(2)今後についてゆっくりと考えよう
「では、今後の行動方針を軽く確認するぞ。
1つ目。食べ物と水の確保。
これについてはすでに解決済みだ。目の前に湖があるからな。当座はここで釣りでもしていれば、食う事と飲む事には困らないだろう。塩分不足も、岩塩が近くにあるから大丈夫だな。甘味については、しばらくは諦めないといけないとは思うが・・・・・、」
あの時、俺たちが仕留めた事になっているのかな?
そんな状態の巨大魚を解体し、狩るく塩を振って焼いただけの夕食を食べ終えた俺たちは、今後の行動方針について話し合っていく。なお、健二が機転を利かして灌木を回収していなければ、焚き木すらできない状態だった。
「でもさ、持っててよかったよね、この十得ナイフと小型サバイバルセット。まさかこんな事になるとは、光莉ちゃんも思ってもいなかった事だと思うけど。
・・・・そういえば件の光莉ちゃん、何処で何しているんだろうか?」
焚き木に焚かれている日を見ながら、真琴がこう呟く。確かにいつも所持していたこの2つがなければ、いろいろと詰んでいた事だけは確かだ。
「あの子ならきっと大丈夫だよ。私たちと同じ状況だったなら、隣には寿李ちゃんもいるしね。何処に至ってたくましく生きていける子だよ、あの2人は・・・・。」
真琴の呟きに、焚き木の火を使って何やら作業をしている真奈美ちゃんが答える。たしかにあの2人なら、たとえどんな場所にいたって、どうとでもしてたくましく生活していく事だろう。
「まあ、光莉ちゃんたちの事はこの位にしておこう。
で、2つ目の問題は、本日・・・・、場合によっては数日間の寝床についてだ。今日については、このままここで交代で眠るとして、明日以降は簡易でもいいから何処かに安全な寝床を確保しないとな。せめて、雨風が凌げるテントみたいなモノを作りたい。」
「そうだよな。今日のところは降らないとは思うが、明日以降の天候は解らないからな。」
さて、そんな野宿決定な俺たちの、(今さらといえば今さらな)自己紹介を軽くしておこうか。
まずは俺事、椋橋康泰から。
俺の実家は一般家庭だが、真琴とは幼馴染で家もお隣さん。つまるところ、幼馴染の同学年で腐れ縁な大親友という、テンプレをこれでもかというほど詰め込んだ間柄である。クラスのみんなからは、真琴と付き合っていると勘違いされているが、真琴の今後の事を知っているため、敢えて訂正などは行っていない。
次は男の娘で、不本意ながらも俺の彼女?的な立ち位置のある、松林真琴だ。
実家は、今宮家の執事をしておりそれなりに由緒正しきおい柄のお坊ちゃまである。が、残念ながら本人は、女の子物が大好きな男の娘。現在は、件のあの子事、今宮光莉ちゃんの実家の執事兼見習い兼メイド(光莉ちゃん専属?)ととして、今宮家でバイトをしている。
次いで、高校に入ってから友達になった中条健二。
健二は、俺と同じ一般家庭の出であるが、何故か光莉ちゃんとの仲も良好で、『光莉ちゃんパーティ』と呼ばれている総勢12人の男女混成パーティのメンバーの1人だ。もちろんその12人には、俺たち4人が入っている事は言うまでもない。
最後に、寺岡真奈美ちゃん。
真奈美ちゃんは家事が大好きで、料理の腕前は光莉ちゃんに次いで次席である。実家は地元で有名なカトリック教会で、本人も敬虔なカトリック教徒で、ちょっと特殊な能力を持っている、所謂『特異体質』持ち。ちなみに光莉ちゃんも特異体質持ちだ。
そして、その特異体質が所以で、バチカンから聖女認定されてしまっているリアル聖女様である。
閑話休題。
「テントや寝床については、この先どうにかするとして、3つ目の問題である、『いったい俺たちには何ができて、何ができないのか』の確認だな。
まあこれについては、明日の朝から確認作業を行うとして、とりあえず全員がサバイバルでやるあれこれについては、一通りできると思っておいてもいいのか?」
「そうだね。ボクと真奈美ちゃんは、それに加えてある程度の料理もできるみたいだね。こんな劣悪な環境でも、それなりにおいしい料理ができたから。」
そんな話し合いをしてから、本日の不寝番の交代順を決めて就寝する。
就寝するといっても、地べたに直接だが、これについては仕方がない事だ。しかし、あの仕留めた?巨大魚、何故か全身鱗ではなくて胴体部分は毛皮だったんだよね。そのため先ほどケンジが話し合いの最中に鞣し作業を行い、現在は毛布として活躍していたりする。利用できるモノは、何でも利用するのがサバイバルの鉄則である。
「俺はまだ、少しやりたい事があるからな。不寝番は一番最初でいいぞ。」
「じゃあ頼むな、ケンジ。交代時間はそうだなあ・・・・・・・。この世界の暦がどうなっているのかは知らないが、とりあえずこの時計で4時間おきにしておこう。今が8時だから、12時になったら起こしてくれ。マコトとマナミちゃんは4時からだな。日の出がこの時計で何時かは知らないが、その時間によっては、明日からの不寝番は少し調整をかけていこう。」
「それでいいぞ。じゃあ、焚き木の火は絶やさないようにな。」
不寝番を決める際、まだ何やら作業が残っているケンジが一番初めになった。その後は、俺、マコト、マナミちゃんの順で不寝番をする事になった。ちなみに日没の時間は、手持ちの時計でちょうど6時だった。そのため、だいたいの1日の時間を把握するため、現在時間を計測中だったりする。
なお、現状皆がヒカリちゃんの影響で、『今津流格闘総合武術』という武術の段持ちなため、戦闘能力に関しては問題ないだろうとの結論である。そのため、ある程度の事は対処可能だろうという事で、不寝番も1人ずつ行う事になっているが、マコトとマナミちゃんだけだ2人1組である。
なお、名前の呼び方についても確認があり、家名・・・・所謂苗字は使わずに名前だけで呼び合う事になり、さらに漢字表記もしない事になった。
「コウタ、起きろ。交代の時間だ。」
「・・・ああ、ありがとな、ケンジ。」
「それじゃあ俺は寝るが、一番きつい時間を頼んで悪かったな。明日はこの時間は俺が担当する。頼まれていた釣竿はこれだ。」
「わかった。」
ケンジに起こされて、俺は不寝番に入る。何かやっていないと眠ってしまいそうなので、寝る前にケンジに頼んでおいた釣竿で、釣りでもしながら今後の予定を考えておく。
まずは暦の把握からか。年月日あたりは今はどうでもいいとして、1日の時間の把握だけはしておかないといけない。
現在いる事大地が、何処までも続く平面世界でない事だけは、日の入り前に崖から見下ろした景色で把握済みだ。現在俺たちがいる大地は、何処かの惑星上に存在しているが、現在地の緯度や経度は解らない。東西南北すらも不明な状態なため、とりあえず日の出方向を東とする事だけは決定済みである。これだけ決定しておけば、あとは太陽の軌道で北半球にいるのか、南半球にいるのかが分かり、だいたいの緯度も把握できるだろう。まあ、自転軸の傾きがあるので、正確な緯度など目測では判断できないが・・・・。
それはいいとして、釣りに関して言えば、ボウズだと思っていたが、ふたを開ければ入れ食い状態である。
釣り糸を投げ入れれば、10分も待たずに魚や魚もどきが食いついてくるのだ。
現在焚き木の周囲にはくじに刺さった魚や魚もどきが大量に塩焼きにされている。そうした結果、料理の腕などからきしだった俺だが、何故か串焼き(塩ふり)だけはプロ級とまではいかないが、それなりの腕前に成長している。最初の内はうまく串に刺さらなかったが、今ではワタヌキまでした状態で、鼻歌交じりで串に刺して塩を振り、適当に火に炙っていても、おいしい魚の串焼きを完成させる事ができる。
本当に、最初の1時間くらいは、とっても悲惨な光景だったんだぜ。何匹炭にした事か。
まあ、それはいいとして、4時間たったので、マコトとマナミちゃんに交代である。
「マコト、起きろ。交代の時間だ。」
「・・・ああ、コウタ君。ン~~~~、ぶちゅ♡」
いきなり眠気眼で顔をがしっとつかんできたマコト。
その後、濃~~~~~いキスをかましてきやがりましたよ。それも唇に。口腔内に舌を侵入させる事は何とか阻止し、マコトを引き離しにかかる俺。1分近く格闘した後、息苦しくなったのか、自ら話してくれたが、なんだか少し顔が火照っている気がする。
男だと・・・・・、男の娘だと解っているはずなのに、顔が女よりの美人顔なマコトにこんな事をされると、ちょっとどころかかなり意識してしまう俺。本当に、・・・・・こいつが女だったら、どれだけ俺の気持ちが楽になるのかと、・・・・・・ついつい考えてしまう。
ああ、そういえば、ヒカリちゃんとともに、何やら検証実験と称した人体実験をしていたな、と不意に思い出す。
・・・・・・そういえば、あの検証実験の痕からだな。マコトが、日に日に女の子らしくなっていったのは。マコトの胸も、なんだか少し膨らんでいるように感じるしね。
「それじゃあ俺は寝るが、後の事は頼むな、マコト。そこで焼かれている魚は、好きに使ってくれて構わん。それじゃあ、おやすみ。」
「わかった。コウタ。おやすみなさい。」
俺とマコトが濃~~~~~いキスをしていた際に、すでに目を覚ましていたマナミちゃん。まあ、マコトの隣で寝ていたのだから、気配で目を覚ましたんだろう。
2人はどいた場所に潜り込み、俺はひと時の安らぎを得たのだった。
「ん~~~~~。」
なんか・・・・・、頭の下が柔らかい感じがする。なんでだろうと思いつつ、目を覚まし半分瞼を開けてで周囲を確認する。
煤とそこには、少し膨らんだ胸を包み込んでいるセーラー服と、こちらを楽しそうに覗き込んでいるマコトの顔と、そんなマコトの頭部から落ちてきた真っ黒で長い髪の毛の一房が、晴れ渡った空をバックに視界の半分以上を占めている。
これは所謂、『ひ・ざ・ま・く・ら』という状態なんだろうか?
というか、なんで俺は、マコトの膝を枕にして眠っているんだ?
「そのままでいても大丈夫だよ、コウタ。あっちではマナミちゃんがケンジを膝にのせて、ボクと同じ事をしているからね。朝ご飯はいつでも食べれる状態になっているから、もうしばらくこのままでいようね。」
マコトの視線を辿って横を向けば、そこには膝枕どころか耳かきサービスまで行っているマナミちゃんとケンジの姿が。
「コウタもそのままで。」
マコトがそう頭上から声をかけ、俺の耳の中に、何やら細い棒のようなモノを突っ込んで、ムニュムニュしだした。これは耳かきサービスが始まったんだと感じ、俺はマコトにされるがままになる。そして反対方向のみ身に移り、俺はマコトのお腹を視線に納める。そして、不意に違和感を覚え、視線を下の方へとむけていく。ついでに偶然を装って、指先をスカートで隠れたマコトの股間に突っ込んでみた。
・・・・・・・・・・・・ないね。
何がとは言わないが、そこにはあるべきものがなかった。
「マコト。」
「何?コウタ?」
「マコト、何時から無いんだ?」
「何が?」
「ここ。」
大事な一物がある場所を指でつつきながら、俺はしらばっくれているマコトを問いただす。
「ああ、そこね。この世界に来る数日前にはすでになくなって、女の子のそれになっていたよ。ついで三群れが膨らんできたのもそのあたりかな?ボクはこの位のふくらみで十分だから、これ以上は胸は膨らまないと思うけど、コウタが『もっと欲しい』って、言ってくれたら、コウタの好みの大きさまで頑張るよ?」
おいおい、何を頑張るんだって?そして、重大な事実を今告白されてしまった。
そうか・・・・・・。
マコトはすでに男の娘ではなく、女の子だったんだね。
「すでに女の子になっていたのかい?お・ま・え・は!その事は、何人が知っているんだ?後、俺はもう少し欲しいかな。Dくらいまでは頑張ってほしいところだ。」
「ボクが女の子になった事を知っているのは、ヒカリちゃんと、コトリちゃん、あとはマナミちゃんとケイコさん、そしてボクの家族だけだね。学園には来年に話すつもりだったから、他は知らない事だよ。あと、コウタって、大きいのが好みだったんだね。ボク、頑張ってDまで大きく育てるよ!」
「そこってなんだ?頑張れば大きく育つモノなのか?普通は頑張っても、大きくならないと思うんだが?」
「普通はそうだね。遺伝なのか何なのかはいまだにはっきりしないけど、臨んだ大きさになる事はないね。
でも、ボクに関しは違うんだ。
ボクのは、魔法で女の子化したから、胸のサイズも含めた容姿すべてが、自分の思い通りにできるんだよ。何なら、コウタの理想とする女の子になってあげるよ。どうする?」
マコトからの告白で、俺は少し考える。俺の理想の女の子の容姿って、・・・・・・なんなんだろうと。そして、考えた末、俺の理想とする女の子像をマコトに伝えた。容姿すべてを変える事ができるのなら、俺の理想としている女の子になってほしい。そして、俺がマコトに対し感じている感情も伝える事にする。
そこまで重い考えた末、こんな格好では様になっていないと感じ、膝枕からマコトと正対して正座をする。
「マコト、俺からいくつか伝えたい思い事がある。」
「何?コウタ?ボクも、コウタに伝えたい思いがあるんだけど?」
マコトも重大発表があるらしく、お互い正対して向き合った。