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異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【よこみち】チートな〇〇と万能聖女様(その1)
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(6)街道の先にあるモノ

狭い街道を歩く事数時間。

そろそろ夕刻っといった時間に、前方で街道の脇にひっくり返っている馬車を発見する。現在地から見れば、だいたい500mくらい先かな?しかし、500mの先の様子が、目の前にあるみたいに見えている事から、この世界に来てから特段に視力がよくなっている気がする。

・・・・・・たぶん、視力関連のスキルが影響しているとは思うが。

どうせそちらに進んでいるので、慌てずに警戒しながら馬車に近づく俺たち4人。

ひっくり返った馬車まで残り50mといった場所で、馬車から10匹のオオカミがのそりと出てくる。すべてのオオカミが口の周囲を血で染めているので、あの馬車の所有者たちは全員、オオカミにおいしく食べられてしまったんだろうと推測する。そのうえで・・・・。


「なあ、マコト。今の状況から考えるに、あのオオカミたちにとって俺たちって何?」

「ん~~~~~。あの様子だと、食事の後だろうからね。ノコノコ現れた『おいしそうなデザード』っていうのが、一番しっくりくる表現だよね。ボク等にとっては、手加減を体に覚えさせるための、ちょうどいい戦闘相手?それとも・・・・・・・経験値?」


そうだよな。その表現が、双方の状況を差し示すのに一番いい表現だよな。そんな事を考えていると、マナミちゃんがツンツン俺の肩をつついて、何やら主張してきた。


「手加減の練習っていうのなら、私にやらせてくれない?最近マコトちゃんから教わった、攻撃魔術の訓練にはちょうどいい数だしね。」

「・・・・まあ、いいか。肉はともかく、毛皮は売れそうだからな。挽き肉だけにはするなよ。あと、危険だと判断したら、容赦なく手助けに行くから・・・・・ケンジが。」

「俺がか!」

「大事な大事な彼女ちゃんの危機なんだよ!彼氏さんが助け出さないで、誰が助けるの?」


コントみたいな相槌を掛け合いながら、戦闘準備を行っていく俺たち。とは言うものの、今回前面に出るのは、最近攻撃魔術を覚えたらしいマナミちゃんだ。


「じゃあ行くよ、まずは・・・・・【旋風の弾丸ウイングショット】っと。」


最初にターゲットにした一番先頭付近にいたオオカミに、マナミちゃんの攻撃魔術が炸裂する。

ちなみにマナミちゃんも、全属性を持っているマルチな魔術師でもある。まかり間違っても、ただの回復要因だけではなく、その気になれば高位な魔術師を自任できるほどの腕前なのだ。今まで攻撃魔術を習得していなかったのは、ただ単純に習得する必要がなかったから。・・・・・というのもあるが、ゲーム脳感覚で、『回復・支援要員が攻撃魔術までやらなくてもいいんじゃねえ』と思っていたからに他ならない。

しかし、この世界に来てからはその考え方は捨てたようで、回復も攻撃もできる万能魔術師を目指すそうだ。つまり、最低限自分の身は自分で守れるようになるのが目標である。ちなみに、物理的な攻撃手段は、ヒカリちゃんのおかげで最低限身につけている。・・・・・・ここにいる4人全員が。


それはいいとして。


マナミちゃんにターゲットにされた哀れなオオカミ君は、回転を利かせた風の弾丸を、大きく開けた口腔内に直撃を受ける。そのまま体内を突き進んだ風の弾丸は、その威力を殺さずにオオカミ君の尻尾付近から飛び出し、背後にいたオオカミまでをも巻き込んでいく。弾丸の直撃を受けた2匹のオオカミは、弾丸の回転方向に高速回転してその場で爆散する。

なお、2匹のオオカミを瞬殺した風の弾丸は、そのまま威力を殺さずに数百メートル先まで突き進んでn何事もなかったかのように霧散した。もちろんその進路上にあった、あらゆるものをなぎ倒していきながら・・・・・。


「・・・・・・マナミちゃん。」

「・・・・・なにかな?マコト君?」

「挽き肉にするのだけはやめようねって、やる前に念押ししたよね?」


マコトの冷たい視線を受け、明後日の方向を見ながら言い訳を考えるマナミちゃん。そんな俺たちを警戒してグルル・・・・と、唸り声をあげるオオカミ君たち御一行様。


「いくら、これは初めて使った攻撃魔術でも、あれはちょっとやりすぎだよ?マナミちゃん。あれだったら、もうちょっと込める魔力を減らさないとね。オオカミ程度なら、今のよりもだいたい1割程度でもやれるからね。・・・・こんな感じで。

旋風の弾丸ウイングショット】っと。」


マコトが、マナミちゃんにて本を見せる感じで、マナミちゃんが使った同じ魔術を放ってみせる。

先ほどと同じように、オオカミの1匹に吸い込まれていく風の弾丸。同じように口腔内から体内に潜入し、そのまま尻尾付近に飛び出るまでは同じだ。素化し、尻尾付近から出てきた弾丸は、その場で霧散して完全に消えてなくなる。

そして、口腔内と尻尾付近から、大量の血液を垂れ流しながら体を横たえるオオカミ。


「・・・・・と、こんな風に魔術なんてものは、同じ魔術を使っていても込める魔力を調節すれば、どうとでも加減可能なんだから。物理的な攻撃よりも手加減する事は容易だと思うよ?じゃあ、あと7率いるから、ちょうどいい魔力量を覚えていこうか。」

「かしこまりました!マコト師匠!」


ちょっと、コントじみた事をしている師弟コンビ。

マコト曰く、込める魔力の量は感覚で覚えるしかないらしく、これだからこうというモノはないらしい。理由は、人によって保有している魔力量が違っているから。さらに言えば、放たれる魔術によっても、必要最低限発動するための魔力量が違うため、感覚を掴むまではこういった事故?はよく起こるんだそうだ。

そんな感じで、ここにいる7匹を使って、何とかこの魔術に対する感覚は掴む事ができたマナミちゃん。いつの魔術でその感覚が掴めれば、あとは応用していくだけなので他の魔術でも手加減ができるんだそうだ。


「それにしても・・・・・・、酷い有様だな。戦闘直後の廃墟の町を歩いた時のアレよりはまだいい方だが・・・・。」

「そう・・・・・ですね。」


殲滅したオオカミの群れから、使えそうなものだけを選り好みして【アイテムボックス】の放り込む俺たち。マナミちゃんが挽き肉にしてしまった5匹は、マコトがそこら辺の土と混ぜ込んで地中深くに埋めた。

そして、ひっくり返った馬車の周囲を調べれば、人だったらしきモノと食い散らかされた馬の残骸が散らばっていたのだ。


間に合わなかった事に多少の後ろめたさを感じつつ、何処の誰だか知らない者たちに目を伏せ黙祷を捧げていく。黙祷を済ませると、マコトが地面に大きな穴を掘り4人で遺体の埋葬をしてく。ゲーム内だと、そのまま放置すればアンデッドとなって死体が徘徊してしまうためだ。


改めて遺体を確認するが、どれも原型をとどめておらず肘から先や膝から下、そして頭部しか生きていた頃の面影を残している部位がない。肉がついていた部分はことごとく食い荒らされていた。

遺体は10人分あり、そのうち5人は護衛だったようで武装していたのだが、防具は革製だった為か引き裂かれており役に立ったようには見えなかった。そして、散乱する武器は、ことごとくが折れていたりしてすでにガラクタと化している。せっかくの金属製の武器なのに、今使っているワイバーンの骨からできた武器の方が、まだましという状態である。

道端に埋葬し終えた後、マナミちゃんが鎮魂歌を謳って彷徨う霊魂たちを輪廻の輪に還していく。パーティ内に神官係の人材がいる場合は、こうして鎮魂歌を謳い、彷徨える霊魂を鎮めるのも立派な仕事になる。


「助けが間に合わなかったのは残念ですが、仇を取って弔いもしましたので、申し訳ないけれど遺品は貰わせていただきます。」


鎮魂歌を謳い、彷徨える霊魂を鎮めたマナミちゃんは、最後にこう締めくくった。


そして、馬車の物色を始める4人。

馬車は幌付きの大きいもので、荷台には商品が入っていると思われる大きな木箱が8つと、馬車の持ち主達の私物が入っていると推測される布袋が10個。そして野営用の毛布がいくつかと、数日分の食料品(保存食料らしきものの入った包みと、水の入った革の水筒が人数分)が置いてあった。それだけの物資が置かれていても、馬車の中の広さはまだ余裕があった。恐らく休憩するスペースだったのだろう。


全部で8つの木箱があるが、その木箱はそれぞれ大きさや形が異なっている。


8つの木箱のうち、小さめの木箱(小さいといっても、大型のクーラーボックスくらいの大きさはあるが)には、美術品か実用品かわからないが陶器と、使い古した布が詰め込まれている。布地は陶器の間に詰まっているので、売り物ではなく恐らく衝撃吸収材変わりの古いものなのだろうと推測する。しかし、いくら布地で衝撃を吸収していたとしても、ひっくり返ってしまっては意味がない。そのため賞品らしき冬季は粉々ではないがすべて割れてしまっていて使用不能だった。

そして8つの木箱のうち、中くらいの大きさ木箱(大きなテレビ台くらいの大きさ)には、色とりどりの反物と針と糸、あと裁ち鋏と糸切狭らしきものが詰め込まれている。なお反物の肌触りは、絹のような上質な肌触りである。

8つの木箱のうち、大きめの木箱(人1人が中で寝る事ができるくらいの大きさ)には、剣や槍の穂先といった武器が詰め込まれたモノと、色とりどりの宝石などが詰め込まれているモノがあった。

これだけ売っても結構なおカネが手に入りそうだと確信し、木箱事【アイテムボックス】に放り込んでいく。


ここまでは、商品として売り物にするためのモノだろう。

最後に10個の布袋。

この布袋の中には、着替えと思われる衣類と貨幣を入れた袋、鍋や木の食器類と包丁がわりらしきナイフが出てきた。

どうも、このオオカミさんたちに襲撃された馬車での旅の同行者には、男も女も、さらに言えば年齢も結構幅があったらしい。そのため、服のサイズはともかく、全員分の着替えも数着用意できるほどに足が揃っていた。

俺たちは、その中から比較的綺麗な衣類に着替える。学校の制服では目立つだろうし、何よりもそろそろ限界が来ていそうだからだ。特にマコトのセーラー服は、俺の理想とする女性像になっているため、いろいろと大変な事になっているのだ。


まずは、自分のサイズに合った服をチョイスし、売り物であった針と糸を使って裾直しなどをその場で行っていく。

ああだこうだとコーディネイトしていった結果、俺とケンジはそこら辺にいてもおかしくないような、初心者冒険者といういで立ちになる。護衛の冒険者だった者たちの私物には、替えの篭手や防具なども一応あったため、それを拝借。すべて革製品だったが、ないよりかはましといった感じである。そこに、売り物だったロングソードを持ってみれば、歴戦とは言わないまでも、いっぱしの冒険者らしきいで立ちになったわけだ。

マコトとマナミちゃんは、後衛のため、そんなにガチガチに固めなくても大丈夫という事で、旅装束の町娘ルック?になっている。膝丈よりも10㎝ほど眺めで動きやすい丈になっているワンピースに、足元を保護するため、冒険者だった女性のロングブーツを履いている。足のサイズは、何故か2人ともぴったしだったらしい。ロングブーツは膝丈サイズで、足首から膝まで紐で固定していくタイプなので、脱いだり履いたりする際はちょっと面倒くさそうだが、基本的に日中は履いたまま過ごすので関係ないそうだ。宿屋に着いたら、今まで履いていた制服用のローファーで過ごすらしい。

なお、マコトが何やらしていて、ロングブーツを履いていても、中が蒸れないように加工?してあるみたいだ。ちなみにその加工は、俺たちが履いているブーツにも施してある。


「とりあえず、こんなものか。あと、やり残している事は・・・・。」


俺は周囲を見渡して、この場でやり残してあることはないかを確認する。見渡した感じ内容だが、ケンジが何かに気づいたらしく、俺たちにこう提案する。


「そこの馬車なんだけどな。すべて解体して焚きつけにしてしまおう。あと、陶器の入っていた木箱の同じようにして、緩衝材代わりの襤褸布も貰っていこう。」

「・・・ああ、それは気づかなかった。ありがとな、ケンジ。確かに、換装している木材だから、馬車や木箱を解体すれば焚き付けにはちょうどいいな。襤褸布もこれだけの量があれば、いろいろと使い道もあるしな。」

「そうだね。ボクとマナミちゃんはあまり関係内で度、コウタとケンジは武器にしたそのロングソードの整備に必要だと思うよ。」


マコトがいった事も、ごもっともな意見である。確かに武器の整備は、これに命を預ける事を考えれば基本中の基本だ。そのためには、整備する道具も必要である。


「そうだったな。幸いと言っては何だが、護衛していた冒険者たちの荷物に、整備用の道具があったから拝借してしまおう。」


既に日没時刻であり、周囲は薄暗くなってきている。しかし、血が大量に流れた場所にはあまりいたくないので、暗くなった街道を2時間ほど進み、大きな街道の合流点まで歩いて移動する。合流地点から100mほど離れた場所に、少し広めの広場になっている部分を発見。その広場を今日の野営地とする。

野営地に到着したら、マコトは即座に結界を野営地全体に張り、安全を確保する。その後、誰も使っていない事をいい事に、野営地のど真ん中に【アイテムボックス】からテントを取り出して設置するマコト。設置といっても、組み立てたそのままの形で収納してあるため、ただ取り出して地面に置くだけである。

なお、このテントを設置する場合は、これといった固定金具で地面に固定しているわけではない。理由は、とっても重たいから。台風並みの風でも吹かない限り、このテントを飛ばす事は不可能である。

少し遅めの夕食を摂り終わった後、先ほど回収してきた荷物の中から、この世界の貨幣の入った袋を取り出す。


「これの確認してなかったな、あそこでは時間がなかったけど。」

「そういえばそうでしたね。全部合わせると、どのくらい入っているのでしょうか?」


そして、中身をすべて取り出してその数を4人で数えていくのだった。

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