表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【第2章】彷徨える森の中
23/139

【02-10】魔術とスキルで土木工事

「・・・・・あのう、ガイストさん、提案があるんですが・・・・・。」


いろいろと考えた結果、私の魔術や持っているスキルなら今の状況を何とかできる。幸い、考えている事を実行するための資材も、【アイテムボックス】の中に腐るほどあるし、別に提供しても構わないと思っている。その筋にでも売れば、結構なおカネになりそうだけど、・・・・まあ別にタダ働きでも構わない。

あとは、行政側を抱き込むだけと考え、協力を仰ぐためにガイストさんを頼る事にした。


「なんだい?ヒカリちゃん?」

「私なら、今すぐにでもここに橋を架ける事は可能です。ちょっと細工をすれば、恒久的に流されない橋を架ける事もできますし、軍事的にそれはダメだといえば対応する事も可能です。

しかし、勝手に橋を架けてしまうのもどうかと考えているのですが・・・・・。」


私の言い淀んだ言葉に、何を言いたいのか察してくれたガイストさん。


「・・・そうだね。勝手に橋を架けてしまうと、いろいろな方面からややこしい問題が出てくるね。」

「そうなんですよ。橋を1本架けるだけでも、いろいろな問題が出てきますよね。でも、川の向こうにいる人たちはともかく、こちら側にいる人たちにとっては、早くサクラピアスに行きたいと思っていますよね?私だってそう思っていますから・・・・・。

まあ、さっさと向こう岸に行く方法もあるにはあるんですが、それを行うと私はタクシー代わりに利用されそうなので、それはそれで嫌ですしね。」

「ところでヒカリちゃん?」

「なんですか?」

「タクシーって何だい?言葉の前後を察するに、乗り物の1つだとは思うんだが、これは君の世界の言葉だろう?」

「ああ、そうでしたね。この世界の言葉でいうのなら、『身分の貴賤を問わず、目的地の出入り口の目の前まで乗車できる辻馬車』といったところでしょうか。もちろん、料金さえ支払えばという注釈は付きますが。」

「ああ、そういう乗り物ね。」


そこから話が脱線して聞き、地球においての都市交通の話に流れていく2人。バスやタクシーについては、今でも同じサービスがあるので可能だと思う。しかし鉄道については、私的にはたぶん無理だろうとの見解であり、それは話を聞いていたガイストさんでも無理だと断言した。


「話は戻りますが、ガイストさん、あそこにいる役人たちとの交渉をしてくれませんか?今のところ、何の権力もなければ実績もない私よりも、冒険者としてそれなりに実績があるガイストさんを間に挟んだ方が、話を聞いてくれそうなので。」

「・・・・ああ、確かにどんな素晴らしい案であっても、ヒカリちゃんのような人から出た案は採用されにくいな。よしんば採用されても、あそこの役人たちの実績にされそうだ。」

「そうなんですよね。上の方が腐っていない事を信じて、施工方法の一部を秘匿してあそこの役人たちには説明をしますが、それもどこまで通用するのか。」

「まあ、それはあるわな。」


こういった話をしながらも、私とガイストさんは、ここにいる役人に関しては大丈夫だろうという見解でいる。その上に関しては知らないが、最低限ここから見ている感じではそういった傾向な見えてこない。


「じゃあ、向こうに行って話をしないとな。しかし、どうやって行くんだい?ヒカリちゃん?」


いろいろと役人たちのあれこれをじゃなし、向こう岸に行くかという話になる。当然ながら橋は流されているし、下の川は増水して流れが速い。普通なら向こう岸に渡るだけでも、困難を極めるのだが・・・・。


「コトリ、こっちは任せわわよ。」

「うん、わかった。ヒカリちゃん。」

「じゃあ、ガイストさん、行きましょうか。」


私は、ガイストさんの腕をとり、向こう岸を見つめならが一言。


「【転移】」


と呟いた。一瞬で切り替わる周囲の景色。

「おお!!」と驚くガイストさんだが、対岸で手を振るコトリと、呆気に取られているパーティメンバーを見て、自分が転移して対岸へ渡ってきたと悟る。


「これが、ヒカリちゃんの言っていた『タクシーにはなりたくない』理由かな?」

「そうだよ、ガイストさん。転移魔術これで商売ができるかもしれないけど、辻馬車で生計を立てている人たちに反感買うよね?たとえ、10倍以上の料金を取ったとしても。」

「・・・・そうだな。いろいろと制約はありそうだが、100倍の料金でも使うヤツは使うと思うぞ。この世界では、隣町や隣村までいくのにも、馬車で2~5日かかるのはざらだからな。そしてその道中には、魔物や盗賊が出るから安全ではない。安全に隣の町や村まで行けるのならば、その位の料金は安い物だろう。」

「だから、私は転移魔術これでタクシーになるのは御免なんだよね。」


そんな話をしながら、こちら側にいる役人のもとに向かい、ガイストさんを通して話をしていく私。予測通り手柄を横取りされる事はなく、さらに聞けば、この国ではそのような事をする王侯貴族や権力者は”ほとんどいない”との事だ。理由は、そう言い放った時に、「じゃあ目の前で同じ事をやってみろ」と、その場で同じ事をやらされるから。つまり、同じ事ができる者はやるかもしれないが、できないモノは出世よりも今の立場を守るために、虚偽の報告はやらないらしい。

それができなかった場合、虚偽の報告をしたうえで、誰かの手柄を横取りした罪により、大変な結果が待っているからだ。


さて。


お役人の許可も取った事だし、早速だけど橋を架けていこうと思う。

ちなみに、「橋の形状は、指定があればそのように造りますよ」と言ったところ、お役人たちは少し相談のうえ、石材でできたアーチ橋を指定してきた。指定されたのはアーチ橋という事だけで、いろいろと相談していった結果、それ以外のところは私にお任せという話になる。

で、現在の水嵩を勘案して、アーチの一番低い場所が、今の水嵩よりも高い場所になるように設置。そこから、一発で対岸まで伸びるアーチ橋とすると、両岸付近が高くなってしまう事になる。この際ついでだと、そのアプローチ部分も造っていく事にする。


そうして設計した橋の図面を基に、周囲を見渡して、岩場がない事を確認。

「ちょっと石材を調達してきます」と一言断って、適当な滝壺に転移し石材を調達してくる私。そうそう、ついでに2組の乗っていたバスも回収しておく。この滝壺、上から見えていてよかったとともう。そうしないとここに、転移できなかったから。

この時、今バスに中にあった謳いも回収して滝壺ののそばに穴を掘って埋め鎮魂歌を捧げておく。

これで良しと。


再び皆のところへ戻り、早速橋の建設を始めていく。

戻ってくる際に一旦対岸に転移して、(アプローチ部分の建設で)邪魔にならない位置まで皆を下がらせておく。再びこちら側に転移して同じ事をしてから、石材を取り出して橋の建設に取り掛かる。

まずは、橋の両岸あたりの補強である。このまま橋を架けていっても、護岸が丈夫でないとそこから橋が流されていくかもしれない。そのため、橋を中心に100mくらいの範囲を石垣で補強する事にする。先ほど切り出してきた石を加工して、両岸を一気に魔術でもって石垣を積み上げていく。モノの数分で、護岸工事とアプローチ部分の工事が完了してしまうのは、魔術のすごいところであり卑怯なところでもあるだろう。

石材をアーチ形状に加工し、1列目を一気に組み上げていく。通常は、アーチ部分の下に型枠を組まないと、アーチ橋は造れないにだけど・・・・・、これぞ魔術のごり押しである。あっという間にアーチ部分の1列目が完成する。

そこから順に加工しながら石材を組み上げていき、約2時間余りで立派なアーチ橋は完成した。


さて、お次はこの橋の、恒久的な補強である。つまり、メンテナンスフリーな橋にしてしまう工事である。


まずは、何時討伐したのか忘れた、何かの魔物から出てきた魔石を大小500個ほど取りだし、粉々に砕くと、先ほどできた橋の上と護岸として築いた石垣に満遍なく撒いていく。


「【魔法付与マジックエンチャント

対象個体:石垣・アーチ橋・その他

対象魔法:|魔力吸収(MPドレイン)/1%・強化・融合・固定・限定破壊・再生・恒久化」


「【習得技能付与スキルエンチャント

対象個体:石垣・アーチ橋・その他

対象スキル:魔力変換/レベル100%・破壊耐性/レベル100%」


付与術を2つ使用してスキルと魔法を全体に付与すると、橋と護岸が数秒間不可思議な光に包まれて完成となる。


「これで完成しました。引き渡しです。」


私は、お役人達にそう言って橋を引き渡す。


「最後のあれ、何をしたんだい?」

「この橋と護岸を、このままの状態で維持するための秘策です。橋を渡ろうとする生き物から。保有している魔力の1%を貰って、そのもらった魔力で橋の強度と・護岸を強化・融合・固定・恒久化する魔法陣に流し込んで橋と護岸を維持していきます。この橋を渡った際に自動で魔力を徴収するので、メンテナンスフリーです。」

「生きモノっていったけど、それは魔物も含めてすべてって事でいいのかい?」

「そうですね。魔物も含めて、この橋を渡った生命体全部が対象ですね。とはいえ、保有魔力の1%ん青で、取られたという感覚は余程敏感な者でない限り解らないでしょうね。1%固定なので、吸われていく魔力量には差がありますが。」


その後、お役人と私、ガイストさんで渡り初めをして橋の安全を確認。本来は、建設費と橋の維持費として、ある程度の期間通行料金を徴収していくのだが、保有魔力量の1%を1回渡る毎に徴収されていく仕組みなので、これを通行料金の代用とする事で開通直後から無料となった。

実はこの橋、軍事的に破壊する事も可能であり、その方法はお役人様にだけ教えてある。そんな事をするのは、何処かから攻め込まれてきた時くらいだからね。平時は使用しない機能である。

再建する際も簡単にできるように処置してある。


橋の建設報酬は、サクラピアスに着いてから支払うという事になっているので、私はほかのメンバーと共にお役人様について移動する。

ゆっくり歩いても5時間ほどで、サクラピアスの北門に到着した。ここまで来る道中で、お役人たちに私達7人が『異界からの来訪者』である事を説明してあるので、入門時のトラブルもなくスムーズに進み、門脇にある詰め所に案内される。

そして詰所において、いろいろな手続きが行われ10枚以上の書類にサインをしていく。そして約30分後、サクラピアスを出身地とした身分証となる市民カードと、いくつかの仮登録証が作成される。市民カードと各種仮登録証とともに、4冊の冊子と、この冊子を入れる”小さ目”の袋が手渡される。

なおこの4冊の冊子は『コロラド王国六法全書(憲法・民法・商法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法)』・『コロラド王国総合地図帳』・『コロラド王国の郷土料理全集』・『コロラド王国語修練教書』である。何処からどう見ても、異世界人が調べたい事をあらかじめ分かったうえで、手渡されている感じがする。特に地図と六法全書はありがたい。


普通、地図は国家機密に当たるはずなので、『地図なんかもらっていいのか?』と尋ねたら、町の書店に行けば誰でも購入できるし、図書館に行けばだれでも閲覧可能なので、別に国家機密でも何でもないとの回答だ。さらに、「機密扱いにしたところで、間諜などに持ち出されれば意味はない」とぶっちゃけた言葉を返された。

他の国はともかく、コロラド王国に関しては、地図はすでに機密情報ではないらしい。

あと、もらった小袋は、『アイテムバック』と呼ばれている魔導具で、ほかの領内ではともかくここムハマルド辺境伯では、ダンジョンから産出される特産品でもあり、この大きさの小袋ならば、ダンジョンの低層でよく発見されるため、領内では財布代わりに持ち歩いている者が多い品であるらしい。場所によっては財布代わりにしかならない小袋でも、高額で取引されているとの事で、そのあたりの情報は『コロラド王国総合地図帳』に書かれているので、それを参照してくれと言われている。


「では皆様方は、明日になったら今手渡した仮登録証と市民カードを持って、それぞれ指定された建物を回ってください。そこで簡単な試験を行った後本登録となります。

この世界にいきなり飛ばされて大変かとは思いますが、この世界が第2の故郷となるように楽しんでください。」


詰所を出たのは、すでに夜の帳が降りかけた時間帯だった。ガイストさんたちに保護され、身元引受人にもなってもらっているため、私達が当分の間暮らすのは『鮮血の雷ブラッディサンダーズ』の本拠地である。そのため、道中の食堂で夕食を食べた後、その本拠地に向かう私達7人だった。

あとは、・・・・・・・・お風呂だね。この町には温泉があるみたいだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ