【02-03】世界樹の巫女と眷属
それは、或る日突然世界の何処かに現れ、そしてそれは世界の一部を取り込み・・・・・・。
最果ての虚無の世界へと引き込む。
その空間は、他の生命溢れる空間とは異なり、何処までも続く無限の漆黒であり、無機物・有機物を含め、存在すべてを否定する空間だった。
その空間には、時間の流れがなかった。
そのため、引き込まれた物体は、まきこまれた引き込まれた瞬間に、それぞれの流れる時間を停止する。
そして、生死すらすら核、輪廻の理から取り残されたモノたちは・・・・・・。
永遠にその瞬間を生きていく事になる。
この虚無の世界は、神すらも、・・・・・さらに言えば、概念と呼ばれるあやふやなモノまでも、容赦なく飲み込むのだ。
何時、何処にそれが出来るのかは、世界を創りあげた創造神でさえも、廃れ行く世界を無に還し、新たな世界の礎とする破壊神ですらも解らない出来事だった。
また、それが引き込んでいった先が、世界の何処にあるのか、どんな理を有しているのか、世界の絶対なるそれら2柱も理解の及ばない事だった。
2柱は、この世界の事を『虚無の世界』と呼ぶようになる。
虚無の世界に引き込まれたモノたちは、何人たりとも存在できない世界の於いて、その活動を停止しすべてを無に還していく。
それがすべてだった。
太古の昔、この虚無の空間に、1柱の絶対神が落ちてきた。
この空間に落ちてきたモノは、どんな存在であれ、その存在を維持する事は困難になる。
しかし、この絶対神は、己が管理していた世界を後継に譲り、存在していた世界を当てもなく放浪する、世捨て人ならぬ世捨て神として、有り余る余生を暮らしていた。
そのため、その身に持つ力も膨大だったため、その存在を維持し続けたのだった。しかし、新たなものを創りだす事は、後任の神にケンカを売る行為だと知っていたゆえ、その力だけは使う事が出来ないように封印を施してあった。
この出来事が、この虚無の世界に、生命を育む環境を創りあげる事に成功した瞬間だった。
絶対神が、この虚無の世界に落ちてきてから、幾星霜の年月が流れていく。
時折できる次元の裂け目から、様々な『モノ』がこの空間に引き寄せられてきた。空間に引き込まれた『モノ達』は、空間内ではその存在を維持できずに、次第に空間に溶けていき存在を”無”に変えていく。
それは、物質を維持するために大事な要素が、この虚無の空間には存在していなかったからだ。唯一この世界に生きていく事が出来る絶対神は、そんな光景を気の遠くなる年月の間見つめてきた。
そう。
あれが、この世界に落ちてくるまでは・・・・・。
途方もない時間が経過した頃、この生ける物体が絶対神しかいない虚無の空間に、あるモノがこの空間に引き込まれた。
それは、数多の星々を従えた1つの小さな銀河だった。その名もなき銀河には、銀河を創った2柱の神が一緒に虚無の空間に引き込まれていた。
これが、何人も生きる事を許さなかった『虚無の空間』に、生命体を育む環境を創り上げる一石になった事は言うまでもない。
この小さな銀河を創りあげた神の名を、創造神『クインメシア』と、破壊神『ダークメシア』。
この銀河もまた、数多に落ちてきた者たち同様に、その存在を維持できずに消えていくかに思えた。しかし、この銀河は、創造神クインメシアがいたため、その運命に挑み続けて数億年が経過する。
絶対神は、銀河を守護するクインメシアとダークメシアにある提案を持ち掛けた。
「この空間に落ちてくる数多の命を救うため、そなたらの力を借りたい。」
絶対神は、空間内に落ちてきた『モノ達』が、生きていける環境を創りあげたのだった。
クインメシアとダークメシアはまだ若く、小さな銀河を創り出し、さあこれから生物を“創造”していこうかと思った矢先に、次元の裂け目に捕らわれてしまい、この空間に落ちて来てしまったのだ。
途方に暮れていた2柱は、絶対神の提案に同意し、銀河の中にある1つの恒星系を提示する。銀河はまだ生まれて数十億年ほどしか経ってなく、銀河を構成する恒星系以外は、何処も灼熱の大地だったからだ。
三柱は、この惑星の名を『テラフォーリア』と名付け、次元の裂け目より現れる数多の物質を迎え入れていく。
そして、この星に生命体を根付かせ、文明の礎とするため、自身の身体から3柱を新たに創り出す。
遍く物質をその身に迎え、育む環境を管理する空間神『スぺーリシア』。
遍く物質に悠久に流れる時間を与え、生死を管理する時間神『タイムリア』。
遍く物質を、その空間に引き留め、循環させる環境を創りだす重力神『グランヴィア』。
新たな物質を創りだし、不要になった物質をあるべき姿に戻し、世界の中でその物質を維持・管理する対となる神である創造神『クインメシア』と、破壊神『ダークメシア』。
そして、絶対神自らが、世界を固定し、新たな世界に創り替えるべく、虚無の世界の一部を切り取り、そのうえで次元神『ディメンシア』と名乗った。
こうして、この空間に1つの新たな世界が誕生した。
世界を創り出した六柱の神は、固定した世界が崩壊しないように自身の体の一部を切り取って世界樹として創造し、唯一生命体が暮らす事が可能な惑星に根付かせる。さらには、それぞれの眷属となる神々を創造し、惑星の各地へと派遣する。
この神々のネットワークが、いつしか地脈と龍脈となって世界中を流れ出し、マナと呼ばれる魔力の素を創り出した。そしてこのマナは、この世界に降り立った生命体のすべてに取り込まれていき、いつしか生命体の体内で循環を始めていく。
ある時、この新たに生まれた世界に、1つの概念が、概念を構成する架空世界ごと、次元の裂け目より取り込まれてきた。
その概念は、とある世界の技術で作り出された、架空世界にある概念であり、そのゲーム世界ごとこの世界に取り込まれてきた。
もともと固定化されていない架空の世界と概念であったそれらは、この虚無の空間に固定化されたこの世界の概念と似通っており、ごく自然に世界の中核と融合する事に成功する。
この世界同士が融合する際、架空世界の概念が不安定な世界故、安定しているこの世界の概念に合わせて自らを改変する。
架空世界の神々の持つ権能は、この世界に存在する自らの権能と類似の権能を持つ神に取り込まれていく。
架空世界が持っていた構成概念は、この世界の構成概念と融合し、新たな構成概念を構築。その結果、生命に取り込まれて成長してきた『マナ』が、『魔力』として生命体の体内で変革を起こす事になる。
そして、架空世界に存在した魔法と呼ばれる概念現象が、この世界に誕生する事になる。
魔法と呼ばれる概念現象は、いつしかこの世界に住まう生命体によって魔術と呼ばれるものに進化。
文明が興っては滅びる事を繰り返しながらも、魔術はそれぞれおんの文明時代において、急速な発展を繰り返し、また滅びの原因の一つともなっていく。
そして・・・・。
文明が興っては滅びる事を繰り返すうちに、当初は知的生命体のすべてが魔術を使用できていたのが、いつしか一部の保有魔力量の多い者しか使用できなくなっていく。
木々の根っこに護られた源流の泉に手を差し入れた瞬間、私の脳裏にいきなり創世神話から始まる、ここテラフォーリアの歴史が流れ込んできた。
『我にこの世界で、歴史上一番最初に辿り着いたモノよ。
我は、この世界を守護する世界樹の1本なり。
我はこの世界において、遍く物質をその身に迎え構築し、この世界へと還す。そして、すべての無機物・有機物を育む環境を整え管理する空間神『スぺーリシア』の化身たる世界樹なり。』
どうもこの根っこというか、何かの大木の一部であるこの根っこは、かの有名な世界樹の1本らしい。
そして、長いテラフォーリアの歴史の中で、一番最初に辿り着いてしまった何かだったらしい。・・・・・・私とコトリは。
そして、悲しいお知らせが。
今私たちがいるこの世界は、『虚無の空間』と呼ばれ、一度この空間に落ちれば二度と元の世界に戻る事ができない空間に存在している世界『テラフォーリア』らしい。
テラフォーリアという名前は、この代千足惑星の名前でもあり、この世界には惑星『テラフォーリア』を含め、いくつかの植民惑星(神々ではこう呼ばれている)が存在しているみたいだ。それぞれの惑星は、1つの銀河の中に(ある恒星系に)存在はしているが、それぞれの交流はない。
そのため、世界全体の概念自体は共有していても、惑星ごとに異なった文明と社会体系が存在しているんだとか。たまたまここ『テラフォーリア』は、魔法と化学が融合した文明体系なだけで、別の星では魔法という概念自体は認識されてはいるが、使用する事ができない文明も存在しているんだとか。
そして私たちは、ここ惑星テラフォーリアが・・・・・・、テラフォーリアというこの世界が終の棲家となったわけだ。どんな結果であれ、調べていた事の1つが解決した事はよい事である。
できれば、その結果は逆なのがよかったが・・・・・。
『汝は、ここより違う世界において、我らと類なる6柱の神々の寵愛を受けし者。その縁に則り、汝に我は寵愛を授け、汝らを『空間神の巫女』の称号を与える。汝らはこれより、2人で1人、1人で2人となる存在となる。故に巫女の権能を2つに別け、それぞれを『空間神の白巫女』・『空間神の黒巫女』とする。
この称号を持つ者は、我の権能の一部を扱えるようになる。また、我の権能の属する情報を閲覧する権利を持つ者となる。
また巫女とは聖女であり、我ら6大神の聖女を巫女と称す。』
そういえば、VRMMO『リアルメーカー』の中で私は、世界を支えていた6本の世界樹を訪問し、6柱の神々の寵愛を得て、それぞれの巫女となった事を思い出した。
遍く物質をその身に迎え、育む環境を管理する空間神・・・・・この世界においては『スぺーリシア』。
遍く物質に悠久に流れる時間を与え、生死を管理する時間神・・・・・この世界においては『タイムリア』。
遍く物質を、その空間に引き留め、循環させる環境を創りだす重力神・・・・・この世界においては『グランヴィア』。
新たな物質を創りだし、不要になった物質をあるべき姿に戻し、世界の中でその物質を維持・管理する対となる神である創造神と破壊神・・・・・この世界においては『クインメシア』と『ダークメシア』。
そして、絶対神自らが、世界を固定し、新たな世界に創り替えるべく、虚無の世界の一部を切り取り、そのうえで次元神・・・・・この世界においては『ディメンシア』。
そうするとこの世界にも6柱にまつわる世界樹が存在しており、世界樹に訪問する事によって、6柱の神々の寵愛を得たうえで巫女になる事ができるのだろう。
現に、この瞬間に私は、空間神『スぺーリシア』の寵愛を授かって、私は『空間神の白巫女』に、コトリは『空間神の黒巫女』なったのだから・・・・・・。
閑話休題。
翌日。
優しい木漏れ日の誘いによって、目を覚ました私。隣では、コトリも同様に、木漏れ日によって目を覚ましたようだ。
現在私たちは、巨大な大樹の根元にいる。どうも、足元に広がるふかふかの草のベッドに、そしてこれまた巨大なオオカミのお腹を枕にして寝ていたようだ。それも、コトリを私双方に、1匹ずつオオカミがいる。私の傍らにいるオオカミは白狼で、コトリの傍らには黒狼がいるのが、大きな違いなだけだ。
『目が覚めたか?巫女よ。』
自身のお腹を、私達の枕にしかしてる白狼が、目覚めの挨拶をしてきた。その声音は、男とも女ともとれる音声で、声を聴くだけでも癒されるような気がする。しかし、私とコトリが、巫女さんですか・・・・。そして、空間神『スぺーリシア』の聖女様でもあるわけですが・・・・。なお、聖女様と呼ばれる際も、白と黒が頭についております。
その言葉の意味をかみ砕き、昨日空間神『スぺーリシア』の寵愛を授かって、私は『空間神の白巫女』に、コトリは『空間神の黒巫女』なった事を思い出す。
「あなたは誰ですか?」
そう思いだした瞬間、目の前にいるこの白狼はいったい何なんだろうかを疑問に思い、そうは苦労に聞いた私。意思疎通が可能なら、ご本人に聞いた方がいいとの判断である。そして同じく、それぞれの傍らに寄り添っている人物にしか、この声は届いていないようだ。
『我か?我は先ほど、この世界樹より創り出されたもの。故に我には、まだ名はない。巫女よ、我は汝とともに在り、汝を災いから護るもの。故の我は、巫女たる汝の傍らに常に寄り添う存在なり。
巫女よ、我に名を与え、我を汝の眷属とせよ。』
名前ね~~~~~~。コトリも同じ事を言われったようで、「名前・・・・・、名前・・・・・・。」と、一生懸命に考えている。なので、2人で名前を考える事にする。どうせ、同じような魔前になりそうなのでという、超個人的な理由も内在するが・・・・。
で、熟考の結果、私に寄り添う白狼を『ハクト』と、コトリに寄り添う黒狼を『コクト』を名付ける事になった。
その後、あまり大きすぎてもいろいろと不便という事で、普段外いいる際は、チワワ位の小型犬サイズでいる事となり、普段棲む場所は、それぞれの【アイテムボックス】内にある、空気や重力がは存在している空間になった。なお、自由に出入りする事が可能だ。また、この空間内には、個々の世界樹の枝を貰いうえ、空間内に植樹してある。
どうもこの植樹した世界樹自体が、この子たちの生命の源らしいので・・・・・。