【02-05】古代神殿を発見しました
しかたがないので、安全そうな崖の中腹にねぐらをでっちあげ、そこで10日間ほど生活をする事にする。前の2回の生理の時は、結局大事なショーツに垂れ流しだった。
しかし、今回からは、準備も万端である。
今回は水で膨張していたけど、錬金術や魔術を駆使して、根性で元に回復させたナプキンがあるし、生理用のショーツも完備している。ちなみに生理用のナプキンに関しては、人里で代用品?を見つけるか、根性で創り出すかするまでは、魔術を錬金術で可能な限り再生する予定である。
たぶん、この作業を繰り返して売れば、そのうちそこら辺の材料で生理用ナプキンくらいは作ってしまうだろうと思っている。
2人の生理も終わり、再び森を彷徨う旅を再開する。
なお、基本的に正確な暦はあまり関係なくなっているが、ほぼ30日間隔で来ることが解っている私とコトリの生理。これを暦の代わりとして、私の生理が始まった日を毎月の1日として仮の暦を作っている。ん青で1ヶ月の日付は正確に30日ではなく前後2日くらいずれる事になる。この世界の1年が何日かも知らない(知ろうと思えば簡単に知る事ができるが、別にどうでもいいので調べていない)のでどんどん月の数字が増えていく結果になるのだが・・・・・。
そのため、この世界の正確な暦とは絶対に遭わない事は確実なので、この仮の暦(とりあえず月経歴とでもしておこうか)は、この世界に来て初めての生理を1月1日としている。なので今日の日付は3月11日となる。
そしてたぶん今後も、この生理期間中の約10日間は、冒険?をお休みする事になるだろう。また、私達の眷属であるハクトとコクトは、”今のところ”戦闘力が皆無のただのモフモフ癒やしである。今のところと言ったのは、攻撃担当の破壊神『ダークメシア』の世界樹に私達が訪問すれば、ハクトは徒手空拳型の物理攻撃を、コクトは魔術攻撃を覚える事ができる。
ちなみに、各神様の世界樹を訪問すると、次の様な能力をハクトとコクトは得る事ができるみたいだ。
次元神『ディメンシア』・・・・世界樹ネットワークにアクセスできる(この世界にある植民惑星との間に惑星間転移ゲートを開く事ができる)
創造神『クインメシア』・・・・人化する事ができるようになる(獣人のように耳と尻尾が生えた人間形態になる)
破壊神『ダークメシア』・・・・戦闘能力を身につける(ハクトは徒手空拳型の物理攻撃を・コクトは魔術攻撃)
空間神『スぺーリシア』・・・・見た目のサイズを変化させる事ができる(一番最小でチワワサイズ・標準は大型犬サイズ・一番最大で軽トラサイズ)
時間神『タイムリア』・・・・時間旅行が可能になる(現在から連続している過去・現在・未来に向けて時間転移ゲートを開く事ができる)
重力神『グランヴィア』・・・・空を飛ぶ事ができるようになる(飛行時は背中に羽が生えて羽ばたく)
何か、とてつもなく重大な事を引き起こしてしまう能力もあるが、獣人化と戦闘能力は是が非でもほしい能力だ。コンプリートするつもりはないけど、世界を放浪する事で自然にコンプしてしまいそうである。
なお、世界樹は大地の上に生えているモノばかりではなく、空中や海中に生えているモノもあるそうで、その世界樹が何処に生えているのかを知る手立ては、今のところ私たちは持っていない。
また、世界樹を訪問するたびに、私達に従う眷属が増えていくらしく、眷属の容姿(顕現した際の動物)はそれぞれ、次元神『ディメンシア』が鳳凰龍、創造神『クインメシア』が九尾の神狐、破壊神『ダークメシア』が神猫、空間神『スぺーリシア』が神狼、時間神『タイムリア』が神虎、重力神『グランヴィア』が神熊となる。
閑話休題。
私たち一行は、順調に川を下っていく。途中にいくつかの滝があったり、巨大な湖があったりしたが、旅はすべて順調である。
そんなこんなで、月経歴3月15日、川のほとりに廃墟化している神殿らしき建物跡を発見した。
「結構古いね、・・・・この神殿跡?・・・・・なのかな?」
「たぶん、相当昔に放棄された神殿?だと思うよ。太古の昔には、ここいら一帯は、結構大きな町だったと思うよ。ほら、あの岩山には、城跡?のような建造物の残骸が確認できるしね。」
どのくらい歴史を遡れば、この町の跡が活性していた時代に行けるのだろうか?よくよく観察してみれば、大自然に飲み込まれているが、ところどころに町だったと思わせる残骸を散見する事ができる。
(この世界にとっての)歴史的大発見をしたのかもしれないが、なんせここは人跡未踏の大自然のど真ん中だ。調査団を派遣するにしたって、相当な準備が必要だろう。
私達はさらに山奥から来たが、この遺跡の周囲にも、結構な力を持った魔物や動物たちがわんさかいるのだ。今でも、時折襲撃をかけてくる魔物たちに対応しながら、遺跡を探検している私達である。
「まあ、あたしたちの巫女の能力を使えば、この遺跡の詳細は瞬時にわかるけど・・・・・。」
「・・・・・それをやっちゃうと、面白くないよね。」
コトリの呟きに、私も同意するように後の言葉を呟く。確かに、この空間に記録されている情報を読み解いていけば、ここで何があったのかも瞬時に判明するだろう。
しかし、それでは面白くないのだ。さらに言えば、私達は歴史学者でもなければ、古代ミステリーを追う探検家でもない。ぶっちゃけ、ここで何が起こっていようとも、あまり関心はないのである。
この遺跡の探検だって、はっきり言えば暇つぶしであるのだから。
とりあえずは、一番最初に発見した神殿らしき廃墟を探検する。こういった大規模な遺跡の場合、街中にあった建物跡よりも、こういった神殿跡とか城跡とかに、重要な手掛かりがある場合が多い。
理由は、地球でもそうだったが、神殿とは政治の中心的な建物だからだ。
古代文明はたいていの場合、神殿・・・・宗教と政治が融合しており、王家の次に権力を持っていたのは神殿である。
そのため、遺跡を発掘するのならば、王城もしくは王宮の跡か、神殿の跡を真っ先に発掘した方が、重要な発見を期待できるのだ。
「紙や木簡などではなくて、石碑に刻まれている文字が発見できないかな?まあ、古代文字だから、解読するにも時間がかかりそうだけど・・・・・。でも、文字を読むだけなら、何とかなりそうな気がする。」
「ああ、そういえばヒカリちゃん。言語スキルと文字解読スキル、カンストしていたね。」
そう私は、あのゲームにおいて、言語スキルと文字解読スキルをカンストさせている。そのため、初見の文字だろうとも、初めて聞く言語だろうと、問題なく理解でき数分もあれば、その言葉を使いこなす事ができる。
これは、あのゲームが当初は、特異体質持ち専用だったためだ。特異体質持ちは世界中に散らばっているため、使用される言語も多種多様である。時には協力し合うミッションが地球上で行われるため、特異体質持ちはゲームを開始した段階で、真っ先に言語スキルと文字解読スキルをカンストさせたのだ・・・・全員が。
そのため、言語スキルと文字解読スキルをカンストしている=特異体質持ちという計算式?が成り立っているほどである。
「あたしは、言語の方は8割くらい育ってるけど、読み書きの方は3割くらいまでしか育てていないから。現在使われている言語と文字しか、たぶん読み書きできないからね。さらに、全く知られていない言語だと、果たしてこのスキルが有効に機能してくれるか怪しいよ。
ここにあるだろう超古代文字は、確実に理解不能だろうね。」
「まあ、それは大丈夫じゃない?この時代に使われている標準語程度の文字ならば、3割なら時間はかかるけど、読み書き位ならちょっと勉強すれば可能になる範囲だよ。言語の方は8割育っているんだから、日常会話はばっちりじゃない?」
「それだけが救いだね。まるっきり言葉も文字も理解不能だったら、そこで詰んでいる可能性大だよね。」
逆にコトリは、ゲームをしていた日数が私よりも短いので、言語スキルと文字解読スキルのレベルは低い方である。そんな中で、言語スキルが8割育っているのはすごい事である。コトリはベータテスターだったのでまだ間ここまで育っているが、解放版の市販品からスタートしている者たちは、この2つのスキルの重要性を知らない人たちが多いのもまた事実。
皆ファンタジーなスキルを現有共有しようと躍起になっていたので、こういった現実世界でもあるととても便利なスキルを育てている者は少なかったのだ。こういった現実世界でも有用なスキルを理解できていた人たちは、真っ先にこう言ったスキルを育てていたけどね。
そんな事を言いあいながら神殿跡を歩いていると、何やら壁に書かれた文字の列が現れる。
「これは・・・・・・、所謂象形文字の類かな?ヒカリちゃん?」
「そうだね。ところどころ削れてしまって読みにくいけど、これはれっきとして象形文字だよ。どことなく、ヒエログリフにい似ているけどね。」
「ヒエログリフか。案外、古代エジプト人が、あたしたちのようにこの世界に転移してきて、この地で古代エジプト文明を再興させたのかもね?」
「それだと、すごいロマンあふれるね。・・・・・・だとすると、川を挟んで東側は生者の暮らす地で、西側が死者の暮らす地になっているはず。」
「それだと、川を挟んだ反対側も探検しないといけによね。どうする?あっち側も言ってみる?」
というわけで、廃墟となった町の跡をくまなく探検する私たち。なお、先ほどのヒエログリフっぽい文字は読んでいない。神殿の壁に書かれている文字なので、いろいろと曰くがありそうで怖かったためだ。何かの映画にもあったけど、ああいった場所に書かれている文字は、無暗に読み解かない方が無難である。
なお、この神殿跡には、古代エジプト文明で祀られていた神々の神像が安置されていた。
この結果この遺跡群は、古代エジプト人が作った遺跡であるとの結論を得た私たち。たぶん、私たちのように古代のエジプトの地から、ここテラフォーリアに転移してきた者たちがこの地に住み着き、何かがあってこの地を放棄したのだろう。
次に向かったのは、王宮だか王城だかの廃墟跡だ。
遺跡の中に入ると、いきなり黄金の像が何体も出迎えてくれる。そして、中に進むほど、金銀財宝が山のようにある部屋に辿り着く。たぶんここは宝物庫の跡地なんだろう。上の建物が崩落していて分かりずらいが、地下みたいな場所にあった部屋だしね。
もちろん中に残っていた金銀財宝は、すべてお持ち帰りである。バスの時もそうだが、誰かに管理されていないモノは、たとえ重要な遺跡であろうと発見者のモノである。
地球でもそうだったじゃん?
遺跡の中の財宝が、その遺跡がある国のモノと決まったのは、確か第2次大戦があった後だ。
さらにそのまま地下を発掘していくと、いくつかの細かく区切られた部屋を発見する。鉄格子らしき残骸(素材は鉄ではないみたいだが)が部屋と廊下らしき区画を区切っている事から、ここは地下牢だと推測する。鉄格子や枷などの金属部分はすべてお持ち帰りである。
後で(錬金鍛冶術を駆使して)鋳溶かして、インゴットにでもして売っぱらおう。なお、金貨や銀貨などの(この遺跡が全盛期だった頃に使用されていた)小銭関係や、王冠やティアラなどの装飾品関連については、その状態のまま【アイテムボックス】に格納してある。その方が、インゴットよりも高く売れそうだからだ。
さらに地下を発掘すると、1カ所だけ無傷の部屋を発見する。本当にその一角だけ、時が止まっているかのように無傷であり、ほこり1つ落ちていないのだ。そして、その部屋を取り囲むように、魔術的な結界が張られているのが分かる。
(たぶんだけど)数千年以上にもわたり、この結界は機能していた事になるが、この結界を張った魔術師は、相当の腕前だったんだろうと確信する。この時代においては、『稀代の魔術師』なんて言う二つ名で呼ばれてもいたんだろう。
そんな数千年以上機能を失う事のなかった結界を解き、部屋の中に入る私たち。
部屋に入ると壁一面に書架があり、その書架には大量の紙の本が並んでいる。何の本か解らないが、とりあえず全部【アイテムボックス】に書架事格納。あとでゆっくりと読む事にする。
書架をすべて取り去ると、さらに奥へと続く扉を発見。
その扉を開くと、そこは小さめの生活空間であり、どことなく日本にある小さなアパートの1部屋に似た空間になっていた。だって、畳が敷かれた6畳一間。小さなキッチンがあり、トイレとお風呂が一体化したユニットバスがある部屋だったんだから。
そんな部屋に敷かれた布団の中で、ついさっき死んだといっても通じるような1組の男女が、・・・・・・静かに横たわっていた。
とりあえず、その亡骸に合掌する私とコトリ。
『あなたたちの研究結果?は、私が有効に活用してあげるから、ここにあった本はすべてもらっていくよ。』
と、あと出しジャンケンのように伝えておく私だった。
ちなみに、この部屋は再び結界を張って封印し、こんもりとそこら辺の瓦礫で山を作って2人のお墓とした。そしてそこには、墓標代わりの木を植えておく。
川の対岸には、王家の谷っぽい地形が広がっているが、遺跡荒らしはするけど墓荒らしまではねとの考えで、そのまま放置してこの場を立ち去っていく。
将来この地を訪れた誰かが、また何かを発見していく事を願いながら・・・・。