。総理大臣や、たまたまこの時期に公式訪問していたアメリカの大統領ともダンスをする。もちろん、もちろん、平民組とも分け隔てなくダンスを踊られ(案外誰が平民なのか知らなかったかもしれないが)私たちもまた、有意義なひと時を過ごす事ができたのだった。

なお、デビュタントボールから始まった華やかな舞踏会ダンスパーティーは、夜通し行われて翌朝5時に終了する。

夜通し踊り明かした私たちは、ヘタヘタになって学園が用意したホテルの部屋に入った途端、寝ぼけ眼で寝間着に着替えてベッドにダイブ。そのまま夕方過ぎまで眠りにつくのだった。


なお、このデビュタントで着用したドレスや燕尾服は、そのまま参加者にプレゼントされる事になっている。もちろん用意したのは、今宮家を含む学園内のお金持ち一派だ。そして、プレゼントされたこのドレスは、そのままリメイクされて所有者の結婚式のウエディングドレスとなるのだ。

そのため、鷺宮学園の卒業生の結婚年齢は比較的若く、一番遅い人でも25歳までには結婚してしまう。早い人では、平民でも高校卒業後には結婚してしまうのだ。なお、結婚相手で最も多いのは、3年間苦楽を共にしたダンスのペア同士である。


その日は1日疲れをいやすため、ホテルでゆっくりとくつろぐ私。

翌日は、お友達も面々と、先日宣言した通りに彩子様を加えて、東京を練り歩いていく私たち一行。全員私服姿であり、私たちの中に完全に溶け込んでしまった彩子様は、何処からどう見ても「やんごとなきお方」ではなくそこら辺にいる女の子である。


「まずは、何処へ行く?」

「そうだね。浅草に行ってからスカイツリーに上ろうか。」

「そうなると地下鉄だね。」


そんな感じで、その場のノリと勢いで行動方針が決定されていく。


「そうそう、浅草行く前に、秋葉原に拠ろうよ。」

「やっぱり、オタクを極めるなら、秋葉原と池袋は絶対行くべきだよね~~~~。」


私も会話に参戦し、行きたい場所をさりげなく入れていく。こうして、彩子様のSPは、私たちという乙女パワーの前に全面敗北したのだった。

そして案の定、私に泣きついてきたSPのお手伝いによって、臨時収入をちゃっかりと得るのである。

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