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異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【第2章】彷徨える森の中
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【02-07】懐かしき彼らは・・・・・

私たち鷺宮学園2年2組全員・・・・・ではないが、10人くらいが、何処だかわからない草原地帯に不時着?して、どれくらい経っているのだろうか。幸か不幸か、バス自体はそんなに損壊していなかったが、不時着した衝撃で車軸が大破し横転。そのまま錐もみ状態で、傾斜のある草原地帯を転がり落ち、天井と床が逆転した状態で停止した。幸いにも全員、シートベルトをしっかりと締めていたおかげで、大きな怪我もなく死傷者も出ずに助かった。


この時はまだ・・・・・。


しかし十数分後、脱出しようとしてシートベルトを外し、天井を床代わりにして移動して唯一の出口であるガラスの割れた前面・・・・、運転席側に移動していた際、重心が偏ったせいで不意にバスが傾いて崖下に落下してしまう。そしてそのまま、100mほど下を流れる流れの急な谷川へとバスごとダイブ。

今度は運転席側を下にして、後部座席側を前にして急流下りを始めた。そして、無重力状態を数秒間体験した後、そのまま滝壺にバスが突き刺さった。

運転席側を上にした状態で・・・・・。

現在バスが水から出ているのは全体の半分で、残り半分は水の中。そして割れたガラス面からは、伊豆がどんどん入り込んでおり、このままではバスが水没してしまう。そんな状況下の中、私たちは水に沈みゆくバスから脱出を試みる。現状、誰が生き残っていて、誰が死んでしまったかは解らないし、谷側に落ちる際に、バスの中の人数がやけに少なかったと思う。

・・・・・理由は知らないが。


「今現在、何らかの形で動けない人たちはゴメン。動ける人たちは、早くここから脱出するぞ!動けない者は、例え友達でも置いてゆけ!まずは生きて、ここから出る事だけを考えよう!」


そう言いながら、割れた窓から出ていく栢原修道かいばらなおみち君。

確かにそうだ。動けない者を助けるのは、こういった状況ではお荷物でしかない。

そう思いを切り替えて、隣に座り、両足を骨折して動く事ができない上嶋史子うえしまふみこさんに「ごめんね」と謝った私は、目の前の割れた窓に手をかけた。


「うん、わかってる。晴菜ちゃんは悪くない。ホラ・・・・・あれだよ有名な船のお話。何だったかな~~~~?まあいいや。晴菜ちゃんは、生き残って。そしていつの日か、気が向いたらここにお参りに来て。」


私事、松川晴菜まつかわはるなにこう言って、笑顔で送り出してくれた史子さんに別れを告げて、私は生き残った者たちとともに滝壺から脱出した。

私たちが脱出した直後、それまで垂直に突き立っていたバスが傾き、滝壺の中に沈んでいった。


こうして助かったのは、乗員・教師・生徒合わせて44人のうち、・・・・たったの5人だけとなった。

滝に落っこちる前に、バスから脱出していた人は10人くらいいたと思うが、それは遥か高みに聳える崖の上。現状では、再会の見込みは一切ない。ロッククライミングを嗜んでいたとしても、あの崖を命綱なしで降りろと言われても、できる者はほとんどいあいだろう。なんせ隣には轟音を轟かせている瀑布があるのだ。その影響で、周囲の崖は滑りやすくなっている。

なので、今後はこの5人でなんとかしていくしかなく、崖の上の人たちはその人たちでなんとかしていくしかないのである。では突然ですが、ここで生き残った人たちを軽く紹介しておく事にしよう。


まず1人目は、栢原修道かいばらなおみち君。

最初に怪我をしている人たちを見捨てて、五体満足な人たちだけで脱出しようと声をかけた人物である。結果的には十数人が生還した形になり、助ける事ができたかもしれない者たちを見捨てた形になった。あと、崖の上に取り残した約10人も。まあ、現在5人もこの場にいる奇跡に近いと思っているし、そう思う事で心の葛藤を抑え込むように皆に指示した暫定リーダーでもある。


2人目は、古松美緒こまつみおさん。

クラス内で一番頭のいい女の子。このクラスの副委員長でもあり、皆のマスコット的な背のちっちゃい可愛い女の子だ。成績も学年内では5本の指に入るほどの秀才で、テスト前に毎回行われる彼女の対策講座は、クラス全員が参加するほどの人気でもあり、その結果クラスの成績は常にトップグループにいる子が多い。

ちなみにクラスの委員長だった横山道真よこやまみちざね君は、崖の上の住人となっているため、現在は再会不可能状態である。リーダーシップもある男の子なので、崖の上で助かった人たちをうまく纏めて生きていくだろう。そして、どこかで再会できるといいな~~~~~~。


3人目は、瀬河真紀せがわまきさん。

東京に本社を置く、世界的貿易商社の社長令嬢であり、日本でも10本の指に入るお金持ち一家のお嬢様でもある。性格は高飛車ではなく、どちらかといえば庶民派であり、親しい友人にはみな平等に扱っているため結構人気が高い。生徒会長の影響を多いに受けたオタクでもある。


4人目は、浜崎嘉成はまさきよしなり君。

映画にもなった、とある釣りバカを先祖に持つ。本人も相当の釣りバカであり、それを極めていった結果、この年で世界中の海や川、湖畔に生息するすべての魚を釣り上げる事に成功する。なお、その陰には、噂の生徒会長と瀬河さんの尽力があったとかなかったとか・・・・。なお、本人は何処にでもいる一般庶民だが、瀬河さんの彼氏でもあり、休日になるたびに彼女の趣味に付き合ったり、自分の趣味に付き合わせたりしている。


最後5人目は、私事松川晴菜まつかわはるな

何処にでも一般庶民だったんだけど、とあるゲームによって隠れた才能?が開花。生徒会長の一派である、『光莉ちゃんパーティ』と呼ばれている総勢12人の男女混成パーティのメンバーの1人でもある。なお、現在開花させてしまった才能を、さらに昇華させるべく奮闘中であり、将来の就職先もすでに決定してしまっている・・・・・らしい。


現実逃避は、このくらいにしておいて。


どうもここは異世界らしいという推測を加えて、これから先の事をみんなで考えていかないとね。(帰れるかどうかはとりあえず置いておいて)とりあえずここで生きていく事を最優先で考え、生きていくためのあらゆる努力を惜しまず実行していかないといけない。

最悪、何処かの誰かを殺してでも・・・・・・ね。


「みんな聞いて。」


だから私は、このメンバーで生き残るための手段である1つ目を、ここで行う事にする。なおこの手段を行う場合、皆を巻き込んでいく事になり、双方ができる事を模索して助け合っていく事が前提となるわけだが・・・・・。

果たして、ここにいる(私を含めて)5人の意見は、どうなる事やら。なお、私はすでに、巻き込む覚悟と巻き込まれる覚悟はできている。自分の利となる事でもならない事でも、即断・・・・・とまではいわないまでも、短時間で答えられないと、あの子と付き合う事は出来ないからね。

あの子・・・・・今宮光莉ちゃんは、元気にしているかな~~~~~。


閑話休題。


私の言葉に、現実逃避から戻ってくる4人。そして、言葉を出した私をじっと見つめている。


「まず、前提条件から。ここが地球上にある何処でもなく、異世界だという事は理解できている?」

「・・・・・そうだな。こんな滝、ネットやテレビなどでは見た事無いな。少なくとも俺は。」


私の前提となる質問に、まず初めに栢原がこう答えた。私だって、こんな滝は見た事はありません。光莉ちゃんにはいろいろな未開拓地にも連れて行ってもらった事があるけど、少なくともこんな滝がある場所はなかったと記憶しています。


「釣りをするために、世界中のあちこちに行っている僕も、それに付き合ってくれている真紀ちゃんも、こんな滝がある場所は行った事がないね。」

「そうですわね。私も見た事はありませんね。」


瀬河さんと浜崎君とのラブラブカップルでも、この滝のある場所には行った事がないみたいだ。記憶力抜群の美緒ちゃんも、この景色は記憶の中にないそうである。


「皆の意見を集約すれば、ここは少なくとも地球ではなく、どこか別の惑星だという事でいいよね?」


とりあえず、異世界云々は後回しにして、ここが地球ではない何処か番う惑星である事を確認しあう5人。そしてさらに意見を集約していき、ここが異世界だということまで話し合いで決めていく。

いったいどういった理由で、地球ではない何処かに飛ばされてしまったのかは不明だが、少なくとも何らかの非科学的な出来事に巻き込まれてしまった事を共有認識とした。


「では、次の課題。ここが異世界だとすれば、どうしても確認したい事が2つばかりあるんだよね。」

「・・・・・ああ、所謂『ステータス』と、『魔法』・・・・もしくは『魔術』があるかないかだよね?」


私が確認したい事を、こういった事に詳しそうな(オタク趣味全開の)瀬河さんが、質問形式で答えていく。さらに、いろいろと付け加えていき、十数個の確認事項を順次検証していく。・・・・・まあ中には、検証不能なモノから、前提条件がないとできないモノまであるが。

そういった確認をしていくうちに、数時間が経過してそろそろ夕刻といった時間。近くの草叢がガサガサと揺れ、そこから5mほどの体格の赤毛の熊が現れた。それも5頭。


「に、逃げろ~~~~~!!!!!」


『熊に対して背中を向けるな』とはよく聞く言葉だが、あれは1匹だけと対峙した時であり、さらにこちら側が冷静でいられる時のみにできる行動である。何も準備もなく、いきなり熊が5頭も現れれば、そんな言葉など頭の片隅にもよぎる事無く、背中を向けて熊が出てきた方とは逆の方向に逃げ出す私たち。

当然熊は、獲物が逃げたと思って追ってくる。

私達は、火事場のくそ力と言わんがばかりの全力疾走で森の中を駆け抜けていく。ついさっき、この熊と対峙できる方法を見つけていたにも関わらずだ。

パニックに陥った際、冷静な判断ができないとは、よくいったものだな~~~~っと、あとから考えて思い当たった事でもある。


それはともかく、全力疾走したおかげか何か知らないけれど、全員無事に街道らしき場所に出る事ができた。これで走りやすくなったと思いきや、100mほど先に2人の女の子がいるのを発見する。


「熊に襲われているの!あなたたちも早く逃げて!」


女の子の方に向けて、走りながらそう叫ぶ私。どうせなら巻き込んでしまえ、などとは思っていないが、結果的にそうなってしまったのは仕方ないと思う。

そんな事を考えながら走っていると、女の子の1人がこちら側に向かって走ってきて・・・・・・。

そのまま何処から取り出したのかいきなり右手にショートソードが握られており・・・・・・。

そのままの速度を維持したまま、5頭の熊を瞬殺してしまった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


そして、崖の下を沿うように走っている街道を歩いていくと、突然騒がしい何かが湖の方から聞こえてくる。騒音の感じから察するに、十数秒後にこの先100m付近の藪から何かだ出てきそうだ。


「コトリ、ちょっと気を付けてね。十数秒後にこの先100m付近から何かが出てくるから。」

「戦闘準備、しておく?」

「そうだね。しておいた方が無難だと・・・・・。」


と話しているうちに、予測通りの場所から、5人の男女が走りながら出てくる。その後ろからは、5mほどの体格の赤毛の熊がそれも5頭現れた。当然彼らを餌と認識して襲いかかっているわけだ。

そして彼らは、あろうことか私とコトリの方に向かって全速力で走ってくる。少々溜息を洩らしながらも、私は彼らを助ける事にする。どのみち後ろの5頭の熊とは戦わざるをえないのだから。


「助けようか、コトリ。私達なら一瞬だから。」

「そうだね、ヒカリちゃん。じゃあ、あたしが突貫してくるから、ヒカリちゃんはコクトのとこお願いね。」


そういうや否や、コトリは最速で熊と5人の男女に間に割り込むと、【アイテムボックス】から瞬時に取り出した剣で、5頭の熊を瞬殺してしまった。

私の出番、・・・・・無かったね。

まあ、熊の5頭や6頭くらい、コトリならば瞬殺だろうけどね。

私は、そんな事を考えながら、夕日で赤く染まる街道を5人の元まで歩いていくのだった。


私の目の前で、息を切らしてその場に座り込む5人の男女。ちなみに5人の服装は、鷺宮学園の制服であるブレザーとセーラー服だ。

つまり、私とコトリのお仲間という事になる。何やらびっしょりと濡れてはいるが、まだまだ仕立ても大丈夫そうなので、この世界に来てからあまり時間も経っていなさそうである。


「大丈夫だった?怪我はない?」

「はあ・・・・・、はあ・・・・・・。大丈夫です。それよりも、何か飲み物をください。」


何か切実そうな顔をして、飲み物を請求してくる女の子。まあ、・・・・ぶっちゃけ、私の知り合いである松川晴菜ちゃんなんだけどね。


「はい、どうぞ。皆の分もあるからね。熊に追いかけられるなんて、とっても貴重な体験をして、よくぞ生き残ったね。ハルナちゃん?」

「ゴク、ゴク、ゴク・・・・。ああ~~~~~、生き返る~~~~~。助けていただき、ありがとうございました。え~~~~~っと・・・・・・。」


何やら俺の言葉を言いながら私の方を見るハルナちゃんは、私の顔を見て固まった。そして、しばらく思考停止をした後、再び再起動をする。


『再起動中です。少々お待ちください。』


こんなメッセージが流れてきそうな雰囲気である。


「もしかして・・・・・・、光莉ちゃん?」

「もしかしなくても、あなたの知っている今宮光莉だよ。ちなみに、先ほど5頭の熊を瞬殺したのが、私の大親友で幼馴染で腐れ縁で私の侍女のコトリだよ。」


思わぬところでの再会にハルナちゃんは、私に抱き着いて泣き出したのだった。



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